SCP Foundation×クロスオーバー   作:jnpi

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逆転裁判


職員の苦言:「序審法廷制度」

宛先: 倫理委員会

発信: 財団法務部門・カバーストーリー策定局 上級法務官代理 ████・██

日付: 200█年 ██月██日

件名:【提言】表世界における「序審法廷制度」導入に関する強い懸念と早期見直しの要求

 

倫理委員会の皆様へ。

 

現在、主要国家の司法システムにおいて試験的かつ段階的に導入が進められ、事実上の標準規格となりつつある「序審法廷制度」について、本報告書を提出いたします。

表向きには「急増する凶悪犯罪に対する裁判の迅速化と、司法コストの削減」を大義名分として掲げる本制度。

その実態が、我々財団による社会操作イニシアチブの一環であることは承知しております。

 

この制度がもたらす、異常存在関与事件におけるカバーストーリー構築の多大な利便性については、私も法務・隠蔽部門の端くれとして一定の評価を下しており、メリットとして認めるにやぶさかではありません。

異常性を持つ実体が引き起こした不可解な殺人や消失事件などにおいて、一般市民に嫌疑がかかった場合、従来であれば我々は大掛かりな記憶処理班を動員し、メディアを統制し、警察組織の内部にエージェントを潜入させる必要がありました。

しかし、この「序審法廷制度」を用いれば、法廷という公的な舞台で、我々が用意した「でっちあげの物理的トリック」や「偽装された動機」を証拠として提示し、極めて短期間のうちに強引に判決へ持ち込むことが可能です。

これにより「事件は超常的な現象ではなく、あくまで悪質な人間による通常の犯罪であった」というカバーストーリーを、社会の公式記録として迅速に定着させることができます。

おざなりな裁判を通じて異常存在の痕跡を合法的に隠蔽し、関係者を収容──あるいは刑務所という名の隔離施設へ送致──するシステムとしては、確かに画期的と言えるでしょう。

 

しかしながら、私は本制度が一般社会の司法基盤にもたらす致命的な欠陥と、長期的な副作用について、看過できない強い懸念を抱いております。

 

まず最も理解に苦しむのが、『審理期間を最長でも3日間とする』という条項です。

失礼を承知で申し上げますが、制度立案に関わった上層部の皆様は、一体何を考えてこのような非現実的な期限を設定したのでしょうか?

アノマリー情報の拡散を防ぐために「世間の関心が集まる前に事態を終息させたい」という思惑があったにせよ、これはあまりにも極端すぎます。

 

現実の警察組織による捜査・立証において、3日間という期間は到底十分なものではありません。科学捜査班による鑑識結果すら完全に出揃わない段階で法廷を開き、即席の物的証拠と、現場の人間の曖昧な目撃証言のみで被告人の人生を決定づけるなど、正気の沙汰とは思えません。

3日あればすべての真実が明らかになるとでもお思いでしょうか?

 

それとも、最初から真実などどうでもよく、ただ「有罪という結果」だけを量産し、事件をベルトコンベア式に処理する自動機械が欲しかったのでしょうか。

 

この「3日間」という過酷な制約は、確実に一般犯罪における冤罪の多発を招きます。

アノマリーが全く関与していない通常の殺人事件や窃盗事件でさえ、この制度の俎上に載せられるのです。

現場の警察や検察は、期限内に「法廷で通用する形」に事件をまとめ上げるため、見切り発車での逮捕や、強引な自白の強要に走るでしょう。

その結果、無実の人間が次々と「有罪」として社会から排除されていくことになります。我々財団の理念は「正常性の維持」であるはずです。

罪なき市民が、我々の都合で作られた欠陥システムによって不当に裁かれる事態を、倫理委員会は「正常」と呼んで容認するのでしょうか。

 

さらに致命的なのは、この制度が法曹界全体を決定的な腐敗へと導くという確実な予測です。

極端な短期間での勝敗を強いられる法廷において、検察側は自らの威信と有罪判決の維持のために、手段を選ばなくなるでしょう。

不都合な事実の隠蔽、証言者の操作、最悪の場合は「証拠の捏造」すら日常的に行われるようになります。

「完璧な証拠による完全な勝利」を病的に追求するような異常な検事が現れるのも時間の問題です。

 

対する弁護側も同様です。十分な証拠収集の時間が与えられない中、被告人を救うためには、法廷という場でハッタリをかまし、論理の飛躍や矛盾の揚げ足取りによって無理矢理にでも審理を長引かせるしかなくなります。

