転生したらTSして悪魔になったので、ロールプレイします   作:メスシリンダーガキ

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二話

 

 

 

 

「ご馳走様さまでしたぁ、ありがとうねイケメンさん」

 

「いや……それにしても凄く食べたな」

 

 少女は5人前くらいの量を平気で平らげてしまった。

 

「ごめんねぇ、久しぶりだったからつい止まらなくてぇ」

 

 やはり普段の生活にすら困っているのだろうか。

 とはいえ、これ以上は付き合う義理はない。

 少し後ろ髪を引かれるが、今は仲間たちの方が優先だ。

 

「――あぁ待ってイケメンさん」

 

「? まだ何か……」

 

 席を立とうとして、少女に呼び止められた。

 そして、異変に気が付いた。

 

「……っ、これは一体!?」

 

 信じられない光景だった。

 周囲が、周りが、人々が、全てがその動きを止めていた。

 少女と自分を除いて、まるで時が止まったような異空間。

 いかなる魔法も時間に干渉するのは不可能とされている。

 しかし現に起きているこの現象は一体何だと言うのか。

 

「思ったよりご馳走してもらったから、そのお返し。『取引』しようよ、イケメンさん」

 

「取引……だって?」

 

 少女は至って冷静だった。

 つまりこの現象の原因はこの少女が引き起こしたものなのか。

 

「めいくゆあちょーいす」

 

 少女が指を鳴らした。

 すると空の皿でいっぱいだったテーブルの上から皿や食器が消え失せ、代わりに金色と銀色でちょうど左右対称になるように装飾された天秤が出てきた。

 さらに、自分の目の前には二枚のカードが。

『ゴーストを消滅させる』、『仲間の呪いを解呪する』とそれぞれに書かれていた。

 

「さぁ選んで天秤に乗せて、もちろん途中でもう一枚のカードを乗せ直しても良いよ。そしたら……天秤が傾かないように、()()()()()()

 

 "そうしたら、カードの書かれた内容を叶えてあげる"

 少女は高鬱した表情で宣言する。

 

「君は一体……」

 

「何でも良いでしょう? 私が誰かなんて――どうしても定義したいなら、気軽に悪魔ちゃんって呼んで♡」

 

「悪魔……!」

 

 そう言われて気が付いた。

 悪魔という種族、そしてその悪魔の中でも危険な悪魔がいるということを。

 テーブルの上の天秤が少女の存在を証明する。

 

「まさか……『天秤の悪魔』か!」

 

「はーい、なんかそう言われることが多い天秤の悪魔でーす。ところであの本書いた奴誰だよ、著作権とか知らないのか?」

 

 目の前の少女はもはや少女には見えず、人間にとっての災害だった。

 反射的に剣に手を伸ばしたが、理性を知性が抑えてその手を引っ込めた。

 

「あれあれ、斬りかかってくるかと思ったのに」

 

「……あの本によれば、君を傷付けることは不可能とのことだ。ならば俺が取る最善の行動は君の取引に応じることだ」

 

 そう言って席に座り直した。

 口では冷静さを保てたが、対して心臓の鼓動は速くなっていく。

 

「へー、さすが腕利きの冒険者。書物も読み込むんだ」

 

「一番の武器は()()()()だと考えている。魔物と対峙する前には勉強しておく性格でね」

 

「それで悪魔と対峙する時もあるかもってあの本も!? はー、真面目ちゃんだねイケメンさん」

 

 少女――天秤の悪魔が拍手をする。

 不思議と、素直に称賛されているのが伝わってきた。

 

「――じゃあ、取引始めようか?」

 

 天秤の悪魔が取引のルールを説明し始める。

 望みのカードを天秤に置いたら、代価を天秤が釣り合うまで出すこと。

 釣り合ったら『取引成立』と両者が宣言することで、代価が支払われカードの書かれた内容を天秤の悪魔が叶える。

 カードが複数あるときは、基本的に何度も別のカードを天秤に乗せ直せる。

 代価も支払いが確定するまでは、何度も置き直せるし選び直せる。

 代価は取引相手の所有するものなら、物品でも形のないものでも構わない。

 ――要約するとこんなところだろう。

 

