俺たちは東の村に向けて移動していた。
何故東の村に向かっているのかというと、温泉街を出て、次の村に着いたときに情報収集を行うと、東の地で疫病が流行しているそうだ。
俺たちは疫病を噂の真相を確かめるために、東を目指して移動した。
移動しながら情報を集めると、徐々に疫病が流行していることが真実だとわかった。
偶然にも立ち寄った村で、件の疫病が流行している村から逃げてきた人と出会えたのだ。
話を聞くと、疫病は本当に流行しているそうだ。
疫病の村は、近くの町や村から特攻薬を注文したが、疫病の根源を断てていないのか追加で特攻薬を注文しているそうだ。
ただ、特攻薬を作るには時間がかかるので、急場を凌ぐために色んなところから治療薬をかき集めているらしい。
特攻薬は今の俺たちでは作ることができないが、治療薬なら作ることができる。
必要な薬が判明すれば後は、その薬を準備して、村に向かうだけだ。
その日の夜。目的地の東の村の近くで俺たちは、夜通しで薬の調合を行った。
薬の準備は十分にできたので、俺たちは布をマスク代わりに口に巻いて、東の村に向かった。
東の村に近づくほど、なぜか空に暗雲が立ち込めている。
この周辺の雰囲気もどんどん暗くなっている。
なにかが起こっているのが、雰囲気だけで伝わってくる。
俺たちは疫病の村に到着した。
…到着はしたんだが。
「マスター。村に着いたよ。でも誰もいない」
俺が尚文に言うと尚文は顔を出した。
「そうか。…ならどこかの家でも叩いてみるか」
尚文はそう言って馬車から降りて、近くの家の扉を叩いた。
少しすると、扉が開き人が出てきた。
「はい?なんでしょうか」
出てきた人の顔色は悪い。
「行商人だ。薬を売りにきた」
尚文は村人に自身が行商人だと告げた。
村人はフィーロを見た瞬間、顔色を変え「先生!」と言いながら走っていった。
俺たちは走った村人を追いかけると、村人は大きな建物に入った。
少しすると、白い防護服のような服を着た男性が建物から出てきて、俺たちに話しかけていた。
白い防護服のような服を着た男性はどうやらこの村の治療院の治療師だそうだ。
「あなた様は、最近噂になっている神鳥の聖人ですか?」
「違う。俺たちは薬を売りに来ただけだ」
「それでも助かります。私の作る分では数が足らないのです」
治療師はそう言いながら、俺たちを治療院の中に入れた。
中は隔離施設のようになっていて、重症の患者が多いようだ。
見ると、女性の人が病人の世話をしている。服装も病人や村人とも違う。おそらく、治療院のスタッフだろう。
「先生こちらの方々は?」
「薬を売ってくださるそうだ」
患者の数は20人以上いる。
かなり咳き込んでいて、顔色も他の村人たちよりもかなり悪い。
「この状況なら俺が飲ませた方が早い」
尚文はそう言って患者に薬を飲ませた。
薬を飲ませた時に尚文の盾が淡く光った。
薬を飲んだ患者が一瞬だけ光り、呼吸が落ち着き、顔色もかなり良くなっている。
「おお」
「ああ!」
治療師とスタッフは感嘆の声を出した。
表情も驚きと喜びが混ざった顔をしている。
「次だ」
尚文はそう言って次の患者に薬を飲ませた。
その後、尚文は他の患者たちに薬を飲ませた。
「3人とも馬車から薬を持ってくれ」
「はい!」
「了解!」
「はーい!」
俺たちは尚文に返事をしてから、馬車に戻り、薬を運んだ。
薬を運ぶ際、建物の裏側に木の棒が突き立てられていた。
棒の前で、老人が泣いている。
病で大切な人を亡くしたんだろう。
嫌な光景を見てしまった。
早く尚文の元に薬を持って行こう。
俺たちは尚文の元に薬を運び、すべての患者に薬を飲ませた。
尚文が薬を飲ませた後、余った薬を治療師に渡した。
「これで足りますか?」
治療師はそう言って尚文に薬の代金を渡した。
「銀貨50枚か。少し足りないが、いいだろう」
「本当に助かりました。これで急場を凌ぐことができました」
