時間が過ぎるのは早いもので、あっという間に波が発生する日になった。
今俺たちは、武器屋で波への準備として道具の確認作業を行っている。
波が発生してから道具類が盗まれたことが発覚するとシャレにならないからな。
俺たちが道具の確認をしていると武器屋の親父が話しかけてきた。
「アンちゃん。これをやる。波で使ってくれ」
親父はそう言いながら木箱を持ってきた。
「うちの回復薬と店の売れ残りの武器だ。予備ぐらいにはなるだろう」
木箱の中身を見ると、多種多様な武器が入っている。
長剣に短剣。ほかにもナイフや盾だ。
「助かる」
「ありがとうございます」
「ありがとう親父」
「いいってことよ」
俺たちは親父に礼を言った。
薬類の確認作業を終えると尚文がラフタリアに話しかけた。
「ラフタリア。約束していたアクセサリーだ」
尚文はそう言いながらラフタリアに腕輪を渡した。
「魔力上昇(中)が付与されている。鎧の魔法防御加工を少しは軽減できるはずだ。お前のお陰で良いものが作れた」
「ありがとうございます。ナオフミ様。大切にします」
ラフタリアがそう言うと、尚文は嬉しいようで少し笑顔になった。
「次はフィーロだ」
尚文はそう言いながら、フィーロにヘアピンを渡した。
「俊敏上昇(中)が付与されている。お前なら使いこなせるだろう」
「ありがとう。ごしゅじんさま」
フィーロは尚文に笑顔で礼を言った。尚文はフィーロにヘアピンをつけた。
フィーロは、余程嬉しいのかフィロリアル・クイーンに変身して左右に揺れてる。
「最後はホムラだ」
尚文がそう言いながら3つのブレスレットを持ってきた。
俺のブレスレットは手首に着けるタイプだ。
ブレスレットは、青、赤、黄色の3つだ。
「青いブレスレットには、魔力上昇(小)と物理攻撃力上昇(小)の2つの効果がある。赤いブレスレットは物理攻撃力上昇(小)と俊敏上昇(小)の2つの効果が、黄色のブレスレットには物理攻撃力上昇(小)と魔法効果時間延長(小)が付与してある」
青いブレスレットは俺用だろうな。俺が今装備している鎧はラフタリアの鎧と同じ魔法防御加工が付与されている。
魔法防御加工は、装備している人の魔力を吸って防具の防御カが上昇する加工だ。その影響で、俺の魔力は少し下がっている。
赤いブレスレットはホムラ形態用だな。ホムラ形態は攻撃力が高いが俊敏が低い。このブレスレットには長所の物理攻撃力を高め、短所の俊敏も多少マシにできる。
黄色のブレスレットはヒカリ形態用だな。ヒカリ形態は、物理攻撃力の強化ができる。それに、ヒカリ形態は援護魔法を使えるから援護魔法の効果時間延長はとても有用だ。黄色のブレスレットは、ヒカリ形態の長所をさらに伸ばすものだな。
「ありがとうマスター。大切に使うよ」
俺は尚文に礼を言ってから、ホムラとヒカリに変身してブレスレットを身につけた。
「現状の素材ではそれが限界だった。また必要になったら作るから今は我慢してくれ」
「問題ありません。この腕輪の性能を最大限引き出せるようにしてみせます!」
「フィーロ頑張る!」
「俺もラフタリアとフィーロと同じ気持ちだよ」
「そうか。期待してる」
「波まで後5分だ。全員、装備の点検や確認をしておけ」
尚文がそう言ったので俺は装備品の確認をする。
剣は問題なし。ポーチにも回復薬2本と魔力水1本が入っている。
変身可能時間は50分、ストックは40分程ある。
次に、ホムラとヒカリの衣装を確認する。
ホムラの衣装
HP自動回復(小)、SP自動回復(小)、魔力自動回復(小)、成長する力、破壊不可、自動洗浄、火炎耐性(中)、呪い耐性(小)、同調1、同調(カース)1
ヒカリの衣装
HP自動回復(小)、SP自動回復(中)、魔力自動回復(小)、成長する力、破壊不可、自動洗浄、光属性耐性(小)、同調Lv1、同調(カース)Lv1
なんか、強くなってるな。
ひとまず、ホムラから。火炎耐性が小から中になってるな。
それに呪い耐性が追加されてる。
というか、耐性が強化・追加されてるのは火炎耐性と呪い耐性だけだ。
この2つの耐性を得た出来事なんて、尚文の盾が禍々しい黒い盾になって呪いの炎を出したの件しか思いつかない。
次にヒカリ。ヒカリの衣装は、SP自動回復が(中)になってる。
これはあれか?ヒカリ形態で戦うことが多く、スキルを使用する回数が多くなったからだろうか。
最後に、同調と同調(カース)について。これが1番意味がわからない。なんだよ同調って。
ヘルプに載ってるのか?
