「遅い!あいつら一体いつまでかかっているんだ!」
尚文は波がいつまでも終わらないことに疑問と怒りの声を上げた。
三勇者たちが波の亀裂に走って行ってから既に3時間が経過している。
俺たちは、この3時間ずっと波から出てくる魔物を倒している。
俺の既に変身可能時間は既に0になり、今はストックを使用している。
その、ストックの残り時間も15分しか残ってない。
これだけ戦っていれば、レベルも上がる。
俺のレベルは、人間形態はレベル33、ホムラ形態はレベル29、ヒカリ形態はレベル33になった。
今は人間形態で戦っていて、剣はヒカリの剣を使っている。
こっちの方が今使っている魔法鉄の剣よりも攻撃力が高いからな。
「盾の勇者様。他の勇者様の援護に向かってくれませんか?」
エイクが尚文に進言した。
確かにエイクの言ったことにも一理ある。あの三勇者が波を終わらせないからいつまで経っても波から魔物が這い出てくる。
それに、交代して休憩をとっているとはいえ、3時間も戦っているから、みんなスタミナが限界に近いようで顔色が悪い。
俺もかなり疲れている。
フィーロだけは、まだ余裕があるのか笑いながら魔物を蹴り倒してる。
「聖人様。ここはわしとひよっこ共と冒険者たちが受け持つので先に行ってくだされ」
「そうです勇者様。ここは私たちで受け持ちますので」
志願兵と老婆はそう言って俺たちに波の元へ行けと言ってきた。
尚文は周りの戦える者たちの顔色が悪いことを確認し、
「わかった。死ぬなよ」
老婆と志願兵たちに言った。
「ラフタリア、ホムラ、フィーロ。行くぞ!」
「はい!」
「わかった!」
「りょーかーい!」
俺たちはフィーロの背に乗り波の亀裂へ向かっている。
「ナオフミ様。あれ!」
ラフタリアは何かを見つけたのか空を指差した。
俺はラフタリアが指差した方角に視線を向けると、幽霊船のような船が空に浮いており、移動している。
しかも、船の上には凶悪な顔つきの白い魚に腕をつけた様な大きな魔物が確認できた。
おそらくあれが今回の波のボスだろう。
鑑定してみると、次元のソウルイーターと表示された。
そして、そのソウルイーターはかなりボロボロになっており虫の息だ。
残りHP数%ってところか。
「ひとまず船に上がるぞ。フィーロ!」
「はーい」
尚文はフィーロに船に上がる様に指示を出した。
フィーロの脚力で船に上がると、三勇者とそのパーティメンバーが目に入った。
みんなかなりボロボロだ。
相当接戦だったんだな。
他にも海賊の船長のような服装をした骸骨と黒いヘビとタコを合体させた様な魔物がいる。この2体は三勇者のパーティメンバーが戦っている。
俺が周囲の状況を見ていると、
「流星剣!」
「流星弓!」
「流星槍!」
三勇者が流星と名の付くスキルを放った。
三勇者の攻撃を喰らったソウルイーターはまえのめりに倒れた。
「終わったか」
尚文がそういうと三勇者が反応した。
「なんだ?今更きたのか尚文」
「まったくです。サボってたのですか?」
槍の勇者と弓の勇者が尚文に向かって言ってくる。
「お前らがあまりにも遅いから見にきたんだ」
尚文は、なんで自分が来たを槍と弓の勇者に簡潔に話した。
「そう言う訳で、さっさと波の亀裂を攻撃して波を終わらせてくれ」
「言われなくとも」
槍の勇者がそう言った瞬間、俺は悪寒を感じた。
尚文も同じ様で「なんだ!」と大きな声を出し周囲をキョロキョロと見た。
俺と尚文以外にも悪寒を感じ取ったのか三勇者のパーティの全メンバーが周囲に目を向け警戒体勢を取っている。
全員が改めて武器を構えた瞬間、俺たちは目の前の光景に目を疑った。
新しいソウルイーターが船から這い出てきたのだ。
「何!?」
「2体目!?」
「こんなのゲームにはなかったぞ!?」
三勇者がそう言って武器をソウルイーターに向ける。
この船にいる全員が武器をソウルイーターに武器を向けた瞬間。
空から無数の光の矢がソウルイーターに突き刺り、ソウルイーターは串刺しになり、動かなくなった。
「期待ハズレもいいところです」
そう言いながら黒い着物を着た女性が上空から勢いよく落ちてきた。
ソウルイーターは落ちてきた女性の下敷きになり消滅した。
「あの程度のザコにここまで苦戦するとは。それでも、世界を救う勇者ですか?」
黒い着物を着た女性は俺たちに向けてそう言い放った。
俺は、黒い着物を着た女性を見て違和感を感じた。
なんかこの女性、ちょっと半透明っぽくなっている。実際、背後の船の壁が透けて見える。幽霊かなにかなのだろうか?
