転生したらTSして悪魔になったので、ロールプレイします   作:メスシリンダーガキ

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十四話

 

 

 

 

 父親は失踪した。

 妹は()()に連れ去られた。

 だから母と2人で生きてきた。

 貴族という立場、生活から平民に。

 苦労もしたが、同時に重圧やしがらみも無くなった。

 

 そして15の時に王国騎士団に入団した。

 理由はよくあるもので、昔から憧れていたのと、母に少しでも良い生活をと騎士団の給金の良さに。

 ――それと、腕を磨くために。

 もしかしたら、妹を連れ去った悪魔と相まみえる日が来るかもしれないと……

 

 幼い頃、父親は他所ではもう貸してもらえないからと、金銭を借りるためだけに悪魔を呼び出して契約したらしい。

 当時も今でも愚かな考えだとハッキリと言えるが、それは家族に幸せになって欲しいからと、心からの願いだったからだと母は言う。

 ――ならばなぜ母と自分を残して消えたのか?

 その疑問を母にぶつけようとは思わなかったから、心の奥底にしまってある。

 

 騎士団に入って2年ほど、それなりに剣の腕も上がり、生活も安定し始めたころ。

 妹を連れ去った悪魔について調べ始め、呼び出すための方法も父親が残していた記録から知ることができた。

 妹が生きているかはわからない、だから直接聞き出す。

 もし無事だったのなら、赦そう。

 そうでないのなら、報いを。

 ――これが逆恨みなのは理解していた。

 だが、兄として愛していた妹を無かったことにはしたくなかった。

 

 あの日、妹を連れ去られたときの夢をまだ見る。

 必死にしがみつこうとする両親、幼さ故か状況が判らずあどけない表情の妹、何もできずに怯えていた自分。

 そして、あの悪魔の顔――

 目の前から消えるその前に、悪魔は自分を一瞥した。

 その表情は()()にも似た何かだった。

 

 

 

 

『――お願い、ユーシス。あなたまで失いたくない……』

 

 だが、母に自分の気持ち、行動がバレてしまった。

 そして泣きながら懇願されてしまった。

 危険なことはしないで、悪魔とはもう関わらないでと――

 結果として自分が折れた。

 心の支えが自分しか居ない母にとっては、それは当然の願いだった。

 妹のことは大事だ。

 しかし母を裏切ってまでそれを成し遂げようとしては、きっと妹も浮かばれない。

 だから、諦めた。

 諦めたつもりだった。

 しかし、それは今日覆ってしまった。

 

「…………ばか、な」

 

 目を疑った。

 19歳になり、騎士団の中でもそこそこの地位についたころ。

 とある大貴族――マーティム卿の主催する社交界の警備として騎士団から派遣されたうちの1人として、自分はマーティム卿の別邸に来ていた。

 そこで、あの悪魔を見つけた。

 見つけてしまった。

 間違い、あの悪魔だ。

 角はないが、あの髪とオッドアイの瞳は忘れたくても忘れられなかった。

 ――衝動的に剣を抜いて飛びかかろうとする気持ちを理性で抑えた。

 ほぼ間違いなくあの悪魔だが、大勢が見ている前で騎士が剣を抜いて誰かを襲う場面を見せるわけにはいかない。

 いかに正当な理由があろうと、それは人としてしてはいけないから。

 だから機をうかがった。

 機会を待った。

 そして来た。

 連れらしき全身鎧の男と一緒に、庭園の方へと向かったのを確認して、静かに後を追った。

 

 

 

「――僕が用があるのは……そっちの悪魔だ」

 

 剣を抜いた、抜いてしまった。

 鎧を着ているとはいえ、丸腰相手に。

 だがあの悪魔と一緒に居るのだ、きっとまともな人間ではないだろう。

 ――もう後戻りはできない。

 母よ許してくれ、もう我慢はできないのだ。

 

「…………」

 

 鎧の男は何も語らない。

 だがその立ち振る舞いが、何故か横になっている悪魔を護るものだというのは見て分かった。

 ――なるほど、彼も()()か。

 忠義を誓った国を、相手を、己の全てを持って全てを捧げる。

 彼はまさに悪魔の従者だ。

 

「…………」

 

「…………」

 

 彼を無視して悪魔には近付くのは不可能だろう。

 武器なぞ騎士にとっては、あってないようなもの。

 例えその手に剣が無くとも、騎士は騎士で有り続ける。

 ――しばらく睨み合いが続く。

 

 "例え無手だろうと"

 "例え相手が丸腰だろうと"

 

 2人の騎士が似たような事を考える。

 そして、両者が足を踏み出そうとしたその瞬間だった。

 

