警備兵についていくと、3階にある一つの部屋まで案内された。
中を見ると、イドルらしき肥満体型の貴族がフィーロと睨み合っている。メルティはイドルらしき貴族に捕まっており、首に刃物を当てられている。あれは、メルティを人質に取っていているな。フィーロはメルティが人質になっているからか動けないみたいだ。
すぐ近くには、ライヒノットが倒れている。
見たところ生きてるみたいだ。
「動くな!邪悪な魔物!貴様が一歩でも動いたらメルティ第二王女様にこの刃物が刺さるぞ!」
「なら、動かなければ良いだけだ!」
「!?誰だ!」
イドルは尚文とラフタリアと俺に気づいていないのか。
いや、フィーロがあまりにも強いからそっちを最も警戒しているから俺たちの接近に気づいてないのだろうな。
この部屋に到着するまでいくつかの部屋を見たが、殆どの部屋がかなり破壊されていた。壁が破壊されてる部屋や家具が倒れている部屋がいくつもあった。フィーロが大暴れしている証拠だな。
「エアストシールド!」
尚文がスキル名を言うと、メルティとイドルの間に一枚の盾が現れた。
「なっ!?」
「今だ!」
「うん!てやぁ!」
イドルが驚いて隙が生まれた。その一瞬の隙をフィーロは見逃さず、回し蹴りを放った。
「ぐはっ!」
フィーロの回し蹴りを受けたイドルは壁に叩きつけられた。
ラフタリアは、メルティに怪我がないか確認を始めた。
「領主様!」
警備兵がイドルに駆け寄ろうと走り出した。
「行かせない!」
俺はヒカリ形態に変身して、警備兵に接近して取り押さる瞬間に攻撃力の高いホムラ形態に切り替えた。攻撃力は腕力としてもカウントされるのでホムラ形態のパワーはヒカリ形態よりも高い。
俺が警備兵を取り押さえていると尚文が警備兵に近づいて、「薬をやるから今すぐこの屋敷から出て行け。もし俺たちに剣を向けたらどうなるかわかってるよな」と言いいながらフィーロを指差すと、警備兵はコクコクと頷いた。
「ホムラ、離してやれ」
尚文から指示が出たので俺は警備兵を離した。
警備兵が尚文が解毒薬を受け取ると、警備兵は走って部屋を出て行った。
「ナオフミ!なんで来たの!」
「子供を見捨てる勇者なんて聞いたことがないなから」
「私がやったことが台無しじゃない………でも、ありがとう」
尚文とメルティが話をしているうちに、俺はライヒノットの元に駆け寄り、彼に回復魔法を使用して癒す。その後、俺はライヒノットに肩を貸して立ち上がらせ、小声で話しかける。
「ごめんライヒノットさん。俺たちの所為で迷惑を掛けた。本当に申し訳ない」
「お気になさらないでください。こうなることも覚悟の上ですから。…それと、イドルを止めて下さい。彼は亜人が押し掛けて来たことで、大義名分を得たと考えており、正式に亜人たちを処分できると喜んでいました。お願いします」
ライヒノットは話しながらイドルを見た。
やはり、あの肥満体型の貴族がイドルなんだな。
奴隷となったラフタリアと友人のリファナを拷問するのが趣味なクソ野郎なのは知っていたが、まさか押し掛けてきた亜人たちすら殺す気なのかよ。亜人が押し掛けてきたのは、イドルがライヒノットを無理矢理連行したのが原因だろうが。
「私のことは心配なさらないで下さい。ことが収束するまでツテを使って隠れていますので」
ライヒノットはそう言いながら、微笑んだ。
迷惑を掛けたので、そう返されると少し安心する。
ライヒノットが無事に回復したのを見て、ラフタリアとフィーロと尚文とメルティがイドルを睨みつけた。
特に、ラフタリアは尻尾が逆立っており本気で怒っているのを、俺たちは感じ取った。
「おのれ…よくも私を攻撃したな!貴様ら拷問だけでは許さんぞ!」
イドルの奴、フィーロの回し蹴りを受けたのに立ち上がるのか。
かなり丈夫だな。
「許さない…ですか。ええ。私も貴方を許すつもりなんて毛頭ありません」
ラフタリアは、剣を抜きながらイドルに告げた。
イドルも対抗して、腰に付けていた鞭を手に持った。
鞭使いか。
