正直こっちは別作品の執筆の気分転換に書いてる節があるのでこんな感じで投稿スパンは絶望的です。
さて、どうでもいい話は忘れて今回はセリカを晴らしていきますよ!
では、どうぞ!
「「「セリカちゃん!!!!」」」
勢いよく開かれた扉から、3人の影が飛び込んできた。しかしその声には聞きなじみがあった。
その3人のうちの二人、鮮やかな桃色の長髪で小柄な人と右上の団子結びが特徴的な金髪の人が私を抑え込んでいた白装束のやつらを蹴り飛ばした。
「うちのセリカちゃんに触るな!」
「セリカちゃんを放してください!」
「「うわーッ!」」
白装束ののやつらは大きく宙を舞いそのまま背中から地面に叩きつけられた。そして運
「しくじりおったな!」
「今です!」
その札を別の白装束のやつがキャッチしようとするがその前に高速で何かが回収した。
そしてその何かが私の前に来た。正体はドローンだった。そのドローンは白を基調として所々を黒や赤で塗装され胴体下についたクローアームで器用に札を掴んでいた。ドローンはアームを開き落ちてきた札を私は受け取った。そのドローンは見覚えがあった。いや、忘れるわけがない。
一瞬夢なのではないかと疑ってしまった。だってもう一生会えない人たちの声が聞こえる。姿が、見えるのだから。
また、涙が溢れてくる。でもさっきのような絶望の涙ではない。これは……
「間に合って……よかったです……。」
後ろから声がする。初等部の頃からずっと隣で聞いてきた声が。ゆっくりと振り返る。黒髪ボブにとがった耳と赤いフレームの眼鏡、間違えるはずがない。
「アヤネちゃん!!」
私は気づけば立ち上がりアヤネちゃんに抱き着いていた。アヤネちゃんも抱き返してきた。
「ごめんね……。セリカちゃん……。置いていっちゃって……ごめんね……。」
私の肩に雫が落ちる。少し顔を上げればアヤネちゃんが大粒の涙を流しながら私に謝る。
「ほんとだよ……。なんで自殺なんか……しちゃったのよ……。」
「ごめんね……。ごめんね……。」
アヤネちゃんは私に謝り続ける。
「あの感じならまだ大丈夫そうだね。」
「そうですね☆私達も後でちゃんと謝らないとですね。」
「うへ~。絶対怒られるよね~。まあ自業自得だけど。じゃ、こっちの処理しよっか。」
ところ変わって先ほど司祭を蹴飛ばした二人、無論小鳥遊ホシノと十六夜ノノミである。
二人のかわいい後輩の感動的な再開を眺めつつ、前に振り替えり目が会っただけで死に至りそうなほどの32意が込められた視線を向ける。
その視線の先には5人の司祭がいた。
「ホルスだと!?奴は死んだはずだ!」
「理解できぬ!」
しかし、司祭たちはその殺意を真正面から受けているにもかかわらず、特に意に返した様子はない。代わりに既にこの世にいないはずの忘れられた神々が復活*1していることに驚愕していた。
「あなた達はこの子たちの絆を甘く見ていたんだよ。セリカちゃんの声が、この子たちを生き返らせる力になったの。」
ホシノたちの後方から声がする。優しく、力強くもその中に確かな怒りも宿したその声は司祭たちの背筋を凍らせた。
その声の主はホシノやノノミと同じ制服を身に纏っていた。緑色の長髪で特徴的なアホ毛は健在である。*2
「オ、オシリス……!?」
「馬鹿な!?お前死んだはずだ!」
「言ったでしょ?この子たちの絆はあなた達が考えている以上に固く結ばれているの。セリカちゃんの神秘が私達を結び付けて、助けを望む声がパスを繋げた。」
「セクメトが!?まさか……神秘の強化が裏目に出るとは……。」
オシリスの説明を聞き原因を突き止めようとする司祭。しかし彼らにそんなことをしている暇などない。なぜなら
「ねえ、いつまでおしゃべりしてるつもりなの?」