審理はもはや真実を追求する場ではなく、証拠という名のカードを切り合う歪んだゲームへと変貌します。

裁判長はただ機械的に木槌を叩き、両陣営の過剰なパフォーマンスに流されるだけの形骸化した存在に成り下がるでしょう。

 

もしこのまま「序審法廷制度」を一般社会で完全施行し続ければ、遅くとも十数年以内には、司法に対する大衆の信頼は完全に失墜します。

証拠の捏造と偽証が横行し、誰も法を信じなくなる時代――いわば「法の暗黒時代」が──到来することは火を見るより明らかです。

 

加えて、異常性の隠蔽のために作られたこの法廷が、逆に異常性を引き寄せるリスクも指摘しておきます。

科学的かつ正当な証拠が機能しない法廷においては、いずれ弁護士や検事たちが、直感や心理操作、果ては我々が秘匿すべき「霊媒や、精神に干渉する特異な超常的手段」に依存し始める土壌を作りかねません。

これは本末転倒の事態です。

 

司法システムの崩壊は社会秩序の致命的な混乱を招き、長期的には財団の活動基盤そのものを脅かす遠因となります。

カバーストーリー構築の利便性を手放したくないという思惑は理解しますが、一般社会の司法をこれほどまでに歪める代償はあまりにも大きすぎます。

 

法曹界の腐敗が後戻りできないレベルに達する前に、この制度の適用範囲を限定する。

あるいは少なくとも審理期間の「3日制限」を撤廃するなど、早急な見直しと制度の再構築を強く要求いたします。

 

上層部の賢明な判断を求めます。

真実を見失った社会に、正常性は保てません。

 

 




 

 

宛先: 倫理委員会

発信: 財団法務部門・カバーストーリー策定局 上級法務官 ████・██

日付: 20██年 █月██日

件名:【最終警告】「序審法廷制度」がもたらした法曹界の致命的腐敗と、当部門の存在意義に対する異議申し立て

 

倫理委員会の皆様。

 

私が本件に関する最初の懸念を具申してから、すでに十数年の歳月が経過しました。その間、私は本制度の欠陥とそれが引き起こすであろう社会的崩壊のリスクについて、数十回にわたり報告書を提出してきました。

しかし、評議会はそれらすべてを「許容範囲内の副次被害」として黙殺し、あるいは「経過観察」という名の放置を決め込んできました。

現状の法曹界を見渡して、それでもまだ「想定内」と仰るおつもりでしょうか。私は現在、上層部の皆様の無責任さに対し、深い失望と抑えきれない怒りを禁じ得ません。

 

かつて私が予見した通り、最長3日間という非現実的な審理期間を強いる「序審法廷制度」は、司法の場を真実究明のプロセスから、単なる証拠のカードを切り合うゲームへと貶めました。

警察による強引な捜査、検察による不都合な事実の隠蔽、そして何よりも証拠の捏造」は、今やこの国の司法システムにおいて日常茶飯事となっています。

我々がアノマリーを秘匿するためのカバーストーリーとして用意した舞台装置は、一般市民の無実の罪を量産する冤罪製造機と化しているのです。

 

この破滅的な状況に対し、上層部から内々に下された見解を聞いた時、私は己の耳を疑いました。

「成歩堂龍一弁護士や、御剣怜侍検事のような、誠実かつ有能な法曹関係者が現れ、法曹界の冤罪や腐敗に関する事件を自浄しているため、財団が介入する必要はない。制度は機能している」

 

彼らのような傑出した個人の存在は、確かに法曹界にとっての希望の光でしょう。彼らは己の信念と、時に常軌を逸した執念によって、絶望的な状況から幾度も真実を引きずり出してきました。

その過程で、霊的実体への干渉や未収容の現実改変能力すら疑われるような現象が法廷で確認されているという報告すらありますが……それも彼らの「個人の資質」として黙認されている現状は異常です。

しかし、彼らが解決した事件の裏には、彼らの手に負えなかった何百、何千という冤罪事件が山積みになっているのです。

 

我々財団が、自らの都合で社会に押し付けた欠陥システムの尻拭いを、なぜ一般市民である彼ら個人の正義感と有能さに丸投げしているのですか?

