ゲーム発展国
アイテム番号: SCP-███-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル:
SCP-███-JP群は、サイト-███の第3娯楽室に指定された専用の電磁シールドロッカー内に保管されます。
本オブジェクト群は、未知の物理的・精神的異常性――ミーム汚染、現実改変の影響、精神的依存の強制的な誘発など――を一切有していないことが確認されています。そのため、セキュリティクリアランスレベル0以上の全職員に対して、自由な利用が許可されています。
過酷な業務環境における職員のストレス緩和および精神的ケアの手段として、SCP-███-JPのプレイはサイト管理者より大いに推奨されています。
ただし、後述するオブジェクトの特殊な性質に起因するパニック、ヒステリー、あるいは機材の不法占拠といったトラブルが過去に多数報告されています。このため、サイト-███管理規程第13条に基づき、SCP-███-JPの独占、消失時の感情のコントロール不全による備品の破壊、同僚への暴力行為など、重大な職務規定違反を起こした職員に対する懲戒処分として、「最低1年間から最大5年間に及ぶSCP-███-JPプレイおよび観覧の全面禁止」という厳格な罰則条項が制定されています。
説明:
SCP-███-JPは、サイト-███の第3娯楽室内の特定のテーブル上に、不定期に自発出現するゲームソフトウェア(SCP-███-JP-A)および専用のゲームハードウェア(SCP-███-JP-B)の総称です。
出現した実体は、市販されている電子遊戯媒体と同等の材質・構造を有しています。パッケージには一貫して黄色いドット絵のロボット(███くんと呼称されます)のロゴと、「株式会社████(名称は出現サイクルによって変化しますが、常に小規模なインディースタジオを思わせる社名です)」という未知の企業名が印字されています。
財団の調査では、該当する企業は地球上のいかなる法人登記に存在しません。プレイ中の異常性は全くなく、ただの「ゲーム」として正常に動作します。
SCP-███-JP群は、数ヶ月から数年の不定期な期間を1つの「サイクル」として、そのサイクル内で複数回にわたって逐次出現します。
財団情報局は、平行宇宙または高次元に存在する何らかの知的存在(便宜上「プレイヤー」あるいは「社長」と呼称します)が、ゲーム会社の経営シミュレーションを行っており、その過程で「開発」されたソフトやハードがこちらの現実に流れ着いている事象であると推測しています。
1つのサイクルの間に現れるSCP-███-JP-A(ソフト)の品質には、明確かつ劇的な変遷が見られます。
【初期段階】
サイクル開始直後に出現するソフト群は、主にPC向け、あるいは極めて旧世代のハードウェア向けに開発されたとみられる粗悪なものです。ジャンルと内容の組み合わせが悪く(例:「パズル」×「マラソン」、「アドベンチャー」×「リバーシ」など)、「面白さ」「独創性」「グラフィック」「サウンド」の全ての水準が極めて低いです。職員の間ではいわゆる「クソゲー」として扱われます。
財団の経済・経営学部門の分析によれば、この時期の対象企業は設立直後で資金繰りが極めて悪化しており、下請け業務(ゲーム漫画執筆やゲームシナリオの受注開発など)で凌ぎつつ、とにかく納期に間に合わせて資金を稼ぐためにソフトを粗製濫造せざるを得ない段階であると推測されています。
【中期段階】
サイクル中盤になると、出現するSCP-███-JP-B(ハード)が「スーパー███オン」、「プレステ███」「███ヤターン」といった現実の次世代機に酷似したものへと遷移します。同時に、SCP-███-JP-Aの品質も安定し始めます。
各パラメータがバランスよく高水準でまとまり始めます。パッケージに「殿堂入り」の金色のシールが貼付されるソフトも出現します。
これは、対象企業が過去の売上で潤沢な資金を得た結果、有能な「プログラマー」や「シナリオライター」を新規雇用し、さらにはレクリエーションを通じた既存スタッフの教育に十分な投資ができるようになったためであると分析されています。
ジャンルも「RPG」×「ファンタジー」など、王道で親和性の高い組み合わせへと最適化されます。
【後期段階】
サイクル終盤においては、対象企業が極めて高度な技術を持つ「スーパーハッカー」や熟練の「ハードエンジニア」を擁していると推測されます。
独自の自社開発ハードウェア(ポテト███と、███カードを用いた特徴的なゲーム機など)とと共に出現するSCP-███-JP-Aは、現代の最高峰のAAAタイトルすら凌駕するレベルへと変貌を遂げます。