鞭を使う敵とは戦ったことがないな。警戒しないと。
「私を許さないだと?その言い方、貴様私を知っているな。何者だ!?」
「…貴方は私のことをもう忘れたのですね」
「………!?思い出したぞ!貴様は私がレンタルした亜人だな!」
今になってようやく思い出したのか。
「あの日から数ヶ月しか経っていないのに、それだけ成長しているとは…やはり貴様ら亜人は人ではない!」
イドルはそう言ってから鞭をラフタリアに、いや違う。俺たちに向けて横薙ぎに振る。
ラフタリアは迫ってきた鞭を屈んで回避する。
俺と尚文も同じように回避する。
フィーロはメルティを背に乗せて壁を蹴って回避した。
少し離れていたライヒノットもラフタリアと同じように屈んで横薙ぎを避けた。
しかし、
「領ぐはぁ!」
部屋に入ってきた警備兵7人のうち、1番前にいた警備兵が鞭に直撃して、倒れた。
「りょ、領主様?」
「何を立ち止まっている。そこの盾の悪魔とその一味を早く殺せ!」
「は、はい!」
警備兵たちは、1人がラフタリアに向けて駆け出し、5人は俺たちに向けて走ってきた。
俺と尚文とフィーロは前に出て、メルティは後方で構える。
「死ね!盾の悪魔!」
1番前にいる兵士が尚文に向けて剣を振り下ろす。が、
「エアストシールド!」
尚文が空中に盾を出して、攻撃を防いだ。
「か、固い!」
「チェンジシールド!キメラヴァイパーシールド!」
尚文がスキル名を唱えると、空中に出ている盾がキメラヴァイパーシールドに変化した。
キメラヴァイパーシールドの蛇の装飾が動き出して、警備兵を縛り上げて拘束した。
「く、くそ!離せ!」
警備兵は身体を動かして拘束から脱出しようとしているが、全く脱出できそうにない。
フィーロは接近してきた警備兵を蹴り飛ばしている。
「盾と鳥の魔物は危険だ!まずは、あの赤い髪の女からやるんだ!」
警備兵たちは、防御力の高い尚文と戦闘力の高いフィーロを倒すのではなく、戦闘力が不明な俺から倒すつもりのようだ。メルティを狙わないのは、近くにフィーロがいるからだろうな。
警備兵3人が俺目掛けて走ってくる。
俺は一番最初に切り掛かってきた警備兵の剣を、無◯転生の水◯流の様に受け流す。
受け流した後、俺は受け流しの勢いを利用して剣を警備兵に向けて叩きつける。
「ぐわっ!」
俺のカウンターを喰らった警備兵は地面に叩きつけられて動かなくなった。
俺はヒカリ形態に変身して、残り2人の警備兵に向けて駆け出す。
警備兵の1人は接近してくる俺に向けて剣を上段に構えながら走ってきた。もう1人は剣を中段に構えている。
俺が、警備兵の攻撃が当たる間合いに入り、攻撃が当たると確信した警備兵が剣を振り下ろしてきた。
(その攻撃中の無防備になるタイミングを待ってた!)
「フォトンエッジ!」
「なっ!?消え、ぐはっ!?」
俺はフォトンエッジの効果で、剣を振り下ろしている警備兵の背中に攻撃を当てる。そのまま、もう1人の警備兵にも攻撃する。
「ぐあ!」
警備兵たちがフォトンエッジの攻撃を受けたことで体勢が崩れた。
俺はフォトンエッジの連続攻撃でいろんな角度から2人の警備兵に連続攻撃を浴びせた。
フォトンエッジの効果が終わる頃には、俺たちに向かってきた警備兵は拘束されている1人を除いて、全て倒した。
残りはラフタリアの方に行ったやつだけだな。
俺がそう思いラフタリアの方を見ると、ちょうどラフタリアと警備兵の戦いが終わるところだった。
「邪魔です!」
ラフタリアは剣を振りかぶる警備兵の剣を自身の持っている剣で弾き飛ばした。弾き飛ばされた剣は天井目掛けて飛んでいき、突き刺さった。
「は?え?」
警備兵は今起こった現象に困惑して動きを止めた。
「フンッ!」
「ぐへぇ!」
その隙にラフタリアが警備兵をイドルに向けて蹴り飛ばした。
イドルはラフタリアによって蹴り飛ばされてきた警備兵を避けた。
受け止めないんだな。
「チッ!役立たずめ!」
それどころか、暴言まで吐きやがった。
イドルは忌々しそうに言ってから、鞭を振るう。
