城下町を後にした俺たちは、シルドフリーデンを目指して街道を進んでいる。
「そういえば、親父からの餞別の中身を詳しく見てなかったな」
「そうだね」
「そうですね」
尚文は、親父からの餞別が入っている袋を開けた。
袋の中身は、3本の剣と青いグローブと銀色のアクセサリーと手紙だ。
尚文は手紙を読んでから、俺とラフタリアに手紙を渡した。
何々。
『アンちゃんへ。そろそろ他国に行くと思って餞別として道具を入れておいた。気に入ったら使ってくれ。まず、嬢ちゃん用と変身のアンちゃん用の剣を入れておく。予備があった方がいいだろしな』
俺は途中で読むのを一旦辞め、剣を見る。
ラフタリアの剣は、グラスとの戦いで折られた剣と同じものだ。
俺の剣は……新品のようだ。
ラフタリアの剣と比べれば安いだろうが、これも金貨数枚はする品だ。
親父のやつこんな高い物をくれるなんて。
続きを読む。
『刀身の無い剣が1つあるだろ。それは、試作品の魔力剣だ。剣の柄に魔力を流すと、魔力で出来た刀身が現れるんだ。実体の無い敵に効くぞ』
魔力剣か。多分このオレンジっぽい剣だよな。
ラフタリアが剣を持ち、鞘から抜くと、キュポッと音がした。
本当に刀身がないな。
試しに、ラフタリアが魔力を流してみると、オレンジ色の刀身が現れた。
刀身の中央より少し上の辺りに、四葉のクローバーがあった。
ラフタリアが魔力を流すのを辞めると、刀身は消えた。
『次は、盾のアンちゃん用の盾につけるアクセサリーだ。盾を詳しく調べたりする時に役に立つと思う』
アクセサリーは、かなり小さくパッ◯マンみたいな形状のアクセサリーだ。
尚文は、親父のアクセサリーを盾の緑色の宝石の部分に取り付けた。
『万が一、鳥の嬢ちゃんが馬車を引かなくなった時は、このグローブを使え。このグローブをつければ百人力。盾のアンちゃんでも馬車を引くことができるぜ』
俺は、グローブを見る。
見た目は青いグローブで、外側の手の甲の位置に濃い青色の宝石が嵌っている。
どうやら、魔力を込めることで物理攻撃力(腕力)が強くなるようだ。
街道を進んでいると、ピコーンと音がした。
この音は、アイテム自動作成で作ったアイテムが完成した音だ。
作ったアイテムは、取り出すかストックするか選択できる。
取り出すを選ぶと、ホムラかヒカリの剣が現れて、作った薬が出てくる。
ただ、作成した薬を取り出すと、ストックすることができないのだ。
これでは荷物が嵩張る。いくら粗悪品でも効果はあるから捨てるのは勿体ない。
なので基本的に、作成したアイテムはストックしている。
ストックの上限は、現状100個までストックできるようだ。
「ごしゅじんさま〜。街が見えてきたよ〜」
フィーロが俺たちに言ってきた。
外を見ると、確かに街が見える。
「丁度いい。あの街で飯でも食べるか」
「わーい。ごはん!」
「いいね。朝に城下町に行った時は、城への報告とか挨拶回りで朝食を食べてなかったからな」
「そうですね」
俺たちは街に入り、飯を食べてから、道中で行商用に街の特産品などを買ってから街を出た。
シルドフリーデンに行くまで、行商は続けないといけない。
行商をしないと収入がないし。
街を出てシルドフリーデンの方向を目指して進んでいると、村があった。
運のいいことに、その村には宿屋があったので、宿屋を取り夜を明かした。
村に到着したのが夕方頃だったので、村に宿屋がなかったら野宿をするところだった。
翌朝。
俺たちは宿屋で朝食を取ってから、街道を進む。
街道を進んでいると、後方から大きな声が聞こえた。
「やっと見つけました!」
声のした方を見ると小型の馬車の周りに10名以上の騎士が馬に騎乗しており、馬車の窓からメルティが顔を出している。
「あ!メルちゃんだ」
フィーロが立ち止まったので、俺たちは馬車を降りてメルティを出迎える。
尚文は、すっごい嫌そうな顔をしている。
俺たちが出迎えると、馬車は止まり、メルティが馬車から降りて俺たちの元に歩いてきた。
「盾の勇者様。至急、王都に戻り、オルトクレイ王と再度面会していただきたいのです」
「断る」
尚文は、考える素振りすらせずに即断った。
顔も少し怖くなった。
「…王に対する非礼を詫びて、和解してほしいのです」
「断る!」
尚文は、険しく怖い顔になった。
やっぱり、クズとは和解…いや、話すことすら嫌なんだな。
メルティは、キレそうな顔になりながらも尚文に話かける。
「勇者様の力は、波を止める為に必要です。同時に王による援助が無ければ勇者様であろうと…」
援助と言っても、クズが援助なんてしてくれるのか?