というか、三勇者がボロボロになり3時間も掛けて、ようやく倒したソウルイーターをあんなにあっさり倒すなんて、この女性はどれだけ強いんだよ!?
今の光景を見て剣の勇者が「チートにも程があるだろ」と呟いた。
槍の勇者も「ソウルイーターをあんなにあっさり倒すなんて」と言っている。
弓の勇者は絶句している。
着物を着た女性は、この船の上にいる全員に目を向けた。
「おや、あなたのその盾の宝石はもしや?」
着物を着た女性は尚文の盾を見て何か考え始めた。
「まあ、良いでしょう。それでは、始めましょう。真の波の戦いを」
女性はそう言いながら、手に持っている扇を構えた。
「流星剣!」
「流星弓!」
「流星槍!」
三勇者が先制攻撃の如く、扇を構えた女性にスキルを放った。
スキルが命中し、衝撃が響いた。
「この程度ですか」
女性は何か落胆したような声を出した。
「輪舞零ノ型・逆式雪月花!」
女性の体が発光し、扇を激しく振るった。扇が振るわれるたびに、斬撃のようなものが扇から飛び出し、三勇者とパーティメンバーと俺たちを襲いかかった。
尚文は前に出て、俺とラフタリアとフィーロを守った。
「「「ぐわぁぁああああああ」」」
俺、ラフタリア、フィーロは、尚文が守ってくれたからノーダメージだが、三勇者と仲間たちは守ってくれる人がおらず、吹き飛ばされた。
おっ、ビッチが尚文のすぐ近くにまで吹っ飛んできた。
斬撃のようなものをくらった三勇者とその仲間たちが全員気を失った。
「なんとも情け無い眷属器の所持者ですね。この程度では聖武器たちが泣きますよ」
扇を持った女性はそんなことを呟いている。
「ごしゅじんさま。あの人すごく強い」
「ええ。私たちとは一線を画す強さです」
フィーロは羽毛を、ラフタリアは尻尾を逆立てている。
尚文は、すぐ近くで気を失っているビッチの懐から数本の液体が入った瓶をくすねた。
「ナオフミ様!」
ラフタリアが尚文を注意するが、尚文は聞き流している。
尚文は、ビッチはこれ以上アイテムを持っていないことを確認したのか、舌打ちをし、ビッチの頭を何度も踏んづける。
「……非道な。その方は、あなたの仲間ではないのですか?」
「こいつが仲間?冗談でもそんなことを言うな。虫唾が走る」
「…仲間ではないにしろ、貴方が行った行為は非道そのものです」
女性は尚文に不快なものを見る目で睨みつけている。
女性が言ってることがめっちゃ正論で何も言い返せない。
「非道で結構、コイツ等はそれよりも酷い真似をしてきたんでね。強い恨みを持っているんだよ」
「ごしゅじんさま悪人みたいー」
「うるさい」
「敵に正論を言われて返す言葉がありません…」
ラフタリアは呆れ気味に呟いた。敵の女性もラフタリアの言葉を聞き、呆れ気味になっている。
尚文は、俺たちにファスト・ガードを掛けてくれた。
戦闘が再開するのを予見したのだろう。
敵も同じようで尚文が俺たちにファスト・ガードを掛けた瞬間、扇を構えた。
「準備は終わったようですね。では、参ります!」
扇を持った女性はそう言ってからすごいスピードで俺たちに接近してきた。
尚文は前に出て盾を構えた。
