盾の勇者と天の聖杯   作:三途豆

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奴隷紋と卵くじ

翌日、俺たちは城の倉庫で目を覚ました。

周りを見ると尚文はもう起きていた。ラフタリアはまだ寝てるようだ。

俺たちがなんで倉庫にいるのかというと、あの決闘の後、城の兵士がやってきて、案内をしたのだが、紹介されたのがまさかの倉庫だった。

他の部屋があるだろうと思い兵士に尋ねると他の部屋はすべて使用中とのことだ。

この国の上層部はゴミしかいないのか?

「おはよう。マスター」

「ああ…おはよう」

城には空き部屋か客室があると思うのだが、こんな埃っぽい倉庫を当てるなんてあの王はクズだな。

しかもベッドなんてないから藁の中で眠ったからな。

そんなことを考えていると、ラフタリアも起きたようだ。

「おはようございます。ナオフミ様、ホムラさん」

「ああ…おはよう」

「おはようラフタリア」

 

「では、朝食を頂きましょう」

「そうだな、城の食堂で貰えるかな」

「たぶん大丈夫だと思うよ」

俺たちは食堂に向かった。

食堂に入ろうとすると今は勇者様方が食事中ですと言った挙句兵士の食事が終わるまで待てと言われた。

この国はクソだな。

 

食事が終わると四聖勇者の全パーティーが謁見の間に通された。

「では今回の波に対する報奨金と援助金を渡すとしよう」

「では、それぞれの勇者たちに」

王がそういうと側近が1つの金袋を持ってきた。側近は槍の勇者の元へ向かう

「モトヤス殿には活躍と依頼達成による期待にあわせて銀貨4000枚」

銀貨4000枚。つまり、金貨40枚。すごいな。貨幣の枚数的に、金袋もかなり大きい。

「次にレン殿、やはり波に対する活躍と我が依頼を達成してくれた報酬をプラスして銀貨3800枚」

そう言って王の側近は剣の勇者の元に金袋を渡した。

槍の勇者より銀貨200枚ほど少ない。小声で「王女のお気に入りだからだろ」と言った。それでも金貨38枚は大金だよ。

「そしてイツキ殿……貴殿の活躍は国に響いている。よくあの困難な仕事を達成してくれた。銀貨3800枚だ」

同じように側近は弓の勇者にも金袋を持って行った。

弓の勇者も同額か。

「ふん、盾にはもう少し頑張ってもらわねばならんな。援助金だけだ」

報奨金は無し…だと…。

「いや、盾は奴隷紋の解除料金を相殺し、援助金は無しとする。」

…まさかのうちらは援助金すらなし。波が発生している際に村人を守ったのに報酬を銅貨1枚も渡さないとは。

示し合わせたかのように王の側近は俺たちの元にこない。

 

俺たちは付き合ってられなくなって謁見の間を出ようとする。

そこで、弓の勇者が待ったをかけた。

「昨日の決闘の際に行われた尚文さんに行った不正に対し、王様あなたはどう考えいるのです?」

一瞬でその場の空気が固まった。

「どう、とは」

「ですから勇者同士の決闘に横槍を入れ不正を行ったにも関わらず奴隷紋…でしたっけ、それを無理矢理解除させるのはどうなのですか」

「そうだな。それにルール上は尚文が勝っていた」

「お、俺は負けてねぇ!」

槍の勇者が言うが、剣と弓の勇者の目は冷たい。

「違いますわ。イツキ様、レン様」

ここでビッチが発言する。

「盾の勇者はマントの下に魔物を隠していたのです。ですから、父上である国王は采配として決着を見送ったのです」

「マインさん、それでもあなたの行いは立派な反則行為です」

しかし、弓の勇者は、引かずにビッチに言い切る。

「そうだな。それに、騎士団が来るまで尚文は村を守っていた。最低限の報酬は渡すべきだ」

剣の勇者も尚文に味方するようだ。まぁ、2人ともビッチがガッツリ不正する瞬間を見ていたからな。

「チッ」

ビッチが舌打ちをした。剣と弓の勇者は不快そうな顔をする。

「……では、最低限の援助金だけはくれてやる。受け取るがいい」

そういうと、王の側近がこちらに金袋を渡してくる。

「それでは、王様私たちはこれでお暇させていただきます。勇者様方正しい判断をしていただきありがとうございます」

そういって、俺たちは謁見の間を出た。

 

俺たちは城を出て城下町へ向かっている。

「さて、ではあのテントに行って呪いを掛けてもらいましょう」

「そうだな」

「え?」

尚文は不思議そうに俺とラフタリアを見る。

 