クズが俺たちを援助したのって、わかってる範囲では、リユート村の波を退けた時の援助金だけだぞ。その援助金だって、前日の決闘で不正をして、剣と弓の勇者に指摘されたから渋々って感じだったし、指摘されるまで渡す気すらなかったし。
「援助?協力してやってるのはこっちだ」
尚文の言ってることも一理ある。実際、尚文はほぼ無報酬でクズに協力しているよなものだ。
クズが尚文にやったこと(妨害)をまとめると。
①尚文に冤罪を受けた時に庇わなかった。
②リユート村の波を退けた宴で、俺とラフタリアを尚文の元から離れさせようとした。
③ラフタリアとフィーロのクラスアップの許可を出さない。
援助よりも、妨害の方が多いじゃないか!
王の方が妨害しているのに、和解とか無理では?
俺がそう思っていると、メルティが俯いた。
「ナオフミ様」
ラフタリアが尚文を注意する。
「…こいつも王族だ」
「なんで…なんで!そうなのよ!あなたも父上も!」
メルティがキレた!
「勇者と王がいがみ合うなんて、絶対にダメなの!」
メルティはキレながら頭を掻きむしる。
「そうよねフィーロちゃん!」
フィーロに飛び火した。
「え、ええっと」
フィーロは、しとももどろになり何も答えない。
「ラフタリアさんとホムラさんもそう思わない!?」
フィーロが答えないのがわかるとメルティは俺とラフタリアに聞いてきた。
「わ、私はナオフミ様の剣なので」
「…」
ラフタリアは明後日の方向を向きながら全く別のことを答え、俺は何も言わず目を逸らす。
「ほら!みんなもそう言ってるわ!」
「言ってないだろ」
「いいから父上に謝って!そうしないと、父上が母上に叱れるでしょ!」
父上が母上に叱られる?
尚文は、俺と同じことを考えているのか、メルティを見ずに思考する。
「ちょっと!人の話を聞きなさいよ!」
メルティがそう言っていると、メルティの後ろにいる騎士が剣を抜きメルティに振りかぶった!?
「危ない!」
尚文は、メルティを抱き寄せ騎士の攻撃を盾で防いだ。
「おのれ盾め!姫を人質にするとは!」
「「「はあ?」」」
俺と尚文とラフタリアが同時に疑問の声を出した。
姫を人質にするって?
自分からメルティを殺そうとしたのに何を言ってるんだ?