敵の攻撃を尚文が盾で受けた時、ガキン!と音がした。
「私の攻撃を耐えるとは、凄まじい防御力ですね」
「防御力だけが取り柄なものでね。ラフタリア、ホムラ、フィーロ!」
「「はい!」」
「はーい」
俺とラフタリアとフィーロは尚文の元を離れる。
尚文は、敵の攻撃をキメラヴァイパーシールドで受け、反撃効果の蛇の毒牙が発動して、盾の蛇が巨大化し、敵に噛みついた。
「この程度の攻撃で私が倒せると?」
敵はそう言いながら尚文だけを見ている。
俺とラフタリアとフィーロは、ほぼ無視している今が攻撃のチャンスだ。
俺は攻撃力の高いホムラ形態に変身する。
「てーい!」
フィーロが敵の右側から蹴りを放った。
だが、敵は扇を使ってフィーロの蹴りを受け流した。
「はぁ!」
「せい!」
俺とラフタリアは、同時に敵を攻撃するが、敵は2つの扇を使って受け流した。
敵はラフタリアに視線を向け、扇で攻撃しようとラフタリアに接近する。
「させるか!」
ラフタリアに攻撃が届く前に尚文がラフタリアの前に立ち塞がり、敵の攻撃を受け止めた。
尚文は敵の攻撃を受け止めると、敵に組み付き、敵の動きを阻害した。組み付くと同時にキメラヴァイパーシールドの反撃効果が発動し、敵の体を縛りつけた。
「ごしゅじんさま、フィーロの新しい魔法を見ててー」
フィーロは腰を低くして走るような構えを取り、
「はいくいっくー」
と言った瞬間、フィーロが3人に分身し、一瞬で姿を消した。
姿を消すと、敵の顔面の辺りからガシガシガシと音がしたのと同時に、空気が振動した。
空気の振動が止まった瞬間、フィーロが敵の左側に現れるのが見え、ラフタリアは半透明状態で敵へ接近した。
俺がラフタリアを半透明で見えるのは、ラフタリアがパーティにいるからだ。過去にラフタリアをパーティから外した状態で、ラフタリアが透明になる魔法を使うと、本当にラフタリアが透明になり、姿が見えなくなったことがある。
なので、ラフタリアの姿は敵には見えていないはずだ。
俺はホムラ形態に変身して、バレないように小声でスキルを放つ。
「ブレイズエンド」
俺の放ったブレイズエンドが敵の右側から、透明になっているはずのラフタリアの剣が後ろ側から迫る。
敵はフィーロを警戒して俺とラフタリアの方を見ていない。
俺のスキルは気づかれたかもしれないが、ラフタリアの攻撃は当たると思った瞬間。
「何をしているのですか?」
敵はいつの間にか縛られていた状態から腕を出し、フィーロを見たまま、俺のブレイズエンドを扇で弾き飛ばし、扇を使ってラフタリアの剣を受け止めた。
「良い太刀筋ですが、届きません」
敵はそう言いながら、扇でラフタリアの剣を折った!?
嘘だろ、ラフタリアの剣はかなり硬いからそんな簡単に折れるはずがない。敵の戦闘・破壊技術がすごいのか、それともレベル的な強さ故か。両方だろうか。
「貴方、姿が変わっていますね。一体何をしたのですか?」
敵は変身した俺を視界に入れ、聞いてきた。
「悪いけど、教えないよ」
「でしょうね。ですが倒してしまえば関係ありません」
女性がそう言うと、体が発光し始めた。
これはさっき三勇者と仲間たちを倒したのと同じ攻撃だ!
