「とにかく、次の目的地は決まった」
「はい。わかりました」
「うん。行こう」
「わかったわ。ね、フィーロちゃん」
「うん。メルちゃん」
シルトヴェルトに行くのもいいのだが、シルトヴェルトまではフィーロ機動力を持ってしても2週間は掛かる上に2つの国を跨ぐ必要がある。
それに引き換え、隣国なら距離としては1週間。長くても2週間程度だ。
「ごしゅじんさま。これどうにかできない?」
フィーロは足についている輪っかを指差す。
「うーん…ラフタリア。この足輪を破壊できないか?」
「やってみます」
ラフタリアは足輪のいろんなところに触れる。解除ボタンとかがあるのかもな。しかし、ラフタリアがいろいろ触っても解除できそうになかった。次にラフタリアは、千切るなり変形させることができないか試すがなにも起きない。
「やはり、ダメですか」
ラフタリアが呟く。
「仕方ありません。これを試してみます」
ラフタリアは剣を引き抜いた。
剣なら破壊できるかもって考えたんだな。
ラフタリアが剣を足輪に突き刺すが、足輪は全く壊れる気配がない。
「てい!せや!」
ラフタリアは全力の突きを足輪に当てたが、足輪には少しの傷と凹みがあるだけだ。まだ破壊には程遠い。
「これでもダメですか…」
ラフタリアは自分では打つ手がないって雰囲気を出し始めた。
「次は俺がやる」
俺は立ち上がり、攻撃力の高いホムラ形態に変身した。ホムラ形態はラフタリアよりも攻撃力が高いからどうにかできるかも知れない。
俺は脆そうな箇所がないか確認するために、足輪を調べる。
………うん。脆い箇所がほぼない。唯一あるとすればラフタリアの攻撃で凹みができた部分となるな。
俺は剣を取り、全力の通常攻撃を足輪にぶつけた。
しかし、足輪には対して効果がなかった。
その後も、俺は全力の通常攻撃を足輪に当てた。強化攻撃を使いたいが強化攻撃は剣から炎が吹き出て、フィーロにも被害が出てしまう。
なので、通常攻撃を使い続ける。
攻撃を何度か当てるが、全然壊れる気配がない。手応えはあるからもう何度か攻撃を当てればいけるかもしれないんだけどな。
「どうだ?壊せそうか?」
「もうちょっと攻撃力があればいけるかもしれない」
「攻撃力か。それなら援護魔法で強化できないか?」
それだ!強化魔法を使えばいけるかもしれない。
俺は援護魔法を使えるヒカリ形態に変身して、魔法の詠唱を始める。
「力の根源たる天の聖杯が命ずる。理を今一度読み解き、彼の者の力を高めよ!」
「ファスト・パワー!」
俺は自分に援護魔法を掛け、ホムラ形態に変身して通常攻撃を始める。
何度か攻撃をしていると、足輪からパキッという音が聞こえた。
これは、足輪にダメージが入っているのだろう。
確認すると、足輪には小さなヒビが入っていた。
俺が足輪のヒビをみんなに見せるとみんなの顔に希望が宿った。
「その調子でやってくれ」
「了解」
俺は尚文の指示で何度も足輪を攻撃する。
やがて、バギッという音がして足輪が壊れた。
「やったー!壊れたー!ありがとうホムちゃん」
「よかったなフィーロ」
「うん!」
俺とフィーロが話していると、尚文が会話に入ってきた。
「フィーロ。これからは気をつけろよ。それに元康のことだ、きっと同じ道具をまた用意してくるぞ」
また用意してくるか。今回は戦闘の後だから破壊できたが、戦闘中に同じアイテムをつけられたら解除する方法は現状ない。そうなると、フィーロには今回と同じような足輪をつけられない様に注意してもらわないといけないな。
「うん!フィーロ次はあんなのつけられないようにする!」
それから俺たちは影から教わった女王が滞在している隣国を目指して山の中を進む。