 

 

 

「――くちっ……うーん、やっぱり肌寒いな。読者サービスで肌面積多めのドレスにしたけど、やっぱりストールくらい着ようかな…………ん? なに、私にお尻向けて何のつもりよえっち!」

 

 小さなくしゃみ、そして鎧の金属部分を叩いたような音が響いた。

 ベンチで横になっていた悪魔が起き上がり、自分の従者の臀部の鎧の部位を叩いたのだ。

 

「…………」

 

「は? 空気を読んでくれ? 何でシリアスモードなの? 十一話でもう読者さん達も散々摂取しただろうから、そういうの少し控えようよ――おん? 誰このイケメン、誰このイケメン!?」

 

 そしてようやく自分の存在に気が付いた悪魔。

 

「美少女悪魔ちゃんと、マスターとイケメンの3人……何も起きない筈もなく――え、違う? 何か私に恨み辛み妬みを持ってそうなイケメンだって? ……なんだ、私を取り合って始まる恋愛が始まるかと思ったのに」

 

 悪魔がベンチから立ち上がった。

 そして少し乱れた髪や服を手櫛で簡単に整えて、気を取り直すように咳払いをした。

 

「――はぁい、初めまして……じゃないのかなぁ? あなたはだぁれ? 私はだぁれ? というわけで自己紹介から始めようよぉ。私は――」

 

「天秤の悪魔だろう?」

 

「……君さぁ、名乗りや変身途中の最中に攻撃する系の空気読めないさんかなぁ? まぁいいけど……じゃあ今度はあなたのお名前教えて?」

 

「悪魔に名乗る名などない」

 

「うわぁ、取り付く島もないよぉ。いいもん、ちょっと未来の私に聞くもん――『ggrks』だぁ? じゃあ過去の私――『ggrks』だぁ? くそっ、そういえば出発前に何となく言いたくて言った記憶あるぞぉ」

 

 それは支離滅裂の内容だった。

 こちらを油断させるための演技のようなものだろうか?

 

(……しかし、覚えてないか)

 

 当然といえば当然、互いに言葉も交わしてない、一瞬だけ目を合わせただけ。

 こちらは忘れられぬ日だが、あちらからすればあの日は単なる日常。

 人間の顔などいちいち覚えていないのだろう。

 

「それでぇ、名無しさんは私に何の御用でしょうか? ていうか良いのかなぁ。王国に仕えてる騎士様が、悪魔とはいえ丸腰の相手に剣を向けるなんてぇ」

 

 その言葉に胸が痛む。

 今自分がしている行いは、騎士として最低な行いだと。

 だが……

 

「……悪魔というだけで充分な理由だろう。ここに何をしに来た?」

 

「何って……招待状を運良く手に入れたから、来てみただけだよぉ」

 

「それでここにいる人間全員を不幸にしに来たのか?」

 

「…………はぁ」

 

 悪魔が深いため息を吐いた。

 それは、失望、呆れといった感情が含まれていた。

 

「――疑うのは別にいいよ、その敵意も人間から悪魔に向けるものとしては正常だ。けどその疑い、敵意に()()を含めるなら――」

 

 悪魔が鎧の男を軽く押し退けて、前へ躍り出た。

 

「――せめて名を名乗れよ王国騎士。その私怨を受け取りたくとも、名も知らぬのでは受け取れない」

 

 その金の瞳が異形のモノに変わり、自分をその真っ暗な瞳孔に収める。

 ――息が詰まりそうになる。

 手が震える、脚から力が抜けそうになる。

 それを歯を食いしばって耐えた。

 

「――なぁーんちゃって。あー恥ずかしい恥ずかしい。ちょいカッコいい系出そうとしたけど難しいな。何か黒歴史作っちゃった気がするよぉ。今の全カットでお願いしまーす」

 

 さっきまでの威圧感が嘘のように消え、悪魔は鎧の男の背中に隠れて、顔だけ覗かしている。

 ――その行動に、隠れんぼの遊びが好きだった妹の顔が脳裏をよぎった。

 そのせいで、抑えていた感情が爆発してしまった。

 

「……僕はユーシス」

 

「ん?」

 

「お前に……お前が連れ去った、レイラ・ストライジの兄――ユーシス・ストライジだ!」

 

 自分の名前を感情のまま叫んだ。

 

「…………レイラ」

 

「…………」

 

 悪魔と鎧の男が顔を見合わせた。

 

 

 

「――あー! あの時の! もう1人の子どもの方かぁ! もーなんだ、はやく言ってよぉ。ていうか大きくなったねぇ、飴ちゃんあげようか?」

 

