盾の勇者と天の聖杯   作:三途豆

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波への対策会議

「くさーい」

「そうだな。この臭いはキツイな」

「ええ」

「3人とも我慢しろ」

俺たちは今、城下町の下水道にいる。

なんで下水道にいるのかと言うと、奴隷商からの依頼を受けたからだ。

依頼内容は、ある貴族が秘密裏に魔物を育てていたのだが、育ちすぎて手に余り、放逐してしまったらしい。

その放逐した魔物に襲われる人が出る前に討伐して欲しいと言った内容だ。

奴隷商に依頼がきて、奴隷商でも対処できない場合は冒険者ギルドに依頼する予定だったそうだ。

ちなみに、魔物の現在位置は奴隷商から渡された地図に表示されている。

地図を見てみると、下水道の地図に一つの赤い点がある。しかも、こちらに向けて移動している。

GPSかな?

また、地図に不具合が発生したり、表示されている場所に魔物がいなかったりした時に備えて、奴隷商の部下が1人俺たちに同行している。

 

「そろそろだな」

尚文がそう言うと、尚文は盾をキメラヴァイパーシールドに変える。

尚文がキメラヴァイパーシールドに変えたのを見て、俺たちもいつでも戦えるように構える。

少しすると、目的の魔物がやってきた。

全長は6メートルほど。体色は黄色が掛かった白で、目が赤い。

姿形はワニが1番近いな。

鑑定してみると、クリームアリゲーターと表示された。

「グルルルル」

クリームアリゲーターは唸り声を出している。

「あいつで合ってるか?」

「はい。間違いありません」

尚文の質問に、奴隷商の部下が答えた。

この6メートル近くあるワニと戦うのか。

「これと戦うのー?」

「そうだ。3人ともいくぞ!」

尚文がそう言うと、尚文が1番先頭を走る。

「グルァ!」

尚文が接近すると、クリームアリゲーターは口を広げて尚文に噛みつこうとした。

だが、

「は!」

尚文は噛みつきを紙一重で回避した。

噛みつきを回避した尚文は、クリームアリゲーターの口を全身を使って開かないように押さえ込んだ。

そういえば、ワニは口を閉じる力(噛む力)は強いが、口を開ける力はとても弱いとネットに書かれていたのを見た気がする。

効果はあるようで、クリームアリゲーターは口を全く開けることができていない。

「グ!?」

クリームアリゲーターは口を開けようと、暴れ始めた。

「今だ!」

「はあ!」

「てい!」

俺とラフタリアはクリームアリゲーターの尻尾を剣で斬り飛ばした。

「フィーロも!」

フィーロはクリームアリゲーターを全力で蹴り飛ばして、クリームアリゲーターが壁に激突し、怯んでいる隙にツメを使った斬撃でクリームアリゲーターを切り裂いた。

EXP+758

経験値が入ったので、倒せたようだ。

「すごいすごーい!このツメが無かったらもう少し苦戦してたかもー」

フィーロはツメにかなり満足して喜んでいる。

攻撃力はかなり上昇しているな。

その後、俺たちは倒したクリームアリゲーターを持って、奴隷商の元に向かった。

 

「いやはや、こんなに早く討伐できるなんて予想外です。ハイ」

奴隷商は少し興奮気味に、俺たちに言った。

そして、報酬を持ってきた。

報酬は金貨4枚と銀貨50枚だ。

ツメの代金を取り戻すどころか、結果的にプラスになった。

武器屋に戻る前に、尚文は奴隷商に『盗賊は奴隷として売れないのか?』と聞いた。

奴隷商は『人間の奴隷は、このメルロマルクでは違法なので不可能です。ハイ』と言ってた。

 

「おはようございます。盾の勇者様!」

武器屋に戻るとエイクがいた。

「お前1人か?」

「はい。他の者たちはまだ仕事があり…」

仕事中か。それなら他のメンバーが武器屋にいないのも納得できる。

「それに僕もまだ仕事が…」

時間を作ってきたのか。

「そうなると落ち着いた時間に話し合いをしたいな」

「そうですね」

「全員の時間が空いてるのはあるのか?」

「夜ならみんな空いてると思います」

「そうか。なら俺たちは今日、城下町の武器屋に1番近い場所の宿を取るから、夜に来てくれ」

「わかりました。夜にみんなでこの武器屋に1番近い宿屋に行きますね」

話はすぐに進み、エイクたちは夜に宿屋に来ることが決まった。

それなら急いで宿屋の予約をしてきた方がいいな。今は午前中だし、部屋は空いてるだろうな。

 

「マスター。この武器屋から一番近い宿屋の部屋を確保してくる」

「頼む」

尚文の許可も得たので、俺は武器屋に1番近い宿屋の部屋を取りに行った。

宿屋で部屋を予約するときに、4人部屋を取った。

前にエイクたちは寮暮らしだと聞いたので、4人部屋で大丈夫だろう。

 

宿屋の予約を済ませたので、俺は武器屋に戻った。

武器屋に戻るとエイクがいなかった。おそらく、仕事に戻ったのだろう。

「マスター。今戻った」

「ああ、部屋は取れたか?」

「問題なし。部屋は4人部屋で良かった?」

「問題ない。そうだホムラ、お前何か新しいアクセサリーとかあるか?」

「アクセサリー?」

「ああ、以前ラフタリアとフィーロがアクセサリーを作成するときに必要な機材を用意してくれただろ。それに時間が多少あるからお前用に作れるがいるか?」

俺用のアクセサリー…だと…!そんなの欲しいに決まってる!