「それでいいのか?俺がやったのはあくまで応急処置だ。根本治療じゃない。このままじゃジリ貧だ」
「はい。おっしゃる通りです…」
治療師は悔しそうに尚文の言ったこと賛同する。
そりゃそうだ。疫病を発生させている根源が断てていないのか、疫病は続いている。
いくら特攻薬を使用しても再発する可能性があるしな。
「稼げるから俺は構わないがな。お前たちの金が尽きるのが先か、それとも命が尽きるのが先か」
尚文がそう言うと治療院のスタッフが大きな声で言い返してきた。
「私たちだってこのままではダメだってわかっています!でも…手の打ちようがないんです」
「どういうことですか?」
ラフタリアがスタッフに聞いた。
治療院のスタッフは何が起こっているのかを説明してくれた。
なんでもこの病は魔物の住む山から来ているそうだ。
ことの始まりは、1ヶ月ほど前に剣の勇者がこの村の近くに住む凶悪なドラゴンを退治したことから始まった。
剣の勇者が倒したドラゴンの死骸見物と素材回収のために、多くの冒険者が村にやってきて、村は大いに賑わったそうだ。
ほとんどのゲームでは、ドラゴンの素材は貴重だからな。
この世界でのドラゴンも同じなのかは、知らないが。
だが、ある日1人の冒険者が倒れたそうだ。
治療師曰く、ドラゴンの死骸が腐ってその肉が毒を発したとのことだ。
「原因がわかっているのに何故誰も処分しないのですか?」
ラフタリアが疑問に思い治療師に聞いた。
治療師は、「もともとドラゴンが住んでおり、冒険者でもなければ入れない危険な場所なのです。それに加えてドラゴンの毒の所為か、魔物の生態系まで変化してしまったのです。もう並の冒険者でも近づくことさえ困難な状況になってしまい、それに加えて疫病を警戒して冒険者は村に寄り付かなくなってしまったんです」
治療師はラフタリアの疑問に現状を含めて答えてくれた。
治療師は、このことを既に国に報告したそうだ。
だが、原因を排除するために勇者を呼ぼうにも勇者は忙しく、しばらくは来れないと通達があったそうだ。
代わりに薬が来るとのことだ。
薬が来たとしても、原因のドラゴンが残っているから再発しそうだ。
俺がそう考えていると、尚文が治療師に「国への依頼はキャンセルしておけ」と言った。
「ラフタリア、ホムラ、2人とも出発する準備をしろ。後、フィーロにも伝えろ」
「はい!」
「わかった」
「ま、まさか聖人様が行かれるおつもりですか!?あまりにも危険です!」
「大丈夫ですよ。私たち慣れてますから」
ラフタリアはそう言いながら、俺を見た。
俺は首を縦に振る。
「なんと感謝の言葉を述べれば良いのか」
治療師は勇者がしばらく来ないと知っているからか、感激している。
「感謝はいらない。欲しいのは金だ。銀貨500枚でいい」
「ご、500枚!?高すぎます!」
「危険手当も込みだ。国への依頼料をキャンセルすれば払えるだろ」
「た、確かに国への依頼をキャンセルすれば依頼料は返ってきますが…」
「ならそこから支払え」
尚文はそう言って部屋を出ようと移動する。
「聖人じゃなくてただの守銭奴じゃ」
「コラやめなさい」
スタッフがそう言うと、尚文は扉の前で立ち止まり、
「自分で聖人と名乗った覚えはない」
そう言ってから、部屋を出た。
「さて、出発の準備をするぞ。持っていく物は毒を警戒して、解毒剤と回復薬。それと死骸の除去をするための道具だ。鞄に入るから馬車は置いていくぞ」
尚文がそう言うとフィーロが真っ先に反論した。
「この馬車には一生の思い出が詰まってるの!置いてくなんてやー!」
「一生と言っても、お前生後一ヶ月だろ」
尚文がフィーロに馬車は持っていかないと言うと、フィーロは持っていくと駄々を捏ね始めた。
こうなると面倒なんだよなあ。と俺が思っていると尚文も同じ気持ちだったのだろう。尚文は面倒になって馬車を持って行くことにした。