盾の勇者と天の聖杯   作:三途豆

26 / 27
メルの正体と志願兵

「で、なんでウチなんだ?アンちゃん」

俺たちはメル、いや違うな。メルティ=メルロマルクと街中で戦闘を始めた槍の勇者から尚文を庇ってくれた兵士を連れて、武器屋に来ている。

「いろいろあった。ここで会議させてくれ」

「なんもわからねぇよ。アンちゃん」

「すみません親父さん。私たちが話し合いをできる場所はここぐらいしかなく…」

「他の場所となると、魔物商のテントぐらいだ」

「魔物商のテントって…。そこならウチに来る方がマシだな」

親父は尚文の会議の場所の候補先を聞いて渋々了承した。

 

「では、改めまして。私は王位継承第一位、第二王女のメルティ=メルロマルクと申します」

 

「ええ!?」

武器屋の親父はめっちゃ驚いている。そりゃそうか。店に来た女の子がこの国の第二王女な訳だし。

 

ん?第二王女なのに、王位継承一位?

尚文も俺と同じことを思ったようで、メルティに聞いている。

「はい。姉上はあの性格のため、色々なところで問題を起こしているので、私の方が王位継承権が高いのです」

俺はメルティの言ったことをすぐに理解した。

そういえば、ビッチのやつ何度か問題を起こしていたな。

俺が実際に見た範囲では、俺とラフタリアを尚文の奴隷だと言って槍の勇者に決闘させる(当時の俺は奴隷ではなく、尚文の仲間だった)、リユート村の通行税を入るだけで銀貨50枚、村を出るのに銀貨50枚なんて法外な税をかけようとする、それと、さっきの街中で決闘を許可させる。

わかってる範囲でも、かなりの問題を起こしてるな。

尚文もビッチの起こした問題を思い出したようで、「だろうな」と言ってる。

尚文はフィーロを呼んだ。

「フィーロ。もうこの子とは遊んではいけません」

「えっ」

「ええ〜?」

尚文の言葉を聞いて、メルティとフィーロが声を出した。

「ナオフミ様。そんなお父さんみたいな言い方で、そこまで酷いことを言わなくても…」

「そうだよマスター。メルもあの姉ほどのクズではないと思うよ?」

「そうですよナオフミ様」

ラフタリアは俺に続いて尚文を説得するが、

「ダメだ。メルティ、俺はお前を信用できない」

尚文は引かなかった。

「最初からおかしかったんだ。あんなところにお前が1人でいる訳がない。そうか!目的はフィーロか!お前も俺から奪うために俺たちに近づいたんだな!」

「それは誤解です!私は」

「とんだ茶番を仕掛けてくれたな!俺はもう騙されないぞ!」

「ですから誤解だと言っているではないですか!私の話を聞いてください!」

「どうだか。お前の父親と姉は俺の話をカケラも聞かなかったぞ。お前には悪いがあいつらの血縁者というだけで信用できない。さぁ、帰った帰った!」

尚文がそう言い、メルが何かを言おうとした瞬間、武器屋の扉が開いた。

見ると騎士たちが武器屋に入ってきた。

「メルティ様、こちらにおられましたか。王がお呼びです。ご同行を」

「…わかりました」

メルはとても残念そうな顔をしながら、尚文を見た。尚文は目を瞑っている。

「じゃあねフィーロちゃん」

メルティはフィーロに、別れの挨拶をして騎士の元に走って行った。

フィーロがメルの元に行こうすると、尚文がフィーロを呼び止めた。

 

