綿毛のボクとヒーローのデク   作:月日は花客

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▼1:ぼく、モンメン!

 

「……君は?」

「モ? メェ〜」

 

 ぽかぽかの日差しが気持ちいいある日。

 ボクは、モサモサ頭のニンゲンのこどもと出会った。

 

 なんだかボクと似てる気がして、その子についていったんだ。

 それが、ぜんぶの始まり。

 

 *

 

「出久、メェちゃんと遊びに行くの?」

「うん、いつもの公園!」

「メェ〜」

 

 ボク、モンメン!

 くさタイプの、ふわふわしたポケモンだよ!

 ママやごしゅからは、「メェちゃん」って呼ばれてるの!

 ごしゅは、緑のふわふわした髪の、ニンゲンのおとこのこ。ボクを拾ってくれたんだぁ。

 

 ボクは、ここに来る前は、「ボックス」ってところで、他のポケモン達と預けられてたんだ。でも、お昼寝から覚めたら、知らない公園にいたの。

 びっくりしたし、他にポケモンは見えないしで怖かったけど、ごしゅと出会ってから怖くなくなったの!

 あのね、ごしゅは隅っこでちぢこまってたボクに手を差し伸べてくれて、お家に連れ帰ってくれたんだ。

 

 ママは、おどろいてたけど、ごしゅが説得してくれて、ここの子になれたの!

 名前もつけてくれて、ご飯もくれて、もうすっかり家族なんだよ!

 ごしゅは、まだ小さいから、メェちゃんが見ててくれると安心なんだって。ごしゅが転んだ時、ママに知らせに行ったら、すっごく褒められたの。

 

 ごしゅは元気なこどもだけど、よく転ぶから、転んだ時はボクがクッションになってあげるの。ボクは、とってもふわふわだからね!

 公園でも、ブランコとか、滑り台で遊ぶのはとっても楽しい。だから、ボクはいっつもごしゅと遊びに行くの!

 お日様も浴びれて、光合成もはかどるんだよ!

 

「今日はなにして遊ぼーね、メェちゃん!」

「メェ〜!」

「オールマイトごっこかなぁ、やっぱり」

 

 ごしゅはね、オールマイトって黄色いひとが大好きなの。ひーろーなんだって。

 黄色い髪がぴーんと立ってて、ピカチュウみたいだけど、おっきくてムキムキなの。カイリキーみたいに。

 ごしゅも、大きくなったらひーろーになるんだって!

 

「デク、お前も来てたのかよ」

「かっちゃん!」

 

 あ、とげとげくんだ。

 とげとげくんはごしゅの友だちで、ツンツン頭なの。目も、ツンツンしてるんだ。だから、とげとげくん。

 ごしゅはあんまり気にしてないけど、とげとげはごしゅのこといじめるからキライ!

 それに、ボクのことボールにして遊ぶんだもん! ごしゅが止めてくれなかったら、土まみれになってたの。

 

「お前、ヴィラン役な! おれがオールマイト!」

「えー! 昨日も一昨日も僕がヴィランだったじゃん!」

「うっせー! 毛玉はヴィランの仲間な!」

 

 とげとげはボクのこと毛玉って呼ぶの。

 ボクのもふもふは綿なのに! 心の中であっかんべーしても、とげとげは笑ってボクらを追いかけ回し始める。

 ふーんだ! ボクが本気になったら、「たいあたり」で吹っ飛ばしてやれるんだからなー!

 そんなことしたら、ごしゅが悲しむからやらないけど。

 ごしゅはやさしーんだ! じまんのごしゅなんだ!