………あった。
同調…勇者の武器を持つ者と同調したことを示すもの。
同調のLvは最大で5まで存在する。
同調(カース)…勇者の武器を持つ者のカースシリーズの武器と同調したことを示すもの。
同調(カース)のLvは最大で5まで存在する。
なんだこれ?
特にカースの方は絶対にやばいやつだろ。
ひとまず尚文に伝えるか。
「マスター。ちょっといいか?」
「なんだ」
「なんかホムラとヒカリの衣装にへんなのがあるんだ。名前が同調と同調(カース)と出てるんだけど」
「なんだその同調って?」
「調べてみたけど、わかったのは勇者の武器と同調したこと示すものとしか書かれてないんだ。今は1だけど最大で5まであるみたい」
「最大で5まであって、同調したことを示すか。現状だとわからないことが増えただけだな。色々と調べたいが後数分で波が発生する。ひとまずは、波が終わってから調べるか」
「そうだね。ただ、同調(カース)は、なんか不穏な感じがするね」
「そうだな。元から使わない予定だが、憤怒の盾は使わないようにしないとな」
「みんなそろそろだ」
尚文がそう言うと、尚文の盾がキメラヴァイパーシールドに変わった。
俺も波のカウントダウンを見る。
00:00:00:15
「あと15秒だ」
尚文が残り時間を言うとラフタリアが親父を見て、「いってきます」と言った。
「いってきまーす」
ラフタリアに続いてフィーロも親父に言った。
親父は俺たちに「店で待ってるぜ。生きて帰ってこいよ!」とエールを送ってくれた。
「「うん」」
俺と尚文は親父に頷いた。
やがて、カウントダウンが0になり、バキン!と何かガラスのようなものが割れる音が聞こえた。
気がつくと俺たちは峠にいた。
俺たちはここがどこなのか調べるために周囲を確認する。
…この場所見覚えがあるな。確か…。
「ナオフミ様。ここは以前行商中に来たところです!確かナオフミ様がフィーロに男性を乗せて急いで村に走って行ったあの時の場所です!」
「思い出した。あの老婆がいたところか」
ラフタリアの言葉で俺は完全に思い出した。
そうだこの場所は、母が病に罹り一刻も早く戻らないといけないと言ってた男性と出会った場所だ。
ここって城下町から馬かフィロリアルに乗っても1日はかかる距離だ。
これは騎士団の参戦には期待できないな。
「盾の勇者様!」
エイクの声が聞こえたので、俺たちは声のした方角を見た。
見るとエイクたち志願兵がこちらに走ってきた。
エイクたちが走ってきている時、上空で何かが光った。
「あれは…照明弾か?」
尚文が上空の照明の光を確認した時、何か大人数が走って行く音が聞こえた。
見ると三勇者パーティが俺たちを無視して波の亀裂へ走って行った。
「あいつら騎士団の連中を連れてきてないのか!」
「ナオフミ様どうしますか?」
「なんで騎士団を連れてきてないのか問いただしたいが、ひとまず住民の避難誘導が先だな。みんな馬車に乗れ」
尚文の指示で全員が馬車に乗る。
「みんな乗ったな。フィーロ近くの村まで走れ!」
「りょーかーい」
村に到着すると、既に波の魔物が村に入っているのを確認した。
現状この村に到着するまでに確認できた魔物は、ダークゴブリン、リザードマン、ブラックウルフ、黒い鳥の魔物のコンドル、この4種だ。
この村も、ここに来るまでに確認した魔物と同じ種類の魔物しかいないようだ。
ただ、なぜか村の入り口付近に、波の魔物の骸が大量に転がっている。数は大体15体程だ。
誰かが15体も倒したのだろうな。
その誰かは、俺たちの目の前にいる。
「アチョー!ふん!はぁ!」
なんか老婆が、クワを元気よく振り回して周囲の魔物を倒しまくっている。
