盾の勇者と天の聖杯   作:三途豆

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隣町の貴族

「なるほど、私の領地には逃亡の末に辿り着いたということですか」

「ああ」

ヴァン・ライヒノットの屋敷に着いた俺たちは、今回の騒動で何があったのかを全て話した。

 

「一つお尋ねしたいのですが、盾の勇者様が騎士団や他の勇者様たちの追跡から逃れるために、近隣の山に火を放ったと騎士団から報告があったのですが、事実なのでしょうか?」

尚文の予想通り、国の連中は山火事を起こした犯人を尚文にしたな。

「全くのデタラメだ。おそらく第一王女か三勇教会がでっち上げたんだろ」

 

「やはり真相は異なっているようですね」

ライヒノットは報告の内容と真実は異なることは予想していたようだ。

 

「私はメルティ様の身を案じ領内の見回りをしていました。運良くメルティ様と盾の勇者様一行と遭遇できて良かったです。

長旅でさぞお疲れでしょう。しばらくの間、我が屋敷でゆっくりして下さい」

「ごしゅじんさまー。お腹空いたー」

「フィーロ」

ラフタリアが注意するが、ライヒノットが止めた。

「ひとまず、食事にしましょうか。こちらに」

ライヒノットが別の部屋に向かったので、俺たちもライヒノットに続く。

一瞬メイドが見えたので、食事の用意をするんだろうな。

 

「こちらにお座りください」

俺たちは大きなテーブルがある部屋に案内された。ここは食堂か?

ひとまず、俺たちは席に着く。

席に着くと、メイドが食事を持ってきた。

 

「わあぁぁい。美味しそうー。ごしゅじんさま食べていい?食べていい?」

フィーロは初めて見る貴族の食事に少々興奮している。

「待てフィーロ。まだこいつを信用したわけじゃな」

「うん美味しい。ご安心ください毒なんて入ってないですよ」

ライヒノットは尚文の食事を摘み、食べた。

これは屋敷の主が毒味をしたから安心してくれってことか。

 

「いっただきます〜」

フィーロは素手で食べようとするが、「フィーロ!行儀が悪いですよ」とラフタリアが注意する。

「はーい」

フィーロはナイフとフォークを使って料理を食べ始めた。

 

「ナオフミ様。私たちもいただきましょう」

ラフタリアが食べ始めたので俺とメルティも食べ始める。

「人の厚意を疑うなんて失礼にも程があるわよ。ナオフミ」

「…明日の朝にはここを出るぞ」

「そんなに早く?」

「長居すれば国の連中に嗅ぎ付かれるだろ」

「…それはそうだけど」

メルティは納得はしたようだけど、少し不満そうだ。

 

「もう少し休みたかった?」

「ええ」

俺が聞くと、メルティは肯定した。

 

「メルティ様は少し変わられましたね」

「そ、そう?」

「ええ、以前は公務を優先して感情を出さず敬語で話していましたので。今の方が民は喜ぶと思いますよ。良い方へ成長されたようで何よりです」

と、ライヒノットは今のメルティを微笑ましいものを見る目で笑みを向けた。

「何言ってるんだ?完全に悪い方だぞ。どこぞの鳥みたいにピーチクパーチク喧しいし」

「誰の所為で私がこうなってると思ってるの!?」

「お前の資質だろ。ヒステリーはクズの父親そっくりだな」

「なんですって!?」

「食事中だぞ。静かにしろ」

「ナオフミの所為でしょう!?」

2人はそんな会話をしながら食事を続けた。

 

食事を終えた俺たちはベッドがある部屋に案内された。

ライヒノットとメイドが部屋を出ると、部屋を調べ始めた。

「何をやってるの?ナオフミ」

「話がすんなりと進みすぎている。食事には毒が含まれてなかったが、いつあの貴族が俺たちを裏切ってもおかしくない」

「裏切るって…どうしてライヒノットを信じないの!?」

メルティがなんで信じないのか叫ぶ。

でも、尚文がこの世界に来て3日目で何が起こったのかを知っている俺は正直尚文がライヒノットを信じない気持ちも理解できる。

朝起きたら親切にいろんなことを教えてくれた仲間がおらず、金や装備品も奪われて突然国の兵士に城まで連行されて三勇者や国王に責められて、信じていた仲間には冤罪を被せられたら誰だって人間不信になる。俺なら心が折れるだろうな。

