俺たちはアクセサリー商の依頼である場所に向かっている。
御者はラフタリアがしている。
「ナオフミ様。見えてきました」
ラフタリアがそう言うので、俺と尚文は外を見た。
外を見ると、湯煙が上がっている。
「なんかくさーい」
「フィーロ、これは硫黄の臭いだ。そういえば目的地は温泉街だったな」
そうアクセサリー商の依頼で行く場所は、温泉街なのだ。
なんでも、街に荷物を届ける業者がケガをしていまい、荷物を運ぶ人がいないのだとか。そこで偶然にもバイオプラントの種を売りつけに来た俺たちに荷物運びの依頼をしたのだ。
指定された場所に到着し、アクセサリー商から受け取っている書類を店の従業員に見せる。
「確かにこれはあの方の書類だ」
そう言って、従業員たちが荷物を受け取った。
従業員は荷物を受け取った旨の書類を尚文に渡した。
「さて、アクセサリー商からの依頼はこれで終わったけど、この後はどうする?」
俺が尚文に聞くと、せっかくの温泉だから今日はゆっくり休むことになった。
俺たちは普段よりも早い時間に宿を取った。
俺たちは少し早いが温泉に入ることにした。
温泉に着くと、俺と尚文は男湯に、ラフタリアとフィーロは女湯に入って行った。
脱衣所では、
「マスター。体引き締まってきたな」
「お前もな」
と言った雑談をして温泉に入った。
温泉に入って少しすると、大きな影が俺たちの前に着地した。
影の正体はフィロリアル・クイーン形態のフィーロだった。
「ごしゅじんさまー。一緒に入ろー」
フィーロはそう言いながら、尚文の浸かっている湯に入って来た。
尚文は女湯に戻れと言うがフィーロは、「ごじゅじんさまと一緒がいいー」と言って女湯に戻ろうとしない。
尚文は魔物姿でいるのなら、入っていてもいいと言った。
すると、フィーロは喜んでいた。
その後俺たちは温泉を上がった。
フィーロは街の方が気になるようで、街に行った。
不安なので俺もついて行くことにした。尚文は部屋で薬を調合するそうだ。
俺はフィーロと一緒に温泉街を歩いている。
「ねぇねぇホムちゃん。あれなにー?」
フィーロはそう言いながら、一つの店を指差した。
「あれは、温泉卵を売ってる店だな」
「温泉卵?」
「温泉卵ってのは、温泉で茹でた卵のことだよ。一つ食べてみる?」
「うん!」
フィーロが力強く返事をしたので、俺たちは温泉卵を食べることにした。
この温泉卵、甘い匂いがする。
食べてみると本当に甘かった。
ちょっと聞いてみるか。
「なあ店主。この卵はなんで甘いんだ?」
「ああ、これはガガッコという魔物の卵で甘いのが特徴なんだ」
そう言って、店主はいろんなことを教えてくれた。
ガガッコはメルロマルクではこの付近にしか生息していないことや、野生のガガッコの卵はレアものなんだとか。
「ねぇねぇ、その卵って珍しいのー?」
「そうだよ。野生のガガッコの卵はとても珍しいものなんだよ」
俺は他にも有名なものなどを好奇心から色々と店主に聞いた。
この街では、明日とある町おこしの儀式をするらしい。
そんなことを聞いていると、フィーロが早く戻ろうと言ったので、俺とフィーロは宿屋の部屋に戻ることにした。
宿屋に戻ると、牛乳が売られていた。
フィーロも飲むかと聞くと後で飲むそうだ。
とりあえず、俺は4人分の牛乳を購入した。
部屋に戻ると、フィーロが尚文とラフタリアに戯れていた。
「みんな、牛乳買ってきたぞー」
俺はそう言って牛乳を全員に渡した。
その後は、宿屋で晩御飯を食べて眠った。
翌朝。
俺は目を覚ました。
周りを見ると、尚文は寝ており、ラフタリアとフィーロがいない。おそらく、散歩にでも行っているんだろう。なにかあれば、俺たちを起こすはずだ。
そう考え、俺は朝風呂ができるか確認するために宿屋の店主か従業員がいるであろう受付に向かった。
受付に行くと1人の従業員がいた。
「すまない。朝風呂に入りたいのだか、温泉は開いてるか?」
「はい。開いていますよ。今の時間ならお客様はいないはずです」
「そうか。ありがとう」
俺は受付に礼を行ってから朝風呂に向かった。
俺は脱衣所に入ると他に風呂に入っている人が居ないかを確認した。
いないようだ。
風呂に着くと念の為、周囲に人が居ないかを確認した。
人が居ないことを確認すると、俺はヒカリに変身し、温泉に入った。
え?服はどうしたって?そこは問題なし。
実は変身する際のシステムには服装に関するものがあるのだ。
服を着た状態で変身しますか?
