翌朝、俺とラフタリアは尚文が起きるよりも早く起きた。
まあ、尚文もすぐに起きたけど。
俺たち3人は起きたのでフィーロのいる馬小屋に向かった。
フィーロは昨日よりも、ほんの少しだけ大きくなった気がする。気のせいと言われたらそれまでだけど。
大きさは城下町で見かけるフィロリアルと同じぐらいだ。
それと、腹は減ってないようだ。なんでも食べる時期は過ぎたようだ。昨日まで信じられないぐらい食べてたからこれで少しはマシになるはずだ。
俺たちは、馬小屋から1階の食堂に行き朝食を済ませた。
尚文は今日はどうするかを考えている時に、フィーロが外の荷車を羨ましそうに見ていた。
「やっぱり、あれを引きたいのか?」
「ですかねぇ」
「たぶん、引きたいんじゃないかな?」
そんな会話をしていると。
「どうしたのですか、勇者様?」
村人が話しかけてきた。
「ああ、俺のフィロリアルが荷車を見ていたから、引きたいのかって話をしてたんだ」
「まあ……フィロリアルはそう言う習性がありますからね」
村人は目線をフィロリアルに向けた。
そして、村人は俺たちに手伝いを依頼してきた。
「今、この村の建物は修復中で、人手が足りないのですよ。勇者様、何なら荷車を一つ差し上げるので、手伝ってくれませんか?」
依頼の詳しい内容は、村人が近くの森で木材を切っているので村まで持ってきて欲しいとのことだ。
尚文は帰りが遅くなるかもしれないが良いか?と聞くと、村人は構わないと言ってくれた。
尚文は村人の依頼を受けることにしたようだ。
こうして、俺たちは新しく荷車をもらった。新品ではなく、少し古いようだ。
「よし!フィーロ、森へ出発だ!」
「はーい!」
「出発〜」
「グアーーー!」
尚文が方向を指差すとフィーロはものすごい速さ荷車を引き始めた。
最初は少し早かったが荷車はどんどん速度を上げて行った。
その結果。
「うぅ」
「き、気持ち悪い」
俺とラフタリアは見事に酔った。
尚文がフィーロにゆっくり走るように指示を出したのでスピードは落ちたが俺とラフタリアは酔ったままだった。
道中でなんかすっごい聞いたことがある声で槍を持った人がフィーロに蹴り飛ばされた。
尚文はすっごい晴れやかな顔をしていた。
なんとか俺たちは目的地に着いた。
だが、俺とラフタリアは酔ったままだ。
尚文が木こりをしている村人に事情を話した。その結果、俺とラフタリアは小屋のベッドに寝かされた。
尚文は酔ってダウン中の俺たちに「しばらくは荷車に慣れる訓練が必要だな」と言ってきた。
俺とラフタリアは呻き声しか出せなかった。
その後、尚文とフィーロは森の中に入って行った。
しばらくすると、尚文とフィーロは森から戻ってきた。
俺とラフタリアがダウン中なのを確認すると、尚文は先に木材を運ぶためにリユート村に戻って行った。
俺とラフタリアは尚文が村へ戻ってからしばらくするとなんとか復活した。
ラフタリアの方が復活が早かった。
俺が復活してから30秒ほどで尚文とフィーロは戻ってきた。
「は、早いですね…」
木こりは尚文とフィーロが戻ってきたのが早かったのか驚いている。
「じゃあ、森を本格的に探索するか」
「ええ」
「了解」
「グア!」
そして、俺たちは森を探検した。
森林浴みたいでなかなか楽しかった。ただ、魔物とはそんなに遭遇しなかった。この数日で俺のレベルはこうなった。人間形態はレベル17(資質向上20レベル)、ホムラ形態はレベル16(資質向上15レベル)、ヒカリ形態はレベル17(資質向上18レベル)になった。
ヒカリ形態はそんなに使っていない。この辺でレベル上げるにはヒカリ形態は強すぎるからな。
ちなみに、ラフタリアのレベルは24になっている。俺は3つの形態に経験値を分けないといけないが、ラフタリアにはそんなことをする必要がないので、レベルに差が開いてきた。