 さっきまでと打って変わって、機嫌の良さそうな笑顔を浮かべる悪魔。

 ……何故だ、本当に再会を喜ぶような人間みたいに――いや、これも演技か。

 

「答えてもらおう、妹を――レイラを何処に連れ去った? …………無事、なのか……?」

 

 答えは知りたいが、知りたくない(聞きたくない)

 そんな矛盾した気持ちで、震える声でそれを口にした。

 それに対して悪魔は――

 

 

 

「――うん、無事だよぉ」

 

 悪魔が鎧の男の背中から飛び出して、前に立ち笑顔でそう言った。

 その言葉に、剣を握る手が緩んでしまう。

 ダメだ、悪魔の言う事だ。

 嘘を付いている可能性だってあるだろうに。

 ……だが、その希望に寄り添いたくなる。

 それが例え悪魔の囁きだろうと――

 

 

 

「毎日(休日有り)、()()()()()必死に働いてくれてるよぉ。良い子だよねぇ」

 

 ――剣を握る手に力が戻った。

 

「…………貴様ぁ! 妹に悪魔の片棒を担がせているのか!?」

 

「あれぇ!? 何か怒ってない!? ……言い方が悪い? じゃあマスターが代わりに言ってよ。あ、無理か」

 

 もう話し合いなどに意味はない。

 

「妹を……返してもらおうか(自由にしろ)

 

「え、やだ。お気に入りだもん。そもそも世話とか、色々と仕込んであげたし、貰った時よりも価値がかなり上がってるから返却は無理っていうか――やべ、つい本音が――」

 

 その悪魔の言葉は火に油だった。

 脚に力を込めて跳躍するように駆け出す。

 間合いを詰め、剣を振る。

 狙うは急所、それだけで悪魔を簡単に滅するとは思っていない。

 だから、何度でも狙おう。

 その身、その存在が消えるまで何度でも何度でも剣を振おう……!

 

 

 

「…………なに?」

 

 金属音が響いた。

 剣は悪魔に届くことなく、鎧の男によって止められた。

 それ事態は予測していた、だが自分の剣を止めたのは鎧の男の無手(籠手)やプレートなどではなく――

 

()だと……!? 一体何処から――」

 

 ――柄も刀身も黒い、剣だった。

 武器を持ってない筈の鎧の男の手には、黒い剣が握られており、それが自分の剣を止めていた。

 直剣よりも大きいが、大剣よりもやや小さい。

 そんな剣だった。

 

「あ、こら。勝手に剣を出したらダメでしょ――あーもう、守ってくれてありがとうっ」

 

 悪魔が言う。

 そして同時に剣を大きく振るわれ、バランスを崩された。

 このままでは斬られる。

 なので後ろに大きく飛び退き、距離を取った。

 

「うーん……よし、もうここまできたら勢いでしょ! ――ユーシス・ストライジ。汝に()()を挑む!」

 

「……決闘、だと?」

 

 悪魔が高らかに宣言する。

 

「君が勝てば質問する権利を上げる。それに対して私は嘘は付かないと誓おう。大好きな妹の居場所でも何でも聞き出せばいい。あ、決闘相手は私じゃなくて彼だけどね?」

 

「……僕が負けたら?」

 

「んー……まぁレイラちゃんの事を私から聞き出すのは諦めろって感じかなぁ?」

 

「――いいだろう」

 

 悪魔と取引はしない。

 だが決闘ならば、受けて立とう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――そうか、しかしそれはあまりにも勿体無い」

 

 ――第三者が介入する。

 男の声だった。

 

「事情はよく分からぬが……決闘するならば()()()派手にいこう」

 

 男が庭園の入り口から優雅に歩いてくる。

 

「……ま、マーティム卿」

 

 ユーシスがその男の名を口にする。

 

「やぁストライジ君。君ほどの男が熱くなるとはらしくない。だが実に良い、ぜひその熱でこの社交界を熱くしてくれたまえ――そうすれば君の問題行動には目を瞑ろう」

 

「…………」

 

 男――マーティム卿と呼ばれた男は、ユーシスを通り過ぎて、悪魔と鎧の男の前まで来た。

 

「あなた方もそれでよろしいですかな?」

 

 そして優しい笑みで言ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんか今度はイケメンならぬイケオジが来たぞ。

 ちょっとこれまだ続くの?

 短編なんだから一話で綺麗に終わらせろよ、教えはどうなってるんだ教えは。

 あ、そうだあれ言っとかなきゃ!

 ggrks!

 

 

 

 




わりぃ、終わらなかったわ。次回へ続く
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