自分の考えたネタに兄が悪乗りした結果の小説(?)。
ヘタクソな文章ですが、出来れば読んでやってください。
遊戯王GXの虹なのに、恐らくデュエル頻度は少なくなる予定。
気がつくと真っ白な空間に居た。
「ここは……どこだ?」
寝起きのような、やや鈍い意識が段々と覚醒していく。上下左右、視界の全てが白く塗りつぶされたような、不思議な空間。地面に立っている感覚はあるのに、自分の影すらないこの空間ではまるで宙に浮いているような錯覚を覚える。
「俺は何でこんな場所に……」
呟くような小声で言うと、完全に覚醒した頭で自分の陥っている現状を整理してみることにした。
まず俺の名前は斉藤積、東京の大学に通う普通の大学生だ。当たり前すぎて確認する必要もないことだが、こういう場合は一から整理していった方が俺は落ち着くのである。
次に趣味だが、読書とゲーム、それと遊戯王OCGのカード収集。本当は収集ではなく決闘(デュエル)と言いたい所だが、あいにく遊戯王をやっている友人がまわりにいないので集める事しか出来ていないのだ。いや、まあ休憩時間とかに遊戯王をやってる奴等を見かける事も度々あったのだが……。け、決して声をかける勇気が出なかったとか、そんな事は無いんだぜ。
「うん、段々思い出してきたぞ」
気持ちが落ち着いてきたからか、靄が晴れるようにこの状況に陥る前の自分の行動が頭に浮かんでくる。
確か大学で講義を受け終えた俺は、帰路の途中でレンタルDVDの店に寄った。見たいアニメがあったのだ。無事にDVDを借りると、俺はレンタル店を後にした。
そして―――
「そして機嫌良く帰宅する途中、信号無視の車に引かれて吹き飛び頭部を強打。朝まで誰にも発見されず、あえなく死亡したって訳だねぇ」
「だれだ!?」
突然後ろから聞こえてきた声に、驚いて振り返る。今まで誰もいなかったはずの場所に、いつの間にか四~五十歳くらいの男が立っていた。
ろくに手入れをしていないような伸ばしっぱなしの髪の毛に、これまた剃るのをサボり続けた結果のようなモジャモジャの髭。それに加えて身にまとうボロボロの服、一見しただけではただのホームレスにしか見えない。しかし、こんな奇妙な登場の仕方といい、俺の思考を先読みしたような先ほどの台詞といい。あきらかにただのホームレスのオッサンではなかった。
「君ねぇ。さっきからオッサンだのホームレスだの、ちょっと失礼だよねぇ。ちょっと傷ついたよぉ……まあ、確かにオッサンだけどねぇ」
そう言って、おどけるように笑うオッサン。
「……あんた、何なんだ?」
「まあまあ、そう恐い顔しなくてもいいじゃないのよねぇ。ちゃーんと、一から説明するからさぁ」
オッサンのその飄々とした態度に中てられたのか、なんだか警戒するのが馬鹿らしくなってしまった。
「ハァ……。じゃあまず、その、俺は本当に死んだの……か?」
一つため息をつくと、一番最初に確認しなくてはならない事を尋ねる。
正直、実感が湧かないのだ。オッサンが言うに、俺は車に引かれて死んだらしい。だが、レンタル店を出たあとの記憶は何故か思い出せないのである。
何というのか……そう、証拠のような物が欲しいのだ。俺が死んだと確信できるような、証拠が。
「うんうん。『君は死にました』なーんていきなり言われても、普通信じないよねぇ。と言うか、信じたくないよねぇ」
わかる、わかるよぉ……などと小さく呟きながら、オッサンは上下に首を振って頷く。
「…………」
何だろう、恐らくそんなつもりは無いのだろうが、何だか馬鹿にされているような気がする。
「そうだねぇ、証拠って言えるかは微妙だけど……これなんか良いんじゃないかなぁ」
オッサンは右手の人差し指を立てると、その指で俺たちが立っているはずの真っ白な地面を指差した。すると指された地面に黒色の四角い枠のような線が浮き出し、枠内がテレビのモニターのように何かの映像を映し始めた。
「これ……は……!?」
黒、黒、黒。その場に集う者達全てが、重たい空気そのものの様な黒い服を身に纏っていた。父、母、六つ違いの弟、高校時代の友人達。能面の様に無表情な人々の中に、彼らだけは涙を流してくれていた。
「葬式だねぇ、君の」
「そんな事、見れば、分かる……」
俺はその場に座り込むと、何度か深呼吸を繰り返した。残念だがこれは、信じざるを得ないだろう。俺が、すでに死んでいるという事を……。
「これで信じてもらえたよねぇ?」
「ああ、だけど一つ聞きたい。俺は今日死んだんだろ、何でもう葬式をやっているんだ?」
普通、死んですぐに葬式なんて事はないはずだ。葬儀場の手配や参列者への連絡等、それなりに時間が掛かるものだと思うのだが。
「ここは時間の流れから隔絶された場所だからねぇ。過去現在未来、いつの情報でも観測する事が出来るんだよねぇ」
「……結局、アンタは何者なんだ?」
改めてオッサンに尋ねる。
時間から切り離された場所だとか、観測だとか。正直このオッサンの言っている事は、普段ならただの妄言として気にも留めないような事なのだが……きっと真実なのだろう。何故だか分からないが、確証もないのにそう思うのだ。オッサンの纏う、何だかよくわからない独特の雰囲気のせいだろうか?