「そうです。ユメさんだけでなく私達にもかまってくれないと拗ねちゃいますよ☆」
目の前には、まさしく怒髪天といった様子のホシノと顔は笑っているが目は一切笑っておらず額に青筋を浮かべたノノミが各々の愛銃を手に今にも引き金を引きそうになっているのだから。
「よくもうちのセリカちゃんをあんな姿にしてくれたね。楽には死なせない。」
「痛い思いをする準備はできましたか?まあ、できてなくても撃ちますけどね☆」
その言葉を皮切りに二人は引き金を引く。
キヴォトス最高の神秘の込められた12ゲージ弾と大量の7.62mm弾が司祭達を一瞬で喰らう。
「「「「「おのれ!忘れられた神々共がーーーー!!!」」」」」
そんな憎しみのこもった遺言とともに司祭達はちりも残さず消滅した。
「逃げられてしまいましたね。これじゃあまたいつセリカちゃんが襲われるか心配です。」
「そうだね。でも奴らを追い払えたなら今はそれで十分だよ。セリカちゃんの無事が一番なんだから。」
「そうそう!間に合ってよかったよ!それよりほら、二人のところに行かないと!」
司祭達を逃したことに不満げなノノミ、セリカがまだ生きているという事実に安堵するホシノ、先ほどの怒気の籠った声とは打って変って聞く人を安心させる元気で優しい声で二人に話しけるオシリスことホシノの唯一の先輩、梔子ユメ。
3人はセリカとアヤネのもとに向かった。
「グスッ……先輩……。」
「え~っと、ごめんね、セリカちゃん。また先走って挙句の果てに死んじゃって。みんなの気持ちも考えずにまた私だけで何とかしようとしちゃって。」
「わたしも、ごめんなさい。皆さんに迷惑を掛けたくないからと言い訳をして、ただつらい現実から逃げてしまった……。後悔してもしきれません。」
私に無かって正座の状態で謝罪する二人。私はアヤネちゃんから離れ先輩たちの前に座り二人の頬に触れる。
「生……てる。よかった……。私はまだ……独りぼっちじゃない……。」
そういい二人にまた抱き着いた。二人は一瞬驚いた顔をするが、すぐに静かに抱きしめ返してくれた。二人が生きていることが実感できる。
「分かりましたか、ホシノ先輩。ホシノ先輩もとても大切に思われてるんですよ。」
「そうだね……。大丈夫、もうみんなの前からいなくなることはないよ。ね!ノノミちゃん。」
「もちろんです。これまでもこれからもみんなずっと一緒です☆」
もう二度と離れないと二人は誓ってくれた。*3
「うんうん!仲良しが一番一番!」
「えっと……、あなたは誰?」
「そっか~セリカちゃんは知らないもんね~。この人はね~、私の先輩なんだ~。」
ホシノ先輩とノノミ先輩に抱き着いて、少し経ったとき私たちと同じ制服を着たきれいな人が来た。
ホシノの先輩曰く先輩の先輩にあたるらしい。
「先輩の先輩?がなんでここに?というかみんなもなんでここにいるの?」
「えーと……どこから説明しようかな?」
ホシノ先輩はユメ先輩について話してくれた。
ユメ先輩との出会い。
くだらなくも楽しかった日常。
そして、喧嘩して、それが最後になってしまったこと。
何日もかけてユメ先輩を探したら、死体で見つけたこと。
そして自暴自棄の成れの果てがユメ先輩の姿や仕草を真似た私がよく知るホシノ先輩らしい。
話を戻して、その後ユメ先輩は魂だけこの世界に留まり彷徨い続けた。
時間も分からない空間を彷徨い続け、とある人に拾われた。
そこからはその人と共に過ごして今に至るらしい。
「そう……なのね。えっと、みんながここにいる理由は?シロコ先輩は……?」
ユメ先輩のことはまだよく分からないけど信用できることは分かった。そして次に気になるのはみんなのことだ。