フィーロにフィロリアル・クイーンに変身して俺たちが乗った方がいいと尚文に言ったのだが、尚文に却下された。
理由は単純でフィーロの体色が夜の山の中だと目立ってしまい、三勇教派の影に見つかる可能性が高いからだ。
俺たちは山道を進みながら、休憩できる場所を見つけたら数分だけ休憩をしたら、すぐに山道を歩く。
そんな調子で進んでいると、焚き火ができるぐらいの広さがある場所に出た。
「今日はここで休もう」
尚文がそう言うと、俺たちの表情が良くなった。
みんなここまで大きな休憩を取れなかったからな。
俺とラフタリアが焚き火の準備をしていると、フィーロの腹が鳴り尚文にご飯を催促していた。そういえば、晩御飯を食べてなかったな。
尚文は仕方ないって顔をしてから、食事を作った。
ラフタリア、俺、フィーロが尚文の食事を受け取る。
最後に尚文がメルティに食事を渡す。
「ほら、第二王女」
メルティは不機嫌そうな顔で尚文の食事を受け取った。
「どうした?第二王女」
「ーーーー言わないで」
「なんて言ったんだ?第二王女」
「第二王女って言わないで!」
急にメルティが涙目で叫んだ。
「わたしにはメルティって立派な名前があるの!第二王女なんて身分名で呼ばないで!」
「お前だって俺のことを盾の勇者って呼ぶだろ」
「じゃあ、私はナオフミって呼ぶわ!だから、ナオフミも私のことをメルティって呼んで!」
「なんでそうなるんだよ…」
「私はナオフミとフィーロちゃんとラフタリアさんとホムラさんと一緒に苦楽を共にする仲間でしょ!だからメルティって呼びなさい!」
メルティからすると自分は女王に会わないと城には戻れない。それまでは、俺たちと行動を共にしなければならない。そんな中、みんな名前で呼び合っているのに、メルティと尚文だけは互いを役職・立場名で呼んでいるから仲間外れ感を感じているってところか。
「わかったよ。メルティ。…これで良いか?」
「絶対に守りなさいよ!」
「はいはいわかりましたよ第二王女」
「ちょっと!?」
「冗談だ。メルティ」
その後も尚文はメルティを揶揄っている。
割と気が合うのかな?あの2人は。
一方、ラフタリアは何やらすごく複雑そうな顔をしている。
俺たちが食事を終えて片付けをしていると。
「なにか焦げ臭くありませんか?」
ラフタリアが俺たちに言った。
俺たちは周囲の臭いを嗅ぐ。
確かに焦げ臭いな。
「ナオフミ!あれ!」
メルティは何かを見つけたのか、空を指差した。
俺たちが視線を向けると、大きな煙が空に向けて飛んでいっていた。
「だれかが大きな焚き火をしてるのー?」
フィーロが呑気なことを言ってる。
この焦げ臭い匂いと大きな煙。この2つの現象が発生しているってことは間違いなく山火事が起こっている。
「フィーロちゃん。あれは焚き火じゃないわ山火事よ!……でもなんで今山火事が起こっているの?」
「…決まってるだろ。ビッチか三勇教の仕業だ。狙いは山火事で俺たちを殺すか炙り出すとかだろうな。そして、山火事を起こした犯人は俺たちってことにするつもりだ。動機はビッチや三勇教から逃げるためとかになりそうだな」
ありえそうだな。ビッチと三勇教会からすれば犯人を作れて動機も作れる。まさに一石二鳥だな。
「ここにいたら山火事に巻き込まれる。さっさと先に進むぞ」
尚文はそう言うと、すぐに片付けを終わらせて移動を始めた。俺たちも続く。
俺たちは刺客や襲撃を警戒しながら移動すると、どこかの街道に出た。
「ここは…街道か?」
「そうね。でもここはどこの街道なのかしら」
尚文とメルティが現在位置を割り出している。
俺とラフタリアとフィーロは周囲を見張る。
少しすると、フィーロが「何かがこっちに近づいてくるよ」と言ったので、みんなで草むらに隠れる。