「ホムラ!早くこっちにこい!」
「わかった!」
俺は尚文の元に行くためにヒカリ形態に変身し、駆け出した。ホムラ形態では尚文の元に行く前に、勇者たちを倒した攻撃をくらってしまうと考えたからだ。
「輪舞」
敵が攻撃スキルの名前を言い始めた瞬間、俺は何とか尚文の元に着いた。
「シールドプリズン!」
尚文がスキル名を唱えると、俺たちを中心に盾の檻が出現した。
何とか間に合った。
「零ノ型・逆式雪月花!」
敵の攻撃が盾の檻に命中して、あちこちから衝撃音がする。
衝撃音が響くたびに盾の檻にヒビが入っていく。
やがて、衝撃音が止まった。
敵の攻撃を盾の檻がなんとか耐え切った。と思ったのとほぼ同時に、盾の檻の外から敵の声が聞こえた。
「輪舞破ノ型・月割り!」
敵が攻撃スキルか何かを放ったのだろう。敵の声が聞こえた瞬間、盾の檻の上の辺りが粉々に砕け散った。尚文は咄嗟に盾を上方向に構えて、敵の攻撃をなんとか下に逸らした。だが、
「ぐは」
「うぐ」
「きゃあ」
逸らした攻撃が船の床に直撃し、攻撃の衝撃で俺たちはまとめて吹き飛ばされ、船の壁にぶつかった。
「私にこのスキルを使わせるとは、貴方は本物の勇者のようですね」
敵は吹き飛ばされた尚文を見て、そんなことを言っている。
俺がそんなことを考えていると、尚文とラフタリアが立ち上がった。
ラフタリアは尚文の元へ行く。
俺もラフタリアに続き尚文の元へ行く。
「ラフタリア、ホムラ。あの盾を使う」
尚文は、俺とラフタリアに短く伝えた。
俺もラフタリアも尚文が何をするのか、すぐに理解した。
ラフタリアは、尚文の手を握る。
「私はナオフミ様の剣。どんな地獄でも付いていきます」
俺は尚文の肩を無言で掴んだ。
尚文は一瞬だけ安心した顔になり、すぐに険しい顔になった。
「来い、憤怒の盾!」
尚文が盾を憤怒の盾に変えた瞬間。盾の宝石が真っ赤に染まり、赤い閃光が走った。
さらに、尚文の鎧に炎が纏わりつき、黒い鎧のような物に変化した!?
前に憤怒の盾が目覚めた時は、鎧が変わることなんてなかった。一体どういうことだ!?
俺がそう考えていると、メッセージが表示された。
腐竜の核石による憤怒の盾のグロウアップを確認!
グロウアップにより、同調(カース)のLvが1からLv2になりました!
上がったらヤバイと思っていたやつのレベルが上がってしまった!
その時、俺は視界の下のあたりが少し赤く光っているのが見えた。
気になり赤くなっている場所を確認した。
見ると、天の聖杯の印が尚文の憤怒の盾のように赤くなっている。
「うぉぉぉおおおおおおお!」
尚文は咆哮を上げた。
「なに!?」
敵は尚文の変化に驚いている。
「ガアアアアアアアア!」
誰かが咆哮を上げた。
俺は咆哮を上げた方に目を向けた。確認すると、フィーロの目が猛禽類を思わせるほど鋭くなってり、目が真っ赤になっている。
フィーロは初めている速度で敵に突っ込んで行き、敵に連続蹴りを放つ。
蹴るたびにさっきよりも、強い音と衝撃が響く。
敵はフィーロの蹴りを受けても全く気にしていない。
「さきほどよりも、早く重い攻撃ですね。ですが、動きを感情に任せすぎです」
敵はそう言いながら扇を使ってフィーロを船の床に叩きつけた。
叩きつけた瞬間、ドガドガドガと音がして、一瞬だけ無音の時間が流れた。やがて、ドスン!と大きな音がした。
「加減を誤ってしまいました」
敵はそう呟いた。
敵がやったことは至極単純だ。フィーロを床に叩きつけるつもりだったのを、加減を間違えて床を抜けて幽霊船の下の地面までフィーロを叩き落としてしまったのだ。
「ついてきなさい」
敵はそう言いながら、フィーロを叩き落とした際にできた穴に入り、地面に降りて行った。
「ナオフミ様。行きますか?」
「行くしかないだろう。2人は行けるか」
「大丈夫です」
「いつでも行けるよ」
「決まりだな。行くぞ!」
俺と尚文とラフタリアは穴に入り、敵を追う。
俺たちがフィーロが倒れている場所に到着に到着すると、敵が話しかけてきた。
「貴方名前は?」
敵は尚文をまっすぐ見て、聞いてきた。
「何故そんなことを聞く?」
「私の逆式雪月花を耐えきり、月割りまで使わせた強き者。もとい勇者に敬意を表して名を覚えておきたい。それだけです」
「…尚文。岩谷尚文だ。」