攻撃力と機動力はホムラ、ヒカリ形態の方が上だか、人間形態では全ステータスがラフタリアよりも下だ。まぁ、戦闘はホムラとヒカリばかり使っているので、人間形態で戦うことは少なくなってきている。
日も落ちてきたので、俺たちはレベル上げを終了し村に戻った。
村に戻る時も尚文はフィーロにゆっくり走るように言って荷車をフィーロに引かせる。
俺とラフタリアはフィーロの荷車でも何回か気持ち悪くなって休憩を挟んだ。
俺の場合はそんなに整備されていない道を進むのでカダンゴトンと揺れまくるので酔う。ラフタリアは単純に乗り物に乗る機会が少ないから酔うのだと思う。
あのフィーロの荷車に酔わない尚文は正直に言っておかしいと思う。
そして、今日も文字の勉強をして眠った。
翌朝。
俺たちは馬小屋に向かった。
馬小屋についた俺たちは目の前の光景に頭を抱えて考える。
俺たちが頭を抱える存在。
それは、フィーロだ。
この鳥、なんか他のフィロリアルよりでかいのだ。
他のフィロリアルの成体が大体2m30cmぐらいだ。
なのに、フィーロは3mよりちょっと小さいぐらいあるのだ。
いくらなんでも、でかい。
立ち上がったら馬小屋の天井に届くほどだ。
「俺がもらったのは本当にフィロリアルの卵なのか?フィロリアルに似た別物でも納得できるぞ」
「私も…そう思います」
「同じく」
「グア!」
するとフィーロが何かを飲み込んだ。
何を飲み込んだのかわからず周りを見てみると本来あるはずのものがなくなっていた。
それは、キメラの肉だ。
そのキメラの肉が綺麗さっぱりなくなっている。
おそらくついさっき飲み込んだのがキメラの最後の肉だったのだろう。
「食欲が一時的に収まったと思っていたが」
「実際はキメラの肉を」
「食べていたんですね!」
「「「ハハハハハハハハハ」」」
「グアー!」
尚文も俺もラフタリアもヤケを起こして笑う。
あのキメラの肉、村の復興資金として一時的に保存していて、研究者とかに売っていたんだよなあ。買いにくる研究者は数人しかいなかったらしく、使い道もそんなになく村人も売れたらいいなぁって感じでそんなに期待してなかったけど。
それに、頭もなくなり皮や骨もほとんどが勇者たちや騎士団が持っていっており、残っているのは食料になるのかわからない肉だけだったけど。
でも、あの肉リユート村のものなんだよなぁ。
てか、まだフィーロから成長音がするんだよなあ。もう成体だしこれ以上成長しないはずなのに。
ひとまず俺たちはキメラの肉の件を村人に報告した。
村人は全然問題ありませんと言ってた。なんでも研究者も最初の数日は買いに来たが色んな部位を買ってから全く来なくなったそうだ。
それに加えて、キメラの頭の部位も城にあるらしく、色んな研究者が城で研究しており、この村で売ってる部位で全てのパーツが揃ったそうだ。
なので、処理してくれて助かったと言われた。
そうしていると、村が騒がしくなっている。
俺たちは気になり騒がしくなっているところに行ってみると、槍の勇者とビッチがいた。周りには騎士と兵士が何人もいる。
ビッチはなんかの書面を村人たちに見せている。
「この度、波での功績を讃えられ、槍の勇者である元康様がこの村の領主に任命されました。速やかな復興のためにこの村に通行税をかけます。村に入るのに銀貨50枚。村を出るのに銀貨50枚です」
このことを聞き、村人たちは無茶苦茶だと文句を言っている。
そりゃそうだこの村の宿屋に一晩泊まるのに加えて食事付きでも銀貨一枚だ。
村に出入りするだけで銀貨100枚。つまり金貨一枚だ。
いくらなんでもやりすぎだ。
この世界にくる前に日本の話になるので、物価が違うが、食事付きの宿屋(一晩ニ食・夕食と朝食のセット)の値段をネットで軽く調べた時は安くても8000円近くするらしい。
リユート村の宿屋の食事付き(一晩ニ食・夕食と朝食のセット)を8000円と仮定すると、8000円×50=40万円となる。
つまり、村に入るだけで40万円ってことになる。
ぼったくりの次元じゃねぇぞ!