 

「個性が決まったら、俺はゆーえーに入る! んで、オールマイトみてぇなヒーローになる!」

 

 とげとげが力強く宣言した。

 この世界には、“個性”っていう、ボクらでいうところの特性みたいなものがある。

 それで、ママはちょっとだけ物が引き寄せられたりするんだ。「ねんりき」みたいだね。

 もうちょっと大きくなったら、ごしゅやとげとげも個性が出るんだって。

 強い個性だったら、ヒーローになりやすい? みたい。

 

 ボクの特性は“いたずらごころ”。

 ボックスで一緒だったリザードンおじちゃん曰く、強い特性なんだって。でも、ボクはボックスでずっと待機してるままだった。

 ボクが生まれた時、トレーナーはボクに図鑑を当てて、「5か」って言ってた。

 なんだかわかんなかったけど、リザードンおじちゃんは「6」なんだって。

 あのボックスへの帰り方はわかんないけど、リザードンおじちゃんは元気にしてるのかな。

 

 夕方の帰り道、ボクはごしゅに抱っこされていた。

 ボクの重さは0.6キロだから、子どもでも持てちゃう重さだ。落とさないようにぎゅっと抱かれて、ふわふわを撫でられる。

 今日もたくさん遊んで、服は砂まみれだし、汗だくだ。

 お風呂はあんまり好きじゃないけど、ごしゅと一緒なら楽しいから入るんだ。

 

「僕はどんな個性になるのかなぁ」

「メェ〜?」

 

 歩きながら、ごしゅはそう呟いた。

 個性は、もうちょっと大きくなるまで、なにが出るかわかんないみたい。

 生まれてきた時から決まってないのは、ボクからすると馴染みが無いけど、ひーろーを目指してるごしゅなら、きっと強い個性になれるよ!

 それに、弱いって言われてた特性が、環境? が変わって強くなったってのもあるみたいだから、大丈夫だよ!

 

「メェ! メェ〜!」

「うん、僕もオールマイトみたいな、すごいヒーローになるんだ!」

 

 ごしゅは、もう何百回と聞いた目標を、笑って掲げた。

 動いた時、斜めがけした水筒が当たって痛がってたけど、ボクはごしゅがヒーローになるって、一緒に信じてるんだ。

 

 *

 

 ボクだけお留守番にされて、ママとごしゅが出かけて行った。病院行くんだって。

 どこか悪いの? って心配したら、個性の検査に行くんだって。

 ごしゅにも、個性がわかる日が来たんだ!

 

 お家にひとりぼっちなのは寂しかったけど、ごしゅがひーろーになるために個性を調べてくるってわかってたから、うきうきしてソファで跳ねてた。

 ボフボフすると、ホコリが舞うからってママに怒られるけど、ごしゅがどんな個性になるんだろうと想像したら、動いてないと落ち着かなかったんだ。

 

 ボクは、ひーろーになったごしゅの隣で、ごしゅのお手伝いをするんだ!

 ボクはやったことないけど、トレーナーのカバンから眺めてたポケモンバトルは、すっごくカッコよかった。

 リザードンおじちゃんが炎を吹いたり、太陽の光を集めてビームを撃ってたの。その横で、コータスおじいちゃんが、リザードンおじちゃんへの攻撃を受け止めたり、大地を震わせてた。

 

 ボクも、あの二体みたいに、ごしゅとカッコよく戦うんだー!

 とげとげも、ごしゅとボクのコンビには敵わなくて、オールマイトから、褒めてもらうんだー!

 びらん? も、みんな退治して、インタビューとか、されちゃうんだー!

 

 そうして、いつもよりも綿を飛ばしていたら、ママとごしゅが帰ってきた音がした。

 きっと、ごしゅは笑顔でボクにわかった個性のことを教えてくれるんだ。

 早口で聞き取れないけど、ごしゅが楽しくお話ししてるのがわかるから、ボクはその時間が好きなんだぁ。

 

「……あ、メェちゃん……」

「…………」

 

 帰ってきた二人は、玄関に跳ねよって来たボクを気まずそうに見下ろした。

 個性、どうだったの?

 そんな視線を向ければ、ごしゅが泣き出してしまった!

 

「あ、出久……出久……!」

 

 ママが乾いた声で駆け出したごしゅを追う。

 

 なにがあったの?

 個性、診にいったんじゃないの?

 なんで、泣いてるの?