そしてオッサンの語る事が本当なのだとしたら、彼は何者なのかという最初の疑問に行き着くわけだ。
「そうだねぇ、何て言ったらいいかなぁ。神なんて言うほど仰々しいものではないつもりだけど、一応それっぽい事も出来るからねぇ……」
指で髭をいじりながら、そう言って首をかしげるオッサン。彼はひとしきり悩むような仕草を見せた
後、何か思いついたように両手を打ち鳴らした。
「神っぽい奴って事でどうだろうねぇ、良いと思わない?」
「いや、俺に聞かれても……」
つーかっぽいって何だよ、っぽいって……。
「よし、それじゃあ改めて自己紹介だねぇ。私は神っぽい奴だ」
「ハァ……」
もう突っ込む気も起きない。このまま会話を続けても疲れるだけだ、さっさと次の質問に移るとしよう。
「じゃあ次の質問だけど、俺は何でこんな場所に居るんだ? 死んだら、所謂あの世って所に行くんじゃないのか?」
それとも、ここがすでにあの世なのだろうか?
だとしたら、あの世ってのは随分とつまらない所らしい。真っ白で何にも無い。
「いやいや、あの世はもっと楽しい所だよぉ。ここは私の職場だからねぇ、職場に余計な物は要らないだろぉ?」
「余計な物どころか、何も無いな……。で、あの世でないのなら、死んだ俺は何でこんな場所にいるんだよ?」
オッサンの言葉から察するに、あの世はちゃんとあるらしい。ならば、なおさら俺がこんな空間にいるのはおかしい。恐らくだが、このオッサンが俺に何かしたのだ。
「うん、それ正解なんだよねぇ。君にちょっと頼みたいことがあってねぇ、あの世に行く前につれてきたのさぁ」
「俺に頼みたい事?」
先ほど神っぽい事もできるとか語っていた奴が、ただの人間でしかない俺に一体何を頼む事があるのだろうか。
そういぶかしむ俺に対し、あいかわらずの何とも軽い口調でオッサンは言った。
「君さぁ、転生とかしてみない?」
※ ※ ※
「転生……?」
「そう、転生」
転生とは、死後に別の存在として生まれ変わること。肉体・記憶・人格などの同一性が保たれないことから復活と区別される。また一部の宗教では再生とも言われる。仏教では――以下略(byウィキ)
「ああ、ごめんごめん。そういう小難しいのじゃなくてねぇ、君のよく読む二次創作の小説的な転生だよぉ」
「…………」
趣味は読書(キリッ)とかやったてまえ、面と向かってその内容を言われるとかなり恥ずかしいのだが……。
「しかし、あれだねぇ。携帯とかで二次創作小説を読むことを、果たして“読書”と言って良い物なのか……?」
うるさい。漫画を読むことを読書と言い張る輩もいるのだから、別にいいだろ。
「ゴホン。まあ、オッサンの言いたい事は分かった。だが、何故転生させてくれるんだ?」
咳払いで誤魔化し、転生の理由をオッサンに質問した。もしや神っぽい奴(オッサン)のミスで俺が死んだとか、そんなテンプレ的な展開なのだろうか。
「その説明の前に、まずはこれを見て欲しいんだねぇ」
そう言うと、オッサンはどこからともなく手のひら大の球体を二つ取り出した。片方は澄み切った青、そしてもう片方は濁った泥水のような灰色をしている。
「それは?」
「これは、世界なんだねぇ。そして、こっちが君のいた世界だよぉ」
青い球体を俺に近づけると、オッサンはそう語る。にわかには信じられないが、このガラス球のような物体が俺の暮らしていた世界らしい。
「じゃあもう一つの、その……汚い球体も世界なのか?」
俺は目の前の青い球体から目を離すと、もう一つの球体に目を向けた。
「“……”とか間をおくならさぁ、もう少し言葉を選ばない? いや、まあ確かに汚く濁ってるけどさぁ」
神っぽいオッサンが何かメタっぽい事を言っているが、気にしないでおこう。
「で、どうなんだ?」
「うん、その通りなんだよねぇ。これもまた別の世界さぁ」
やはり別の世界のようだ。しかし、濁っているのは何故だろう。元々こういう色の世界なのだろうか?