「メルティ。君は尚文がこの世界に来て3日目になにがあったかを知ってるだろ」

俺はメルティの肩を掴んでそう言った。

メルティは理解はしてるけど、納得できないって顔に書いてある。

「そうだぞメルティ。俺が今部屋を調べているのはお前の姉と父親が元凶だってことを理解しろよ」

ビッチとクズの話が出たからか、尚文の機嫌が悪くなった。

「わかってるわよ。わかっているけど、少しは信じなさいって言ってるの」

「知らんな。俺は俺の思う通りにやってから休む」

「父上や姉上に怒ってるのは、ナオフミだけじゃないわ」

「俺以外?誰だ?」

「母上よ。何か騒動があったことを報告できくと、父上や姉上を模した人形や絵に八つ当たりをしていたわ」

「へー。お前の母親とは話が合いそうだな。ま、男を見る目はないみたいだが」

「ちょっと!母上の悪口まで言う気!?」

…部屋の雰囲気が少し悪くなってきてないか?

 

「ナオフミ様。私が見張りをしておくので休んで下さい」

「…わかった。ラフタリア、見張りは任せた」

尚文はベッドに入り寝ようとする。

「ちょっと!なんでラフタリアさんの言うことは素直に聞くのよ!」

「ラフタリアは信用に値するからだ」

「私は信用できないの!?」

「別に…」

まあ、メルティも信用できるのは事実なんだろうけど、尚文の中では数日間一緒に旅をするメルティと2ヶ月以上一緒に旅をするラフタリアとは信用の値が違うからな。

「フィーロ…ねむぃ〜」 

フィーロも眠そうだな。

「フィーロも寝てていいよ。俺もラフタリアと一緒に見張っておくから」

「ありがと〜」

フィーロはベットに入り眠った。

 

「ラフタリア、俺は部屋の前で警備をしておくから室内は任せた。もし暗殺者とかが入ってきてもラフタリアなら気づけるだろ」

「ええ。この距離ならすぐにわかりますので」

「気配察知は俺よりもラフタリアの方が得意だしな。頼んだよ」

「はい」

俺は部屋の扉の前に立って、侵入者が来ないかを確認し続ける。

やってることが門番だな。

 

しばらく、扉の前で立っていると後ろからノックされた。

誰か出てくるんだろうな。

俺が扉から離れるとメルティとフィーロが出てきた。

「どうしたんだ?2人とも?」

「ホムちゃん。フィーロ、メルちゃんと一緒にこの家を探検してくるね」

「ホムラさん、ラフタリアさんには許可をもらってるわ」

ラフタリアは既に許可を出したのか。なら大丈夫か。

「わかった。それと、いつ追手が来るかわからないし、いつ発見されてもおかしくないから、外には出ないようにしろよ」

「はーい」

「わかったわ」

フィーロとメルティは俺の言ったことに対して、返事をすると屋敷の探検に向かった。

もし、仮に襲撃があってもフィーロならメルティを守り切れるだろうな。

 

その後、ずっと扉の前で見張りをしているとフィーロとメルティが戻ってきた。

「ホムちゃんただいまー」

「ホムラさん、ただいま戻りました」

「おかえり、2人とも。探検はどうだった?」

俺がフィーロとメルティに探検の成果を聞くと、フィーロは見たことのない色んな物を見つけて、メルティに聞いていたそうだ。

メルティはフィーロと一緒に探検ができて楽しかったようだ。

それと、ライヒノットが何をしているのか見てきたそうだ。ライヒノットは貴族の仕事をしながら三勇者の動向を調べているみたいだ。

俺は2人の成果を聞き、部屋の中に入れた。

 

しばらく扉の前で見張りをしていると、尚文が出てきた。

「ホムラ交代だ。今から俺が見張りをするから、お前は休め」

やっと交代の時間だ。ずっと扉の前に立って敵が来ないかを見張るのはしんどいんだよな。

それに、三勇者と戦ってから一睡もしてないからかなり眠い。

「わかった。後は頼んだ」

「ああ」

俺はそう言ってから部屋に入った。

 