「領主様の言うことが聞けないと」
ビッチが不機嫌そうに村人に言う。
「当たり前だろ」
ここで尚文がビッチに言い返す。
「盾の勇者。何故ここに?まあ、いいですわ。ここは槍の勇者であるモトヤス様の領主。口出しは不要です。あと犯罪者はさっさと出ていってください」
「出て行くのは構わないが。おい、元康お前この村の宿屋が一泊いくらか知ってるのか」
「え、ええっと」
槍の勇者はわからないようで頬を掻く。
「一晩で夕食と朝食付きで銀貨1枚だ。お前たちは村に一度出入りするだけで100日分の宿代を奪おうとしているんだぞ」
ここは俺も言った方が良さそうだな。
「槍の勇者殿!私も村の出入りに銀貨100枚はやりすぎです。
私の日本の話になりますが、夕食と朝食がセットになっている宿屋は安いところでも8000円近くになります。これでは村に入るだけで40万円も取られることになってしまいます。そんなことをしては村人が生活できなくなりますよ!」
「よ、40万円!?マ、マインそれはいくらなんでもやりすぎなんじゃないのか」
「いいえ、モトヤス様。時には痛みを伴う改革も必要です。でなければいつまで経っても復興はできません」
ビッチのやつ、槍の勇者が税を取りすぎだから辞めた方がいいと言ったのに拒否しやがった。
そう思っていると、ビッチの周りに黒装束を着た人たちがビッチを取り囲んだ。
黒装束の1人がビッチ書面を手渡した。
ビッチは書面を受け取り、内容を読み終えたら何故か尚文に向かって、「この村の権利を賭けて勝負よ!」と言ってきた。
「勝負の内容は私たちのドラゴンと盾の勇者の鳥とのレースです」
「お願いします盾の勇者様レースに出場してください」
「断る。なんで俺がそんな面倒事をしなければならないんだ!」
「勝ったあかつきには報酬を渡しますのでどうか」
そう言って村長と村人たちは尚文に頭を下げている。
尚文はこの村を手放すのが惜しいようで考えている。
槍の勇者はビッチとなんか話している。
俺は槍の勇者を説得しようと槍の勇者の元に向かうと兵士に止められて尚文のところまで追い返された。
少しすると、槍の勇者が勝負を受けるか悩んでいる尚文の元までやってきた。
「やめとけよ尚文。鳥とドラゴンなんて勝負になるわけないだろ。戦わなくても俺のドラゴンの方が勝つに決まって」
瞬間、槍の勇者がなんか言ってる間にフィーロが槍の勇者を蹴り飛ばした。
槍の勇者をフィーロが蹴り飛ばした瞬間を見ていた尚文はフィーロの元まで行き、フィーロの頭を撫でた。
そして、尚文はフィーロに乗り
「よしいいだろう。この勝負受けてやる!」
そう宣言した。
その後すぐ、槍の勇者は治癒魔法を兵士にかけてもらいドラゴンに乗った。
まだ少し痛そうにしている。
ラフタリアはフィーロに近づき
フィーロを撫でながら、ナオフミ様を頼みますと言った。
次は俺だな。
「フィーロ。思いっきり勝ってこい」
「グア!」
俺はフィーロの嘴に拳を当てた。
「ルールは村の外周を先に3周したほうを勝ちとします」
村長らしき人が尚文と槍の勇者の間に立ち勝利ルールを説明した。
「それでは…はじめ!」
瞬間、フィーロと尚文vsドラゴンと槍の勇者のレースが始まった。
スタートダッシュは尚文が決め、槍の勇者よりも前に出た。
その後すぐにカーブに入って尚文とフィーロは見えなくなった。
次に見えたのは、フィーロが転び尚文が落ちるところだ。
「ああ、盾の勇者様が」
村人の1人が悲鳴を上げる。
しかし、尚文はすぐにフィーロに乗り、加速した。
槍の勇者のドラゴンよりちょっと後ろの位置についた。
そしてカーブに入って姿が見えなくなった。
1周目は槍の勇者の方が早いようだ。
次の周はフィーロの方が先にきた。途中で槍の勇者を抜いたようだ。
「フィーロあと1周ですよ」
ラフタリアはフィーロにあと何周かを伝えた。
その後すぐに、村人がゴール用の紐を設置した。
最後にきたのは槍の勇者だった。
すぐ後ろには、尚文とフィーロがいる。
フィーロは傾いている道を突き進んでいき、途中でジャンプをしてから加速した。
そのまま2頭がゴールした。
結果は、フィーロの勝利のようだ。
レースが終わった後、黒装束の人たちが尚文の元へ行った俺たちについてきて話し出した。
「あの穴は不正の証拠として押さえておきました」
「とりきめ通り、村の管理はこれまで通りという事で」
すると、ビッチが俺たちの元にやってきて騒ぎ出した。
「やり直しよ。こんなのおかしいわ」