「ナオフミ様。少しはメルさんの話を聞いても良かったのではないですか?」

「そうだぜ、アンちゃん」

「俺もそう思うよ。マスター」

「悪いが王族ってだけで無理だ」

俺たちがそんな会話をしていると兵士が話しかけてきた。

「あの、盾の勇者様…」

「お前まだいたのか?さっさと帰れよ」

尚文は兵士に帰れと言うが、

「いいえ!話を聞いてもらえるまで帰りません!」

兵士は強い目でそう言った。

これは話を聞いてもらうまで帰らないな。

この兵士、さっきの槍の勇者と尚文の決闘の時に尚文を庇ってくれたんだよな。なら、恩を返さないといけないよな。

俺はそう思い、助け船を出した。

「マスター。さっきの槍の勇者との闘いの時に庇ってくれたんだから話だけでも聞いてあげたら?」

俺が尚文に言うと、尚文は少し考えてから口を開いた。

「わかった。話だけは聞いてやる。言ってみろ」

尚文が兵士にそう言うと兵士は嬉しそうな表情をしてから、話を始めた。

「実は…波の間だけでも一緒に戦わせていただけないでしょうか!」

「はあ?」

「前回の波で僕たちは盾の勇者様の戦いに感銘を受けました。そして、盾の勇者様がリユート村の住民たちが避難している間、波から出てくる魔物に対処してくれたおかけで、リユート村の人間は数人の死者が出る程度まで抑えてくれました。…それに、僕はリユート村の出身で、僕の両親が無事に避難して生きて残ることができたのも盾の勇者様のお陰です。ですので、その恩返しをしたいのです!」

ちなみに、前回の波(俺や四聖勇者がいない時に発生した波)の死者は数百人を超えていたそうだ。

「そうなのか?」

「はい!それに、僕以外にもリユート村出身の者が何名かおり、その者たちも盾の勇者様と共に戦いたいのです」

「盾の勇者である俺を手伝いたいねぇ。…騎士団からの風当たりは厳しいんじゃないのか?」

「はい、厳しいのは事実です。ですが、僕はそれでも盾の勇者様が民を守ってくれたように僕も…僕以外のリユート村出身の者たちも、民を守りたいのです」

「それで俺を捜していたと?」

「はい。町の見回りの時に盾の勇者様を見つけた者がいたらこの話をしようとみんなで決めていました。それに私たちの目的は波と戦うことではありますが、それ以上に民を守る方が優先です」

すごい立派な考えだな。前回の波で俺たちに炎の雨を降らせてきた騎士団の連中とは大違いだ。

俺がそんなことを考えている間も尚文と兵士の話し合いは続いている。

「わかった。いくつか質問させてくれ」

「なんでしょうか?」

「志願者はお前を含めて何人いる?」

「志願者は僕を含めて5人です。兵士が僕を含めて3人、魔法使いが2人です」

「次の質問だ。5人の平均レベルはどれくらいだ?」

「23レベルです」

「そうか」

尚文はそう言うとポケットからアクセサリーを取り出した。

「このアクセサリーがここに1つ、馬車に4つの計5つがある。これを1つ銀貨150枚で売る。それを5つ買うのなら考えてやる」

「「「えー!?」」」

ラフタリア、俺、親父が驚きの声を出した。

なぜなら、尚文が兵士に買えと言ったアクセサリーは銀貨150枚ほどの価値はない。

銀貨25枚程度の品だ。それを6倍の値段で売るなんて詐欺の次元だ。

しかも、効果だってステータスがちょっと上がる程度の代物だ。

フィーロはよくわからないのか首を傾げている。

「ごしゅじんさま。それ行商の時の売れ残」

「黙れ鳥」

尚文はフィーロの言ったことを最後まで聞かず黙らせた。

フィーロは「ぶー」と言ってる。

兵士は値段を聞いて狼狽えていたが、すぐに覚悟を決めて、

「わかりました。すぐに用意してきます」

と言って、武器屋を出て行った。

 

「アンちゃん。流石にそのアクセサリーを銀貨150枚で売るのはどうかしてると思うぜ」

「違う。俺はあいつを試したんだ。あいつが金を持って来なければその程度の覚悟ということだ。それに、覚悟はあっても、力及ばす死ぬなんてことは絶対に避けなければならないからな。次の波の魔物がどれくらいの強さなのかわからない以上、弱いやつを連れて行くのは危険だ。それでもついてきたいと言うのなら俺が請求した金で強い装備を買えばいい。それだけだ」

と尚文は親父に言った。

尚文。やり方は酷いけどかなり考えてたんだな。俺は全然気づかなかったよ。

親父は「手段は酷いけど、やっぱり盾のアンちゃんは勇者ってことか」と言ってた。

 