「盾は悪!最初からそう決まっているのだ!」
騎士はそう言いながら俺たちに襲いかかってきた。
見ると、馬車の近くにいる騎士たちも剣を抜いて俺たちに近づいてくる。
「ラフタリア、ホムラ、フィーロ!」
「はい!」
「了解!」
「はーい!」
尚文が俺たちを呼んだので、俺たちは騎士に接近して攻撃する。
一度攻撃を当てただけでわかる。こいつらには、ホムラ・ヒカリ形態を使う必要はない。何故なら、この騎士たちはそこまで強くないから。
俺たちが反撃を開始すると、騎士たちは簡単に倒れた。
見ると馬車の近くにいる騎士が水晶玉を掲げている。
俺たちが反撃をしていると、馬車の近くにいる騎士が馬に乗って走り去って行く。
「フィーロ!逃がすな!」
「はーい」
フィーロは全速力で走り、馬に接近する。
騎士は咄嗟に剣を抜くが、
「ぐわぁぁあああ」
フィーロに蹴られて、馬から落ちた。
さらに追い討ちを掛けようと、一人二人と倒していると、何人かを取り逃してしまった。
尚文は、情報を得るために倒した騎士たちを縄で縛ってから尋問を始めた。
メルティは、殺されかけた恐怖で震えている。
尋問の結果、この騎士たちは三勇教の信者だそうだ。
この三勇教というのは、剣・弓・槍の三人の勇者を信仰しており、このメルロマルクの国教らしい。
「ラフタリア、ホムラ。こいつらから宗教関係の所持品がないか調べてくれ」
「わかりました」
「了解」
俺とラフタリアは、騎士たちの所持品を調べ始めた。
俺とラフタリアが騎士たちの所持品を調べている間、フィーロがメルティを落ち着かせた。
落ち着いたメルティは、尚文と話をしている。
「なぁ、なんで剣・弓・槍・盾の四人勇者がいるのに、この国では盾を除いた三勇者が信仰されているんだ?」
「それは、このメルロマルクと仲が悪いシルドヴェルトの国教が盾の勇者を信仰する盾教だからよ」
盾教ね。つまり、嫌いな国では盾の勇者は神だから、シルドヴェルトと仲が悪いメルロマルクでは、盾の勇者は敵(悪魔か何か)として扱われるのか。
おっ、なんかそれっぽいもの発見。
「マスター。それっぽい物があったよ」
俺は尚文に、騎士が持っていた変わった形のネックレスを見せた。
剣・弓・槍の三人の勇者を信仰する三勇教って名前の通り、ネックレスには剣の刀身と槍の穂と弓が重なっている。変な形だな。
「それを地面に置いてくれ」
「?わかった」
俺は尚文の指示に従って、アクセサリーを地面に置く。
「さて、お前ら、なんで第二王女を殺そうとした?素直に吐くのならお前らの大切なシンボルは踏まないでやる。さあ、どうする?」
これって、踏み絵の逆だよな。
騎士共からしたら大切なシンボルが、敵に踏まれそうになっている。
これで、情報を吐くといいんだが。
「あ、悪魔の甘言など聞かん!」
「あっそ」
尚文は騎士が情報を吐かなかったので、三勇教のシンボルを思いっきり踏みつけた。
しかも、何度も踏みつけたり、踏み続けたりもした。
尚文がシンボルを踏むたびに騎士共は、面白いぐらい発狂してた。
「なあ、第二王女。この騎士共は、国の騎士じゃないのか?」
「この騎士たちは父上の騎士よ」
クズ専用の騎士ってことか。
「つまり、あの王は尚文に嫌がらせをする為に、娘であるメルティまで殺すつもりなのか?」
俺がメルティに聞くと、メルティは否定した。
なんでも、あのクズは叡智の賢王という二つ名が付くほど知恵が回る人物であり、本気で尚文を潰すならもっと隙のないすごい作戦をするはず。こんな強引なやり方はしないとのこと。
だから、こんな強引なやり方が通ってるってことは、父上は何も知らない可能性が高いと付け加えるた。
「父親じゃないとなると、犯人はお前の姉になるな。王位継承権1位の妹が死ねば、王位継承権1位は私のものとかな」
尚文は、メルティに犯人の候補と動機を予想して、メルティに話した。
「姉上なら……ありえるかも」
