翌朝。
俺たちは城下町への出発の準備を完了させた。
村の出口に向かうと大勢の村人たちが見送りにやってきた。
「聖人様。この度は本当にありがとうございました」
「「「ありがとうございました!」」」
治療師に始まり、村長や村人たちが頭を下げている。
「ああ」
「もし何かあれば、また来てください」
「わかった。じゃあな」
尚文はぶっきらぼうに言ってフィーロに出発の指示を出した。
「昨日はあまり時間がなくて自己紹介ができませんでしたね。私はラフタリアです。少しの間ですがよろしくお願いします」
「俺はホムラだ。短い間だがよろしくな。メル」
「はい。よろしくお願いします。ラフタリアさん、ホムラさん」
馬車の中で俺とラフタリアは改めて自己紹介をした。
昨日メルが会話していたのは、フィーロと尚文の2人がメインで俺とラフタリアはメルとほとんど話してないからな。
「メル。俺たちはラフタリアとホムラの治療を優先するから何度か休憩を挟むぞ」
「ラフタリアさんとホムラさんに何かあったのですか?」
「あの村の山に住む凶悪な魔物との戦いで呪いを受けてしまったんだ」
俺はメルに何があったのかを話した。
ちなみに今フィーロの御者をしているのは尚文だ。
尚文は、俺とラフタリアにメルと話す時間を設けてくれた。
王都まで一緒に行動するので仲良くしておいた方がいいという考えだそうだ。
「そうだったのですね」
「ええ、ですから強力な聖水を入手するためにメルロマルクで1番大きな教会に行くんです」
「王都の教会に行くほどの強力な呪いなのですね」
ラフタリアはメルに王都に行く理由を話した。
メルは王都に行かなければ解けない呪いを受けている俺とラフタリアを心配そうに見ている。
「まあすぐに、くたばるほどのものでもないから安心して。メル」
俺はメルにそう言うが、メルの心配そうな目は変わらない。
「俺たちが城下町に向かっているはそう言うことだ」
尚文が馬車の中にいるメルに話しかけた。
「俺たちは少しでも早く城下町に行って2人の呪いを解かなければならない。わかったか?」
「はい。わかりました」
「ならいい。フィーロ!少しでも早く城下町に着くために走れ!」
「りょーかい!」
尚文がフィーロに指示を出し、フィーロが了承すると、
「わ!」
「ちょ!」
「うう」
メル、俺、ラフタリアの順で声をだした。
それは、フィーロが走り出してかなりの速度で馬車が動き始めたからだ。
ちょっとまずいかも。こんなスピード出したらメルが乗り物酔いを起こすのでは?と思い俺はメルを見た。
そんなメルはというと、
「あははははははは、フィーロちゃんはやーい!」
めっちゃ興奮してた。
大丈夫そうだな。
その数分後。
「クエ?クエエエエエエーーー!」
フィーロが奇声を上げてより早く走り出した!?
「どうしたんですかフィーロ!」
「なんだなんだ!?」
俺とラフタリアはフィーロの突然走り出したことに驚いき、
「なになになに!?」
メルは何が起こっているのかわからずパニックを起こしている。
「お、おいどうしたんだフィーロ!」
尚文は急に走り出したフィーロに話しかけた。が、フィーロは奇声を発したままだ。
そのまま街道を曲がると、
「ギャアアアアアアアア!!!」
フィーロは何かを蹴り飛ばした。
「「「ーーヤス様!!!」」」
後ろからそんな声が聞こえた。
俺は咄嗟に後ろを振り向くと、城で見たことのある赤い髪の女と複数の女性の服を着た人たちが悲鳴をあげている。
メルも俺と同じく後ろを振り向いていた。
……もしかして、今フィーロが蹴り飛ばしたのって……。
…考えないようにしよう。
「今のって、まさか…」
メルが何か言ってるが、俺にはよく聞き取れなかった。
数分後、フィーロが落ち着いたのか速度を落とした。
「フィーロ!なんで急に走ったんだ!」
尚文がフィーロに怒っている。そりゃそうだ。急に奇声を上げながら走ったんだから。
「進んだところに槍の人がいるのがわかったから全力で蹴ったのー」
フィーロはなんでもない様に言った。
「なあ?フィーロ。槍の人って誰?」
俺は気になって、フィーロに聞いた。
「前にドラゴンとレースした時にドラゴンに乗ってた人ー」
「そ、それって…」
ラフタリアはフィーロが蹴り飛ばした人の予想がついたのか青い顔をしている。
俺もラフタリアと同じ人が頭の中に浮かんだ。
「???」
メルはよくわからないのか首を傾げている。
俺はなんとなく尚文に目を向けた。
「あーはっはっはっ!よくやった!偉いぞフィーロ!」
尚文はフィーロのことを褒めている。
フィーロは尚文に褒められたて、すごく満足そうな顔をしている。
「ナオフミ様!なんで褒めるのですか!明らかに悪いことですよ!」
「そうだよマスター!流石に今のを褒めるのはないと思うよ」
ラフタリアと俺は、流石に勇者を蹴り飛ばして逃げるのはダメだと尚文に言う。
「何言ってるんだ。どうせ何をやっても悪として扱われるなら、あいつには堂々と嫌がらせをしてやってもいいだろ」
