転生したらTSして悪魔になったので、ロールプレイします   作:メスシリンダーガキ

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突発的に閃いて勢いで書きました。後悔はしてません


一話

 

 

 

 

 悪魔、それは人類にとって古くからの隣人であり、信仰の対象だったり、寄り添うモノだったり、悪意を振り撒く災害だったり、味方でも敵でもあり、そうではなかったりする存在。

 ハッキリと言えるのは、悪魔とは極力関わるなということ。

 関わった人間は、悪魔のその強大な力を、恩恵を与えられ、そして破滅するのだから!

 ――あぁ、だけどあいつらは悪魔だ。

 こっちが避けても、あいつらは自分たちからやって来る。

 いつの間にか近くに居て、いつの間にか全てを台無しにしてくる。

 とんでもなくタチの悪い、最悪の隣人だ。

 ――あぁ特に、あの『天秤の悪魔』には気を付けろ。

 ヤツの天秤は公平だが、それはヤツにとっての公平だ。

 人間を音の出る玩具としか思ってない!

 だから、ヤツに出会したら諦めろ。

 逃げることも、立ち向かうのも意味はない。

 ヤツの気紛れに賭けて、ヤツの気分を満たせ。

 それが唯一助かる道だ。

 

 ――天秤の悪魔は実在する――

 より抜粋。

 著者不明。

 

 

 

 

 

 

 

 

 冒険者のジークは焦っていた。

 パーティメンバーたちが、ダンジョンから帰還したあと突然意識を失って倒れた。

 そして未だに目が覚めてない。

 調べてもらったところ、どうやら呪いを受けているらしい。

 さらに悪いことに、このままでは確実に衰弱死してしまうこと。

 そして呪いについては心当たりがあった。

 ダンジョンから帰還する前、自分以外のメンバーはゴーストに触れられたと言及していた。

 ゴーストは生者の生気を奪い取る存在。

 その時はみな元気にしていたので、多少生気を取られただけだと思っていた。

 だが実際は呪いを掛けられてたのだ。

 そしてその呪いを解呪するには、呪いを掛けたゴーストを消滅させるしかない。

 頼りの聖水も、よほど強い呪いなのか解呪する事はできなかったのだから。

 それに高位の神官を聖都から連れて来るのでは確実に間に合わない。

 

「くそっ……急がなくちゃいけないのに――」

 

 ジークがギルド近くの路地裏で、焦る気持ちが抑えきれず籠手のついた手で壁を叩いた。

 そう、もう一度あのダンジョンに戻ってゴーストを消滅させる。

 目的は明確だが、そのための手段が今のジークにはなかった。

 自慢にはなるが、ジーク自身もパーティメンバーたちも名が売れている程の実力を持っていた。

 あのダンジョンも実力者向けの高難易度のもの。

 だから、ジーク単身ではダンジョンを進むのは不可能だし、自殺行為だ。

 そのため急遽臨時のパーティメンバーを募集しているのだが、中々集まらなかった。

 当然と言えば当然、いくらジークが報酬を払おうが、誰しも自分の命が一番だ。

 高難易度のダンジョンと聞いて、簡単に付いてきてくれる者はそうそう居ない。

 ――時間がない。

 もう単身で向かうか、金で命を張れる傭兵を雇うか。

 そう考えた時、ソレは路地裏の暗がりから現れた――

 

「――お困りですかぁ? そこのイケメンさん」

 

 長いピンク色の髪をした女性――いや少女だろうか。

 暗がりに溶け込むような黒色のやけにフリフリした服を着ていた。

 瞳はオッドアイというやつで、赤色と黄色。

 そして頭には山羊に似た角が付いていた。

 ――亜人種のハーフか何かだろうか。

 

「んー? あれぇ、聞こえてますかぁ? おーい」

 

 やけに甘い声だ。

 脳にまで直接響くような、蠱惑的な声。

 思わず反応が遅れてしまった。

 

「ぁ、あぁすまない。何か御用かな」

 

 何とか脳を再起動させて、言葉を搾り出した。

 

「御用っていうかぁ、何か思い詰めた様子だったから心配で声を掛けただけでぇ」

 

「それは……すみません、ご心配をしていただきありがとうございます。ですが個人的な事なのでお気になさらず」

 

 赤の他人に心配されてしまうほど思い詰めた様子をしていたらしい。

 とにかく急いで準備しなくてはならない。

 礼の言葉だけ述べて、その場から立ち去ろうとする。

 

「――()()()()()()()

 

 ……少女のその言葉に、足を止めてしまう。

 