確かに、あのビッチならやってもおかしくないな。
「それと、第二王女。嘘をつくならもっとマシな嘘をつけ。あのクズは叡智の賢王じゃない。無知の愚王だ。もし仮に、叡智の賢王って二つ名がつくほど知恵が回る人物なら俺の話を聞くはずだ。だが、あいつは俺の話をカケラも聞かなった。てことはお前は嘘を吹き込まれているんだ」
尚文がそう言うとメルティが再びキレた。
「父上のことを悪く言わないで!」
「いいじゃないか。お前を捨てた親なんて」
「父上は私を捨ててないもん!うわああぁぁん!」
メルティが泣き始めた。
尚文は、「子供らしいところもあるじゃないか」と言いながら笑っている。
「ナオフミ様!子供を泣かせて笑わないでください」
「そうだよマスター。いくらあの外道の血縁者でも子供を泣かせたらダメだよ。人として」
ラフタリアと俺が注意するが、尚文は知らぬ存ぜぬって感じだ。
「ナオフミ様…」
ラフタリアから怒りのオーラが出始めた。
「わかってる」
尚文はそう言うと、笑うのをやめて真剣な表情になり考え始めた。
「マスター。この後はどうする?メルティをあの王の元まで送り届ける?」
「…いやダメだ。あのクズのことだ。どうせあることないことでっち上げて俺たちを犯罪者にするだろうな」
「確かにあの王ならありえるだろうね。ここでメルティを放置しても三勇教の手によって殺されることになるだろうね。そして、メルティの遺体を見た王は、俺たちの元に行って何かあったから殺されたと思って俺たちは指名手配になるね」
「後は、クズかビッチを殺すとかだな。だが、そうなると俺たちの罪は明確になり、国の連中が俺たちを全力で捕まえるか殺しにくるだろうな」
「つまり?」
「俺たちが無実なことを証明する手段がない。第二王女は何かないか?」
「母上ならどうにかできるかも」
「母上か。その母上は今どこにいるんだ?」
「わからない。前に別れたのはフォーブレイって国なの。それに、別れてから結構時間が経っているから、今はどこにいるか…」
「そうか。そういえばお前の母親はなんで他国にいるんだ?俺は召喚されてから2ヶ月はこの国にいるが、一度も見たことも聞いたこともないぞ」
そういえば、俺も聞いたことがないな。
「母上は、戦争を回避する為にいろんな国を飛び回ってるの」
なんとかできる可能性があるメルティの母親は、どこにいるか不明か。
そうなると、俺たちの無実を証明する手段…なくね?
尚文も、同じことを考えているようで顔色が悪い。
「ようやく自分たちの立場がわかったようだな。盾の悪魔」
「既に我らの仲間がお前たちの首に賞金をかけているだろう。王族殺し、または、王族の誘拐をした場合は他国に行っても追手が来るぞ。さっさと諦めるんだな」
この騎士共は、俺たちが指名手配されるのがわかっているよう笑っていやがる。
「フィーロ。黙らせろ」
尚文がフィーロに指示を出し、フィーロは騎士共を攻撃して気絶させた。
「よし、この状況を打破できそうなシルトヴェルトに行こう。シルトヴェルトは盾の勇者を信仰する国だ。俺と亜人のラフタリアなら話を聞いてくれる筈だ」
「亜人の国となると、街や村に着いたら俺は馬車に引き篭もっておいた方がいいか?」
「それが良いだろうな。ホムラは、街に着いたら馬車に待機しておいてくれ」
「了解」
「第二王女もそれでいいな?」
尚文がメルティに聞くと、メルティは少し考えていたが、決意を固めたようで、「わかったわ」と言った。
「第二王女。お前のためにも同行してもらう。安心しろ。シルトヴェルトに着いても敵国の姫として扱わせない。絶対に守ってやるからついてこい」
「…うん」
メルティは、そう言いながら俺たちの馬車に乗った。
ちなみに、気絶した騎士共は装備を奪ってから森の近くの木に縛りつけておいた。
俺たちを襲い、メルティを亡き者にしようとしたんだ。これぐらいはしても良いだろう。
運が良ければ生き残れるだろうな。