我々の失態によって生み出された「法の暗黒時代」の是正を、たった数名の民間人の肩に背負わせ、それを安全圏から「自浄作用」などと呼んで傍観する態度は、財団の理念以前に、人としてあまりにも恥知らずです。

彼らがもし志半ばで倒れるようなことがあれば、この国の司法は完全に崩壊します。そのリスクを理解していないはずがないでしょう。

 

さらに問いたいのは、狩魔豪、および一柳万才などが引き起こした一連の事件に関する財団の不作為についてです。

 

長年にわたり「完璧な証拠による完全な有罪」を至上命題とし、証拠捏造や証言操作を息をするように行ってきた元検事・狩魔豪。

そして、検事審査会会長という権力の座に居座り、自らの保身と利益のために証拠の隠蔽、裏工作、果ては殺人までを教唆し、法曹界全体を腐敗の温床へと作り変えた元検事・一柳万才。

 

彼らは、我々が敷いた「序審法廷制度」という狂ったルールの抜け穴を最大限に悪用し、長きにわたりこの国の司法を私物化してきた巨悪です。

彼らの手によって、どれほどの無実の人間が刑務所に送られ、あるいは死に追いやられたか計り知れません。

私が過去何度も彼らの不自然な勝訴率と権力構造について調査を求めた際、上層部はこう回答しましたね。「彼らは現実改変能力も異常な特性も有していない、ただの人間である以上、財団が収容・介入する対象ではない」と。

 

確かに彼らは、異常が指定されるような超自然的なバケモノではなかったかもしれない。

しかし、我々が異常存在を隠蔽するために作った制度の中で培養され、社会の根幹たる「正常な法と秩序」を完膚なきまでに破壊した彼らは、社会から見れば悪徳と腐敗そのものであり、過大な権力を行使するアノマリーに他なりません。

一般社会の正常性を維持するのが財団の至上命題であるはずです。

彼らは異常存在ではないから、社会がどれほど破壊されようと財団の理念においては問題ない、とでも言うのでしょうか?

もしそう本気で信じているのであれば、我々が守ろうとしている「正常」とは一体何なのか、私にはもはや理解できません。

 

我々は異常を収容する組織であり、異常を世に放つ組織であってはならないはずです。

しかし現実には、我々の策定した序審法廷制度こそが、法曹界という現実社会に「腐敗」という最悪のミーム的災害を拡散し続けている元凶なのです。

 

民間人の英雄的行為に甘えるのは直ちにやめるべきです。狩魔や一柳のような怪物をこれ以上生み出さないために。

そしてこれ以上の冤罪犠牲者を出さないためにも、直ちに「序審法廷制度」の抜本的改革、あるいは段階的な廃止プロセスへの移行を強く、極めて強く要求します。

 

これ以上、上層部がこの現実から目を背け続けるのであれば、私は倫理委員会に対し、「人類の正常性に対する明白な反逆」であるとして、正式な弾劾動議を提出する用意があります。

 

これはカバーストーリーの問題ではありません。我々自身の、組織としての存在意義の喪失に関わる問題です。

 

即時のご決断を求めます。

 




 

アイテム番号: 特設議事録-2019-██-Alpha

件名: 内部査問会「序審法廷制度存続に関する妥当性審議」における抜粋記録

日付: 20██年 ██月██日

場所: サイト-██倫理委員会・第一聴聞室

 

【概要】

本記録は、財団法務部門・カバーストーリー策定局の上級法務官████・██(以下、申立人)から再三にわたり提出された「序審法廷制度の抜本的改革・廃止要求」に関する、特別査問会の公式議事録の抜粋である。

本事案は、申立人の過激化する言動を重く見た倫理委員会の指示により、司法形式に則った特設の聴聞会として開催された。

 

【出席者】

 

-審判長: 倫理委員会代表 議長 ████(以下、裁判長役として進行)

-財団側代表: 法務・隠蔽部門 統括官 ██(以下、検事役。制度の存続・擁護を担当)

-申立人: 上級法務官 ████・██(以下、弁護士役。制度の危険性を主張)

 

[録音記録抜粋開始]

 

審判長:

これより、申立人████・██による「序審法廷制度」に対する異議申し立ての最終聴聞会を開始する。(咳払い)財団側代表、██統括官。反証の提示を許可する。

 

██統括官 (検事役):

感謝いたします、審判長。……さて、██法務官。貴官は長年、我が部門が手塩にかけて育成したこのカバーストーリー構築システムを「法の暗黒時代を招く欠陥品」と声高に叫んでおられるようだが。全く、呆れてものが言えない。

