転生したらTSして悪魔になったので、ロールプレイします   作:メスシリンダーガキ

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十三話

 

 

 

 

 門番の仕事は普段は退屈なものだが、今日だけは違う。

 年に一度開かれる社交界、その日だけはいつものように立っているだけではダメだった。

 招待状を確認、通す、確認、通す。

 そして偶に偽造した招待状を持っていた輩を拘束したり。

 とはいえ何年もこの仕事をやっていれば、見分けは簡単だ。

 常連は青い封蝋の招待状、新参者は赤い封蝋の招待状。

 基本的に前者は毎年見る顔なうえ、郵送もこちらの雇い主が信頼している業者に頼んでいるらしく、盗難や成り済ましの可能性はほぼ無い。

 なので警戒するのは後者。

 赤い封蝋は毎年どんな奴が持ってくるかその時まで分からない。

 だから必然的に偽造しようとする輩も、赤い封蝋の招待状の方で偽造して騙そうとしてくることが多い。

 それを見極めるのが今日一番の大仕事だった。

 

「――止まれ、ここはマーティム・フォン・コーデリック卿の別邸だ。観光客なら即刻立ち去れ、招待客ならば招待状を提示してもらおう」

 

 社交界が始まって1時間ほど、殆どの招待客を通し終え、ひと段落がついた頃。

 女と……男――いや、全身鎧と言った方がいいだろう――が門に近付いてきていた。

 お決まりのセリフを言うと同時に、観察を始める。

 

 女は上玉だ。

 ピンクの髪に目立つオッドアイ。

 夜に紛れるような黒色のドレス。

 やや少女のような幼い顔立ちをしているが……

 それを化粧で補っているようで、所作も上品で大人びた印象も感じられた。

 正直言って好みの女だ。

 

 全身鎧は顔すらも兜で隠した、フルプレートだった。

 体格や動きからして男だろう――メスのオークとか、異様に背の高いドワーフの女とかでない限りは。

 鎧は女のドレスと同じような黒色で、所々に金色のラインや装飾が付いている。

 王国の騎士たちが使っているものとはだいぶ違うが、異国の騎士といったところだろうか?

 

「――はぁい、私たちは招待客でーす」

 

 女の方が媚びたような声を出しながら、招待状を差し出してきた。

 ――赤い封蝋だ。

 まぁ見たこともない2人だし、そうだろうとは思っていたが。

 

「確認させてもらおう――」

 

 実は本物と偽物を区別するために、毎年封蝋の押す角度、細かい模様、使っている羊皮紙が違うなどの仕掛けがある。

 門番の自分たちにだけその答えが教えられるのだ。

 

「――本物だな……ようこそいらっしゃいました。大変恐縮ですが、危険物などはこちらでお預かりすることになっております。ボディチェックにご了承頂けますか?」

 

 本物の招待状を持って来たのなら、正式に招待客として扱う。

 それがたとえ貴族だろうと平民だろうと。

 

「えぇー、そう言って変なところ触ろうとしてるぅ?」

 

「ご安心ください、レディ。女性の方には、あちらで待機している侍女たちがしてくれます。お連れの方は――僭越ながら私めが」

 

 女を門近くの小さな小屋――普段は詰所として利用されている――へ、鎧の男はその場に残ってもらい、まずは腰に引っ提げた剣を鞘ごと預かった。

 そしてボディチェックを始める。

 とはいえ鎧を全部脱がしていると手間どころではないので、隠し武器が無いかのチェックだ。

 

「……良い女だな、仕えているアンタが羨ましいよ」

 

「…………」

 

 軽口を叩くが、無反応だった。

 どうやらお喋りは苦手らしい。

 

「――ご協力ありがとうございました。それでは女性の方が終わるまでお待ちを」

 

 そうして、女と鎧の男を通した。

 ――そろそろ俺も酒を飲みたくなってきた。

 交代の時間が待ち遠しいものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここがあの女のハウスね!

