翌日。
俺とラフタリアは治療院の一室で休んでいた。
俺とラフタリアが尚文の手伝いをしようとすると、「病人は休んでいろ」と言われたので病室で休んでいる。
尚文は、治療師と共に薬を作っているそうだ。薬を作る人が増えたから治療師は「助かります」と言っていた。
この治療院に少なくとも30人近くの人がいるし、その人たち用の薬を作るだけでもかなり大変そうだからな。
それと、薬作成の腕は尚文よりも、治療師の方が上だ。
召喚されて2ヶ月未満の尚文とこの村で何年も治療師をしている人。どっちの方が技術が上かと言われたらな。
ただ、薬を飲ませるのは尚文の係だ。尚文が飲ませると盾の効果で薬の効果が上昇するから、患者がかなり楽になっているそうだ。
後、治療師が「山から吹く風が元に戻りました」と俺たちに言った。
これで、この疫病も落ち着くだろう。
「暇だね。ラフタリア」
「そうですね。こうも休んでいると体が鈍ってきそうです」
俺とラフタリアはそんな会話を続けている。
すると、尚文とフィーロが部屋に入ってきた。
「大丈夫か2人とも」
「ええ問題ありません」
「全然大丈夫。むしろ朝から寝てばかりだから暇になってきたよ。フィーロと一緒に散策してきていい?」
俺がそう言うと、ラフタリアも同意した。
ラフタリアも体が鈍ってしまうことに危機感を抱いているのだろう。
尚文も「少しぐらいなら体を動かすべきか?」と言いながら考えている。
その時、偶然にも治療師が扉の前を通っていくのが見えた。
「治療師さん!」
「はい。どうかしましたか?」
俺は治療師を呼び、少し運動をしてきていいかと聞いた。
治療師は、「呪いによる発熱などはないので大丈夫ですよ」と言った。
治療師から大丈夫だと言われたので、俺とラフタリアはフィーロと一緒に村の周囲を散歩した。
散歩をするために外に出ると、まだ憂鬱な雰囲気があるが初めて村に入った時に比べるとかなり良くなっている。
この調子で村が元に戻るといいな。
それと仕方がないことなのだが、やはり外にいる村人はとても少ない。病が治っている人はまだまだ少ないからな。
散歩が終わり、俺とラフタリアは治療院の一室に戻った。
フィーロは尚文の手伝いに行った。
「案外動けるものだね。ラフタリア」
「そうですね。……もう多少動いても平気ですよね。ホムラさん」
「ん?そうだな」
「なら、やりましょうか。アレを!」
「ああ!アレをやろう!」
そうそれは、
「「筋トレを!」」
「「20、21、22」」
「ラフタリア、ホムラ。水を持ってき---」
「っておい!なにしてるんだお前ら!」
尚文のツッコミが部屋に響く。
「え?筋トレだけど?」
「筋トレだけど?じゃない!病人は大人しくしてろ!」
「だって寝てると体が鈍るから。な、ラフタリア」
「はい。ホムラさんの言う通りです」
俺とラフタリアは自信を持って尚文に言う。
尚文はすっごい呆れた顔をしている。小声で「なんで2人はこんな風になってしまったんだ」と言ってる。
尚文はツッコミむのに疲れたのか「そんなに動いて平気なのか?」と聞いてくる。
「はい。大丈夫ですよ。むしろ動いていないと具合が悪くなりそうなので」
「俺もラフタリアと同じだよ。最低限身体を動かしていないとなんか落ち着かないんだ」
「…それならいいが」
そのまま俺とラフタリアは筋トレを続行しようとしたが、尚文は病人が筋トレをしている光景を見たくないからか、俺とラフタリアに手伝いをして欲しいと言ってきた。
俺とラフタリアは即座に了承した。
やることは、薬の調合の手伝いだそうだ。
なんでも、この治療院以外の家にも患者がいるそうだ。この治療院は疫病の患者の中でも重症の者が優先的に集められているそうだ。