今なんて、クワで上空にいるコンドルを倒し、クワの遠心力を利用して近くのゴブリンを倒し、背後から奇襲しようとしたリザードマンを蹴り飛ばして、クワでトドメを刺した。
めっちゃ暴れてる。
「あ、聖人様。あの時はありがとうございました」
老婆は尚文に礼を言いながら接近してきた魔物を回し蹴りで倒した。
「お前も礼を言い」
「あ、聖人様。あの時は村まで送っていただきありがとうございます」
男性は老婆に促され尚文に礼を言った。
この人、フィーロに直接乗せて尚文と一緒に村へ行った人だ。
家族なんだろうな。老婆よりも30歳ほど若いから、老婆の息子だろう。
これからこの人は、老婆の息子さんと呼ぼう。
その老婆の息子さんの周りにも、波の魔物の骸が周囲に転がっている。
老婆程ではないにしろこの人も、そこそこ魔物を倒しているようだ。
尚文は、老婆がすごい軽快に動いている姿に困惑している。後ろにいるエイクたちも困惑している。
「俺はあの婆さんに一体なにを飲ませたんだ?」
「さあ…」
老婆に薬を飲ませたはずの尚文が困惑している。尚文の与えた薬が余程強力だったのか、老婆が特別なのか、わからないな。
「予定通り、住民の避難誘導を始めるぞ」
「「「「「わかりました!」」」」」
エイクたち志願兵が住民の避難誘導を開始した。
俺とラフタリアとフィーロと尚文は避難誘導中の住民の護衛と村に入ってきた魔物の殲滅だ。ただ、波が終わらないと魔物は亀裂から無限に這い出てくるので、殲滅はそこまでやらない。体力がもったいないからな。
それと、老婆と息子さんも住民の護衛に加わってくれた。
村には、緊急の避難先があるそうでその場所に住民を避難させることになった。
それと、この村以外にも近くに村があるので、その村にも避難誘導をしに行くことになった。
避難した住民の護衛は、たまたま居合わせた冒険者たちが担当してくれるそうだ。念の為に馬車に積んでおいた薬類をいくつか冒険者たちに渡しておいた。回復薬があれば多少はマシになるだろうな。
俺たちは護衛を冒険者たちに任せて近くの村に向かった。
近くの村に到着したら、先ほどの村と同じように避難誘導と住民の護衛と魔物の殲滅を開始する。
この村は冒険者が少ないのか、かなりの被害が出ているな。
ざっと見ただけでも前方の魔物の数は15体以上。奥にも10体程度はいるな。これじゃあ、俺たちが住民の護衛をしていてもエイクたちにも被害が出てしまうかもしれない。
ここは、可能な限り早く殲滅した方がいいな。
俺は、機動力の高いヒカリ形態に変身した。
「シャインソード!はぁ!」
俺はシャインソードと強化攻撃を駆使して、魔物を討伐する。
尚文たちも住民を守るために魔物と戦っている。
「ライトニングバスター」
俺は周囲にいた魔物を力を最大まで貯めたライトニングバスターで一掃した。
志願兵たちが住民を避難させ、俺たちは魔物の殲滅をしていた時、それはやってきた。
「聖人様。少し面倒なのがおりますぞ」
老婆がそう言いながら村の一部を指差した。見ると、通常の倍はありそうな大きさのリザードマンがいた。
俺は近くにいたブラックウルフを倒す。
ブラックウルフを倒すと、レベルが30になった。
レベルアップ!
レベルが30になりました。
天の聖杯権限でこの中から一つを選択できます。
①物理攻撃力+2(ヒカリ限定)
②魔法攻撃力+2(ヒカリ限定)
③変身可能時間のストック上限強化
お。ステータスの上昇が+1から+2になった。
今は、物理攻撃力の方がいいな。
俺は物理攻撃力+2を選んだ。
物理攻撃力+2を選ぶと、メッセージが表示された。
スキルの解放条件を達成!