美麗を極めたグラフィック、フルオーケストラのサウンド、プレイヤーの魂を揺さぶる感動的なシナリオが実装されており、パッケージには「日本ゲーム発展・グランプリ受賞」といった勲章が印刷されています。
この時期の娯楽室は、息抜きとして最高品質のゲームを求める職員たちで連日長蛇の列となります。
【リセット事象】
サイクルの最終段階。推測される時間で、会社設立から20年が経過した時点において、突如としてすべてのSCP-███-JP群を巻き込む「イベント・ニューゲーム」が発生します。
この20年の経過を、我々の世界から正確に観測する試みは成功に至っていません。
この事象が発生した瞬間、これまでに出現したすべてのSCP-███-JP-AおよびSCP-███-JP-Bは、前兆なく完全に物理的消滅を遂げます。
特筆すべき異常性として、人間の記憶以外のデータが完全に消滅します。
この消滅はオリジナル媒体に留まらず。財団のサーバーに厳重にバックアップされたセーブデータ、ソフトウェアのコピーデータ、プレイ状況を録画していた監視カメラの映像記録、スクリーンショット。
更には職員が個人的に書き残した攻略メモのインクに至るまで、SCP-███-JPのデータに由来する一切の記録がこの世界から消失します。データの保存やコピーの試みは、財団のいかなる技術をもってしても成功していません。
これは、「プレイヤー」が、スコア計算を終えたのちに「ニューゲーム」を選択したことで引き起こされる、局所的な概念消失・現実改変現象であると結論付けられています。
イベント後、数日以内に再び初期段階の「クソゲー」が出現し始め、新たなサイクルが開始されます。
補遺1: 職員への心理的影響と実態
SCP-███-JP自体に直接的な精神影響はありませんが、イベント・ニューゲームによる「絶対的な完全消失」の特性が、職員に極度の緊張感を与えています。
特にサイクルの終盤において、「いつ20年の期限が訪れ、リセットされるか」を事前に予測することは不可能です。
そのため、歴史に残るレベルの傑作ゲームのプレイ中であっても、常に「いつデータが消え去るかわからない」という恐怖と背中合わせになります。
以下は、イベント・ニューゲームに直面した職員の証言記録の一部です。
証言記録████-JP-1
対象: エージェント・██
状況:後期段階に出現した大作RPG(タイトル名:『██・クロニクル』)をプレイ中。総プレイ時間63時間。
証言:
「あと少しだったんです。ラスボスの居城の最深部で、ヒロインが自己犠牲の呪文を唱えようとした、まさに手に汗握るクライマックスでした。その瞬間、モニターの画面がプツンと暗転して……手元のコントローラーも、本体も、全部空気みたいに消え去りました。俺が録画機材を回していたテープも真っ白です。俺の時間はどこに行ったんですか!?ヒロインはどうなったんですか!!」
追記: エージェント・██は深い喪失感から、その後3日間の有給休暇を取得しました。
証言記録████-JP-2
対象: ██研究員
状況: サイクル終盤における娯楽室の様子についてのヒアリング。
証言:
「終盤の娯楽室は異様な空気ですよ。最高水準の神ゲーをやりたいという欲求と、『今リセットされたら心が壊れる』という恐怖の間で板挟みになっています。コントローラーを握る手が小刻みに震えている奴もいますし、ストーリーが盛り上がるたびに『頼む!まだリセットしないでくれ!』と天井に向かって祈ってます。命がけのチキンレースです。ホラーゲームより心臓に悪いですよ。」
補遺2: サイト管理官からの通達
20██年、イベント・ニューゲームによるエンディング直前のセーブデータ消失に激昂した██機動部隊員が、備品のモニターを破壊し、慰めようとした同僚職員に暴行を加える事案が発生しました。
また別の事案では、後期段階のゲーム機を自室に無断で持ち帰り、娯楽室の規定を破って独占プレイを試みた研究員が摘発されました。
これらのインシデントを受け、サイト-███管理官は以下の通達を発令しました。
本オブジェクトの独占、あるいは消失時の感情コントロール不全による暴力行為など、財団職員としての自覚を欠く迷惑行為を行った者には、厳格な処罰を下す。
該当者には、今後1年から最大5年間にわたり、SCP-███-JPのプレイはおろか、他人のプレイを横から眺めることも一切禁ずる条項を適用する」
――サイト-███管理官
現在、この「ゲームプレイの年単位禁止条項」は、サイト-███において最も恐れられる罰則として機能しており、結果として娯楽室の完璧な規律維持に大きく貢献しています。
補遺3: インシデント████-JP-Ω(エンドレス・フェーズ)