「実はねぇ、最近上から新人の指導を頼まれちゃってさぁ。これはその子に世界管理のイロハを教える為の、いわば練習用の世界なのさぁ」
「練習用って、普通の世界と何か違うのか?」
「練習用の世界はねぇ、物語を元に創られた世界だからねぇ。はじまりから終わりが決まっていて、管理の練習にもってこいなんだよねぇ」
ふむ、何となくは理解した。だが、この練習用の世界とやらが、何か関係あるのだろうか?
「大有りさぁ、君はこの世界に転生してもらう予定なんだからねぇ」
何というか、ナチュラルに思考を読まないで欲しいのだが。
「はじまりと終わりが決まった物語の世界なら、俺が転生したせいで筋書きがおかしくなるとかはないのか?」
救世主だとか破壊者だとか、俺はそういった大そうな役ができる器ではない。だが物語とは生き物のような物で、木端役でも余計なキャストを追加すれば思わぬ方向へ動いてしまう事もある。
「その心配は要らないんだねぇ。新人君がはしゃぎ過ぎちゃったせいで、この世界は物語の流れが歪んでしまっているのさぁ」
両手を広げ、諭すように言い放つオッサン。
「いやいや、そんな壊れかけの世界に転生させられても困るぞ」
「そこは大丈夫だよぉ。君をぶち込む事で、歪みを矯正するからねぇ。ホントは捨てちゃいたいんだけど、新しく買う予算がなくてさぁ。安くて済む方法で再利用ってわけなんだよねぇ」
何というか、予算の都合で俺は転生するらしい、何とも世知辛い世の中である。いや、世界を管理しているのだから、世の外か?
「そこは世の中で良いんじゃないかなぁ、君の居たところより上位の世界って事で……。さてと、これで一応の説明は終わったんだよねぇ。他に何か質問ある?」
「俺が転生する世界は、どんな所なんだ? 物語を元にした世界と言っていたが、それは俺の知っている物語か?」
とりあえず気になった事を質問する。まあ後半の質問は、オッサン達の世界の物語を俺が知っている訳がないのだが、もしかしたらという事もありえるので聞いてみただけだ。
「君に転生してもらう世界はねぇ―――」
もったいぶるように話すオッサンに、唾を飲み込む俺。そしてついにオッサンが世界の名前を口にした。
「遊戯王GXの世界なんだよねぇ」
※ ※ ※
「…………はぁ?」
今鏡を見れば、きっととんでもない間抜け面が見えるだろう。そう確信できるほどに、オッサンの一言は意表を突くものだった。
「あれぇ……もしかして、遊戯王知らない? でも、カード集めてるし、そんな事ないよねぇ」
「い、いや……遊戯王は知っている」
漫画も持っているし、アニメも見ていた。実はあの日借りたDVDは遊戯王GXだったりする、今までGXだけは見たことがなかったので見ようと思ったのだ。残念ながら、見る前にこうして死んでしまったわけだけど……。
つーか、何で俺の世界の物語?
「うんうん、知っているなら万事オッケーだねぇ。じゃあ早速、転生特典の話に移ろう」
「特典が付くのか?」
これは、あれか? 所謂、転生チートキタァァァアアア!!ってヤツか?