「ナオフミ…ですか。その名前覚えておきます。そして、私の名はグラス。死んでも覚えておいてくださいね」
あの敵の名前はグラスって言うのか。覚えておこう。
「では、参ります!」
グラスは再びすごい速度で尚文に接近した。
尚文は俺とラフタリアにアイコンタクトをして、グラスに突進した。
あれは、危険だからそこにいろって意味だと思う。
尚文がグラスの攻撃を憤怒の盾で受け、反撃効果で盾から大きな炎が出て、グラスを炎が包み込んだ。
やった!あれは俺とラフタリアに火傷を作り、呪いまでつける呪いの炎だ。それにグロウアップした影響か、ドラゴンゾンビの時よりも炎が強力だ。
これなら、かなり効果がある。俺はそう確信した。
しかし、
「この程度の炎では、私を倒すことはできません」
グラスはそう言ってから扇を横に振るうと、グラスを包んでいた炎が霧散した。
グラスはバックステップを行って尚文から離れた。
「輪舞破ノ型・亀甲割!」
グラスは、扇を閉じて引き、尚文に向けて弾いた。
弾いた瞬間、扇から紫色の矢のような形状のエネルギー弾が尚文に向けて飛んでいった。
尚文は、憤怒の盾で受け止めるが、威力が高すぎたのか盾に手を添えた。
その時、手が攻撃に当たったのか黒い籠手が砕け散った。
「この攻撃でも倒れませんか…しぶといですね。ですが、貴方の攻撃の短所がわかりました。貴方の攻撃は近距離の攻撃にしか発動しない。遠距離から攻撃し続ければ貴方を倒すことは可能です」
グラスのやつ尚文の盾の弱点をあの一瞬で気づいたのか?
凄まじい洞察力だな。
「まさか、これで終わりですか?」
グラスは余裕そうに尚文に聞く。
「まだだ。シールドプリズン!」
尚文がスキル名を唱えると、グラスが盾の檻に閉じ込められた。
「チェンジシールド(攻)」
尚文がチェンジシールドとスキル名を唱えると、盾の檻の中から何か突き刺すような音が聞こえた。
「アイアンメイデン!」
尚文が拷問器具の名を叫ぶと、空にアイアンメイデンが出現した。
シールドプリズンがアイアンメイデンに向かって飛んでいき、アイアンメイデンは扉を開き、シールドプリズンごとグラスを呑み込み、扉を閉じた。
俺がアイアンメイデンを見ていると、メッセージが表示された。
同調相手のカースシリーズのスキルの発動を確認!
特殊条件の達成により、同調した勇者がカースシリーズの武器を使用中のみ使用可能なスキルが解放されてました!
ホムラ形態専用スキル…バーニングソード
剣を振りかぶり、振りかぶった場所から巨大な火柱が上がるほどの爆炎で敵を攻撃する。スキルを発動した直後に爆炎が発生する。使用後、SPが0になる。
ヒカリ形態専用スキル…セイクリッドアロー
剣を天に向けると、剣から閃光が伸び無数の光属性のエネルギー弾を広範囲に落とし、最後にレーザーを落とす。スキル発動から攻撃が当たるまで少しタイムラグがある。使用後、SPが0になる。
新しいスキルが解放された。
説明文を見る限りかなり強力そうだ。
俺がそう考えていると、
「思ったよりも威力がありませんね」
そんな声がアイアンメイデンの中から聞こえた。
その直後、アイアンメイデンが砕け散り、グラスが現れた。
「嘘…だろ…」
尚文は掠れた声で呟く。
尚文の新しい攻撃スキルを受けて、あんなにピンピンしてるなんて。
尚文は、もう打つ手がないって顔になっている。
ここで負けたら全部が終わる。なんとしてでもこの状況を変えないと。
俺は尚文の耳元で、新しいスキルが解放されたことを伝えた。
尚文は俺の言葉を聞き、顔に希望の光が宿った。
尚文は、ビッチからくすねた魂癒水を飲む。
魂癒水を飲み終え、尚文の体が淡く光った時、視界の隅にある砂時計のアイコンが変化した。
00:59
「時間ですか…。まさか、こんなに早いとは」
敵はそう言いながら俺たちに向けて突っ込んできた。
顔には少しばかり焦りの色がある。
俺は、バーニングソードを発動させるために、ホムラ形態に変身し、尚文よりも前に出た。
「貴方程度で私を止められると思っているのですか」
「思わないよ」
グラスは尚文より前に出た俺に向けて、走りながら構える。
「今だ!」
「ファスト・ライト!」
ラフタリアが光を発生させる魔法を発動させる。
光が発生すると、グラスは目を瞑った。
俺はグラスに限界まで接近し、
「シールドプリズン」
尚文の盾の檻がグラスを捕まえた。今だ!