「欲しいんだな」

「まだなにも言ってないよ?」

「顔に書いてあるぞ」

マジか。

「それで、どんな物が良い?腕輪とかヘアピン、他にはネックレスや指輪とかも作れるぞ。それと付与効果も可能な限り望むものを付ける予定だ」

「そうだなぁ…」

俺は考える。

腕輪にヘアピン、ネックレスに指輪。

そういえば、俺はアクセサリーの類を装備したことないけど、ホムラとヒカリに変身したら装備品はどうなるんだ?

そう思っていると、メッセージが表示された。

[アクセサリー類の装備品は、人間形態・ホムラ形態・ヒカリ形態では、共有ができません。例えば、攻撃力上昇のアクセサリーを全ての形態で装備したい場合は、同じ効果の物を3つ用意してください]

共有不可なのか。

ひとまず、尚文に伝えるか。

 

俺は今表示されたメッセージを尚文に伝えた。

「となると、お前にはアクセサリーを3つ作ることになるのか」

「そうなるな」

「少し面倒だな」

「ごめん。マスター」

俺が尚文に謝罪すると、尚文は『気にするな』と言ってくれた。

 

「それで、アクセサリーはどうする?簡単な物なら3つ作ることはできると思うぞ」

「そこまで時間はないし、簡単な物でいいよ」

「簡単な物となると、ブレスレットとかになるな」

ブレスレットか。いいなそれ。ホムラ形態とヒカリ形態にもデザイン的に合いそうだな。

「マスター。そのブレスレットで頼む」

「わかった」

そうして、俺のアクセサリーはブレスレットに決まった。

 

俺たちは、武器屋を出て宿屋に向かった。

俺が取った部屋に入ると、尚文は早速アクセサリー作りを開始した。

俺はヒカリに変身し、魔法書を読んで新しい魔法の習得に挑戦する。

人間形態だと、援護属性の魔法文字はぐちゃぐちゃで全く読めないが、ヒカリに変身すればどういうわけか読めるようになる。

ラフタリアは筋トレをして、フィーロはやることがないのか寝た。

 

俺はしばらく魔法書を読んで新しい援護の魔法を習得した。

習得した魔法は、ファスト・スピード。この魔法は、指定した味方1人の移動速度を強化する魔法だ。

フィーロに乗って、敵から逃走するときに使えそうな魔法だ。

 

しばらくすると、部屋にぐうぅぅ〜という音が聞こえた。

見ると、フィーロがお腹を抑えている。

腹減ったんだな。部屋にある時計を見ると、ちょうど飯時の時間だ。フィーロの腹時計は優秀だな。

「飯にするか。3人は何がいい?」

「私はなんでも構いません」

「俺もラフタリアと同じ」

「フィーロはウサピルのお肉がいい〜」

ウサピルの肉って。

「となると、串焼きになるな。バーベキューをするにしても、鉄板は武器屋の親父のものだからな…フィーロ串焼きでもいいか?」

「うん」

「決まりだな」

こうして今日のお昼はウサピルの串焼きに決まった。

ウサピルは城下町の近くの街道で探して狩るそうだ。狩る方が少ないが経験値が入るからだそうだ。後フィーロの胃袋だな。フィーロは店にある串焼きを全部食べる可能性があるからだ。

 

その後は、俺たち全員でウサピル狩りをした。

俺、尚文、ラフタリアは1匹ずつ、フィーロは10匹近くを狩ってきた。

狩った後は俺とラフタリアとフィーロは解体をして、尚文が調理をした。

やはり尚文が調理した料理はうまいな。

俺とラフタリアが尚文に美味しいと伝えている間にフィーロは5匹のウサピルの串焼きを食べ終えていた。

 

料理を食べ終わった後は、ウサピルの骸をヒカリの剣に吸わせた。

強化攻撃を発動するために魔物の骸は必須だからな。

 

食事を終えた俺たちは宿屋に戻って各々自由に過ごした。

尚文はアクセサリー作りを再開し、ラフタリアは俺と一緒に魔法書を読み、フィーロは昼寝を始めた。

 

その日の夜。

俺たちの泊まっている部屋の扉から何か叩く音が聞こえた。

尚文が扉を開けると、エイクたちがいた。

「こんばんは、盾の勇者様。約束の話し合いに来ました」

「ひとまず入れ」

尚文がそういうと、志願兵たちが部屋に入ってきた。

ちょっと狭い。

「それじゃあ、波の打ち合わせを始めるぞ」

「はい!」

 