他の家でも重症になりつつある患者用に薬を作るので、薬作成の手伝いをして欲しいと言うのがこの手伝いの詳細だ。
俺とラフタリアとフィーロは尚文と治療師の薬作成の手伝いをした。
やったことは材料や機材の運搬などだ。
他にも治療院のスタッフの元に包帯を運ぶといった手伝いもあった。
俺たちは現状、最後の手伝いの為に治療院の外に出た。
内容は使い終わった道具を外に出して、置いておくといった簡単なものだ。
道具を置き治療院に戻ろうとすると、村人たちが騒いでいるのが見えた。
「なにかあったのでしょうか?」
「…聞いてみるか」
尚文がそう言って村人に聞きに行った。
少しすると尚文は戻ってきた。村人の話をまとめると、どうやらこの村に多数の魔物が近づいてきているそうだ。
村人でも戦える者がいない訳ではないが、このまま戦えば数人は犠牲者が出るかもしれないとのことだ。
村人に魔物の数と戦える村人の数を聞いてみると、魔物が25匹ほどに対して、村側は戦える人は5人しかいないそうだ。
村の方にも冒険者はいるそうだが冒険者は疫病から回復していないという状況だ。
…普通に村側が負けそうな戦力差だ。
「仕方ない。報酬をくれるなら討伐してやる。どうする?」
尚文は村人に聞いた。
村人たちは必ず支払うので討伐してくださいと言って頭を下げた。
「わかった。ラフタリア、ホムラ、フィーロ。準備をしろ」
「はい!」
「わかった」
「りょーかい!」
俺たちは馬車に向かい戦闘の準備をしてから出撃した。
俺たちは出撃してから魔物たちと戦闘を始めた。
魔物はウサピルにヤマアラ。それにカエル系の魔物にドラゴンの死骸にこびりついていた虫と同じやつなどの多種多量な魔物がいる。
ただ、強力な魔物はいないようだ。雑兵の群れといった所か。
数が多いなら範囲攻撃スキルがあるヒカリの方ががいいな。
ホムラでもいいけど、この数だとどこから攻撃が来てもおかしくない。
尚文に頼るのもいいが、流石に尚文でも俺とラフタリアとフィーロの3人と尚文自身を守りながらのは難しいかもしれないし。
「ライトニングバスター!」
俺は力を最大まで貯めたライトニングバスターを放ち、周囲の魔物を5体切り裂いた。
「はあ!」
「とう!」
ラフタリアとフィーロもそれぞれ魔物を倒している。
「----ッ!」
その時、ドラゴンの死骸にこびりついていた虫の魔物がラフタリアに突進を仕掛けてきた。たが、
「フッ!」
尚文が盾で突進を弾いた。
「はあ!」
突進が弾かれた虫の魔物は、ラフタリアに剣で切られた。
そのまま戦闘は続き、村に近づこうとしている魔物を全て討伐した。
「これで全部だな」
「そうですね」
「だな」
「うん」
俺たちは魔物の討伐を完了させた。
「それじゃあ、早速村に戻って村人に討伐したことを報告するぞ」
俺たちは、尚文の指示で村に戻る。
村に戻るために移動していると、尚文が俺とラフタリアとフィーロに話しかけてきた。
「ラフタリア、ホムラ、フィーロ。俺たちは明日から城下町へ向かうぞ」
「城下町に?」
「ああ」
「それはなんで?」
俺が尚文に聞くと、尚文は「2人の呪いを解くためだ」と言った。
「行商の旅はいいんですか?」
「構わない。2人の治療が先だ」
ラフタリアの問いにも尚文は答えた。
ラフタリアは何度か尚文に本当に良いんですか?と聞いた。
尚文は、治療が先だと言ってた。
「ラフタリアお姉ちゃん、ホムちゃん、早く良くなるといいね」
「心配してくれてありがとう。フィーロ」
「ありがとな」
ラフタリアと俺はフィーロの頭を撫でながらそう言った。
「ん?」
フィーロは突然立ち上がり、平原になっているところに視線を向けた。
「フィーロどうした?」
「ごしゅじんさま。あれ」
フィーロはそう言いながら平原の方を指さした。