「みんながここにいる、いや居ることができてるのはセリカちゃんがこの子たちの魂をこの世界に留めていてくれたからなんだよ!」
「え!?それはどういう……。」
「今は見えないんだけどここのどこかにホシノちゃんやノノミちゃん、アヤネちゃんにシロコちゃんの神秘があると思うの。」
「私の中に先輩やアヤネちゃんの神秘がある!?え?え?どういうこと?」
「お、落ち着いて!えっとね、ここにあるのは本物の神秘じゃなくてコピーされたものなの。セリカちゃんの信頼度みたいなものがあるとして、それがあるラインを超えるとその人と神秘同士で深く繋がってその人の神秘をコピーして自分の中に保存できる能力的なものがあるんだよ!」
「なにそれ私知らないんだけど!?ていうかユメ先輩なんで私のこと私より詳しいの?」
「さっき言ってた私の魂を拾ってくれた人、クズノハ先輩って言うんだけどね!クズノハ先輩が教えてくれたの!」
「妾を呼んだかえ?」
聞きなれない声が聞こえた。
声の主はさっき先輩達が飛び込んできた扉のところにいた。
薄桃色の長髪で狐の獣耳と幾つもの尻尾を生やしていて、右手にはキセルを持ち、百鬼夜行をイメージするような服装をしているどこか妖艶な雰囲気の人がいた。
「あ!クズノハ先輩!来てくれたんですね!」
「ふふ、なかなか面白そうな起こっておるの。」
「セリカちゃん!紹介するね!この人がクズノハ先輩。私に色々教えてくれた人だよ。」
「ど、どうも……。」
声が聞こえるまで気配すら感じなかった。一体この人は……
「ふむ、其方が反転した者か。苦労したの。」
「クズノハさん、セリカちゃんを元に戻すことはできないんですか?」
クズノハさんは私を見て一瞬で私の状態を把握したようだ。
アヤネちゃんは私を元に戻すことが出来ないのかと問う。
「フー 残念じゃが、完全に反転した者を元に戻すことは不可能じゃ。」
「そんな……。」
キセルを一吸いし帰ってきたら返答は不可能だった。
正直直感的に戻るのは不可能だと分かってはいた為私は特にダメージを受けることはなかったがアヤネちゃんは絶望したような声で返事をしていた。
改めて自分の容姿を見てみる。
腰あたりまであった髪は肩につくくらいまで短くなりツインテールだった髪型も後ろで一つに纏められていた。赤かった右目もサファイアのように蒼くなり、服装も変わっていた。一見トリニティの謝肉祭の時に着たアイドル衣装にも似ているがいろんなところに差異がある。まず帽子やアクセサリーの類はなく、ショートパンツも制服のスカートに似たものになっている。上半身もへそ出しと肩から先がないのは変わらないがボタンタイプで両胸の部分にポケットがついている軍服のデザインにも近い服と水色の先端のなくなったネクタイを付けている。*4あとはその上からフード付きのロングコートを羽織っている。心なしか胸と背が少しだけ大きくなっている気がする。
しかし、それらよりも目を引くのは自分のヘイローだ。明るめの赤だったヘイローは朱殷に染まり所々にひびのような黒い筋が刻まれ中心の円の中には目のようなマークが出来ていた。
ヘイローはさておきこの見た目自体は割と気に入ってたりする。
でも元の見た目の方がずっといいのは言うまでもない。
「前までは分かりやすいように死者の復活をさせるのと同じくらいの不可能と言っていたのじゃがな、こやつが神格を得たおかげで使えなくなってしもうたわ。」
「えへへ……。」
なんだか今すごい話が聞こえた気がした。
「え?ユメ先輩神様になったの?」
「こやつの神秘は特殊なんじゃ。数100年に一度現れる逸材とでも言うべきかの。200年以上この世界にあるが現れたのはこやつが初めてじゃ。」
その後にさらっと「お主もそれに該当するぞ。」と言われた。
え?私の神秘も特殊なの!?
