魔法を習得してから数日後。
俺たちはアクセサリー商からの依頼である村に向かっている。
なんでも除草剤が急ぎで、しかも大量に必要らしい。
それと、今運んでいる除草剤はアクセサリー商が用意したものだ。俺たちだけじゃ木箱いっぱいの除草剤なんて用意できないからな。
そして、納品日に間に合うのはフィーロぐらいしかいないので俺たちは依頼のある村までフィーロを走らせている。
フィーロじゃないと間に合わないのでかなり速い速度で馬車を引いている。
今日はラフタリアがフィーロの御者をしている。
御者は俺とラフタリアで交代しながらやっている。
「ごしゅじんさまー植物がすごいのー」
フィーロがそう言うので、俺と尚文は、馬車の外を見る。
「な、なんだこれは!?」
尚文が周りの景色を見て驚きの声を出す。
俺たちがみたのは道を埋め尽くすレベルの植物が蠢いているのだ。
「一体何がどうなってこんな植物だらけになるんだよ!」
俺も尚文に続いて驚きの声を出す。
「これは除草剤が急ぎで、大量に必要なわけだ」
尚文が除草剤が必要な理由に納得している。
「村は…」
「ナオフミ様!あそこ!」
ラフタリアが示した方向には大急ぎで作ったような丸太を地面に突き刺した砦というか拠点のようなものがあった。
「フィーロ。あの場所に向かえ」
「はーい」
俺たちは、丸太が刺してある砦というか拠点のようなところに向かった。
入り口には門番っぽい村人がおり、商業通行手形を見せたら通してくれた。
それと、ここには村人たちの避難所になっているそうだ。
なので、この場所を避難所と呼ぶことにしよう。
商業通行手形を見せてる時に軽く周りを見ると、植物がゆっくりではあるが避難所を侵食しているようだ。
避難所に入ると、装飾が少し豪華な村人が話しかけてきた。おそらく村長なのだろう。
「あなたは行商の方ですか?」
「ああ、除草剤が必要だと聞いてな。除草剤を持ってきた」
「助かります。ここも植物に埋め尽くされるところでしたから」
「一体何があったのですか?」
ラフタリアが村長に聞くと村長は経緯を話してくれた。
なんでも2週間と少し前に槍の勇者が村にきて奇跡の種子を村に与えたそうだ。最初はすぐに育ち食べれる実ができたので、村人たちは大いに喜んだそうだ。
ただ、2週間と少しすると村人が処理しても処理しても植物が繁殖、成長し、村人では処理が間に合わなくなったそうだ。
しかも今では村の方は植物が魔物化して襲ってくるそうだ。
この避難所のあたりは植物が魔物化しておらず、食べれる実が取れるので食料には困っていないそうだ。
勇者にどうにかできないか国に依頼を出したが、勇者は忙しくなかなか来ないそうだ。
勇者が来るまで、植物の侵食を可能な限り抑えるために除草剤が大量に必要なのだとか。
「火で焼き払えば良いのでは?」
ラフタリアが村長に聞くが、村長の顔色は悪い。
「もう既にやってたんだね」
俺がそう言うと村長は、「はい…」と答えた。
「うわぁああああああ」
俺たちが話していると村の方から悲鳴が聞こえてきた。
「なんだ!」
「止めたのですが、冒険者がレベル上げに行くと言って村に向かったのでその声かと」
村長は呆れながら答えた。
魔物化していて危険だから行かない方がいいと止めたのに村に行くってその冒険者は馬鹿なのか?