「でないとナオフミ様は私たちを心から信じてくれませんからね」

「だな」

「もう……別に奴隷とかじゃなくても良いんだぞ」

尚文はそう言ってるが俺たちは、奴隷じゃないと信じてもらえないからな。それに俺もラフタリアも尚文に信じてもらえる証が欲しいんだ。

「ダメです」

「ダメだ」

「はい?」

「ナオフミ様は奴隷以外を信じられない方ですので、嘘を吐いたってダメですよ」

「ラフタリアの言う通りだな」

そう言いながら、俺たちは奴隷商の元へ移動した。

 

奴隷商のテントに到着すると、尚文が話しかけてきた。

「あのさ、ラフタリア、それにホムラ」

「なんですか?」

「なんだいマスター」

「別に呪いを掛けなくても良いんだぞ?」

尚文は俺とラフタリアが奴隷になることに抵抗があるのか、奴隷になる必要はないと言ってくれた。

だが、

「「いいえ(や)、掛けてもらいます(うよ)」」

「マスター。城を出た時も言ったが、俺とラフタリアはマスターに信じてもらえる証が欲しいんだよ。な、ラフタリア」

俺はそうラフタリアに言う。

ラフタリアはうんうんと首を縦に振る。

「さ、行こう」

 

 

俺たち奴隷商のテントの中に入った。

「これはこれは勇者様。今日はどのような用件で?」

目の前にはアニメで見た通りの奴隷商がいる。

「おや?」

そういうと、奴隷商はラフタリアのことをまじまじと見て、感嘆の声をだす。

「いやはや、驚きました。まさかあの痩せていたガリガリがこんな上玉に育つとは」

奴隷商はラフタリアを見てそんなことを言った。

奴隷商は尚文に目を向けて話しかけた。

「あなた様は私共のような方だと思っていたのですが。期待外れだったようですな」

「…生かさず殺さず、それでいて品質を上げるのが真の奴隷使いだと答えてやる」

尚文は奴隷商にそう返す。

「お前の知る奴隷とは、使い捨てるものなんだろうな」

「な、ナオフミ様?」

ラフタリアが上目遣いで尚文のことをみる。

俺はラフタリアに小声で伝える。

「大丈夫だよラフタリア。マスターだから」

俺は、ラフタリアにそう言うと、ラフタリアは少し安心した顔をした。

「…ふふふ。そうでしたか、私ゾクゾクしてきましたよ」

奴隷商は尚文の言葉を気に入ったのかこれでもかと笑みを浮かべている。

ちょっと怖い。

「要件はこの奴隷の査定ですな。…これほどの上玉なら非処女でも金貨18枚でどうでしょう」

なっ、金貨18枚。国の援助金の3倍以上じゃないか!?

「なんで既に売ることが決定しているんですか!それに私は処女です!」

…ラフタリアさん。処女なんて単語一体どこで覚えてきたの?

奴隷商はラフタリアが処女だということを知って驚いた顔をする。

「なんと!では金貨35…40枚で良いかがでしょう!あとで処女か確認してもよろしいですかな?」

「…」

尚文は何も答えない。

「ナオフミ様!」

俺はラフタリアの金額に思考を奪われていた。

金貨40枚!?それって国の援助金の8倍じゃないか!

「ナオフミ様!?ねぇ。何か言ってください!ホムラさんも!」

「あっ、ああそうだな。マスター!流石に売らないよな。売らないよなぁ!」

俺はそう尚文に言いながら尚文の方を掴む。最後は懇願する感じに言ってたと思う。

すると、ラフタリアがやってきたので、俺は尚文から離れた。

ラフタリアは怖い笑顔で尚文の肩を掴んだ。

「ナオフミ様、お戯れは程々にしないと私も怒りますよ」

「どうしたんだ。怖い顔をして?」

「私が査定されているにも関わらず全く拒否しないからです」

「余裕を見せないと舐められるからだ」

尚文の言い分にも一理ある。奴隷商に隙をみせたら、いくら絞り取られるかわからないからな。……一瞬売ろうか考えていなかったか?尚文。

「金貨40枚か…」

尚文がボソッと呟いた。

その瞬間、ラフタリアの手に力が入る

「いたい、いたい!」

そういえばラフタリアは尚文よりもレベルも資質の向上も上だったな。それに物理攻撃のステータスを伸ばしてたし。

…尚文も物理防御なら相当高いのだがな。

「…このまま逃げてもよろしいでしょうか?」

ラフタリアならマジで逃げ切れそうなんだよな。俺はヒカリ形態になったら余裕で逃げ切れそうだな。変身可能時間的に逃げ切れることは可能だな。まぁ、逃げるつもりなんてないけど。