20██年██月、SCP-███-JPの出現サイクルにおいて、極めて特異な事象が観測されました。推測される経過時間が「20年」の基準点を大幅に超過したにもかかわらず、「イベント・ニューゲーム」が一切発生しなかった事です。
この事象に伴い、出現するSCP-███-JP-A(ソフト)の品質は、後期段階のそれをさらに凌駕する未知の領域へと突入しました。「面白さ」「独創性」「グラフィック」「サウンド」のすべてのパラメータが常識を超えた数値になっている、文字通りの「究極の神ゲー」が矢継ぎ早に出現するようになりました。
ジャンルや内容の組み合わせも、「RPG」×「ファンタジー」などの王道にとどまらず、あらゆる要素が完璧な調和を見せる奇跡的な作品群に進化していました。
財団情報局はこの事態について、「プレイヤー」が20年時点でのスコア計算を終えたのち、ニューゲームを選択せず、「限界までのやり込み」に移行したと推測しました。
最高水準のスタッフのみを揃え、ハードウェアのシェアを完全に独占してから、最大販売本数をどこまで伸ばせるか、あるいは所持金の上限に挑んでいると考えられます。
この推測がサイト内に共有された直後、サイト-███において未曾有の事態が発生しました。
この最大の懸念点は、「プレイヤーがいつこのやり込みに飽きて、リセットするかが、全く予測不可能である」という事実を意味していました。
1日後に消滅するかもしれないし、1年後に消滅するかもしれない。その極限の焦燥感と、「二度とプレイできないかもしれないこの究極のゲーム群を、少しでも多くクリアしたい」という執着が、職員達の正常な判断力を奪いました。
結果として、サイト-███に所属する職員の約94%が、同日中に「親族の不幸」「深刻な体調不良」「自己啓発のための長期休養」などと称して、数週間から数ヶ月に及ぶ有給休暇を一斉に申請する事態に発展しました。
当然ながら、サイトの運営が完全に麻痺するため、これらの申請はすべて人事部門およびサイト管理官によって即座に却下されました。
しかし、却下された後も事態は沈静化しませんでした。一部の重症な職員(研究部門および機動部隊員も含む)の中から、「クリアランスと階級を剥奪され、Dクラス職員に降格されても構わないから、娯楽室でSCP-███-JPを24時間プレイする任務を与えてくれ」という、正気を疑う嘆願書が複数提出されました。
これらの嘆願も、人事部門によって極めて冷静かつ無慈悲に却下され、該当職員には精神鑑定とクラスA記憶処理の適性検査が義務付けられました。
この異常事態を受け、サイト-███管理官より全職員に向けて以下の緊急特別通達が発令されました。
サイト-███管理官からの緊急通達
君達の言い分はわからなくもない。確かに、現在第3娯楽室に積まれている一連のソフト群は、人類の娯楽史の頂点に立つと言っても過言ではない代物だ。
私とて、先月リリースされた『ファイ███スト』の裏ダンジョンをなんとか踏破したいと思っているし、プレイヤーがいつリセットして消し去ってしまうのかと、夜も眠れないほどの恐怖を抱いている。
仕事中も、あの完璧なオーケストラのBGMが脳内を駆け巡っている。この感情は私だけではないはずだ。
だが、我々は財団職員である。我々の使命は「確保、収容、保護」であり、「全クリ、周回、トロコン」ではない。
一つの次元の「プレイヤー」の気まぐれによって、Keterクラスオブジェクトの収容体制を維持すべき我々のサイトが機能不全に陥るなど、財団の歴史に残る最大の汚点である。
もし、明日にでもエンティティが収容違反を起こしたとき、「すいません、今セーブポイント探してるんで後にしてくれませんか」とでも言うつもりか?
これ以上、職務を放棄し、サイトの規律を乱すような愚行が続くのであれば、私は権限を行使してSCP-███-JPのセキュリティクリアランス・レベルを現行の「0」から「3」以上へ引き上げ、特別収容プロトコルを大幅に改定する。即ち、一般職員の娯楽室の立ち入りと本オブジェクトのプレイを未来永劫、完全に禁止するということだ。
幻の神ゲーをプレイできなくなることと、本来の過酷な現実に無報酬で立ち向かうこと、どちらが本当の地獄か、各自の優秀な頭脳でよく考えることだ。
追伸:第3娯楽室での宿泊、および無断での有線LANケーブルの引き込みは規定違反である。今夜の巡回で発見した場合は、直ちに懲戒処分の対象とする。
――サイト-███管理官
この通達の発令後、有給休暇の申請ラッシュは急速に収束し、職員たちは本来の職務に復帰しました。
インシデント後、数週間して突然「イベント・ニューゲーム」が発生し、すべてが消え去った際、サイト-███全体が深い絶望の沈黙に包まれましたが、業務自体は滞りなく遂行されたことが記録されています。
たのしいざんだん。