「フィーロ」
「はーい!」
フィーロは周りの植物の実を食べていたが、尚文に呼ばれて尚文の方に近づく。
「冒険者どもを助けてこい」
尚文はフィーロに村の方を指差した。
フィーロは村の方まで走って行った。見ず知らずの人を助けるところが尚文の長所だな。
数分後、フィーロはボロボロの冒険者を担いで戻ってきた。
「村はどうだった?」
「えっとねー。植物の魔物ぐねぐね動いていて、毒とか酸とか吐いてくるのもいたよ。弱いなのあんなところに行くなんてこの人たちバカだねー」
「最後のは余計だ」
「はーい!」
尚文はフィーロに注意する。
その光景を村人たちは凝視していた。中には、あれって最近噂になってるとヒソヒソ話している村人もいる。
「あなたは最近噂になっている神鳥の聖人様ですか?」
「人違いだ」
「お願いします!そのお力で病人を助けてください!」
「病人がいるのか?」
尚文が聞くと、村長は俺たちをテントがある場所まで案内した。
「マジかよ」
テントに入った俺は自然と呟いた。
テントの中には10人ほどの人間が横になっている。
しかも、横になっている人間の体には植物が生えている。
「寄生能力まであるのか」
尚文が驚き声を出す。
俺も驚いている。植物に寄生された人間なんて始めて見るからだ。
「聖人様!どうかあなた様のお力でこの者たちを救ってください!」
村長は俺たちに懇願する。
「治るかは、やってみないとわからないからな」
尚文は村長にそう言うと、病人の元まで歩いた。
尚文は、治療薬を飲ませてから、除草剤を病人に撒くと、病人に寄生していた植物が枯れて、体から離れた。
「おお…」
村人たちは感嘆の声を上げている。
「次だ」
「はい」
「わかった」
俺たちは同じように全ての病人を治療した。
俺たちはテントを出て村長に治療費を請求した。
村長は快く金を持ってきた。
フィーロは、俺たちが治療をしている間、外の植物の実を貪っていた。
「あとは除草剤を売ってさっさとこの村から出るぞ。勇者共に遭遇したら何が起こるかわからないからな」
尚文はそう言いながら除草剤の準備と村を出る準備を始める。
俺が手伝い始め、後ろの光景を見て、手を止めた。
「マスター。それは難しいかもしれないよ」
「なんでだ?」
「あれ」
俺はそう言いながら顔を後ろに向けた。
尚文も後ろを向くと、そこには村長たちが頭を下げていた。
ラフタリアはフィーロと一緒にこっちを見ている。
「聖人様!どうか村を救ってください!」
「断る」
「そこをどうか…お金も工面いたしますので」
「…報酬は先払いだ。そして、後からの苦情は一切受け付けない。それと、槍の勇者が解いた封印について知ってる範囲で教えろ」
尚文がそう言うと、村長たちは金を集め始めた。
俺たちもその間に情報収集をした。
情報を調べた結果、あの植物は昔にこの辺りを根城にしていた錬金術師が作ったものだそうだ。
そして、この周辺はその錬金術師が作り出した植物により、一度植物に支配されていたそうだ。
「そんな伝承があるならなんで誰も指摘したり、おかしいと思わなかったんだ!?」
尚文がそう言うと、村人たちは俯いた。
「おそらく、勇者が持ってきた物なら大丈夫だろうと思っていたってところかな」
「魔物の討伐費を先払いでお支払いしますので、どうか村をお救いください!」
村長はそう言って尚文に金の入った袋を渡した。
「元康のバカの尻拭いはごめんだが、もらった分の仕事はする。行くぞ、ラフタリア、ホムラ、フィーロ」
「はい」
「了解」
「は、はーい」
フィーロは最後まで実を食べていた。
尚文は避難所を出ると盾をキメラヴァイパーシールドに変えた。
すると、村長が盾を変えるのを見ており、「あの盾は」と言っていた。
俺たちは村の中まで来た。
どうやら魔物は村の中しかいないようだ。
村に入ると蔓が蠢いている。
蔓が俺たちを見つけると蔓が伸びて俺たちを攻撃しようしてきた。
「ハァ!」
「とお!」
「そいや!」
ラフタリア、フィーロ、俺の順番で蔓を攻撃した。