「――カードが複数あるということは、それぞれの重さは違うということか?」

 

「そのとーり、基本的に簡単な内容ほど代価も少なくて済むよ」

 

「たとえばこの二枚なら、どちらの方が軽い?」

 

「んー……まぁイケメンさんの勤勉さに免じて特別に教えてあげる。お仲間さんの呪いを解呪する方が軽いよ」

 

 遠く離れたダンジョンの深くにいるゴーストを遠隔で消滅させるの大変なんだよねー。

 天秤の悪魔が言う。

 ……なるほど、カードの重さは天秤の悪魔の()()()で決まるのだろう。

 確かに天秤は公平だ、だがそれは悪魔にとっての価値観(公平)

 本の著書は正しかった。

 

「それでは置かせてもらおう」

 

 天秤にカードを一枚乗せる。

 当然、仲間の解呪の方だ。

 するとカードが金色の泡のようなものに包まれ、ふわふわと天秤の皿の上に浮かぶ。

 不思議なことに、それでいて天秤はちゃんと下まで傾いた。

 

「……代価はどう出せば?」

 

「代価の内容を念じるだけでいいよー」

 

 言われた通りにしてみる。

 試しに、『自分の全財産』と念じてみる。

 するとカードの乗った金色の皿とは反対の、銀色の皿に小さな錘が出現した。

 天秤が動いた。

 だがほんの少し傾いただけで、釣り合うには程遠かった。

 

「――そう甘くはないか」

 

「そーだよー、人間の金銀財宝なんて私にはあまり必要ないしー」

 

 天秤の悪魔が楽しそうに身体を左右に揺らしながら言う。

 

「好きなだけ悩んで良いんだよぉ、何時間、何日、何年、何百年でも。時間は止めてあるからお仲間さんの事は安心してねぇ」

 

 悪魔の囁きとはこのことか。

 いくら時間を止めても、こちらの精神は擦り減るだけ。

 この取引は迅速かつ、自分に有利に終わらせなければならない。

 考えろ、この悪魔は何を欲する?

 この悪魔にとって、自分が出せる代価の中で欲しいと思うものは?

 

「……いや、そうじゃない」

 

「え、何が?」

 

 悪魔が欲するものを素直に差し出しては、悪魔の思う壺だ。

 あの本が正しいのなら、必要なのは悪魔を満足させること。

 

「ねぇ、なにが? 何がそうじゃないのイケメンさん。気になる、気になるから教えて」

 

 ではこの悪魔を満足させるとは何か?

 人間を玩具としか見てない悪魔が、人間で満足することは?

 

「あの、聞いてる? もしもーし」

 

「……天秤の悪魔よ」

 

「あ、はい」

 

 背筋を伸ばして聞く姿勢を取る悪魔に思わず人間らしさを感じてしまう。

 

「取引の前に、一つ俺とゲームをしないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺とゲームをやらないか?

 うほっ、良いイケメン……嫌いじゃないわ!

 

「ゲーム? 何でいま?」

 

「君は取引の前に俺をゲームに誘った、そして俺はそれに乗った。ならば今度は俺が君を誘う、でないと()()()()()()()()()?」

 

 いや、その理屈はおかしい。

 このイケメン、公平とか言っとけば自分がホイホイと誘いに乗ると思っているのだろうか。

 実になめられたものだ。

 当然自分は――

 

「良いよ! やろうかゲーム!」

 

 あれれ、おかしいぞー。

 乗せられちゃった。

 でも面白ければオッケーです。

 ぶっちゃけ非力な人間が知恵を搾って苦し紛れな抵抗をするのが大好きなんだ。

 みんなも好きだよね?

 そこのTSっていうタイトルに釣られて読みに来てくれた読者さんも好きだよね?