まず初めの打ち合わせの会議は、波についての認識の共有だ。

これは、俺たちの知っていることとエイクたちの知ってることを共有しておく必要がある。知っていると知らないでは大違いだからな。

 

結果としては、俺たちが知っていることとエイクたちが知っていることの違いは2つほどあった。

一つ目の違いは、波の亀裂に関すること。

二つ目の違いは、波のボスに関することだ。

 

まず、一つ目の波の亀裂に関することを話そう。

波を退けるには、空にできる亀裂を攻撃して亀裂を閉じれば波は終わるようだ。

それなら遠距離から魔法や矢を連射して亀裂を閉じればいいのではと思いエイクたちに聞いたが、エイクたちは『難しい』と言った。

なんでも、遠距離から亀裂を攻撃すると、距離の所為で威力が低下するのに加え亀裂から出てきた魔物が遠距離攻撃を喰らって亀裂を攻撃できないということが何度もあったそうだ。

それなら亀裂の近くから攻撃すればいいのではと聞くと、それも難しいと言われた。なんでも、亀裂の近くには波から出てきた魔物がうじゃうじゃおり、亀裂を攻撃しようにも魔物に妨害されてしまうそうだ。

それに、波によって転送されるのは勇者だけであり、他の冒険者や騎士たちは転送できず、現地にいる戦力で対処するしかないのだそうだ。

他国では、運良く騎士団や冒険者が大勢いる場所で波が発生し、遠距離から亀裂を攻撃して、波を収まることはできたという報告があるそうだが今回もそうなるとは限らない。

 

次は波のボスに関することだ。

なんと波のボスは、討伐しないと波を終わらせることができないそうだ。

波の亀裂にいくら攻撃を当てても波のボスを討伐しないと、波の亀裂は閉じないことが他国で判明したそうだ。

その時は、波のボスに儀式魔法を命中させてボスが討伐されてから亀裂を攻撃して波を退けたそうだ。

「儀式魔法ってなんだ?」

聞いたことのない単語を聞き、尚文は志願者たちに聞いた。

すると、亜人の魔法使いの子が説明してくれた。

「儀式魔法とは、数人から数百人の魔法使いが長時間の詠唱をすることで発動できる魔法です。大規模攻撃や高い威力の魔法が多く、戦争などで使われる魔法です」

そんな魔法があるのか。

「どんなものがあるんだ?」

「有名なものなら、高威力の裁きや呪いを解除できる聖域、他にも結界としての効果と一定時間が経過すると範囲内に強力な攻撃ができる大聖堂などがあります」

「ナオフミ様。話が逸れてますよ」

ラフタリアが注意する。

確かに波の話し合いから逸れてるな。

 

波のボスに話を戻す。

それと、波のボスを討伐すると波から出てくる魔物の数が少なくなるそうだ。

例えば、波のボスが健在の時は1秒に亀裂から魔物が5体出るとする。

波のボスが討伐されれば、1秒間に亀裂からでる魔物は2体程になるそうだ。

 

今判明したことをまとめると、波を退けるには、ボスを討伐したあとに亀裂を攻撃すれば波は終わる。これが波を退けるためのルールであり、これが1番良いやり方だと他国も思っているそうで、波が発生すればでボスを迅速に倒してから、亀裂を攻撃して波を退けるのが多くの国のやり方らしい。

 

その後は、波が発生したからの行動だ。

これは、エイクたちもわかっており民間人の避難が最優先だと言っていた。

念の為に打ち合わせをしたが、特に認識の違いは無さそうだな。

 

次に打ち合わせをしたのは、俺たちとエイクたちの戦闘における打ち合わせだ。

尚文は盾で敵の攻撃を受け止めるからその間に他のメンバーが攻撃すると言った打ち合わせを行った。

 

「現状でできる打ち合わせはこんな所だろう。他に何か打ち合わせをしておきたいことはあるか?」

「一ついいですか?」

尚文が聞くとエイクが手を挙げた。

「波が発生する当日はどこで集合しますか?」

波の発生する日の集合場所か?どうしよう?

「武器屋の前に集合しよう。親父に聞いておく」

「わかりました」

「他にはあるか?」

尚文が聞くと誰も手を挙げない。

「無いようだな。念の為明日もこの時間に来てくれ、親父から許可が出るかの結果を伝える」

「わかりました」

「それじゃ、今日は解散」

尚文がそう言うと、エイクたちは頭を下げてから部屋を出て行った。

 

翌日。

親父に波の当日に集合してもいいかと聞くと、親父は「問題ないぜ」と言ってくれた。

その後は、薬屋で中級の裏レシピ本と波に備えて回復薬を購入した。

その日の夜に、エイクたちがやってきて波が発生する日は武器屋に集合することを伝えた。

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