村の入り口近くの蔓は弱いようで、人間形態の俺でも簡単に倒せた。
しかし、俺たちが戦っている音でも聞こえてるのか植物が俺たちの元に集まってきている。
「力の根源たる盾の勇者が命ずる。理を今一度読み解き、彼の者を守れ!」
「ファスト・ガード!」
尚文は俺、ラフタリア、フィーロ順番に支援魔法をかけてくれた。
俺が最初なのはステータスに不安があるからだろうな。
「ありがとうマスター」
「ありがとうございます」
「ありがとー」
俺、ラフタリア、フィーロが尚文にお礼を言う。
「とりあえず、調査のために進むぞ」
尚文がそう言うと俺たちは村の中心部まで向かった。
中心部に向かう途中の道に、植物型の魔物が大量にいた。
魔物は全部で3種。
1つ目がプラントリウェ。この魔物は蔓で構成された人型の魔物だ。移動している。それに加えて、フィーロが言っていた毒を吐くやつはこいつのようだ。頭の部分にデカい花があり、そこら毒や毒の花粉を噴射してくる。
2つ目がマンドラゴラ。こいつは位置が固定されており、一切動かない。
そして、蔓から酸性の液体をこちらに噴射してくる。
3つ目がバイオプラント。こいつは上記の2種を生産している。時折蔓がデカくなり蔓の中からプラントリウェとマンドラゴラが出てくる。
尚文が魔物共に、除草剤を撒くと植物型の魔物たちは断末魔を上げるような音を発してから枯れる。
尚文の薬は攻撃判定されないようだ。
ただ、魔物の数が多い。
そのせいか、ラフタリアが咳き込んでいる。
「ラフタリア」
「ゲホ…!なんですか?」
「これを持っておけ」
尚文はそう言って、ラフタリアに除草剤を渡した。
「2人もだ」
そう言って尚文は、俺とフィーロに除草剤をくれた。
俺たちは魔物を倒してドンドン奥に進む。
村の中心に到着すると、大木があった。
「あれが本体…だといいなぁ」
尚文がそう言いながら大木に近づくと、大木から目玉のようなものが生成された。目玉は俺たちを凝視している。
瞬間、大木は俺たちに蔓を伸ばして攻撃してきた。
フィーロは大木の蔓の上を走って目玉に攻撃しようとする…だか、距離が足らない。
「ごしゅじんさまー」
「エアストシールド!」
尚文がスキル名を唱えると、フィーロの下に盾が現れた。
フィーロは盾を足場にして、目玉に接近した。
「てい!」
フィーロが目玉を蹴り飛ばした。
しかし、目玉はすぐに再生した。
「ねぇ、マスター。今目玉が再生した時に奥の方に何か種みたいなのが見えたんだけど」
「ホムラも見えたか」
「ラフタリア、フィーロ。あの目玉の奥になにか種のようなものがある。それに除草剤をかけてくれ。ホムラはラフタリアとフィーロを援護してくれ」
「了解」
「わかりました!」
「はーい!」
そう言って、俺とラフタリアはフィーロの背中に乗った。
俺とラフタリアを乗せたフィーロが大木に接近すると、大木は俺たちに大量の蔓を伸ばしてきた。
「シールドプリズン」
尚文がスキルを唱えて、俺たちを守ってくれた。
確か効果時間は15秒だ。
盾の檻の隙間から外を見ようと、すると蔓が隙間を塞いでいた。
おそらくシールドプリズンの外は蔓で覆われているんだろう。
「ラフタリア、おそらくシールドプリズンの外側は蔓で覆われている。シールドプリズンが消えた瞬間に俺が周りの蔓を切るから。蔓が切れた瞬間に目玉に接近して、除草剤をかけてくれ」
「わかりました」
俺はラフタリアに指示を出した。ラフタリアは了承してくれた。
15秒経過すると、シールドプリズンは消えた。
「エアストシールド」
尚文がスキルを発動してフィーロの下に盾を出した。
俺は超躍し、周りの蔓を全て切り裂いた。
その瞬間、フィーロは近くの蔓を足場にして、目玉に接近して、目玉を蹴った。目玉を蹴られ内側の種が露出しているうちにラフタリアは除草剤をかけた。
すると、大木は振動を始めた。
だが、少しすると振動は止まり大木が再生した。
再生した大木を見て、尚文は、