「まあ誰しもが神格に至れるわけではない。神秘にも階級は存在する。こやつの神秘はその中で最上位に位置しているからの。」
もう、何を言ってるか分からない……。
そういえば、さっきユメ先輩が言っていたみんなの神秘……、今はどこにあるんだろう?
ふとそんなことを思った時、暗闇の奥に淡く光る何かが見えた。
自然と足が出る。
歩きは次第に早歩きに、そして走りに変わった。
「セリカちゃん!?どこ行くの!」
みんなの問いかけも届かない。私は走り続けた。
光源のある場所に辿り着いた
そこには4つの器があった。
が、内3つは割れてほとんど原型を留めておらず辛うじて底面と一部を残すのみとなっていた。残る一つは原型は留めているが所々にひびが入っていた。
「これが先輩とアヤネちゃんの器……。こんなにボロボロに……。」
私は力無く赤く光る器の前で膝をつく。
改めてみんなが死んでしまったのだと、教えられている感覚だ。
また涙が溢れてくる……
あの時の記憶が…牢屋でただみんなの死を聞くことしか出来なかった無力感が…絶望がフラッシュバックしてくる。
「セリカちゃん……。」
「ふむ、ここにあったか。首皮一枚でなんとか現世に残れている状況じゃな。」
遅れてみんなも追いついて来た。
器の前で膝をつき、涙を流す私を見てみんなは私の名前を呼ぶしかなかった。
するとユメ先輩が私の隣に座る。
「大丈夫だよ、セリカちゃん。まだみんなは生きてるんだから。それにボロボロでもまだここに残っていることが大事なんだよ!もしここからもなくなってしまったらそれは本当の死になってしまうから。」
「そうですね~。もうすでに私たちのオリジナルの器は完全に消えてしまいましたからね。」
「でもセリカちゃんが掴んで離さなかったおかげで器は残って私達の魂はこの世界から離れずクズノハさんの領域に迷い込んだんです。」
「そのあとはただセリカちゃんやシロコちゃんの様子を見ていることしかできなかった。魂だけでも生きているのに助けられないことが、ずっともどかしかった。だから、セリカちゃんが助けを求めてくれたときはうれしかった。それにその意思がこの器と魂だけになった私達を再び繋げてくれたから今、私たちはここにいられるんだよ。」
ユメ先輩に続きみんなも私を慰めようと声を掛けくれた。
どうやら私はあの【嫌な感覚】がしたとき、無意識に器を留めさせようとしていたようだ。しかし器は台座を離れ虚空に消えようとする。その二つの力にボロボロになった器が耐えられるはずもなく二つに分かれ残っているのが目の前のそれのようだ。
「ありがとうセリカちゃん。私を、いや私達に助けてと言ってくれて。こんな私にまたチャンスをくれて。」
ホシノ先輩はそう言うが正直感謝されるようなことはしていない。私はただ無意識のうちにない*5者にすがろうとしただけに過ぎないのだから。それでもこれだけは言わなければならない。
「私も、助けてくれてありがとう。アヤネちゃんとノノミ先輩とユメ先輩も。」
「うん……セリカちゃんもありがとね。セリカちゃんとユメ先輩に貰ったチャンス、絶対に無駄にしません!」
「いえいえ~。私もありがとうございます。一度逃げてしまった私ですが今度こそ最後まで抗ってみせます!」
「私はただパスを繋げるお手伝いをしただけだから大したことはしてないよ~。それよりもそろそろ現実のセリカちゃんを動かさないと今ずっと固まったままだよ?」