「ねぇ、イケメンさん。ゲームしませんか?」

 

「ゲーム……?」

 

 さっきまでとは違う少女の口調や雰囲気に、つい聞き返してしまった。

 

「今からこの金貨を弾いて、私がキャッチします。金貨が表か裏かをイケメンさんが当ててください」

 

「いや、申し訳ないがそんな暇は――」

 

 自分のその言葉は無視して、少女は勝手に金貨を弾いてゲームとやらを始めてしまう。

 少女が慣れたように宙を舞った金貨を右手の甲で受け止め、左手で蓋をするようにキャッチした。

 

「当てたら()()()言う事聞いてあげます。外したら――ご飯奢ってください」

 

「いや、いきなりそう言われても……」

 

 自分がまだゲームに乗り気でない様子を見て、少女は口角を上げて笑う。

 ……何故か、その顔が少し怖く感じた。

 

「――えー、お仲間さんの呪いをどうにかしたいのでしょう? 本当に参加しなくて良いんですかぁ?」

 

「っ……! 何故そのことを――」

 

「あれだけ周りに騒いでれば誰でも気付きますよぉ。ほら、勝てば()()()私に命令して良いんですよぉ。ダンジョンに連れてったりぃ、お仲間さんの呪いを解呪してくれぇとか」

 

「……君は冒険者? それとも高位の神官なのか?」

 

「ざんねーん、どっちでもないでーす。でもこう見えて器用なんで大抵のことはできますよぉ。ほらほら、降って湧いてきたチャンスですよぉ」

 

 少女が数を数え始める。

 それは徐々に低い数字になっていく。

 カウントダウンだった。

 0になる前にこのゲームに参加するか否かを決めろということだろう。

 

「――では、表で」

 

 少女の言うことは半信半疑だ。

 というよりほぼ嘘だろう。

 付き合う義理はない。

 しかし仮に外しても食事を奢るだけ。

 事情は分からないが、もしかしたら身売りか物乞いかもしれない。

 ……それにしては身なりは良いが。

 亜人種のハーフは迫害がひどいらしく、この少女もその類なのだろう。

 そう結論付けて、自分は少女のゲームに参加することを表明した。

 

「――残念、裏でした」

 

 少女が左手を開けると、金貨は数字が刻まれた面――()()だった。

 

「……ちなみにその金貨、どっちも同じ面だったりするのかな?」

 

 イカサマ金貨の存在は自分も知っていた。

 だから何気なくそう訊ねてみた。

 

「えー、ひどーい。疑ってるのイケメンさん、ほらほらちゃんとみて」

 

 少女が金貨をひっくり返す。

 するとちゃんと裏側が出てきた。

 

「――疑ってしまってすまない」

 

 なので素直に謝罪した。

 

「いいよー、許しまーす。じゃあ……ご飯奢ってください!」

 

 

 

 

 

 

 

 突然だが自分は転生者だ。

 日本生まれの至って平凡なサラリーマンだった。

 けどまぁ、なんか気が付いたら異世界転生とやらをしていた。

 そしてなんか悪魔になってた。

 しかも女悪魔。

 悪魔って性別ちゃんとあるんだーとか思いつつ、この先どうしようかと考えた。

 そして結論を出した。

 ――悪魔ロールプレイをしよう、そうしよう。

 そう思い立ち、人間社会にちょっかいを出し続けること千年ちょっと。

 今日も今日とて獲物を探していると、イケメンの冒険者の噂を耳にした。

 どうやら呪いで死に掛けている仲間のために、奮闘しているようだ。

 イケメンで強いのね……嫌いじゃないわ!

 なので気紛れで出血大サービス!

 二分の一で勝てるコイントスゲームを持ちかけた。

 さぁ、これで勝てばめちゃくちゃ簡単にイケメンさんの目的は達成される!

 今までの苦労や徒労が台無し、この千年で磨き上げた悪魔パワーで、自分が指を鳴らすだけで仲間は元気百倍勇気凛々!

 えーイケメンで強いのにこんなか弱い女の子に解決されちゃうんだぁ、ねぇ今どんな気持ち?

 その顔、その自分の無力感に歪んだ顔が見たかったぁ!(変顔)

 ……という予定だったが、普通に外したぞこのイケメン。

 やだ……イケメンさんのラック値低すぎ――

 吐いた唾は飲めないので、仕方なくご飯を奢ってもらおう。

 なに、まだ俺のバルトフェイズは終了してないぜ!

 さっきのは気紛れの出血大サービス。

 このあと、正式な取引を持ち掛ける。

 天秤は公平なのだから。

 

 

 

 

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