城下町を出た俺たちは、南西方面の村に向かい食料を購入した。
この南西方面の食料事情はかなりいいらしく、食料が安い。
なんで食料を購入しているかと言うと、国の北の方で飢饉があったそうなので、食料を高く売れると尚文が考えたからだ。
ちなみに、食料を買った村はバイオプラントの騒動があった隣の村だ。
村で食料を買っていると、偶然にもバイオプラントの騒動のあった村の人がこの隣の村に食料を売りに来ており、食料を安く売ってくれた。
そして、北の方に行く途中の町で宿を取るために町の門番に商業通行手形を渡したのだが、
「商業通行手形だと?そんな物は知らん!町に入りたければ通行税を払えれ!」
と門番は言い続けている。
俺とラフタリア、次に尚文が馬車から出て門番に交渉するが、門番は一歩も引かなかった。
「これは何かあるな」
尚文は俺たちに小声で言い、通行税を払った。
おそらくだが、領主に「町に入るやつにはなんとしてでも通行税を取れ!そうしなければお前の命はないと思え!」とか言われているのだろうな。
そんな状況なのに逃げないとなると、家族を人質にされていたりするのだろうか?
尚文が金を門番に払い門番の横を通りすぎる際に、「お前も大変だな」と言うと、門番は「すまない」と小声で謝罪した。
町に入り、色んな店の商品を見たがすべて割高になっている。
武器、日用品、薬類など町の全ての物の値段が高い。
何もかも値段が高いせいで市場には活気が全くない。
宿代なんて銀貨3枚だ。
しかも食事なし。
リユート村の宿代なんて夕食と朝食付きで銀貨1枚だぞ。しかも徒歩1時間前後で王都に着くほどの距離で街道も結構安全というおまけつきだ。
この町なんて、王都まで数日掛かる距離で、街道にも王都周辺の街道よりも強い魔物が出現するからな。
部屋に入ってから教会で買った聖水を包帯に染み込ませる。
尚文はラフタリアに包帯を巻いている。
なんで尚文がラフタリアに包帯を巻いているのかというと、尚文が包帯を巻くと怪我の治る速度が早くなる。
前に、怪我をして尚文に薬を塗ってもらうと完治するまでの時間が早くなったことがあった。
なので尚文に包帯を巻いてもらうために俺は包帯を巻いてもらう準備をする。
ちなみに、フィーロは寝てる。
俺が準備をしている間に尚文がラフタリアに話始めた。
「波まで後10日。それまでに呪いが解けるといいな」
「はい」
「次の波がどこで起きるかわからない以上俺たちは何があっても対処できるようにしておかなければならない。明日から集合の日までに村や町を可能な限り回って、波が起こった際の作戦を考えておこう」
「はい」
「後何が起こるかわからないから、薬類や回復アイテムも大量に用意しておかないといけない」
尚文がラフタリアに言っていると、ラフタリアは顔を俯かせた。
「尚文様は全ての波が終われば、元の世界に帰ってしまうんですよね」
ラフタリアは寂しそうに言った。
尚文は何も言わない。
「私も連れて行っていただけないでしょうか?…ナオフミ様。私は」
その時、寝ていたフィーロが目を覚ましてラフタリアの話に割り込んできた。
「あー、お姉ちゃんがごしゅじんさまとイチャイチャしてるー。ずるい!」
「イチャイチャしてません!」
「してた。ちゅーしようとしてた!」
「してません!」
「してた!フィーロ見てたもん」
…フィーロ。お前起きてたのかよ。
「あー!もう!うるさい!お前ら騒ぐな」
尚文はそう言いラフタリアとフィーロを注意した。
尚文は俺に、ラフタリアと同じように聖水を染み込ませた包帯を巻く。
そこそこ痛いが、呪いが弱まっていくのがわかる。
実際、包帯が巻かれると呪いのある部分から黒い煙が出る。
その後はラフタリアとフィーロが騒ぐこともなく無事包帯が巻かれた。
俺にほ尚文はどこの村で食料を売れるか調べるために、部屋を出て情報収集に向かった。
フィーロが尚文にお土産をお願いしたがこの割高だらけの町だと無理だろうな。