部屋に入ると、フィーロとメルティが起きていた。

どうやら2人が室内で見張りをしてくれるみたいだ。ラフタリアは既に寝ている。

「2人とも見張りは任せた」

「わかったー」

「わかりました」

2人が返事をしたのを確認し、俺は眠りについた。

 

 

 

「起きろ!ホムラ」

「ん?何〜?」

俺は尚文に起こさ、目を覚ました。

窓から外の景色を見ると、空が明るくなっている。どうやら朝のようだ。

「どうしたんだ?マスター?」

「あれを見ろ」

尚文は屋敷の玄関に停まっている馬車を指差した。

その馬車の後ろには10体ほどの馬が止まっている。

それにライヒノットが連行されている。

 

俺が馬車を見ていると、メイドが部屋に入ってきた。

「勇者様!早くお逃げ下さい!」

「何があった?」

「隣町の貴族がこの屋敷に盾の勇者様にいるのではないかと言い、乗り込んできました」

もう嗅ぎつけられたのか!?

「皆様。急いで勝手口から逃げてください」

「…わかった。だが、俺たちを罠に嵌めたら、即座に反撃をするからな」

尚文が裏切りは許さないと脅すと、メイドは理解しているって表情で頷いた。

俺と尚文とラフタリアは、メイドに着いて行き勝手口を目指す。

 

「そういえば、フィーロとメルティは?」

俺はフィーロとメルティを見かけないので、尚文とメイドに聞いた。 

「あの2人なら屋敷の探索を再開したな。お前は何か知らないか?」

尚文がメイドに2人を知らないか聞いた。

「金髪の方とメルティ様は、お二人とも逃亡の準備を共に進めています」

2人は別で準備してるのか。

それなら、屋敷を出たらすぐに移動しよう。

 

「この厨房の先が勝手口です、そこから…!まずい!隠れて!」

メイドは人の気配を感じて、俺たちを厨房にある休憩室に押し込んだ。

俺たちが休憩室に入った瞬間、兵士たちが厨房に入ってきたようだ。

「おい!そこのお前!一体何をしている!」

「あ、あなた達は一体どこの兵ですか!それにここは厨房ですよ!」

「どこだろうと関係ない!盾の悪魔を探せ!」

兵士の1人がそう言うと、周りの兵士たちが厨房のあちこちを調べて始めた。

 

「兵士達は、この部屋に入ってくるかもしれないから、ひとまず、この部屋で隠れられそうなところを探すぞ」

「はい」

「了解」

俺と尚文とラフタリアは、メイドたちの休憩室の中で隠れられそうなところを調べた。

その結果、中に何も入っていない空のロッカーがあったのでそこに隠れることにした。

 

「ダメです。見つかりません」

「いやまだだ。まだそこの部屋を確認していない」

その部屋って、多分俺たちがいる部屋だよな。

「この部屋は私たちの部屋です。勝手に開けないでくださ」

「黙れ!我等の使命を邪魔するな!」

「ですが」

「うるさい!お前は私と来い!」

「キャア!」

メイドの悲鳴が聞こえる。

それと同時に兵士の笑い声が聞こえてきた。

品の悪い兵士だな。

 

やがて、兵士たちが休憩室の扉を開けた。

この部屋も調べるだろうな。

俺は尚文を見ると、尚文は盾を構えており、ラフタリアは剣に手をつけていていつでも戦えるように構えている。

これは、俺もやるしかないな。

 

俺が剣に手をつけようとすると、厨房の入り口から声が聞こえた。

「お待ちなさい!」

この声はメルティ!?