少しすると、魔術師っぽい人や冒険者の格好をした一団が荷車に乗りながら走り去っていった。
俺たちは刺客や襲撃を警戒しながら移動すると、どこかの街道に出た。
「ここは…街道か?」
「そうね。でもここはどこの街道なのかしら」
尚文とメルティが現在位置を割り出している。
俺とラフタリアとフィーロは周囲を見張る。
少しすると、フィーロが「何かがこっちに近づいてくるよ」と言ったので、みんなで草むらに隠れる。
少しすると、魔術師っぽい人や冒険者の格好をした一団が荷車に乗りながら走り去っていった。暗くてよく見えなかったが亜人がかなり多かったな。
「何の一団だ?あれ?」
「さあ?メルティは何か知ってる?」
俺がメルティに聞くがメルティもわからないようだ。
「とにかく街道の近くだと冒険者に見つかる可能性がある。少し山を通っていくぞ」
尚文の指示の元、俺たちは山の中を進む。
山の中を進んでいると、
「「「「あ」」」」
「「「「「あ」」」」」
メルロマルクの兵士3名と魔術師に遭遇した。
俺とフィーロとラフタリアは速攻で駆け出す。俺は駆け出すのと同時にヒカリ形態に変身した。
兵士達は剣を抜くが、
「盾のあく」
「せや!」
「とう!」
「はあ!」
俺とフィーロとラフタリアの方が兵士よりも早く動き、攻撃を当てた。兵士たちは一撃で戦闘不能になった。
「くっ!逃げ」
「させるか!シールドプリズン!」
尚文が逃げようとした魔術師をシールドプリズンで閉じ込めた。
俺とラフタリアとフィーロはシールドプリズンの中にいる魔術師に向けて構える。
「シールドプリズンを解く。フィーロ行けるか?」
「うん!」
「頼む。いくぞ」
尚文が盾を構えた瞬間、シールドプリズンが解けた。
その瞬間フィーロの回し蹴りが炸裂し、魔術師は木に激突して動かなくなった。……死んだ?
俺は近づいて脈を調べる。死んではいない様だな。気を失っているだけのようだ。
俺たちは、倒した兵士たちから魔力水や回復薬など使えそうな道具を奪って先に進んだ。
稀に兵士を発見するが、基本的に草むらに隠れてやり過ごす。
そうやって戦わずにやり過ごして先に進んでいると、いつの間にか日が出てきていた。
日が出始めて少しすると、兵士との遭遇率がかなり下がった。
おかしいな。さっきまでは1時間に一度は遭遇してたのに。今は3時間程経過しているのに全く兵士と遭遇しない。
兵士がいない警備が手薄のエリアに入ったのだろうか?
「ナオフミ様。なんだかこの辺りは亜人の方が多いですね」
ラフタリアが街道の近くにある大きな村を見ながら呟く。
確かに亜人が多いな。このメルロマルクでこんなにも多くの亜人を見るのは始めてだ。てか、さっき見た一団もいるな。
しかも、なんか人の数が多い。馬車や荷車が10台以上も停まっている。
これは何かあるな。
「あっ!」
メルティが何か閃いたみたいな顔をして尚文を見た。
「この近くに知り合いの貴族がいるわ。彼ならもしかしたら匿ってくれるかもしれない」
「そうなると、街に入らないとダメだろ。俺とメルティとフィーロは無理だ。それに相手は貴族なんだろ?」
貴族か…。あんまり信用できないな。国教である三勇教会の信者の可能性が高いし。
「たぶん大丈夫よ」
「なんでだ?」
「その貴族は、母上の右腕をしていた貴族の方と同じ考えをしていたからよ」
「どういう意味だ?」
「その貴族の方は、亜人と人間の仲を取り持とうと活動していた方なの。政治的な手腕も母上の右腕ができるほど素晴らしくて、同じ志を持っている貴族のリーダーもしていた凄い方なの」
「じゃあそいつが三勇教会とか国王を黙らせろよ」
尚文の言う通りだな。女王の右腕ができる人ならこの状況もどうにかできるだろ。なんで何もやらないんだ?