そういわれ思い出した。ここが精神世界であることを。そして現実世界ではヘルメット団員に銃を向けた状態で止まっていることを。
札を再び手に取ると突然札が光った、かと思えば光の粒子になって私の中に入っていった。
「体の支配権があるべき場所に帰れたみたいだね!あとは今まで通りにすれば動くよ!」
ユメ先輩にそういわれ再び体を動かす。
==========
アビドス砂漠 謎の爆心地付近
「な、なんだ急に動きを止めた?」
ヘルメット団員は困惑していた今の今までこちらに銃口と殺意を向けてきていた輸送対象が急に殺意を霧散させ固まってしまったのだから。周りに展開されていた黒い炎も消えていた。
「うぅ~。一体何が……。」
そうこうしていると気絶していた仲間が目を覚ます。
「あぁ、よかった……。起きたんだな……。立てるか?」
「無理そう……。足の骨多分折れてる。」
「了解。貸すy」
気絶から目を覚ました仲間は先ほどの爆発の衝撃で足の骨が折れ立てる状態ではなかった。それを見かねたヘルメット団員が肩を貸そうと立ち上がった瞬間、硬直していた輸送対象が銃を下ろしこちらを見ていた。
「ヒッ、ヒイ!?」
「なによ、そんなにビビらなくてもいいじゃない。別に殺す気なんてないわよ。逃げるならさっさとして!今はあんたたちの顔は見たくないの。」
「わ、分かった。おい!こいつに肩してやるぞ。急げ!」
「行ったわね。そういえばシロコ先輩は無事なのかな……。心配ね……。」
去っていくヘルメット団員を見ながらつぶやく。それを聞いた先輩たちの表情は一瞬で暗くなった。
「シロコ先輩は私がシェマタの爆風からかばいましたがそれでもいたるところに怪我を負っていました。それからは一人でアビドスを守っていました。ボロボロでごはんを買うお金さえも利息の支払いにつぎ込んで……。」
アヤネちゃんが説明してくれていたが、途中から辛くなったのだろ、目頭が赤くなっている。
「もう大丈夫だよアヤネちゃん。状況は分かったから。ごめんね辛いこと思い出させちゃって。」
「ううん、大丈夫、大丈夫だから……。」
私はアヤネちゃんの両肩に手を置きもう言わなくてもいいと言ったがアヤネちゃんは自分に暗示をかけるように大丈夫とつぶやいている。
本人は大丈夫と言っているがそれとは裏腹に彼女の眼からは涙が溢れていた。
彼女を残して逝ってしまった後悔がここに来て溢れてしまったのだろう。
「大丈夫、シロコ先輩はまだ生きてるんだから。探して一緒に謝ろ?ね?」
「……うん。」
何とかアヤネを慰めるがしばらくは泣かせておいた方がいいだろう。今はみんな辛いのだから。
器はまだ健在だけど至る所にヒビが入っていてシロコ先輩が厳しい状態にあるのが分かる。
とにかく今は行動しなければならない。足を動かす。
「待ってセリカちゃん!砂漠を移動するなら少なくとも水と食料は用意しないと!」
急にユメ先輩が声を大にしてそう言ってきた。
そういえばユメ先輩は砂漠で脱水症状になって死んだんだったっけ?
経験者は語るって言うのかな……。
「でもどうするのよ?ここがどこかも分からないからコンビニがどこにあるかも分からないし、スマホも奪われて私一文なしなのよ!」
そう、水とかを手に入れるにも現在地が分からないとコンビニが探せない。
それに財布は学校に置いてきたし、スマホはヘルメット団に真っ先に没収されて仮にコンビニを見つけても支払う方法を持ち合わせていない。
つまり一文なしである。