「さて親父。遅くなったが武器や防具を売ってくれ」

「あいよ。誰の装備からだ?」

「ラフタリアの装備から頼む」

尚文はラフタリアの装備から購入するようだ。

「あいよ。嬢ちゃんの武器なら魔法上級銀の剣とかが妥当なラインだな。値段は金貨10枚だ。ブラッドクリーンコーティング加工はしてあるぜ。

そして、防具なら魔法防御加工がされた魔法銀の鎧とかだな。これも金貨10枚だ」

「「魔法防御加工?」」

知らない単語が出てきて、俺と尚文が疑問の声を出した。

「魔法防御加工ってのは、装着者の魔力を吸収して防御力を上乗せさせる加工だ」

そんな加工があるのか、流石異世界だな。

俺の知らない加工がこの世界にはまだまだあるんだろうな。

「ラフタリアには、もっといい装備でも問題ないと思うんだが…」

「あのなアンちゃん。自身に合わない装備品じゃ無理が出るんだ」

「そうなのか?」

「そうだ。後、今ウチにある防具だとこの辺りが限界なんだ」

今ラフタリアに合う装備は、それしか在庫がないのね。

「ここから先はオーダーメイドになるな。それにオーダーメイドにすると、作るのに時間が必要になるからな。後、素材関連だな。魔物の素材は足りてるんだが、主に鉱石類が不足してる」

親父は続けてそう言った。

「わかった。ひとまずその魔法上級銀の剣と魔法銀の鎧を売ってくれ」

「あいよ!」

親父はそう言って、魔法上級銀の剣と魔法銀の鎧を持ってきた。

 

「次は誰の装備を買うんだ?」

親父が尚文に聞いた。

「次はホムラの装備を頼む」

尚文は親父にそう言った。

「それじゃあ、変身のアンちゃんはどんな装備が良いんだ?」

親父が俺に聞いてきた。

正直に言うと、戦闘では、ホムラとヒカリをメインで使ってるから、人間形態で戦うことって少ないんだよなぁ。しかも武器だって、今の剣でも問題はない。

 

それに、ホムラの剣とヒカリの剣を出すことができるから、既に剣を2つ持ってる状態だ。おまけに、ホムラの剣とヒカリの剣は今の剣よりも性能が良い。

だから、武器方面は強くしなくても良い気がする。

 

そのことを親父に伝えると。

「となると、武器はそこまで必要ないのか」

「そうだね」

「わかった。じゃあ防具の方を優先するか。今ウチにあるのだと嬢ちゃんに渡した魔法銀の鎧のワンランク下の魔法鉄の鎧になるな。嬢ちゃんの鎧と同じ、魔法防御加工をしてあるぜ」

たぶん、ラフタリアの魔法銀の鎧が最後の一品なのだろうな。

それに、親父が紹介してくれる防具なら信頼できる。

「親父の紹介だし、その魔法鉄の鎧にするよ」

俺がそう言うと親父は魔法鉄の鎧を持ってきてくれた。

値段は金貨8枚。

見た目は冒険者の鎧バージョン2って感じだ。

 

「最後は盾のアンちゃんだな。鎧はどうする?」

「どうって?」

「その蛮族の鎧を売って新しいオーダーメイドの鎧を作るか、新しい素材をつけて、蛮族の鎧を強化するかだな」

「新しい鎧の性能ってどんなものなんだ?」

「今の蛮族の鎧とトントンだな」

「そうか」

「なにか新しい素材とかはあるのか?」

「行商の途中で腐竜を討伐したからその素材があるな。腐竜の皮とか腐竜の核とか」

「またすごい物をもってるなアンちゃん。その腐竜の素材を使えば新しいオーダーメイドの鎧よりも、蛮族の鎧の方が強くなるように強化できるぞ」

「なら、蛮族の鎧を強化する方で頼む」

尚文がそう言うと親父は、加工代として金貨5枚を請求した。

「後は蛮族の鎧を改良するから、鎧はちゃんと置いていけよ」

「わかった」

尚文はそう言い、更衣室に入り蛮族の鎧を脱ぎ、蛮族の鎧を親父に渡した。

「そうだな…大体3日もあれば鎧は完成しているからその辺りにウチに来てくれ」

「わかった」

 

「そういえば親父」

「なんだ?」

「クラスアップってなにか知らないか?」

尚文は、武器屋の親父にクラスアップについて聞いた。

そういえば、前に盗賊に襲われた時にクラスアップをした冒険者がいたな。

「ああ、クラスアップってのは、成長限界突破のことだ。基本的に人間も亜人も獣人もレベル40になるとレベルの横に星マークがついて、それ以上レベルが上がらなくなるんだ。それを解決するのがクラスアップだ」

なん…だと…!つまりレベル40からは経験値が入らずレベルが40から上がらないのか?