服を脱いだ状態で変身しますか?←
こんなシステム文が出るから選びたい方を選択すればいい。
全裸の状態で変身することなんて風呂に入る時ぐらいしか選ばないので、基本的に、服を着た状態で固定している。
体の状態は、1番新しい状態で共有される。
例えば、人間形態で右手に傷がつけば、ホムラとヒカリも右手に傷がつく。
人間形態で、風呂に入れば風呂に入った状態が共有されるといったところだ。
それなら、ヒカリ形態で風呂に入る必要はないかもしれないが、戦いで使う体なので可能な限り、清潔にしておきたい。
その後、ヒカリ形態で風呂に上がり、その後すぐホムラ形態に変身して、風呂に入り、上がった。
他の客が入ってくることはなかった。
風呂から上がった俺は街を散歩していた。
まだ、早朝だからか人はそんなにいない。
大通りを出ると、ラフタリアとフィーロがこちらに歩いてきている。
しかし、何故かラフタリアとフィーロが土で汚れていて、疲れていた。
しかも、フィーロはなんかデカいイノシシを担いでいる。
「ふ、2人とも一体何があったんだ?」
「実は…」
なんでも、2人は尚文に贈り物をしようと考えて山に向かったそうだ。
ラフタリアはラチウムという鉱石を。フィーロは野生のガガッコの卵を。
2人は、目的のものを見つけることができたが、そこでシルバーレイザーバッグという、イノシシの魔物が現れ、そのイノシシが2人の目的の物を破壊したそうだ。
目的の物を破壊された怒りで、ラフタリアとフィーロは、シルバーレイザーバッグを倒し、再び周辺を探して目的の物を探したが見つけることはできなかったそうだ。
「そんなことがあったのか、散々だったな」
「はい。散々でした」
「うー…卵ー」
俺たちがそんな会話をしていると、
「すいません」
街の住民が話しかけて来た。
「もしやその魔物はシルバーレイザーバッグではありませんか?」
「ええ。そうですけど」
ラフタリアが住民にそう言うと住民の顔が明るくなった。
「お願いします!その魔物を譲っていただけませんか?街の繁栄を願う儀式に使うのですが、まだ用意できていないのです。金銭を支払いますのでどうか!」
住民はそう言いながら頭を下げた。
「どうする?ラフタリア、フィーロ」
「そうですね…」
ラフタリアとフィーロは少し考えたのち、住民にシルバーレイザーバッグを渡した。
渡す時にラフタリアは、シルバーレイザーバッグから素材を剥ぎ取っていいかと、住民に聞いた。住民たちは、問題ないと言ったので素材を剥ぎ取った。
「さて、そのお金はどうするんだ?」
俺は、ラフタリアにそう聞いた。
「このお金は、私とフィーロの2人で手に入れたものです。ですので、アレにします」
「アレ?」
俺はなんのことかわからず首を傾げたが、ラフタリアとフィーロはわかっているようで、頷きあっている。
「これを俺に?」
「はい、私とフィーロで選びました」
「うん!」
「だが、かなり値のはるものだぞ?」
「私たちから、ナオフミ様への普段のお礼です」
「ごしゅじんさまへプレゼントー」
そう、ラフタリアとフィーロが尚文に贈った物はアクセサリー作りの道具だ。
最近アクセサリーの道具がかなり劣化しているから新しいのが必要だと言っていたな。
「そうか」
「ラフタリア、フィーロ、ありがとな。大切に使わせてもらう」
尚文はそう言ってラフタリアとフィーロの頭を撫でた。