「うん、まあそう採ってもらって構わないよぉ。ただし、叶える望みは一つで、行き先の世界観を破壊してしまうような物はダメなんだねぇ」
要は、遊戯王の世界にあった物にしろという事なのだろう。全然オッケーである、実はこういう場合にはどのような選択をしたら良いか考えた事があるのだ。
「中二病、乙なんだねぇ」
うるさい。人前で奇妙な行動を取るほど重度じゃなかったから、別にいいんだよ。
「俺が今までに集めた遊戯王のカード、それを全て持って行きたい」
俺は願いを神っぽいオッサンに告げた。
完璧だ。あの世界は元居た世界で労せず手に入るカードが、凄まじい高額で売られたりしているのだ。金には困らないし、ガチデッキを組めばデュエルも勝ち放題。まさに人生イージーモード、勝ち組な俺の誕生である。
「君の集めたカードっていうと、あのトランクケースにしまってあるヤツだよねぇ? 本当にそんな願いで良いのかい、欲がないんだねぇ」
ん、欲がないとか、オッサンは何言ってるんだ?
ふとした疑問に首をかしげる。まあ、きっとオッサンは何か勘違いをしているのだろう。
「あのカード達は、初めてカードを買ってもらい遊戯王にはまってから、苦節十年少しずつ集めてきたとても大切な俺のコレクションなんだ。一枚も要らないカードなんて無い。どうしても、どうしても持っていきたいんだ!」
オッサンは俺の選択を疑問に思っているようだし、下手に悩ませて願いを別のものに変えろとか言われるのは不味い。最後の一押しとばかりに、感情的なものにうったえてみた。
「まあ、君がそこまで言うのなら無理に変えたりはしないんだねぇ。オーケー、了承したんだねぇ。新たな君が物心付くころに、記憶がよみがえるからねぇ。じゃあ、早速転生と行くよぉ。」
そう言うと、オッサンは俺の足元を指差した。すると俺の周りの地面に円形の線が浮き出し、唐突に円の中の地面が消えた。
「へぁ!?」
「まあ、様式美ってやつだねぇ」
オッサンのそんな台詞を聞きながら、俺はどことも知れない真っ黒な闇に吸い込まれていくのだった。
※ ※ ※
三歳の誕生日を過ぎてから、じわりじわりと少しずつ俺は前世の記憶を取り戻し始めた。そして、四歳の誕生日を迎えたころ、完全に俺の記憶はよみがえった。
骨山積(ほねやま つもる)、それが転生後の俺の名前。記憶を取り戻して一番驚いたのは、両親が多少若いが前世とほぼ同じ容姿をしていたことだ。骨山は父方の苗字であり、前世の斉藤というのは母方の苗字である。父が婿入りしたのか母が嫁入りしたかの些細な違いはあるが、つまり俺はこの世界の俺として生を受けたのである。
転生というか、世界を変えた人生やり直しである。ああ、一応こういうのも転生というのか……な?
「しゃて、とらんくをさがしゃなくては……」
転生の影響からか、どうも記憶を取り戻す以前の俺は微妙に精神的な成長が早かったようで、両親の問いかけに返事はするが自分から喋ることはあまりなかったようだ。そのせいで喋りなれていないのか、ちょっと舌足らずだったりする。
現在、両親共に出かけていて、俺は一人留守番をしている。神っぽいオッサンに頼んだ転生特典、前世で俺が収集したカードコレクションが詰め込まれたトランクケースを探す絶好のチャンスなのだ。
「……しかし、どこにあるんらろ?」
以前に一度両親にそれっぽい物の在り処を尋ねてみたりしたのだが、どうも二人とも知らないらしい。
「そうこにはならったし、あとはおしいれだら」
そう言うと、前世では俺の自室だった和室へ移動した。
よくよく考えてみれば、ここが俺の自室だったのだから、ここにある可能性が一番高い。何故一番最初に探さなかったのだろう?