俺たちが平気に視線を向けると、そこには、青い髪のツインテールの女の子と数匹の野生のフィロリアルがいた。
「女の子だね。あれは村の子か?」
「さあな。ひとまず聞いてみるか」
尚文がそう言いながら女の子の元に向かう。
その途中、
「「「「グア!」」」」
野生のフィロリアルたちが鳴き、
「「「「グアーーー!」」」」
一斉に走り去っていった。
「おいしそうな鳥だね。今追いかければ仕留められるよ。ごしゅじんさま追いかけてきていい?」
「おいしそうってお前」
「…あのなフィーロ。あれはお前の同族だ」
「んー?」
俺が呆れ、尚文が同族だと説明するがフィーロはよくわかっていなさそうだ。
俺たちがそんな会話をしていると青髪の子供が近づいてきた。
「大きい…あなたはフィロリアルさん?」
青髪の子供はそう呟きながらフィーロを見る。
「フィーロのこと?」
「喋れるの!?」
青髪の子供は興奮して大きな声でフィーロに話しかける。
フィーロは大きい声で話しかけられたことで、驚いている。
急にでかい声で話しかけられたら、驚くよな。俺は驚く自信がある。
「あ。干し肉だけど、どう?」
青髪の子供はそういいながらフィーロに向けて干し肉を取り出した。
「ありがとー」
フィーロは礼を言い、青髪の子供に近づいて干し肉を食べた。
青髪の子供はフィーロが干し肉を食べている間にフィーロの羽毛に触る。
フィーロは干し肉を食べることに夢中なのか羽毛を触られても気にしていない。
「あの子は村の子供でしょうか?」
ラフタリアが俺と尚文に聞いてきた。
「村の子供たちを全て見た訳じゃないからなんとも言えないな。ただあの身なりの良さそうな服はおそらく…」
「間違いなく貴族か商人の娘かなにかだろうな」
俺と尚文は予想をラフタリアに話した。
ラフタリアも納得の顔をしている。
俺たちが青髪の子供について考察している間にも、フィーロと青髪の子供の会話は続いている。
「フィーロの名前はフィーロ」
「フィーロちゃんね。私の名前はメルっていうの」
「メル…じゃあメルちゃんだね」
…なんかかなり仲良くなっているな。
「フィーロ。俺たちは村での仕事がまだ残ってる。その間、その子と遊んでていいぞ」
「ほんと!?」
「ああ。ただし、陽が落ちるまでには帰ってくること。いいな?」
「わかったー。行こうメルちゃん」
「うん!」
そう言いながらフィーロとメルは遊び始めた。
「ナオフミ様。フィーロを遊ばせていいんですか?」
「フィーロにも友達がいた方がいいと思ってな。それに、あのメルって子の身なりは良さそうだからな。もし魔物が襲ってきてもフィーロなら問題ないだろ。仮に魔物に襲われても、フィーロが守れば恩も売れるしな」
「…マスターらしいね」
俺がそう言うと尚文は村の方を向いた。
「さっさと村の連中に魔物を討伐したことを伝えるぞ。それと、念のため村の外周部を見て回る。2人ともついてこい」
「はい」
「わかった」
尚文はそう言って村に移動する。俺とラフタリアもついて行く。
俺はフィーロがメルを守れるのか考えた。
もし魔物が襲ってきても、ドラゴンゾンビのような化け物が現れなければ大丈夫だろう。フィーロのステータスはめっちゃ高いし。
魔物の大群とかでも、フィーロの機動力なら逃げ切れるだろうな。
うん。大丈夫だな。
その後、俺たちは村の外周部の見回りをしてから村に戻り魔物の討伐の件を報告した。
討伐の報酬は、既に用意していた様ですぐに渡してくれた。
この報酬は魔物の討伐とドラゴンの死骸除去の2つの報酬をまとめたものだそうだ。
尚文は中身を見て、半分を別の袋に入れて
「この報酬の半分は治療師にやれ」
そう言って金袋を村人に渡した。
村での依頼が終われば、後は治療師の手伝いをした。
やることは、薬の調合と道具の運搬だった。