鞭はラフタリア目掛けて飛んでいくが、ラフタリアは避けた。
ラフタリアはイドルに向けて剣を振るうが、イドルはなんとか回避した。
ラフタリアに命中しなかった鞭はイドルの器用な操作で近くのテーブルに引っ掛けてラフタリアの背中に向けて飛んでいく。
まずい。ラフタリアは攻撃を回避されているのに加えて、イドルを見ていて、後ろから来る鞭に気付いてない。
俺が駆け出すのと同時に尚文が動いた。
「セカンドシールド!」
尚文が空中に2枚目の盾を出し、イドルの鞭を弾こうとしたがイドルは鞭を巧みな操作で盾を起点にして、さらに曲がりラフタリア目掛けて進む。
「フォトンエッジ!」
俺はスキルを発動させ、瞬間移動と錯覚させるほどの速度で鞭まで移動して、鞭の先端から真ん中までを連続斬りで切り刻んだ。
よし!これで、ラフタリアへの攻撃は防げた。
それに、鞭本体が半分になったことで射程が半分になりラフタリアの背後を攻撃するのは難しくなった。
「邪魔をするな女ぁ!」
イドルのやつ、鞭を半分にされブチギレて俺に向けて怒鳴ってきた。
完全に俺をターゲットにしている。
でもさ、俺に注目するのはいいけど、ラフタリアのことが意識から抜けてるな。
「覚悟!」
ラフタリアが剣を振い、イドルの手首を斬り、体に剣を突き刺した。
手首を切られたとこでイドルは自身の鞭を落とした。
これでイドルは素手で戦うしかない。
「うぐっ…まだだぁ!」
イドルの奴、どこからか新しい鞭を取り出してラフタリアに振るった。
ラフタリアは咄嗟にイドルの体に刺していた剣を引き抜き、剣を盾にして攻撃を防いだ。だが、盾に使った剣が部屋の端まで飛んでいってしまった。
「ラフタリア!これを使え!」
俺は一度人間形態に戻り、持っている剣をラフタリアに向けて投げる。
「やらせるか!」
イドルが鞭を振るって俺の剣を弾き飛ばそうとする。
まずい!ラフタリアは今素手だ。いくらラフタリアでも素手でイドルを倒すのは不可能だ。
どうするどうやってあの鞭の攻撃を弾く?
フォトンエッジはクールタイム中で使えない。炎の流星剣とブレイズエンドでは攻撃発動まで予備動作で間に合わない。一体どうすればいい?
その時、尚文とフィーロが動いた。
「フィーロ。この警備兵を鞭目掛けて蹴り飛ばせ!」
「うん!てやぁ!」
「うわぁぁああああ!!!ぐぼぇ!」
尚文が拘束していた警備兵をフィーロが蹴り飛ばし、蹴り飛ばされた警備兵は鞭と激突した。
「なに!?」
イドルのやつ、尚文の行動に予想できなかったのか驚いている。
とにかく、これでラフタリアが俺の剣を受け取れる。
ラフタリアは俺の投げた剣を受け取り、イドルに向けて振るう。
「これで終わりです!」
「待、待っ」
イドルは待ってと言おうとしていたが、ラフタリアは無視して剣をイドルの体に突き刺した。
「ぐぁああああああ!!!貴様ァ!貴様は一体誰を刺しているのかわかっているのかぁぁあああ!」
「私が刺しているのは自身よりも弱い人に当たるだけの卑怯者です!」
ラフタリアはイドルに突き刺さった剣を全力で押し込む。
イドルが咄嗟に拳を突き出すと、ラフタリアは後ろに下がって回避した。
ラフタリアは回避した直後に、腰の魔力剣を引き抜いてイドルの身体にあてた瞬間にラフタリアは魔力を魔力剣に流して刀身を出現させた。
魔力でできた刀身はイドルを貫く。
「おのれぇぇえええ!!!亜人風情がぁぁああああああ!!!」
イドルはそんな声を上げると、壊れかけていた壁に激突した。
壁に激突したイドルは自身の体重に壁が耐えきれなかったようで、壊れかけていた壁を破壊して地面に向けて落下し始めた。
「ゆ、許さんぞぉぉぉおおお!盾の悪魔の一味ぃいいい!!!」
イドルはそう叫びながら俺たちの視界から消えた。
すぐにグチャッと肉が潰れたような音が聞こえた。間違いなくイドルが地面に激突した音だろう。
「りょ、領主様が盾の悪魔一行に敗れた!も、もう無理だぁあああああ!」
警備兵が馬鹿でかい声を上げながら部屋から走り去っていった。