「そうですよね……。まずはここがどこか、から把握しないとですね。」
「でもどうするんです?スマホすらも持ってないんですよ?」
「うーん……。もういっそヘルメット団の基地を襲った方がいろいろ楽そうな気がするんだよね。」
「え!?」
「ホシノちゃん!?」
「ふむ……。」
唐突にホシノ先輩が物騒なことを提案してくる。
「ホシノ先輩!セリカちゃんはついさっきまで捕まってたんですよ!しかも碌な食事も与えられずに。そんな状態だったセリカちゃんに大勢を相手させるんですか?」
すぐに食いついたのはアヤネちゃんだった。
それは私の身を案じてくれる言葉。
正直この姿になってから疲労感も空腹感も消えていた。
それでもその言葉は暖かかった。
もちろんホシノ先輩の話も一理あると思っている。
スマホや銃がまだ基地に残っている可能性もあるし、最悪少し水とかを拝借できるし。
でも今の状態で相手をするのは心許ないのも事実だ。
AK1丁、予備の弾薬はそこそこあるけど無駄遣いできる程ではない。
しかもAKはさっきの炎で所々が溶けて使い物にはならない。
「そうかの?妾は妙案だと思うがの。」
「クズノハさん!?」
「こやつは反転でいろいろ強化されておるだろう。数十人程度なら捌ける力量はあると思うがの。それに手持ち沙汰では何も始まるまい。基地なら地図があるじゃろ。」
「確かにそうですけど……。」
「そういえば先程、セリカちゃんの周りに黒い炎が浮かんでいましたね……。あの炎も反転の影響だったんのですね。」
「さすがの妾もお主がどのような能力を得たのかは分からぬ。それに神秘を強化されたことでお主は簡単に人を殺めることもできる。もし使うなら加減は考えねばならぬな。」
私も自分自身にどんな能力があるのか分からない。
ひとまずいつもの戦闘の時のように、感覚を自分の内に集中して解放する。
すると先程の黒い炎が出てきた。
「あ、出てきた。」
「え、セリカちゃん順応早くないですか?」
「すごい!セリカちゃんすごい!」
「ユメ先輩、語彙力が下がってますよ。にしても、この炎ってただ浮かんでるだけなのかな?」
「うーん、分からない。」
炎に向けて手を伸ばす。
触れてみるが、熱くない。感触は綿あめのようにふわふわしている。
「なんか持てちゃった。」
「熱くないんですか?」
「うん、熱くないよ。なんかふわふわしてるし。」
「それって投げられるのかな?できたら火炎放射器の代わりみたいになるかも!」
「確かにそうだね~。試しにあそこのトラックに投げてみたら?」
ホシノ先輩にそう言われ先程まで自分を運んでいたトラックの残骸に向く。
試しに肩に力を目いっぱい入れて炎を投げる。
ドガーーーン!!!
結果は大爆発
そして着弾点周辺は黒い炎で燃え、高温で砂が焼けガラスになっていた。
これは……危険なんて次元ではない。
「「……。」」
「おお……。」
「これは…すごい威力だね……。人が浴びたら一瞬で蒸発しちゃうよ、これ。トラックの残骸が真っ赤になってドロドロになっちゃってるし……。」
アヤネちゃんとノノミ先輩は呆気に取られ、ユメ先輩は感心したような困惑したような声を上げ、ホシノ先輩は冷静に威力の分析をしている。
「ふむ、これはなかなかに危険じゃの。少し肩の力を抜いてみよ。さすれば多少威力は落ちよう。」
そしてクズノハさんは私にアドバイスをくれた。
本当に不思議な人だ。
私にも分からないことを当たり前のように知っている。これも神格だからなのかな?