「冗談だ。ラフタリアがそんなに高く評価されてるんだなと思っただけだ」

「そ、そんな…もうナオフミ様ったら…」

尚文がラフタリアが評価されてることが嬉しいのが伝わったのかラフタリアが照れている。かわいいな。…ちょっとチョロいなと俺は思ってしまった。

「奴隷商、ラフタリアは売らないと決めてるんだ。大事な娘を手放せるか」

「「娘?」」

俺とラフタリアの言葉がハモった。

「気にするな。こっちの話だ」

「「はぁ……?」」

また、ハモった。

「そうですか…残念です。して、何の御用で?」

「お前は城での騒ぎの話を聞いていないのか?」

奴隷商は城で起こった決闘を知っているようだ。

話はとんとん拍子で進みラフタリアには再び奴隷紋が刻まれた。アニメで見た通り、尚文はナイフで自身の指を軽く切って血をインクに入れた。

尚文はラフタリアが奴隷紋が刻まれたすぐ後に奴隷紋のインクを盾に入れた。それに加えて、ラフタリアの血を盾に入れた。尚文は少し下を見ている。おそらく新しい盾が解放されたのだろう。

さて、次は俺の番だ。そう思った際にふと疑問に思った。

俺って3つの形態があるから3つ全てに奴隷を刻むのか?

そう思って尚文に話した。とりあえず人間形態から奴隷になることになった。

そして、俺に奴隷紋が刻まれた瞬間。

奴隷紋が砕け散った。

「「「「!?」」」」

これには、尚文、ラフタリア、俺、奴隷商が目を大きく見開いて驚いた。

何が起こったと思った瞬間メッセージが表示された。

[天の聖杯は奴隷になることはできません]

そう表示された。

「マスター。今メッセージが表示されて、奴隷にはなれないと表示された!」

「俺もだ。急にヘルプが開いて天の聖杯は奴隷にできないと出てきた」

場が凍りついた。

「いや、まだだ、まだ他にも方法はあるはずだ」

 

その後は、高位奴隷紋等も試したが効果はなかった。

尚文もラフタリアも奴隷商や奴隷商の配下さえもなんていえばいいのかわからず話かけてこない。

「まぁ、効かないなら仕方ない。そう仕方ないないんだ」

俺はそう言って立ち上がった。

尚文はなんともいえない顔をしている。

ラフタリアは同情している。

俺は、目線を近くの卵が入った箱が目に入り、卵に視線を向けた。

俺が卵に目を向けていることに尚文が気づいて奴隷商に話しかけた。

「なぁ奴隷商。あの卵は何だ?」

「あれは、私たちの表の商売道具ですな」

「表?」

どうやら奴隷商は魔物商人でもあるようだ。まぁ、うちは奴隷専門店ですよ。なんて言ってたら風聞がクソ悪いだろうし。あと、奴隷を売ってる店なんて勇者に知られたら何をされるかわからないからな。

それと魔物は卵で取引されることが多いらしい。なんでも奴隷商曰く、魔物は卵から育てないと人に懐かないとのことだ。

それと、ラフタリアが住んでいた村では、魔物の飼育を仕事にしている人がいたそうだ。

この世界では、魔物が家畜扱いでもされているのだろうか?

まぁ、今はいいか。

「それで奴隷商、あの卵が入っている箱の上に立てかけてある看板は何だ?」

「あれは、銀貨100枚で1回挑戦できる魔物の卵くじですよ」

銀貨100枚か。高いな。

「当たり枠は、最低でもフィロリアル、大当たりは騎竜となっております。」

「フィロリアルねぇ。奴隷商お前のところだとフィロリアルは平均幾らだ?」

「基本的に銀貨200枚からです。品種や品質、羽毛などで左右されます」

「マスター。この卵でフィロリアルが当たっても、ヒナの状態だよね。そこから成体まで育成する費用と時間を考えたら、得なのかな?」

「いえいえ、今回はフィロリアル以外にもさまざまな魔物の卵を用意しました」

「なるほど…くじと言ってたからな。で、あの中に当たりのものは無いってところか」

「なんと! 私達がそんな非道な商売をしていると勇者様は御思いで!?」

「違うのか?」

「私、商売にはプライドを持っております。虚言でお客様を騙すのは好きでありますが、売るものを詐称するのは嫌でございます」

「騙すのは好きだけど、詐称は嫌いって……」

尚文は呆れている。俺も同じ気持ちだよ。

「ちなみに大当たりの騎竜は金貨20枚相当です。ですが、ドラゴンの中では安めの部類です」

「確率はどのくらいだ?」

「今回は魔物の卵を250個ほどご用意しました。ドラゴンの卵は250個の中の1つのみです」

確率は250分の1。0.4%か。確率低すぎない?