尚文が情報収集を行っている間に、俺とラフタリアは魔法書を読んで新しい魔法の習得に挑戦する。
結果としては、新しい魔法を一つ覚えることができた。
名前はアースガード。効果は指定した対象に、土耐性を付与し、物理防御力と魔法防御力を上昇させる魔法だ。
しばらくすると、尚文が戻ってきた。
食料が売れそうな村が判明して、明日はその村に行くことが決まった。
それと、どうやらこの町の酒場に弓の勇者がいたそうだ。
弓の勇者は尚文には気づかなかったそうだ。
なんでも、夜にこの税が高い町の領主を懲らしめに行くという話をしていたので、今夜に領主の屋敷に乗り込むのではないかと尚文は言っていた。
尚文は「遭遇したら面倒そうだ」と言って俺たちに、明日朝になったらすぐに町を出ることを伝えてから眠った。
フィーロはお土産がないことに気付き尚文に文句を言っていたが、尚文は無視してた。
翌日の朝。
俺たちが出発準備をしていると、近くを冒険者がなんか話をしていた。
内容は、弓を持った冒険者がこの町の領主を視察し、領主が失脚したという話だ。
この話を聞いた尚文は「予想通りだな」と言ってた。
出発の準備中になにか町が騒がしくなっていくのがわかり、外に出ると弓の勇者一行がいた。
緑髪の女の子が弓の勇者にお礼を言ってる。
そのお礼を聞き、弓の勇者は、
「いえいえ、気にしないでください。それと、このことは秘密ですよ」
と言ってる。
もしかして、弓の勇者の噂を全く聞かないのって、これが原因か。
弓の勇者が『秘密にしてくれ』と言い、弓の勇者に助けられた人たちが、弓の勇者の秘密発言を守っているから噂が広まらず、弓の勇者だけ情報が極端にない、という状況ができたのだろうな。
尚文は、俺と同じようなことを考えているのか、弓の勇者の発言を聞いて「時代劇じゃないんだぞ。馬鹿馬鹿しい」と言ってる。
俺たちは予定通り町を出た。
町を出てから約半日。
目的地の村に到着した。
この村は隣国の国境にかなり近い村のようだ。
食料を売り始めると、飛ぶように食料が売れた。
ただ、この村。メルロマルクでよく見る服装の人が少ない。例えば、頭に布を巻いてる人はメルロマルクではあんまり見かけないが、この村では、頭に布を巻いてる人がかなり多い。
服装もどことなく違う。
服装が違う人たちは、俺たちの馬車に来て、鬼気迫る声で尚文に商談を持ちかけてきた。
「頼む!この薬草とその食料を交換してくれ!」
尚文は、薬草には使い道があるから快く食料を交換している。
波が近いから回復薬の材料となる薬草は必要だ。
波の被害でどれだけの怪我人が出るかわからないから回復薬は少しでも多く数を用意しておいた方がいい。
だが、中には藁の束や紐、炭を交換してほしいと言ってる人たちもいる。
尚文は、「金の方が助かるんだが…」と言うが、藁の束などを持っている人たちは、「すまない、俺たちには金なんてなくて…」と言ってる。
見ると、物々交換をお願いしている人たちはみんな痩せている。
尚文は痩せている人たちを見て、「すこしだけだが、炊き出しをやる。代わりに何があったのか教えろ」と言った。
痩せていた人たちは炊き出しが行われるのを理解して尚文に感謝の言葉を送っている。
炊き出しが行われるのが村の連中にも伝わり、村の人たちまでやってきた。
「仕方ない。誰か大きい鍋を持ってきてくれ!」
尚文が集まった人たちに言うと、村人の1人が「すぐに持ってきます!」と言って走っていった。
少しすると、村人は大きい鍋を持ってきた。
「ラフタリア、ホムラ、フィーロ材料を切ってくれ」
「はい」
「わかった」
「はーい」
俺とラフタリアとフィーロは食材を切って尚文に渡す。
味付けとかの作る担当は尚文だ。
俺たちが調理するよりも、尚文の方がおいしく作れるからな。
メニューはスープ系のようだ。なんでも、あの痩せてる人たちはしばらく飯を食べていないから、胃に優しいスープの方がいい。それに大量に作れるのが理由らしい。