そんなことを思いつつまた一つ炎を掴む。
そしてさっきより大幅に肩の力を抜いて投げる。
先ほどよりは小さいトラックの残骸に当たると炎は爆ぜた。
しかし先ほどよりは明らかに威力が落ち、RPGレベルになった。
炎の熱も先ほどよりは低く感じる。
「お、いい感じになったね。これなら人が死ぬことはないんじゃない?」
ホシノ先輩から見ても安全な水準まで下がったようだ。
「そうね。これで弾数は少し誤魔化せそう。じゃあ出発するわよ。」
「セリカちゃん……大丈夫ですか?少し休んでからでも……」
アヤネちゃんは相変わらず私を心配してくれる。
でも休んでる暇はない。
一刻も早くアビドス高校に戻りシロコ先輩を助けなければならないのだから。
「大丈夫だよ、アヤネちゃん!なんか反転した時に体調が良くなったしそれに、シロコ先輩を待たせちゃうから急がないと。案内人も知ってるし。」
そう言い私はヘルメット団員が歩いて行った方向に向かって歩き始める。
==========
「はぁはぁ……。大丈夫か?」
「なんとか……。いっつぅ……。」
「くそっ、トラックが壊れたから、遠いな……。」
3人の少女が砂漠を歩く。一人は進路を取り、一人はもう一人に肩を貸し、一人はその肩に左腕を置き、片足で歩いている。
先ほどまでセリカを運んでいたヘルメット団員3人組である。
全員ボロボロで、特に片足歩きの少女は足が折れておりいたるところから流血していた。
全員ヘルメットをかぶっていたおかげで頭部への損傷はない。
しかしテラー化の衝撃はすさまじくヘルメットのバイザーは粉々になり本体もひびが入って使い物にならなくなっていた。が、逆に言えば本来の使命を全うしたともいえる。
「ぜぇぜぇ……あと、何キロ……くらい?」
「分からない……。10kmくらいかな……。」
「肩貸しながらじゃ……日が落ちるまでに、はぁ……間に合わない……。どこか……休める場所は……。」
太陽は既に沈みかかっていた。
夜の砂漠は一気に気温が下がる。
歩き回るのは自殺行為に等しいのだ。
ましてやここはアビドス砂漠。唐突に砂嵐が起きるためなおさら身を置ける場所を探さなければならない。
彼女たちの記憶では近場にゴーストタウンがあると記憶していたためそこに向かおうとする。
「まだ、こんなところまでしか来てなかったの?」
後ろから声がした。まだ記憶に新しい、自らの死に一番近づいた声。
振り返るとそこには一人の少女がいた。フード付きのコートを羽織った猫耳の少女。自分たちが運んでいた捕虜であり自分たちを殺そうとした少女。
「ひぃぃぃぃぃぃ!!あっ…………。」
「やだ!まだ死にたくない!」
「きゅぅ……。」
反応は三者三葉だが共通して感じた感情は死への恐怖。フラッシュバックバックする光景。
足元の虫を見るような冷めた目,彼女の周りに現れた何者もを焼き尽くさんと揺らめく無数の炎、そして圧倒的な殺意。
「ちょっと!そんな化け物を見るような目で見ないでよ!別に、あんたたちを殺そうなんて思ってないわ。」
「じ、じゃあなんで私達を追って来たんだ!見逃したんじゃなかったのか!」
「あんた達の基地の位置を知るためよ!私の銃とかスマホとか学生証とか、あんた達に奪われたものを取り返すのよ。だからさっさと教えなさい!」
「そ、そんなこと、教えるわけないだろう!」
ヘルメット団員はなんとか意識を保ちつつ猫耳の少女に喰らいつく。彼女とて簡単に同僚を売るほど薄情ではない。
しかし、その威勢もすぐに潰えることになる。
ボッ
「ひぃ!」
猫耳の少女があの時と同じ様に彼女の周りに黒い炎を展開してその一つを掴んだ。
「ほんとはこんな事したく無いんだけど、こっちは急いでるの。話さないなら強引にでも話させるわよ。」
そう言いジリジリと詰め寄る猫耳の少女。
ヘルメット団員は逃げようとするが腰が抜けて動けなかった。
「わ、分かった!話す!話すからやめてくれ!」
ヘルメット団員にとって基地にいる同僚はあくまで同僚。仲間でもなければ友達でも無い。ポンと売るほど軽い関係では無いが自分を犠牲にしてまで守るほどのものでも無いのだ。
「あっちだ。あっちの方向に進めば基地がある。」
ヘルメット団員は南西の方を指差し説明する。
すると猫耳の少女は周りに浮いていた炎を消した。
フラッ
「ちょっと!?」
猫耳の少女と相対していたヘルメット団員は恐怖が消え安心してか、魂が抜けたように倒れた。
幸いにも猫耳の少女が抱えたことで頭を打つことはなかった。
これによりヘルメット団員は全員気絶してしまった。
「あーもう!なんでこうなるのよーーーーー!」
砂漠に木霊するのは少女の叫び声だけであった。
次はいつになるか分かりませんがまあ気長に待っていただければと()