道具の運搬中にふと、村の方を見るとフィーロとメルが村の子供たちと遊んでいた。
なんか、弟役はどうする?と言った会話が聞こえる。
やっているのは、おそらくおままごとだろう。
話し合いの結果、メルが母親役をやることになったようだ。
俺はなんとなく子供たちを見てるとメルが、「今日の成果を一から順に全て報告してもらえますか」と言ってるのが聞こえた。
普通の家庭では母親がそんなセリフを言うとは思えない。
やはり、メルは商人か貴族の子供なのだろうな。
村の手伝いも終わり、空はオレンジ色になりもうすぐ陽が落ちるのがわかる。フィーロはそろそろ帰ってくるだろうな。
今日はこのまま村に一泊するのが良さそうだな。
「マスター。日も傾いてきたし今日は村に泊まる?」
「そうだな。今日は村で一泊しよう」
尚文の指示で俺たちは村に泊まるのが決定した。
俺たちが部屋で休んでいると、フィーロが帰ってきた。
尚文はラフタリアの包帯を巻いている。
「ただいまー」
「おかえりなさい。フィーロ」
「「おかえり」」
「あのね。フィーロ新しいお友達ができたのー」
帰ってきたフィーロはそう言った。
そういえば、村の子供たちと遊んでいたな。
「そうか。それは良かった」
「うん。それでね、メルちゃんはねフィーロたちと同じようにいろんなところを旅しているんだってー」
「そうなのか」
「でねー。フィーロの知らないことやフィロリアルの伝説とかも教えてもらったんだー」
「そうか」
「でねー、フィロリアルたちと遊んでいたらみんなとはぐれちゃったんだって」
「そうか」
尚文はフィーロの話に適当に相槌を打っている。
これ、フィーロの話を聞いてないな。
「あの〜ナオフミ様?フィーロの話聞いてます?」
ラフタリアが俺と同じことを思ったのか尚文に聞いた。
「ん?」
尚文はラフタリアの言葉に反応して、考えはじめた。
おそらく、フィーロが言ってた話を思い出しているんだろうな。
「夜分遅くに申し訳ありません」
その声が聞こえ、俺とラフタリアと尚文が声のした方を向いた。
見ると、メルが部屋に入っている。
「その…どうか少しの間だけご一緒させていただけないでしょうか?」
「ちょっと待て。一体どう言うことだ?」
メルの話によると、メルは王都に向かっていたのだが道中で野生のフィロリアルを発見して、フィロリアルたちと遊んでいたらしい。そして、遊ぶことに夢中になってしまい気がついたら護衛の人たちとはぐれてしまったそうだ。
その後、偶然にも俺たちと遭遇したというのがメルのここまでの出来事なのだとか。
「護衛がいるということはお前は貴族の娘か?」
尚文が聞くと、メルは少しだけ目を逸らしたがすぐに頷いた。
「はい。私は貴族の娘という認識で問題ありません。それと、フィーロちゃんから聞いたのですが聖人様は明日王都に向かわれるとのこと。どうかそこまで一緒させていただけませんか?」
メルはそう言いながら礼儀良く尚文にお願いしている。
尚文は腕を組み考えている。
「ごしゅじんさま。フィーロからもお願い」
フィーロはメルを送るか考えいる尚文の袖を掴んでそう言った。
初めてできた友達だから願いを叶えてあげたいんだろうな。
「ナオフミ様。困ってる人を見過ごすのは訳にはいきません。私からもお願いします」
ラフタリアもメルを送るようにお願いしている。
「マスター。俺からも頼む。こんな小さい子を置いて行くのは流石に…ね」
俺も尚文にお願いする。
「わかった。ただし、礼金を請求する。それでもいいか?」
「はい!父上に頼んでみます!」
メルは元気良く答えた。
「やったねメルちゃん」
「うん」
フィーロはメルと一緒に王都まで行けるのが嬉しいようで、メルに抱きついている。
メルもフィーロに抱きついた。
こうして、城下町までの旅路にメルが加入した。