そう言った瞬間、黒装束の人たちがビッチを押さえて下がらせた。
次に村長らしき人と村人たちがやってきた。
「ありがとうございます勇者様。今、村中から報酬をかき集めておりますので、少々お待ちを」
尚文は村長の言葉を聞いて何か考え始め、顔を上げた。
「いや、金はいらない。代わりになるものをくれればそれでいい。盾の勇者が村人から復興資金を奪ったなんて言われたら面倒だからな」
尚文はそう言って、お金の受け取りを拒否した。
尚文ってこう言うところが勇者っぽいよな。
俺はそんなことを考えていると村人が提案をしてきた。
「代わりになるものですか。では商業通行手形などはいかがでしょうか。行商を行い各地で素材や薬などを提供し、金銭を得る。こうして商売をしていけば、盾の勇者の悪名を和らげることもできるでしょう。幸い、行商をする上での移動手段はフィロリアルがいます。盾の勇者のフィロリアルは健脚のようですので、移動は問題ないでしょう。行商で必要な馬車は我々の方でご用意します」
馬車という単語を聞いてフィーロの目がキラキラしてきる。
尚文もフィーロの目に気がついたようでフィーロを見ている。
「わかった。報酬はその行商通行手形と馬車で頼む。どれぐらいで準備できる?」
「急ぎで準備しますので、2日ほどお待ちください。馬車の代わりに荷車を一つ繋ぎとして、差し上げます」
荷車をくれると言ってもすでに一つもらっているのだが。
尚文も俺と同じことを考えていたようで、荷車をもらっていることを伝えていた。
「すでに荷車をお持ちでしたか。ですが、何かあった時ように用意しておきますので、今使っている荷車に何かあればすぐにお伝えください」
そう言って村人たちは俺たち元を離れて行った。
その後村長っぽいやつは村の外へ、残りは村の復興、一部の村人は馬車の製作を開始した。
俺たちは村人への報告が終わったので奴隷商の元へ向かっている。
道中でフィーロに餌をやり、それでも足りなければその辺の魔物を食わせた。
そうしていると、またフィーロの姿が変化した。
なんか羽が大幅に増え、ずんぐりとしたでかい鳥になった。
「クエ?」
しかも、なんか鳴き声が変化してる。
あれ?そういえばこの外見どこかで…。
「あああああああああ!」
「どうした!急にでかい声を出して!」
「尚文思い出したんだよ!」
「思い出したってなにを?」
「フィーロだよフィーロ!」
「フィーロがどうかしたのか?」
「フィーロはアニメで出てきたやつだよ!確か種族はフィロリアルクイーンってやつで特別な進化をしたフィロリアルだよ!」
「フィロリアルクイーン?」
「フィロリアルの女王種だよ。アニメ版だと通常のフィロリアルの成長過程がダイジェスト形式だったからたった今思い出したんだ」
「ダイジェスト形式だったのか」
「うん。それで確か俺と同じように魔物形態と人形態を使い分けていたはずだ。あと魔物形態、人形態問わず喋っていたな。性格は子供だったはず」
「人形態の姿は黄色系の髪で、子供体型、言ってしまえばロリだったよ」
「体型と性格は子供か。それは随分とやかましそうだな」
「たぶん」
「マスター。とりあえずフィーロを奴隷商に見せよう。俺の情報以外に何か知ってるかもしれない」
「そうだな。あの奴隷商なら何か知ってそうだな」
「あとフィロリアルクイーンのことは内緒で頼む。あの奴隷商に情報を教えたらどうなるかわからないから」
そんなことを話しているうちに奴隷商のテントに到着した。
尚文は奴隷商にフィーロのことを話して、実際に見せた。
見せた結果、奴隷商が専門家を呼ぶことにしたようだ。ただ、専門家をすぐに呼ぶが今日今すぐに来れるかわからないので数日ほど奴隷商が預かることになった。
フィーロは鉄の檻に入る際、抵抗していたが奴隷商の配下らしい人たちの手によって檻に入れられた。
ひとまず、今日は宿に泊まり、明日迎えにくることになった。
俺たちが奴隷商のテントから出ようとすると急に尚文が止まった。
「…さま」
「今何か聞こえなかったか?」
「はて?私には何も」
「私も何も聞こえませんでしたよ」
「俺もだ」
奴隷商もラフタリアも俺も、何も聞こえなかった。フィーロが喋るのはもう少し先だったと思うんだけど。
尚文が後ろを振り向くと後ろを指差した。
つられて、奴隷商もラフタリアも俺も後ろをみて絶句した。
「ごしゅじんさまー」
そこには背中から羽の生えた幼女が俺たちに向けて手を伸ばしていた。
元康のレースシーンはかなり簡略化しました。