「私の名前はメルロマルク国第二王女メルティ=メルロマルクです。なんですか、このような場所に大勢で来るなど…恥を知りなさい!」

メルティの声色は尚文と話している時の物ではなく、王族として威厳のある声色と口調だ。

「第二王女!?」

「本物なのか!?」

兵士の何人かは、メルティが本物なのか疑っている。

「嘆かわしい。兵の質がこんなにも低いとは…。これでは主の質も知れるというもの…。誰の命でこんな愚行を行っているのですか!」

メルティは、兵士の質が低いことに怒りを露わにしている。

俺もこの兵士たちの質が悪いことはわかってきてたけど。

 

「盾の悪魔はどこだ!」

1人の兵士がメルティに怒鳴る。

「お黙りなさい!貴方は誰に物を言っているのです!」

「これはこれは、メルティ王女様」

知らない人の声が聞こえた。

その声に兵士たちが反応し、道を開けた。

 

「あ…」

ラフタリアが声を漏らしそうになり、口を押さえた。

なんだ?ラフタリアの様子がおかしくなった。

顔は青ざめ、脂汗を流して震え始めた。

「大丈夫か?」

尚文が心配そうに小声で聞いた。

ラフタリアはコクコクと頷いているが、全く大丈夫そうには見えない。

 

「ご無事でなによりです。御身を案じてはせ参じました」

「イドル・レイビア。確か、昔父上と共に戦場で戦ったと聞いています」

「はっ」

あのクズと共に戦った人か。きっと罠に嵌めた敵を嘲笑ったりしてたんだろうな。

「この屋敷にやってきた兵たちは貴方の私兵ですか?」

「いかにも」

あのイドルってやつが、この屋敷に乗り込んで来た隣町の貴族で間違いさなそうだな。

人の屋敷に兵と共に乗り込んでくるところを見るに信用できる人じゃなさそうだ。

「それで、盾の悪魔はどこにいるのでしょう?」

「盾の勇者様ならこの場にはおりません」

「ほう……それはどういう意味ですかな?」

「私から盾の勇者様に、私を置いてこの場からお逃げ下さい。私が国に残り、勇者様の容疑を晴らしてみせると」

「つまり、メルティ様自身はこの場に留まり、盾の悪魔はどこかに逃げたと?」

「ええ、どこに行ったのかは私にもわかりません」

「そうですか。…お前たち屋敷に盾の悪魔がいないか調べたんだな?」

「はい!」

「そうですか。では、メルティ王女。私とご同行をお願いします」

「わかりました」

メルティとイドルは会話を一旦やめて、どこかに移動していく。兵士たちもメルティとイドルに着いていったようだ。

途中で何か話始めたが、ここからではあまり聞こえない。

 

まさか、メルティは俺たちが隣国へ逃げるためにワザと捕まるのか!?

そんなの無謀にも程があるぞ。

 

「ナオフミ様、ホムラさん」

ラフタリアは覚悟を決めた目で尚文と俺を見た。

これは、なんとしてでもメルティを取り戻すつもりの目だ。

尚文もラフタリアと同じようにメルティを取り戻すようだ。

…腹を括るしかないな。

 

俺が扉のドアノブを触り、扉がちょっとだけ開くと、外からメイドが扉を押さえた。

「こらえてください。今あなたが見つかったら領主様が罰せられしまいます…どうか、お願いします」

そうだ。もしこの場でメルティを取り戻せたとしても、今はフィーロがいない。フィーロとどこかで合流すれば、イドルの手勢から逃げきることができる。

しかし、そうなるとライヒノットは間違いなく罰せられる。最悪の場合、死刑だってありえる。

それに、もしフィーロと合流できなければ俺たち全員イドルの手勢に殺されてもおかしくない。

 

「領主様の調べた情報によりますと、槍の勇者様はここよりも離れた地域で盾の勇者様を捜索しているようです。剣と弓の勇者様もこの辺りにはいないようです」

ライヒノットの奴。三勇者の動向を調べていたのか。

 

どうする?一か八かメルティを奪還するために部屋を出るか?それとも、食事と休憩を与えてくれたライヒノットを優先してこの部屋に留まるか。

俺が考えていると。

「ここに盾の勇者様はおられません!」

メルティの大きな声が聞こえた。

もしかして、俺たちが部屋を出てメルティを追いかけるのを予測したのだろうか。

 

メルティの声を聞き、尚文が休憩室の扉を閉めた。

「ナオフミ様!」

「メルティの意思を無駄にしてはならない」

尚文がそう言うと、ラフタリアは剣から手を離した。

 

それから、30分程経過するとメイドが扉を開けた。

どうやらメルティはイドルに着いていったそうだ。

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