 ありがとう大好き、自分もTS好きだよ。

 

「それでぇ、どんなゲーム? 勝者にはどんな栄光が? 敗者にはどんな没落が?」

 

「ゲームは――コイントスだ。勝者は――敗者に言い値の代価で取引させる……でどうかな?」

 

 おっと、つまりそれは……

 

「へー、なるほど。一発逆転狙ってきたね、でも負けちゃったら私の求めるものなんでも差し出してくれるって事だよ? 本当に良いのかな?」

 

「君の方こそ、負けたら俺の指定した代価で取引してもらおうが……本当に構わないのかな?」

 

 こ、こいつ……自分を煽ってやがる!

 上等だ、ヤローブッコロシャー!

 

「ふ、ふん! 別にあんたの為じゃないんだからね! 勘違いしないでよ!」

 

「君は何を言っているのだ? ……では始めよう、すまないが先ほど使用した金貨を貸してもらえないか?」

 

「え? 別にいいけど」

 

 何で自分の持っていた金貨を?

 まぁ良いかと素直にイケメンに投げ渡した。

 

「では……」

 

 イケメンが金貨を弾く。

 そして右手の甲で受け止めて、左手で蓋をした。

 

「さぁ、どっちかな?」

 

 イケメンがドヤ顔で聞いてくる。

 ふふ、甘いわ。

 悪魔の人間離れした動体視力を舐めてもらっては困る。

 イカサマや悪魔パワーを使うまでもなく、キャッチした瞬間はハッキリとみえていた。

 

「当然正一ぃ! ……じゃなくて表!」

 

 この勝負、自分の勝ちです。

 何で負けたか明日までに考えといてください。

 

「――残念、()()()

 

「……はい?」

 

 イケメンが左手を退かす。

 金貨は……自分の宣言通り()()()()

 なんだぁ、負け惜しみかぁ?

 全くこれだから人間は――

 

「ちょっとイケメンさんー、眼球でも落としましたか?」

 

「いや、俺の視力は正常だ。間違っているとしたら、それは()()()()()

 

 ???

 どういうことだってばよ……?

 

「この金貨……実は数年前の改定で表と裏が()()()()()()()

 

「は……?」

 

 ぱーどぅん?

 

「つまり君が表だと思っていたこちらの面は、()()()()()

 

 イケメンが偉そうな人間の彫刻が彫られた面を指で叩きながら言う。

 へ、改定って……そんなことある?

 嘘出鱈目だろ騙されんぞペニーワイズ。

 そう思い悪魔パワーで真偽を確かめた。

 

「……マジやん、三年前と五日前に改定されてる。え、しかも数字が刻まれた方が表の方が何か良いとかしょうもない理由で……」

 

「君は金銀財宝には興味ないと言っていた、だからもしやと思い賭けてみたが……どうやら正解だったようだ」

 

「は、え、ちょっと待って……それが正しいならそもそも――」

 

 めちゃくちゃやらかしてる。

 しかもかなりこれは恥ずかしい。

 

「――そう、そもそも君は最初のコイントスの時点で勝敗を勘違いしている。あのコイントスは、俺の()()()()()

 

 くっ……まさに正論。

 それが真実なら、自分は勝負に負けたのに勝者の特権を使ってしまった。

 それでは()()()()()()()()

 

「では、確か何でも言うことを聞いてくれる……だったかな? それともアレは無効にして今回の勝敗の方を使うか? 俺はどちらでも構わないぞ」

 

 ぐ、ぐぐ……

 こ、こここ……

 

「こ、これで勝ったと思うなよー!」

 

 ちくしょうめー!

 負けだよ負け!

 自分の完敗だ!

 

 

 

 結果として、自分は食事を奢ってもらったという代価でお仲間さんの解呪を叶えさせられた。

 くっ、ころせ!

 あーくそ、久しぶりに人間にしてやられた!

 あーもう、やっぱり面白いなぁ人間って!

 

 

 

 

 




多分続かない
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