それは、まずい。いくら資質の向上でレベルを下げ、ステータスを上げることができても、資質の向上にも限界がある。

俺がそんなことを考えている間も親父の話は続いている。

「本来クラスアップができるのは、国の騎士や魔法使いとか、あとは国から信用されている冒険者とかだな。誰でもクラスアップさせると犯罪者とか紛れ込む可能性があるし、犯罪を犯すようなやつをクラスアップさせて何か暴れたりして被害を出すと、そいつを止めるためにクラスアップをした人員を当てる必要があるから、誰でもクラスアップできるわけじゃないんだ」

なるほど、国もクラスアップをさせる人材を考えてるんだな。

そういえば、あの時の盗賊たちはそこまで強くなかったのもクラスアップが原因か。最高レベルが40だからそれ以上のレベル、俺たちはすでに資質の向上でレベル50ぐらいには強いからそこまで苦戦しなかったと。

「ちなみに、どこでクラスアップができるんだ?」

「盾のアンちゃんは一度行ってなかったか?龍刻の砂時計でできるぞ」

 

親父がクラスアップができる場所を教えてくれた直後、武器屋の扉が開いた。

見ると、先ほどの兵士以外にも2人の兵士と2人の魔法使いの計5人が武器屋に入ってきた。

よく見ると魔法使いの1人は亜人だ。

「みんなでカンパして持ってきました」

「早かったな」

「騎士団の詰め所で集まるでしたので、お金はみんなで何かあったときに備えてお金を貯めていたので。それに、寮も回ってみんなで集めました」

兵士はそう言ってから、尚文に金袋を渡した。

「これでどうですか?」

尚文は金袋の中身を確認し、

「ラフタリア、馬車からこのアクセサリーを四つ持ってきてくれ」

尚文はラフタリアにさっき兵士に見せたアクセサリーを持ってくるように指示を出した。

 

ラフタリアは尚文が見せたアクセサリーを見て、笑顔になり、

「はい!」

と元気良く返事をして馬車に向かって走っていった。

 

尚文は金袋を兵士に返した。

兵士は困惑している。

「請求はしたが、貰うとは言ってない」

尚文はそう言いながら空中に指を当て、何かを動かした。

少しすると、兵士に何かが来たのか声を出した。

「これは…」

「わからないのか?」

「いえ」

「ひとまず、お前を代表にする。いいな?」

「はい!」

おそらくだが、尚文がやろうとしているのって、パーティ機能の『編隊』のことだよな。

編隊というのは、簡単に言うと波などの大きな戦闘や大勢で敵を倒す際のサブパーティみたいなものだ。

この編隊機能を使えば、分隊に入った人たちを波に連れていくことができるようになる。

 

そう思っていると、俺たちのパーティメンバーの画面の下に新しく5人が追加された。

隊長名がエイクと表示されている。

これからは、あの兵士をエイクと呼ぶことにしよう。

 

「お待たせしました」

そんなことを考えていると、ラフタリアが馬車から先ほどエイクに見せたアクセサリーを4つ持ってきた。

尚文はラフタリアからアクセサリーを受け取り、5人全員に渡した。

「ひとまずお前たちを信じてやる。ただし、俺をただ利用したり、不埒なことをしようとすれば、すぐにお前たちをパーティから外して解散させる。いいな?」

「はい!わかりました!」

「波が起こる3日前には城下町に戻るから、その時はこの武器屋に集合する。それでいいな?」

「わかりました!」

「じゃあ波の3日前まで解散」

尚文がそう言うと、エイクたちは武器屋を出て行った。

 

その後、俺たちは前に返り討ちにした盗賊たちの武装を親父に売り、行商の続きをするために、城下町を出た。




魔法鉄の鎧はオリジナルです。
個人的には、鉄の鎧<銀の鎧<魔法鉄の鎧<魔法銀の鎧 
のイメージです。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。