「…その貴族の方はナオフミが召喚されるよりも前に発生した波で領民を守るために戦って戦死したのよ」
マジかよ。
メルティの話を聞く限り相当優秀な人だったんだろうな。しかも、亜人の立場が低く、奴隷として扱われているこのメルロマルクで亜人の立場を上げようとするなんて。
良い人が早く亡くなるってのは酷いな。
「そして、その貴族の方が亡くなったことが判明すると、その貴族と同じ志を持っている貴族達は父上の名によって辺境に左遷されたわ」
「あのクズの亜人嫌いも相当だな」
「…その貴族のリーダーをしていた方は、セーアエット領の領主様でこの辺りはセーアエット領の領主様の仲間の方の領地よ」
「そうなのか。…どうしたラフタリア?」
尚文がラフタリアの表情が暗くなっていることに気づいて、声をかけた。
「私が住んでいた村はセーアエット領の領主様の保護区でした」
「確か、セーアエット領の保護区は波の後に暴徒の襲撃を受けたって聞いたわ」
「はい。私の住んでいた村は波が終わった後、復興のための準備をしていると国の兵士達がやってきました。最初は復興の手伝いをしてくれるのかと思っていましたが、彼らは武器を持ち私たちを襲いました。大人の男性は殺され、戦えない女性や子供は捕まえていきました。私は捕まった後奴隷として売られました」
ラフタリアは忌々しいと言った声色で自身の過去を告げた。
「この国の連中本当に碌なことをしないな」
「全くだ。波という災害に被災し、生き残って村の再興をしようとした人たちに真っ先にすることが生き残った人たちを襲撃するなんて最低だな」
尚文と俺が国の兵士がラフタリアや生き残った人々に行った所業に文句を言っていると、メルティがラフタリアの元まで移動して頭を下げた。
「ごめんない。私は王族なのに…きっと何かできたのに…」
「メルさんが謝ることではありませんよ。それに…もう過ぎたことです」
ラフタリアは悲しそうな顔をして、俯いた。
「ラフタリアさん。今回の騒動が済んだら、ラフタリアさんや生き残った人たちを襲った兵士達たちの特徴を教えて。王族として絶対に厳罰に処すわ」
メルティは決意に満ちた声でラフタリアに言う。
「はい!」
ラフタリアはメルティの決意を聞き、表情が明るくなった。
「それで、メルティの知り合いの貴族がこの辺りにいるんだよな?」
「ええ。父上の周りや城の中には居なかったから自分の領地に戻っていると思うわ」
「それなら、一か八かその貴族の元に行ってみるか。だが、問題はどうやって町に入るかだな」
「そうだね。普通に入ろうとしても門番に止められて衛兵に捕まるだろうな。……ラフタリアの魔法でどうにかできない?」
「ホムラさんそれは難しいわ」
俺がアイデアを出すが、メルティに否定された。
「時折、幻影の魔法で町に入ろうとする人がいるからその対策として探知魔法を使える道具が設置されているの。それをどうにかしないといけないわ。それに、探知の魔法を使える道具は町ごとに設置場所が違うの。不法侵入をしようとする人たちに覚えられないようにするために」
しっかり対策してるんだな。てか、そうなるとどうやって町に入ろうか?
「じゃあフィーロが夜にみんなを乗せて壁を飛び越えて町に入るのはー?」
「発想は悪くないが、見張りに見つかったら終わりだ」
「そうね。それに、探知の魔法に引っ掛かったりしたら危ないわ」
その後も俺たちは街に入るための作戦を考えるがなかなか良いアイデアが出ない。
「ナオフミ様。私が村に入って馬車に乗せてもらえないか聞いてみます。もし乗れたらナオフミ様たちはフィーロに乗って追いかけてきて下さい。町に入ったら私がどうにかして貴族の方を町の外まで連れてきますので」
「大丈夫なのか?」
「大丈夫ですよ。屋敷までお送りします」
「ならいいんだが…」
「私の馬車なのでどうぞご遠慮なく」
?今のセリフ、誰が言ったんだ?
右からラフタリア、尚文、俺、フィーロ、メルティ、メガネを掛けている知らない男性。
………誰!?
「何者!?」
俺とラフタリアが剣の柄に手をつけ、いつでも抜刀できるように構える。
俺とラフタリアが知らない男性に向けて構えていると、メルティが前に出て知らない男性に話しかけた。
「お久しぶりです。ライヒノット」
「メルティ様ようこそお越しくださいました。初めまして盾の勇者様。私はこの地の領主のヴァン・ライヒノットと申します」
この人、いつの間に俺たちのすぐ横まで接近していたんだ?
全く気づかなかったぞ。ラフタリアとフィーロすら気づかないって気配遮断のスキルでも持ってるのか?
「立ち話もなんですので、私の屋敷に行きませんか?」
ヴァン・ライヒノットが言うと馬車がこっちに向かってきた。
「ご安心を。通報などいたしませんので」
「どうするマスター?」
「もう見つかってしまったんだ。ついて行くしかない。それにメルティはたぶん信用できると言ったし、信じてみよう」
その後、俺たちはヴァン・ライヒノットの馬車に乗り、彼の屋敷に移動した。