「バーニングソード!」
俺は剣をバーニングソードを発動させるために、スキル名を叫び、剣を振りかぶった。
剣を振りかぶると、地面が一瞬で真っ赤に染まった。
真っ赤に染まると、シールドプリズンが砕かれた。
だが、もう遅い!
シールドプリズンが破壊された瞬間、地面が大爆発したような爆炎が発生した。
尚文は、シールドプリズンが破壊されたタイミングで憤怒の盾からキメラヴァイパーシールドに変えて、フィーロにファスト・ヒールを使用した。
フィーロは、尚文のファスト・ヒールで目を覚ました。
俺は、追撃のためにヒカリ形態に変身した。
「セイクリッドアロー!」
俺が、剣を上空に向けると、剣から光が伸び空に向かって飛んでいった。
俺は、光が空に飛んで行くのを確認し、フィーロに向けて走った。
尚文とラフタリアは既にフィーロに乗っている。
あと数歩で、フィーロの元に着くと思った時。
「逃しません!」
グラスはバーニングソードの爆炎から脱出し、駆け出す。
だが、グラスが駆け出した瞬間。
空から無数の光属性のエネルギー弾が降り注いだ。
グラスはエネルギー弾をくらい、動きが止まる。
その隙に俺はフィーロの元に着き、フィーロ乗った。
「走れフィーロ!」
尚文はフィーロに指示を出し、フィーロは全速力で走る。
だけど、普段よりも少し遅い。ダメージが残っているんだろう。
「ファスト・ヒール!」
「ファスト・スピード!」
尚文はフィーロに回復魔法を、俺は速度上昇の支援魔法を掛ける。
フィーロの速度が少しだけ上がった。
俺が振り向くと、グラスはセイクリッドアローのエネルギー弾を避け、時には弾きながら俺たちに向けて走っている。
だが、フィーロの方が早いようで、すぐに追いかけるのをやめて波の亀裂に向けて走って行った。
そのまま走っていると、砂時計のアイコンの数字が0になった。
0になると、砂時計のアイコンが消滅し、それと同時に空が元に戻った。
「終わった…のか」
「そのようですね。それにしてもあの方は一体何者なのでしょうか?」
「わからん。だが、一つだけ明確になったことがある。俺たちは今の強さだと、次にグラスと遭遇すれば全滅は必須だ。早くクラスアップをして強くならないといけない」
「そうだな」
「ですね」
「うん」
正直に言えば、グラスとの戦いは惨敗だ。
尚文の憤怒の盾の強力な反撃も、新しい攻撃スキルのアイアンメイデンも、俺のスキルに、新スキルのバーニングソードとセイクリッドアローを受けてもグラスは常に余裕のある表情を崩さなかった。
それに、フィーロの新しい魔法の"はいくいっく"も効かず、ラフタリアの剣を使った攻撃も完全に受け止め、剣を折る技術もグラスは持っている。
俺と尚文にはレベル上限が存在しないが、ラフタリアとフィーロは違う。
資質向上を入れても、2人はもうすぐレベル40の壁によって、強くなれなくなる。資質向上にも限界はあるからな。
そういえば、あの砂時計のアイコンはなんだったのだろうか?
「ひとまず、エイクたちの状況を確認してから残った魔物の殲滅や怪我人の治療をするぞ」
尚文の指示で、俺たちはエイクたちがいる村に向かう。
こうして、ラフタリアにとっては3度目の、俺と尚文は2度目の、フィーロにとっは初めての波は終わった。