“それは作者の都合なんだねぇ”
何か妙な言葉が聞こえた気がしたが、きっと気のせいだ。
「お、これかりゃ?」
そんなこんな考えている内、押入れの奥に見慣れたトランクを発見した。このトランクは前世の俺が高校の頃に勢いで買ったもので、使い道がなかったのでカードケースとして活用していたのである。
押入れからトランクを引っ張り出す。このトランクは鍵のかけられるタイプだが、カードを出し入れする際に面倒なので普段は鍵をかけていなかった。そのおかげか、トランクに鍵はかかっていなかった。
俺は、トランクの留め金を外し両開きに開く。中にはずらりと並んだカードの束。当然、俺が集めたカード達である。それとカード以外に、このトランクの鍵と銀色のカードパックのような袋が入っていた。銀色のカードパックの表面には、“無欲な君へのおまけ”とマジックで書かれている。何のカードが入っているのかは知らないが、開けるのは後で良いだろう。それよりも、今はカードの確認が先だ。
青眼の白竜(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)に真紅眼の黒龍(レッドアイズ・ブラックドラゴン)、ブルーアイズを売るのは不味いが他にも中々の値段が付きそうなカードの数々。
「ふふふ、このかぁどたちがあれば、おりぇのじんしぇいあかりゅいぜ」
そう言ってニタリと笑うと、トランクを閉じて鍵をかけた。そして押入れの奥にトランクを戻して、戸を閉める。
今すぐこれらのカードを使って無双とかしてみたいが、あいにくこの世界の俺はまだデュエルモンスターズのカードを持っていない。そして、特に裕福な家庭の生まれでもない五歳児がレアカードを大量に使っていたら、両親から見ても他人から見ても怪しさ全開である。
幸い、俺が小学校に入学するのと同時に両親がカードを買ってくれるらしい。それまでは、我慢だ。
「ただいまー」
「おかえりなしゃい」
俺は自然と浮き出るようなニヤけ顔を必死に抑えると、いつもの無表情を装い両親を迎えに玄関へと急ぐのだった。
※ ※ ※
「はい、積。大切にしなさいね」
「ありがとう、お母さん」
小学校入学を間近に控えたあくる日、俺はついにデュエルモンスターズのカードを両親に買ってもらった。一パック五枚入り、それを十二パックで計六十枚。この世界のではカードパックも中々に高価なものなので、純粋にありがたかった。
カードパックを開封するため、和室へ向かう。六歳になった際、和室を自室として貰ったので、ここはもう俺の部屋なのだ。
カードパックの上部をハサミで切り取り、一袋ずつ中身を確認していく。
買ってもらった全六十枚のカードの内モンスターカードは三十三枚、魔法カード十八枚、罠カードが九枚だった。魔法・罠カードに関しては“死者蘇生”“サイクロン”“連鎖爆破”“グラヴィティ・バインド―超重力の網―”等なかなか悪くはない感じだ。だが、モンスターカードはそのほとんどがバニラかつ能力値の低いものばかりであった。
三十三枚のモンスターカード中、一番高い攻撃力を持つカードは“ソニックバード”。召喚・反転召喚に成功した時、デッキから儀式魔法カードをサーチできる効果モンスターカード。まあ、儀式系のカードが出なかったので、現状ではただの攻撃力一四○○・守備力一○○○のモンスターである。
「やっぱり、カードパックを開ける時のワクワク感ってのは良いもんだな」
そんな事をつぶやき、手にしたカードを何度も確認する。あまり統一性がないこの六十枚のカードでデッキを組んでも、正直強いデッキにはならないだろう。コンボとして使える組み合わせもないし、正直火力不足だ。
だけど、そんなカードでもこの世界で初めて手に入れたカードなのだ。ちょっとだけ愛着心が芽生えていたりする。
「……ん?」
そんな感じにカードを愛でていると、何か得たいの知れない違和感を感じた。それも、遊戯王の漫画やアニメにある闇のゲームうんぬんかんぬんみたいな、ファンタスティックな違和感ではない。カード自体に違和感を覚えるのだ。
「何だろ……?」
裏返したり表にしたり、様々な角度からカードを見てみるが、どこをどう見てもただのカードである。首をかしげてしばらく考えてみたが、結局違和感の正体は分からなかった。
「ま、気のせいか。そんな事よりカードカードっと」
考えても分からないことは後回し。俺は押入れの戸を開くと、奥からトランクを取り出した。
初めて手に入れたカードなのだから、出来ればこれらのカードを使ってデッキを作りたい。だが、折角遊戯王の世界に来たのだ、デュエルには勝ちたい。よって、その間をとって手に入れたカードを基に、トランクのカードで強化したデッキを組むことにしたのである。