新スキルが解放されました。
スキル「フォトンエッジ」
フォトンエッジ…指定した敵1体に、瞬間移動を思わせるほどの光速で敵の周囲を縦横無尽に移動し、連続して斬撃を放つ。
連撃は最大で5回まで可能。
レベル30になったことで、天の聖杯専用のアイテム自動作成機能が解放されました!
なんかすごい機能が解放された!
でも、今は戦闘の真っ只中なので後にしよう。
「マスター。今新しい攻撃スキルが解放された。あのリザードマンで試してみてもいい?」
「わかった。俺がリザードマンを抑えるからその隙に攻撃しろ」
「了解!」
「行くぞ!」
尚文がリザードマンに接近する。リザードマンは近づいてきた尚文に攻撃するが、尚文のキメラヴァイパーシールドの反撃が発動して、リザードマンに蛇が噛み付いた。
俺はその隙にスキルを使う。
「フォトンエッジ!」
俺がスキル名を叫ぶと、移動するポイントのようなものが見えた。位置はリザードマンの右肩の辺りだ。俺はそのポイントに意識を向けると、体が吸い寄せられるように瞬間移動をしたと思わせるほどの速度でリザードマンに接近した。
リザードマンが驚きの表情をする。
そのまま流れるように斬撃を放つと、次のポイントが見えた。次の場所は、左脇腹の辺りだ。俺は同じように意識を向けると、同じように瞬間移動を思わせる速度で移動した。
その後は、斬撃を放つ。
この流れを後3回ほど行って、リザードマンを倒した。
「マスター。どうだった新しいスキルは?」
「なかなか良いスキルなんじゃないか。瞬間移動をしながら敵を斬ってきたからな。あのスキルに対処するのは難しいだろうな」
俺と尚文は新しいスキルについて話しながら住民の護衛と魔物の殲滅を行った。
住民の避難誘導も終わり、あとは住民たちを波が終わるまで守るだけなのたが、問題が発生した。
なんと、ここの冒険者たちはレベル15程度の者が数人しかいないそうだ。
避難した住民に対して戦える者の数があまりにも少ない。
ここで俺たちが残っても良いが、老婆がいた村の住民たちを守る冒険者たちもレベル30程度だ。
すぐに波が終わればいいが、もし数時間も続くようであれば疲労で全滅だってありえる。
そのため俺たちは、近隣の村人の一部を馬車に乗せて、老婆が住んでいるの村の避難所に避難させることにした。
馬車は二台あるので、住民を2回に分けて避難させた。
俺、ラフタリア、老婆の息子さん、志願兵の2人は避難所で2回目に馬車に乗せる住民の護衛に残った。
尚文、老婆、志願兵3人は、老婆の住む村の避難先の護衛だ。
フィーロと尚文は、1回目の住民を乗せて、2回目の住民を乗せるので往復しないといけないな。
「最初に避難する住民はこれで全員か?」
「はい!」
尚文がエイクに聞くと、エイクは先に避難させる住民は全員馬車に乗ったことを伝えた。
尚文は全員乗ったことを聞くと、フィーロに馬車を引くように指示を出した。
フィーロは、すごいスピードで馬車を引っ張って行った。
数十分が経過すると、フィーロが馬車を引っ張りながら戻ってきた。
「お前たちが最後だ。早く乗れ」
尚文が乗れと言うと、住民たちは馬車に乗り始めた。
住民たちが馬車に乗る時に、魔物が襲ってくるが俺たちは襲ってくる魔物を全て倒した。
「全員乗ったな。行くぞ」
尚文がそう言うと、フィーロが走り始めた。
そのまま馬車に揺られること数分。俺たちは老婆が住んでいる村の避難所に到着した。
避難先の周辺には、魔物の骸が転がっている。
魔物の襲撃があったようだが、誰も怪我を負っていないようだ。
俺たちは、避難所に住民を誘導する。道中に魔物が襲ってきたが全て倒した。
「勇者様。住民の避難全て完了しました」
「そうか。なら、後は波が終わるまで防衛線を維持するだけだ」
そうして、俺たちは波から出てくる魔物を倒しながら、波が終わるのを待ち続けた。