(██統括官は冷笑を浮かべ、指先で提出書類を弾く)

貴官は現場の感情に流され、最も重要なものを見失っている。すなわち「確固たるデータ」だ。この資料を見たまえ。

過去10年間において、序審法廷制度を利用し、異常存在の関与を「一般人の猟奇犯罪」として完全秘匿することに成功した事案は年間平均で█,███件にのぼる。隠蔽成功率は実に99%。従来の大規模記憶処理にかかるコストは70%も削減された。

この圧倒的な数字を前に、一部の民間人が不利益を被った程度の「些末なデメリット」を並べ立てるとは。貴官はこのデータを無視するというのか?

(呆れたように頭を振る)それとも、数字すら読めなくなったのかね?

 

██法務官 (申立人):

異議を申し立てます!

 

審判長:

却下する。██統括官の提示したデータは財団の公式記録であり、客観的事実だ。

 

██法務官:

(机を大きく叩く)待っていただきたい!

確かにそのデータは事実かもしれない。しかし、その「隠蔽成功率99%」という数字の裏に隠された、法廷での審理プロセス自体に致命的な問題があるのです!

 

██統括官:

(嘲笑するように)ほう? 審理プロセスだと?

それは、貴官が度々報告書に書いている「証拠の捏造」や「審理の形骸化」のことか。だが、結果として異常は秘匿され、社会は正常に回っている。我々財団にとって、それ以上の何が必要だというのかね?

 

██法務官:

異議あり! 社会は全く正常に回っていません! 私はその証拠を今ここでお見せします! これを受け取ってください!

(██法務官は机を両手で強く叩き、一枚の書類を提出する)

 

審判長:

(書類を見て自分の目を疑う)……法務官。これはなんだ。ただのサイト-██の第3食堂における「月間コーヒー消費量推移グラフ」ではないか。本件と何の関係がある?

 

██統括官:

(肩をすくめる)正気を失ったとしか思えんな。審判長、これ以上の審理は時間の無駄です

 

██法務官:

待った! 関係は大いにあります! このコーヒー消費量のグラフこそが、序審法廷制度の欠陥を雄弁に物語っているのです!

 

審判長:

ほう?では説明してもらおうか。

 

██法務官:

(額に汗を浮かべながら)えー、つまり……! このグラフが示す通り、第3食堂では水曜日にコーヒーの消費量が跳ね上がっています!

これは職員が水曜日に強いストレスを抱え、カフェインによる刺激を求めている証拠!

そして水曜日といえば、民間法廷で最も多くの序審法廷が開廷される曜日……つまり、我々財団職員も無意識のうちに、この制度が生み出す社会的ストレスの波及効果を受けているということなのです!

 

██統括官: ……。

 

審判長: ……。

 

██統括官:

異議あり、と言うのも馬鹿馬鹿しい。完全な牽強付会だ。全く無関係な資料を叩きつけ、後から思いつきの屁理屈をこね回して時間を稼ぐ。

そのような三流の詭弁が、この神聖な査問会で通用すると思っているのか?

(██法務官に指を突き付ける)貴官に対する精神鑑定を要求する!

 

██法務官:

まだです!先程の統括官の発言、もう一度お願いします!

 

審判長:

法務官、同じ発言を繰り返させることに何の意味がある?

 

██法務官:

重要な確認です! 統括官は先程「結果として異常は秘匿され」と言いましたが、その「結果」を判定しているのは誰ですか? 具体的な基準は?

カバーストーリーが破綻するリスク評価はどの部署が担当しているのですか!?

 

██統括官:

(苛立ちを見せる)……それは隠蔽部門の管轄であり、基準はマニュアルに明記されている! 貴官も知っているはずだ!

 

██法務官:

待った!そのマニュアルの第4項には何と書かれていますか!? 暗唱できますか!? できないなら、あなたも制度を完全に理解していない証拠だ!

(机を大きく叩く)異議あり!!

 

審判長: 静粛に!! ██法務官、いい加減にしたまえ! (審判長は木槌を激しく叩く)

貴官の先程からの言動は目に余る。関係のない証拠品を突きつけ、後付けの理由で強引にこじつける。相手の言葉尻を執拗に捕らえ、大声で無意味な異議を繰り返して審理をいたずらに引き延ばす。

……ここは真実を精査するための場だ。貴官のような「言ったもの勝ち」のハッタリや、相手の失言を引き出すためだけの遅延行為は到底容認できない!