 

 ごしゅの部屋はオールマイトグッズで埋め尽くされてる。

 その中、パソコンを操作して、ごしゅは動画を再生した。

 オールマイトが大活躍してる、災害救助の動画。

 いつも見て、目を輝かせてた。

 それなのに、今は目にいっぱいの涙を溜めてその音を聴いている。

 

「モン……?」

「個性……無かったんだ」

「モ……」

 

 ごしゅが、ボロボロ、雨より大きな水滴を零してボクにそう答えた。

 個性が……特性が、無かったの?

 生まれてくる子は、みんな個性を持ってるんじゃないの?

 ママさんに視線を向けると、悲しげに、罪悪感たっぷりの表情のママさんが、頷いた。

 頷いてしまった。

 

 ごしゅは個性が無かったんだ。

 強いヒーローは、強い個性から生まれるらしい。

 オールマイトみたいな、カッコよくて強い個性になりたいって、あんなに言ってたのに。

 ごしゅは、無かったんだ……。

 

「ねぇ、お母さん……超カッコいいヒーローさ、僕も……なれるかなぁ?」

 

 震えながら、ごしゅがママに聞く。

 ママは、もう全部の感情が溢れ出しそうになっていた。でも、きっとそれはごしゅに対する「ごめんね」って気持ちなんだと思う。

 だから、ママには悪いけど、ボクが先に答えることにした。

 

「メェ〜!!」

 

 ──なれるよ!!

 

「メェ……ちゃん……?」

「メェ! モモモ! メェ〜!!」

 

 あのね! リザードンのおじちゃんがね、言ってたの!

 むかーしはね、ポケモンも、ニンゲンも、“特性”ってものを知らなかったんだ!!

 無かったんだよ、昔のポケモンバトルに、特性は!

 

 それにね、ポケモンによっては、特性が無い方が強いから、わざわざ他のポケモンと一緒に戦わせて特性を無くしたりするんだ!!

 “特性”ひとつで全部は決まらない。わからないんだよ!!

 

 ごしゅは、「強い個性を使いたいからヒーローになりたい」んじゃなくて、「強いヒーローになりたいから強い個性が欲しい」んでしょ?

 でも、強いヒーローは、きっと個性が無くてもなれるよ!!

 

 ごしゅはヒーローになれる!!

 だって、ボクのごしゅだから!!

 

「メェ〜! メェ〜!!」

「なれるかな……僕、なれるかなぁ!?」

「メェ!!」

「出久……メェちゃん……」

「メェ〜!!」

 

 リザードンおじちゃんはね、ボクは戦うには「ひとつ足りなかった」んだって!!

 でもね、ボクは絶対ごしゅの隣に立って戦うよ!! 足りなくても、ボクはボクだもん!!

 

 伝わるかはわかんないけど、ボクは全身を使って、ごしゅへの気持ちを表現した。

 ごしゅは、ボクに抱きついて、ずっと泣いてた。

 途中からママも加わって、ボクの綿毛はべちゃべちゃに濡れちゃった。

 

 でも、お風呂から出たら、ごしゅは目を真っ赤にしながら笑ってくれたんだ。

 ごしゅはきっと、ヒーローになるのを諦めない。

 ごしゅが諦めても、ボクが諦めてやんない。

 

 ──おーす みらいの チャンピオン!

 

 どこかで聞いたセリフをふと思い出す。

 

 ボクのごしゅは……イズクは、みらいのヒーローなんだよ!!

 







▼モンメン Lv.1
せいべつ:♀
とくせい:いたずらごころ
せいかく:むじゃき こうきしんが つよい
のうりょく:すばらしい のうりょく!
おや:イズク

元は厳選の孵化余り個体。5V(こうげき以外)。
孵化してからすぐボックスに預けられたが、ボックス内の他のポケモンから知識を得たりしている。
実はトレーナーの言う「ひとつたりない」は、個体値ではなく性別。♂個体を狙っていた。
既に出久へのなつき度はマックス。
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