いつか桜を見に行こう、そう告げたあの人。
そのあの人が今私の前にいる………あれだけのことをした私に何もないかのように……
私に幸せになる権利なんてないのに……
昔、私に何かとしてくれたあの人、もちろん私なんかのために犠牲になり今はいない
そのあの人と同じに見えたこと……それが始まりだったかもしれない
だけど、それはいつか先輩として意識していき、
「桜来たか」
「せ、先輩………」
「桜?行かないのか?見ごろだろ」
先輩が久しぶりに……私と一緒にどこか行こうって言われて
来たらそういう話になり…でも……
「い、いえ、そのみなさんと一緒に見たのに……」
「そういうところが桜の悪いところだ、俺は桜と二人で桜を見に行こうって約束したんだ。
そうでなければあんな約束意味がない。あの時は景気祝いなもんだ、だから俺がそうしたいそれだけだ」
ああ……そうだ、私はこういう先輩が私を私としてみてくれる先輩が好きになって
絶望していた世の中に光を見出してそして今、こうして私の周りはこんなにも桜のように綺麗だったんだと
思いなおさせた人、私に人間としての大事なことを思い出させた人、そんな先輩が好きになったんだった
「ごめんなさい、私はまた先輩にいらない考えをしたようですね………
せっかくここまで先輩が頑張ってくれたのに」
そして再びあの場所に行った。さすがに少し、散ったようだが
私たち二人を楽しませるには十分なくらい美しかった
・・・・・
「桜綺麗だな……もちろん、桜もだぞ」
「ありがとうございます先輩、こうして緑を覆っている綺麗な桜すごい綺麗です」
あの絶望していたときの言葉を思い返す。人間とはここまで考え、生き方が変わるものなのだろうか
今考えればどれ一つをとっても取ってしまえば今の私にはならなかった、蟲蔵に放り込まれ、
そしてすべてに絶望してしまったこと、どれをとってもすべて……だからこそ今の私がある。だからこそ………
「桜?どうした??」
「私、きっと先輩にまだ言い足りてないことがあります。生まれてからこれまでのこと
だからここでいいます。二人っきりになった今だから」
「いやわかってるって」
「いいえ、きっとわかってないこともあります。私が罪を罪と受け入れて背負うということは
今までの自分も受け止めないといけません、私どういう感じで先輩のことを思ってたか未だに言えていませんでした。
ですから少しの間だけ」
「桜がそこまでいうなら、だが俺は何があってもだな」
「ええ、もちろん」
私は今でこそ、ようやく受け入れる……そういうことでしたが
以前の私は、すべてに絶望していた……
家の都合、魔術というくだらないことで無理やり養子に出され
もちろんその時はそんなことは思わなかったんだけど………ただただ、私はいらない子なんだと思い込み
家のため、桜のため、それがいきなり蟲蔵に放り込まれ
初めてを奪われて、それだけならまだいい。
姉とはなれ、両親と離ればなれになり
私の名前も変えられ……私が一体一体何を………何なんだろうこの仕打ち………
「私が一体何をしたというの………」
出る言葉は……
「それがお前のためよ、なーにお前が大きくなる時はきっと感謝してもしきれんじゃろうて、ふふふ」
機械のようにそれだけ、それだけであとは、蟲蔵に放り込まれ
魔術強化という名目で、泣き崩れても泣き崩れても止まらない
すべてをなくした私、助けもない、すべてが馬鹿らしくなり受け入れて行ってしまう
「いっそ何もしなければ期待も救いもしなければいいんだ………」
それなのに私なんかを助けようとしてくれた人もいた……
だけど、その人も私なんかのために命を落としてしまう……私を唯一といっていい人間扱いしてくれた大事な人が
「馬鹿な人………」
何をどうしたって私が、助かる道はなかった。そうでなければ
蟲蔵に放り込まれるはずがない……それなのに唆されて騙されて……私なんかのために犠牲になるなんて
本当にかわいそうで……愚かしくてつい出てしまった言葉
なのに、私は泣いてしまった……私を人間扱いしてくれた人が死んでしまう
私のために散って行ってしまった、人形の私を守ろうと………
それなのに涙が止まらなかった。この涙を出さないために私は
「初めから何もしなければいいんだ、何も期待もしなければ、何も感情を持たなければ、
何も怒らないこうやって泣くこともないし、周りを不幸にしない」
私だけが犠牲になればいいんだ。そうして私は蓋を作った。そして
「どうせ死ぬなら大きくなって、あの人を殺して一緒に消えてしまえばいい」
そのためならなんだってしてみせる、放り込まれて無理やりされても
周りから何をされようがそれこそが私のやるべきこと、存在理由そう信じて疑わなかった
もっともその黒い感情こそがあのおじい様のやりたいことだったのだろうけど、それだけが私の支えだった
汚いどす黒い私、だけど蟲を飼っている私にふさわしい、このまま誰にも気づかれぬまま、おじい様を道連れに
過ごせばいいだろうそう思っていた………いたのに……あの私に不釣り合いなあの人は
私の前に現れて、再び感情を芽生えさせるのでした