 

██法務官:

(ふっと息を吐き、静かに姿勢を正す)

……ええ。おっしゃる通りです、審判長。私の今の言動は、論理破綻も甚だしい、見るに堪えない詭弁と遅延行為でした。

 

審判長:

なんだと? では自覚してやっていたというのか。

 

██法務官:

それこそが、私が皆様に身をもって示したかった「確固たるデータ」なのです。

 

██統括官:

(3秒息を飲む)……何?

 

██法務官:

審判長。そして統括官。あなた達は今、私の理不尽なこじつけと、終わりの見えない難癖に対し、強い苛立ちと疲労を覚えたはずです。

「こんなものがまともな審理であるはずがない」と。……しかし、これこそが、私達が作り出した「序審法廷」の日常なのです。

 

(聴聞室が静まり返る)

 

██法務官:

最長3日間という絶対的なタイムリミット。不完全な捜査、決定的な証拠の欠如。その極限状態の中で、民間人の弁護士や検事たちは依頼人を救うため、あるいは有罪を勝ち取るため、今の私と全く同じことを法廷で行うよう強いられています。

関係の薄い証拠を突きつけて相手の動揺を誘い、大声で異議を叫んで時間を稼ぎ、論理の飛躍を力技で押し通す。そうでもしなければ、あの異常な法廷では生き残れないからです。

 

██統括官:

(静かに息を吸う)……

 

██法務官:

我々財団は、異常を隠すために「言ったもの勝ち」「ハッタリと詭弁が支配する空間」を表社会のど真ん中に作り上げてしまった。真実の追求など二の次で、ただ相手の隙を突き、矛盾を大声で指摘し合うだけの、サーカスのような法廷を。

この狂った土壌で育つ法曹界の未来が、どれほど凄惨なものになるか。数字上の「隠蔽成功率」だけを見てふんぞり返っている上層部の方々に、この不条理を直接肌で感じていただくために、私はあえてこの場で、最底辺の「序審法廷のプレイング」を実演させていただいたのです!

 

審判長:

……。 (審判長は手元の資料から目を離し、██法務官を深く見つめる)

 

██法務官:

制度の致命的な欠陥は、もはや書類上の懸念ではありません。今、あなた方が感じた理不尽さこそが、社会が被っているダメージそのものです。……ご判断を。

 

[録音記録抜粋終了]

 

【倫理委員会による最終裁定】

 

申立人 ████・██上級法務官の、自身を道化に貶めて行った特異なプレゼンテーションは、査問会に出席した委員たちに強烈な印象を与えた。

彼が実演した「序審法廷制度における論理的崩壊と、ハッタリに依存せざるを得ない構造的欠陥」に関する主張は、非常に説得力を持つものである。

制度が一般社会の司法プロセスに重大なミーム的・心理的劣化をもたらしている事実を、上層部も正式に認定するに至った。

 

しかしながら、多角的な検討の結果、本申し立てに対する最終的な決定は以下の通りとする。

 

裁定: 【対処保留】

 

[理由]

申立人の指摘するデメリット──法曹界の腐敗、冤罪の多発、司法プロセスの形骸化──は事実であり、長期的な社会秩序の不安定化リスクは看過できない。

しかし、現時点において「序審法廷制度」が財団にもたらしているメリットの異常事案の迅速な隠蔽、記憶処理薬の枯渇問題の緩和、カバーストーリーの強固な定着は、そのリスクをはるかに上回っている。

世界規模で発生し続ける超常的インシデントの数に対し、財団のリソースは常に逼迫している。現状の体制において、この圧倒的に効率的な「魔女裁判システム」を手放すことは、ヴェール・プロトコル全体の崩壊に直結しかねない。

 

[付記]

██法務官の勇気ある行動と深い洞察に敬意を表し、同法務官への懲戒処分は見送るものとする。

また、倫理委員会は今後、法曹界の極端な腐敗に関する監視体制を強化し、「異常な権力行使」が財団の活動に直接的な実害を及ぼすと判断された場合にのみ、特定の個人に対する秘密裏の排除プロトコルを検討する。

 

ただし、制度自体の撤廃・改修については、代替となるカバーストーリー構築手段が確立されるまで、無期限の保留とする。

今はまだ、この「法の暗黒時代」を、民間人の手に委ねる他ない。

 

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