「見た目や重さでわからないように強力な魔法をかけています。ハズレを引く可能性を先に了承してもらってからの購入です」

「良い商売をしているな」

「ええ、当たった方にはちゃんと名前を教えてもらい。宣伝にも参加していただいております」

「ふむ、確率がな……」

「十個お買い上げになると、必ず当たりの入っている、こちらの箱から一つ選べます。ハイ」

「さすがに騎竜とやらは入っていないのだろう?」

「ハイ。ですが、銀貨300枚相当の物は必ず当たります」

10個買うと大当たりの騎竜は当たらないが銀貨300枚相当が必ず当たる箱から1つ選べ、残りの9個はドラゴンが出るかもしれない箱から選ぶと。

……これ、俗に言うコンプガチャってやつなのでは?

コンプガチャがあるゲームはやったことはないからなんともいえないけど。

一応尚文にも伝えておこう。気づいてるかもだけど

「なぁマスター。これってコンプガチャってやつだと思うんだけど」

「ホムラもか。俺も同じことを考えてた」

…どうやら尚文も同じらしい。

「うーむ……」

尚文は考えだした。おそらくこの魔物くじをやるかやらないのか考えているんだろう。

「よし、じゃあ試しに1個買わせて貰うか」

「ありがとうございます! 今回は奴隷の儀式代込みでご提供させていただきます」

「太っ腹じゃないか。俺はそういうの好きだぞ」

「ナオフミ様!?」

「どうした?」

「魔物の卵を買うのですか?」

「ああ、ラフタリアとホムラだけじゃこの先の戦いが厳しくなるだろうと思ってな。奴隷を買うのは装備代を考えると高くつくし、一発魔物辺りでも育てて見るのも一興かと思ってな」

確かにな。今のパーティーはタンクの尚文とアタッカーの俺とラフタリア(俺もホムラもヒカリもラフタリアも物理攻撃しかできない)だけだからな。それに魔物なら最悪の場合売ればいいし。

「俺はマスターの意見に賛成だね。今の俺たちのパーティーって物理に寄りすぎてるし。魔法が使える魔物もいるみたいだから魔法アタッカーが出ることに期待するのもいいかも知らない。それに魔物なら最悪の場合売ればいいし」

「それもそうですね。でも、魔物も大変ですよ」

「それくらい分かってる。ラフタリアもペットくらいは欲しいだろ?」

「……ドラゴンを狙っているのではないのですか?」

「最悪ウサピルでも問題は無い。それに魔物の斡旋とかもやってるんだろ」

そう言いながら、尚文は奴隷商を見る。

「勇者様の考えの深さに私、ゾクゾクしますよ! ハイ!」

奴隷商は何故かテンションが高くなっている。

その後尚文は右側にあった卵を選んだ。それと、魔物の卵の印に尚文の血を卵の殻の印の上に塗った。

これで、卵に尚文の情報が刻まれたそうだ。

奴隷商はニヤニヤしながら孵化器を持ってきた。

「もしも孵化しなかったら違約金とかを請求しに来るからな」

「ハズレを掴まされたとしてもタダでは転ばない勇者様に脱帽です!」

なんか奴隷商のテンションがさらに上がった。

「口約束でも、本当に来るからな。シラを切ったら乱暴な俺の奴隷たちが暴れだすぞ」

今、尚文は、俺とラフタリアのことを奴隷たちと言った。

"奴隷"と言えば、それは一人称になり、ラフタリア1人のことを指す。

ラフタリアは奴隷になれたけど、俺は奴隷にはなれない。

奴隷紋が刻めなかった俺を奴隷と。そう言ってくれた。

俺はそのことに気がついた瞬間すごく嬉しくなった。

「私に何をさせるつもりですか!」

「任せてくれマスター。その時は全力でヤるよ!」

「ホムラさんは、なんでそんなに燃え上がっているのですか!」

ラフタリアが俺に向かってなんか言ってる。だが今の俺には尚文に奴隷と、呼んでくれたのが嬉しくてラフタリアの言葉を聞き流していた。

「心得ておりますとも!」

奴隷商はめっちゃご機嫌だ。

「何時頃孵るんだこれ?」

尚文はお金を渡しながら奴隷商に聞く。

「孵化器に書いております」

「ふーん……」

俺も尚文と一緒に孵化器をみる。孵化器に何か数字っぽい文字が動いていた。

「ラフタリアは読めるか?」

「えっと、少しだけなら……明日くらいに数字がなくなりそうです」

「早いな。まあ良いけど」

「勇者様のご来場、何時でもお待ちしております」

奴隷商に見送られながら俺たちは奴隷商の元を去った。

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