「あ……れ?」
そうして意気揚々とトランクを開けた俺は、自身の感じた違和感の正体にようやく気が付いた。
カードの規格が、違ったのである。
「うそだろ、おい……」
全身から、いっきに血の気が引いた。慌ててトランクから数枚のカードをとりだすと、買ってもらったカードの横に並べて比較する。
まず大きさが違う。トランクのカードに対して、買ってもらったカードの方が一回り大きい。
次に材質。元の素材は両方紙のようだが、その後の加工過程が違うのか買ってもらったカードの方が曲がりにくく頑丈である。
そして最後にカードの裏面。黒地に茶色の渦のような意匠、それはどちらのカードも同じだ。だが、トランクの方のカードはそれに加えて左上と右下に“販売元の社名”と“遊戯王オフィシャルカードゲーム デュエルモンスターズ”とロゴが入れられているのである。
俺の人生勝ち組計画が、ガラガラと音をたてて崩れ落ちた瞬間だった。
「ふざけんな、あの野郎!! 絶対分かってて了承しただろ!!」
別室にいる両親に聞こえてしまうとか、そんな余計なことを考えられる状態ではなかった。感情に身を任せ、自分でも意味不明な罵詈雑言をわめきちらし、力の限り床に張られた畳を殴る。
それを選んで内容をろくに確認しなかったのは自分である。完全なる俺のやつあたりは、心配した母が部屋まで様子を見に来るまで続いた。
※ ※ ※
「はぁ……」
流石に母親にこのトランクを見られるわけにはいかない。わずかに残っていた理性で母を誤魔化し、追い返すのに成功した後。暴れ疲れた俺は、途方にくれると共にその場に崩れ落ちた。
正直、もう何もやる気が起きない。
「…………」
部屋の壁に背中をあずけ、何も考えずボーっと部屋を眺める。俺が暴れたせいで散乱したカード、蹴り飛ばしたのにも関わらず何故か中身が散らばっていないトランク。きっとオッサンの能力的な何かで、中身が散らばらないようにでもなっているのだろう。何とも嫌みったらしい心遣いだ。
そうして神っぽいオッサンを逆恨みしていると、ふとトランクのカードに紛れた銀色が目に映る。“無欲な君へのおまけ”、そう書かれたカードパックだ。
「!?」
なりふり構わず、トランクに飛びつく。そしてトランク内のカードを書き分け、銀色のカードパックを引き抜いた。
きっとこれは俺がこんな状況に陥る事を予見したオッサンが、俺を哀れんで入れてくれたのだ。絶対に素晴らしいカードが入っているに違いない。
さっきまで呪い殺すような勢いで怒声を浴びせていた相手に対し、自分に利があると思うや今度はころりと態度を変える。如何に今の自分が醜いかも理解せず、俺はいそいそとパックの封をやぶる。
どうやら中身のカードは一枚だけのようだ。期待と不安に震える手でカードを袋から引き抜くと、そのまま畳の上に置いた。裏返しの状態で引き出されたカード、まだ何のカードかは分からない。
俺は荒い呼吸を整えると、思い切ってカードをひっくり返した。
そのカードは、
星一で、
攻撃力三○○の守備力二○○。
こちらに向かってキュートに微笑む骸骨お化け。
そう……ワイトだ。
「…………」
最後にすがった希望まで見事に打ち砕かれ、俺にはもう何の気力も残っていなかった。ついでに頭の中も真っ白である。
そんなふうに俺が呆けていると―――
『やあ』
突然、どこからともなく声が聞こえた。
「!?」
いきなりの出来事に驚き、辺りを見回すが誰もいない。
『こっちこっち』
再び謎の声。にわかには信じられない事だが、この声は目の前に置かれたワイトのカードから聞こえてくるようだ。
「うわッ!?」
そっとワイトのカードに触れると、ホログラムのように半透明の何かがそのカードから飛び出した。
「骨の中の骨、人呼んで夜に彷徨うカルシウム。吾が輩こそは、そう……ワイトである!!」
突然カードから飛び出したそれは、なにやら仰々しい前口上と共に決めポーズのようなものを決める。なんか格好つけているが、要はワイトだ。
「吾が所有者よ、名は何と言う?」
「ほ、骨山、積」
あっけに取られていたからか、素直に名前を名乗る。
「ふむ、良い名……かな?」
「何で曖昧なんだよ……」
突然カードが喋りだし、そこから半透明のワイトが現れる。そんなあまりに意味不明な事態に、思わず突っ込む俺。いつの間にか、突っ込む気力だけは回復したらしい。
「では積、これから宜しく頼むぞ」
「何でだよ、意味がわからん!」
しかし、そんな俺のツッコミをスルーして、骸骨は身勝手に喋る。
この出会いが俺の人生を大いに変えていくことになるのだが、それはもう少し先のお話。
プロローグのつもりが一万文字超えてたでゴザル。
俺、キモイ。
息抜きに書いていますので、不定期更新になります。