「おそらく薬の性能よりも大木の再生能力の方が高いのだろう」
と言った。
「じゃあ次は俺が試すとしよう」
尚文はそう言うと、盾をキメラヴァイパーシールドから別の盾に変えた。
尚文は大木の根本に着くと除草剤を何本も大木に直接かけた。
すると、目玉が枯れ始めて、大木が崩壊し始めた。
崩壊が始まった瞬間、尚文は走って俺たちのところまで戻ってきた。
「あの種は放置しておくと危険そうだ。回収するぞ」
「はい」
「了解」
「りょうかーい」
そして、俺たちは種の回収を始めた。
種の回収が終わった時には、空はオレンジ色になっていた。
尚文は種の一つを盾に吸わせた。
その後、尚文は種を地面に埋めると、ものの数秒で木になった。しかし、数秒で枯れて朽ち果てた。
「ナオフミ様?何をしたのですか?」
「ああ、植物改造ってスキルが出たから試してみたんだ」
「危険なことをしないでください!」
ラフタリアは尚文を注意している。
尚文は、種を見ながら何か悪い顔をしていた。
「マスター。なんか悪い顔をしてるよ」
「顔に出てたか?」
「うん」
「そうか。ともかく、村に戻るぞ」
そうして、俺たちは避難所に戻った。
「ありがとうございます。勇者様」
俺たちが戻ると村長がやってきて、礼を言ってきた。
「魔物はすべて倒した。枯れた植物の掃除は自分たちでやれ」
尚文はそう言って、馬車に戻った。
盾の勇者ということがバレたから、尚文は不機嫌そうだった。
翌朝。
俺が目を覚ますと尚文とラフタリア、それに加えて数人の村人と村長が地面から出ている植物を見ていた。
見てみると実ができている。
「おはようマスター。それは?」
「起きたか。これは、昨日の植物を改造したものだ」
そう言って尚文は、視線を植物に向けた。
俺も植物をみると、植物はみるみる成長し、俺の首ぐらいまで成長した。
しかも、みずみずしいきのみが実っている。
「なになにー?」
俺に続いて、フィーロも目を覚まして俺たちに話しかけてきた。
尚文はフィーロに植物のことを話して、試しにきのみを食べさせた。
フィーロはすぐにきのみを平らげた。
「これで魔物に変異せず、食べられる実をたくさん作ることができる。これを使えば、飢饉もマシになるだろ」
「ありがとうございます勇者様。村を救ってくださった上に、この恵までくださるなんて」
村長はそう言うが尚文は、厳しい顔になる。
「誰がやると言ったんだ。これは取引だ。この種をお前らに売ってやる」
尚文は厳しい顔で村長に言う。まあ、この村の連中、昔、この周辺が植物に支配されていたって伝承があるのに、勇者が持ってきたものだ。と言って全く警戒してなかったもんな。
「で、ですが村にはもう何も…」
「あいつら、俺たちに在庫処分をさせたんじゃないだろうな」
尚文がぼやいている。
そう、俺たちは村の連中に種を売ったのだが、村にはもう金がないらしい。なので金の代わりにと言って、新しい馬車を俺たちにくれた。しかも、バイオプラントの種を大量くれた上に、俺たちが来る前に実っていたバイオプラントのきのみまでくれた。
こんなにあると食べきる前に腐るわ。
まあ、フィーロが食いまくっているからなんとかなる可能性もあるが。
そんなフィーロはというと、
「重くてたのすぃいー!」
馬車が、2台に増えたのに喜んで馬車を引いている。
そういえば、フィロリアルは馬車を引くのが好きな生態だったな。
変わった生態だ。
「ナオフミ様。この大量の種はどうしましょう」
「なに、売り先はあるさ」
「確かにこの種は素晴らしい。まとめて購入させてもらいます!」
そう、尚文の言う売り先とは、アクセサリー商だ。
アクセサリー商は尚文のバイオプラントの種の実演を見ると、目の色を変えて購入した。
「もし、急ぎの依頼がなければ、一つ仕事を頼めませんか?」
話を聞いてみると、ある場所に荷物を運ばないといけないのだか、業者がケガをしてしまい荷物を届けるのが難しいそうだ。
俺たちは急ぎの依頼などはなかったので、ある場所に荷物を届けに向かった。