尚文は開き直っているのか、堂々とやればいいとか言ってる。
その後も俺たちの問答は続いたが、尚文は一歩も引かなかった。
俺とラフタリアは諦めた。
それと、尚文はフィーロへのご褒美をあげることにした。
フィーロは尚文の手作りの料理を希望した。
尚文はフィーロの希望を聞き、今日の晩御飯を豪華にすると約束した。
フィーロの馬車に乗って街道を進んでいると、何度か魔物と遭遇した。
だが、魔物が飛び出してきた瞬間フィーロに蹴り飛ばされて魔物は倒れた。
倒した魔物は解体した後、馬車に乗せる。
武器の素材や買取商に買い取ってもらうためだ。
「今日はこの辺りで野宿をするぞ」
「はい」
「わかった」
「りょーかい」
「わかりました」
俺たちは街道のすぐ横の川がある場所で野宿をすることにした。
空は既にオレンジ色になっている。
フィーロが走ってくれたおかげで城下町にかなり近づいた。
明日には城下町に着くだろうな。
俺はそんなことを考えながら準備を始めた。
俺と尚文は野営の準備を、ラフタリアとフィーロとメルは川で魚を取りに行った。
しばらくすると、3人が戻ってきた。
大物1匹に、普通サイズの魚が5匹だ。
尚文はフィーロとの約束通り、すべて尚文の手作りだ。
尚文以外のメンバーは皿に盛ったり、火の番をしたり、尚文の手伝いをした。
「完成だ。みんな出来たぞ」
尚文が全員を呼びみんなが焚き火の周りに集まった。
メニューは魔物の肉の串焼き、魚を香辛料で焼いたもの、後は保存食を尚文が加工したものの他にもいろいろな料理がある。
普段よりも豪華だな。
「ごしゅじんさまの料理おいしーい」
「ほんとう!すごいわ!こんなに美味しい料理初めて!」
フィーロとメルは尚文の料理をおいしそうに食べている。
尚文は、「そんなにうまいか?」とか言ってる。
店を出したら常連になるレベルだぞ。尚文の料理は。
俺たちは普段よりも豪華な食事を食べ、就寝の準備をした。
夜の見張りは交代制だ。
尚文、ラフタリア、俺、フィーロの4人の中で誰か2人で夜の見張りをしている。
1人だと寝そうになるからな。
フィーロは見張りになっても寝てる時があるが魔物が近づいたり、何かが起きれば、すぐに目を覚ますので案外問題がなかったりする。
「それじゃあ、俺は寝るよ。何かあったら起こして」
「わかった。おやすみ」
「おやすみなさい」
俺は尚文とラフタリアに寝ることを伝えてから眠った。
尚文は魔法書を読んで新しい魔法を覚えられるかやってみるそうだ。
フィーロは人型になって、メルと一緒に寝ている。
「おい、ホムラ起きろ」
「ん?」
俺は尚文に起こされた。尚文のすぐ横にはラフタリアがいる。
「何かあった?」
尚文は何も答えずにフィーロを指差した。
俺はフィーロを見た。
「フィーロが寝てるだけじゃないか」
「よく見ろ」
俺は尚文に言われて、フィーロを観察する。
……あれ?なんでフィーロはフィロリアル・クイーンの姿なんだ?
それに、メルがいない?確か人型のフィーロと一緒に寝ていたはず。
そう思ってフィーロの周りを見るとメルの服があった。
俺は、血の気が引いていくのがわかった。
「な、尚文。この服ってメルの…」
「ああ」
俺は更に血の気が引いていく感覚に襲われてた。
「ラフタリア、ホムラ」
「はい」
「なに」
俺とラフタリアは震える声で尚文に返事をした。
「何も見なかったことにして証拠隠滅しないか?」
「な、なにを言ってるんですか!」
「そうだよマスター!」
「じゃあフィーロが貴族の娘を食ったと自供しに行くのか?」
俺たちがフィーロの前でそんな問答をしていると、
「ん?どうしたのー?」
フィーロが目を覚ました。
「フィーロ。メルさんは?」
「メルちゃん?メルちゃんならフィーロの羽の中で寝てるよ」
「羽の中?」
ラフタリアがフィーロに聞くと、フィーロは体を動かして「メルちゃん起きて」と言ってる。
すると、
「んー?どうしたの?」
メルが寝ぼけながら顔だけをフィーロの中から出した。
「なんでフィーロの羽の中に?」
尚文はメルが生きてることに安心している。
俺とラフタリアも同じ気持ちだ。
尚文はメルになんでフィーロの羽の中にいる中を聞き始めた。
「フィーロちゃんの羽の中とっても暖かいの」
「…服を脱いだのは?」
「暑いから」
服を脱いだ理由はそういうことか。
「なあ、一体どうやって羽の奥まで入ったんだ?」
俺は気になってメルに聞いた。
「フィーロちゃんの羽毛ってすごくふかふかで分厚いの」
メルはそう言いながらフィーロの羽毛の中に入っていった。
俺は試しにフィーロの羽毛に手を入れた。
肩まで腕を入れるとなんか地肌っぽい物に当たった。
「マスター。フィーロの羽毛の中に手を入れてみたけど、俺の肩まで入れてなんとか地肌っぽい物に当たったよ」
「…こいつの構造はどうなっているんだ?」
「ですねぇ…」
俺たちはそんな会話をした後、俺は眠った。
その後、交代の時間になり俺は夜の見張りをした。
翌朝。
俺たちは城下町に到着した。