そういえば、俺も何かの動画で、栄養失調の人に大量の食事を与えたら栄養失調の人たちが倒れたという動画を見たことがある。
原因は、栄養失調の人は消化器官の働きが低下しており、そんな状態の人にたくさんの食事を摂らせると、働きが低下している消化器官に強い負担をかかるからと聞いた気がする。
他にも、急激な血糖値スパイクも発生するリスクがあると聞いた気がする。
俺とラフタリアとフィーロで炊き出しで作ったスープを配っている間に尚文は痩せてる人たちに何があったのかを聞いていた。
炊き出しを受け取った人たちは、涙を流し「美味い美味い」と言いながら炊き出しのスープを食べている。
全員分の炊き出しが終わり、鍋が空っぽになったので、俺とラフタリアとフィーロは鍋を洗って村人に返した。
ちょうど尚文が戻ってきて、痩せた人たちに何が起こったのかを俺たちに話してくれた。
なんでも、痩せた人たちはメルロマルクの隣国の人たちであり、最近豊かになっているメルロマルクに食料の買い出し来ているそうだ。
なんで、買い出しのためにこのメルロマルクまで来たのかというと、隣国の王は悪政を敷き民から税をとりまくっており、民はどんどん疲弊していき、民の怒りは溜まるばかり。
そうして、国から派遣された冒険者とレジスタンスが合流し、悪政を敷く王は倒された。
ちなみに、国から派遣された冒険者には弓を持ったやつが大活躍したそうだ。…まさか、弓の勇者だったとかではないことを祈ろう。
話を戻そう。
王が倒されたおかげで、民の生活は多少楽になった。たが、今度はレジスタンスのメンバーの者たちが税を引き上げたそうだ。しかも、王の時よりも税が高い始末。
隣国の人は、「上のことはよくわからないが国を維持するにはとにかく金がいるらしい」と言ってた。
この話を聞き、尚文は「おそらくだが、悪政を敷く王は国を維持するために最低限の税をとっていたが、その最低限でも民は疲弊し、レジスタンスが誕生し、レジスタンスのメンバーの誰かが王になったが、国の現状を理解して税を引き上げた。しかも、他の国から自国を守るために、税は必須なのに加えて革命の影響で国はボロボロで立て直すには金がいる。だが民には金がない。
その結果、さらに疲弊した民と隣国まで来て食料を買いにこないといけないほどの飢饉と革命でボロボロの国が残った」と言ってる。
隣国の人は「このままでは、他国が攻めてくるかもしれない。…でも、飢饉で生活ができないんです」と言ってもいたそうだ。
「だからアレを渡す」
「「アレ?」」
俺とラフタリアが尚文に聞くと、尚文は馬車に入って何かを手に取った。
見ると尚文が持っているのは、バイオプラントの種だ。
なるほど。あのバイオプラントの種なら食料問題は解決できるだろうな。
尚文は、隣国の人の中でリーダーらしき人にバイオプラントの種を見せた。
「これは?」
「植えたらすぐに食べられる実をつくる植物の種だ。ただ、扱いには気をつけろよ。昔、この国の南の地方をこの植物が支配したという伝承が残っているほどの物だ。その種を特殊な技術で改造して、安全性を高めたが、管理を怠れば南の地方の二の舞になるかもしれない。もし、管理を怠って植物に支配されても俺たちは助けない。それでもこの種がほしいか?」
「お願いします!」
リーダーらしき人はこのままでは自分たちが餓死することをわかっていたようで尚文の見せたバイオプラントの種を譲ってほしいと頭を下げてお願いしている。
尚文は、リーダーらしき人にバイオプラントの種を渡した。
後日、隣国の飢饉がちょっとだけマシになったという噂を聞いた。
その後、俺たちは波が発生しそうな町や村を回り、町や村で魔物退治の依頼を受けたり、行商をしているとあっという間に時は経過し、波まであと4日になっていた。
俺たちは波までの後4日になったので城下町に向けて出発した。
フィーロの足なら約束の集合の日には間に合うだろうな。