 じゃなかった。

 ここが社交界の会場ね!

 

「いやぁ、まだ時間はあるけど、ちょっと遅れちゃったねぇ」

 

「…………」

 

「え、準備が長いからだ? はいダメー、マイナス一億ポイント。女の準備は長くて当たり前でーす。事実でも口にしたらマストダイ、あなたはコンティニューできないのさ」

 

 相変わらず乙女心がわからない騎士様だ。

 あ、もう気付いてると思うけどこの全身鎧はマスターだよ。

 見なよ、オレのマスター(フルプレート)を。

 かっこいいでしょ?

 一方通行的に惚れちゃいそうだぜぇ!

 

「…………」

 

「ん、だから言ったでしょ? この王国では鎧はドレスコードの一種だって」

 

 マスターが辺りを見回している。

 顔がないマスターをそのまま連れ回すわけには行かないので、マスターの昔の一張羅()を着せている。

 本人は悪目立ちするのではと心配そうにしていたが、他の招待客も全員ではないが、鎧を着せた従者を連れている事、警護兵らしき者も何人か鎧を着ている事実が彼を安心させていた。

 

「へへ、まだ屋敷の庭なのにテーマパークに来たみたいだぜ。テンション上がるなぁ」

 

 大道芸人がパフォーマンスを披露していたり、露店のような形で酒が振舞われていたり、ダンスの時間まで待ちきれない男女が楽器弾き達の前で踊ったりしている。

 やっぱり偶にはこうしたお祭り気分も悪くないものだ。

 あ、言い忘れてたけど、流石に今回は角は他人からは見えなくしてるよ。

 会う人会う人に毎回突っ込まれてたらキリがないからね。

 だから角なし角なし言うのはやめてね?

 私は弱いロ⚪︎ゾ族じゃないよ。

 

「さぁてさて、まずどうしようかなぁ。パッと見ただけでも気になる人間がちらほらと――あぁでもあそこで振舞われてる料理も気になるなぁ、先に飲み食いしてから……」

 

 どうするか悩んでいると、マスターに肩を叩かれた。

 

「ん? どしたの? ……もぉ、悪酔いなんてしないよぉ。いくら高くて美味しそうなワインを振舞われても、節度を持って――」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁー、まだのみまーす」

 

 ふにゃふにゃの軟体生物になってしまった主人を引き摺るように、人気の少ない庭園へ連れて行って介抱をする。

 背中を支えようとするとぐにゃりと曲がって非常に支え難い。

 何とか噴水の縁の近くのベンチに横にさせることに成功した。

 ――悪魔と名乗るくせに、酔い方は本当に人間そのものだ。

 時折、この主人が一体何なのか分からなくなる……いやいつもか?

 

「ぐぅ……やっぱり寝言はガ行がしっくりくるぞい」

 

 何てよく分からない事を呟きながら、微睡み始める主人。

 勝手に連れて来て勝手に寝始めるとは実に自分勝手だ。

 これでは久しぶりに外に出ても、やってることはいつもの酒場と同じではないか。

 ……まぁこうしてる分には喧しくなくて平和なものだ。

 しばらくの静寂を楽しむとしよう――

 

 

 

 ――そう思ったのだが、そういうわけにはいかないようだ。

 

「…………」

 

 横になっている主人を背にして立ち直す。

 同時に庭園の入口の方から、1人の青年がやって来た。

 

「――君に恨みはない」

 

 金髪碧眼で、この王国の紋章らしきものが刻まれた鎧を着た青年だった。

 

「だから退いてくれないか? 僕が用があるのは――」

 

 青年が腰の剣を鞘から引き抜いた。

 その刀身は恐ろしいほど鋭く、美しかった。

 

「――そっちの()()だ」

 

 剣の鋒を自分――ではなく、背後の主人に向けた。

 その剣には、その瞳には確かな敵意が宿っていた。

 

 

 

 




つ、次で終わるから…はず、多分、おそらく、きっと
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