転生したらTSして悪魔になったので、ロールプレイします 作:メスシリンダーガキ
「――ふーん、足は引っ張らないでよねぇ」
「へぇ! まぁまぁやるじゃん!」
「……そう、君も独りなんだねぇ」
「このバカ! 何であんな無茶を……!」
「…………ついてこないで」
「何で来たの……放っておいてって言ったのに――」
「――好きよ。ねぇ、キスして」
「…………さようなら」
「何してるの? お姉さん」
「いや、二十話の記念と感謝で、読者さん達に存在しない記憶を植え付けてあげてるところぉ」
近未来SFチックで、ツンツンヒロイン役の私と徐々に仲を深めていき、最後には主人公役の読者さん達がヒロインの私を守って力尽きるラブロマンス物だよ。(2期制作決定済み)
今頃現実と区別が付かなくなってるころかなぁ。
まぁ是非もないよね!
「? よく分からないけどほどほどにね――そうだ、お姉さんが来る前に、見慣れないお客さんが来て、これお姉さんにって」
「見慣れない客?」
レイラちゃんが封筒に入った手紙を渡す。
宛先も何も書かれていない。
とりあえず中に入ってる手紙を取り出して、内容を確認する――
『やぁ、久しぶりだね。そろそろ会いたいな――』
その先を読まずに手紙を燃やした。
「お、お姉さん?」
「よーし、ちょっと出掛けてくるねぇ。すぐに戻るからおつまみ作っておいてくれると嬉しいなぁ。あとマスター、塩撒いといて塩」
上等だ、こちらも文句がある。
今すぐ行ってやろうじゃねぇかこのやろう。
本は良い、知識が形としてそこに存在できる。
知識は良い、覚えている限りそこに有り続ける。
だからこうして、本に囲まれた場所で知識を探求し研鑽するのが自分の最高の娯楽でもあり義務でもあった。
何とも素晴らしいではないか。
この暖かで心地の良い陽射しを感じながら、星の表域で静かに過ごす——
「やぁダ⚪︎エル! 僕はコ⚪︎ーだ!」
——のは今のところ不可能になりそうだ。
塔の下から聞こえてきた彼女の声を聞いて、読み掛けの本に栞を挟んでから螺旋階段をゆっくりと降りた。
「——やぁ、さっき手紙を置いて行ったばかりなのに、すぐに来てくれて嬉しいよ。ところでそのダニ⚪︎ルというのは僕のことかな? そして君の名前は⚪︎ナー?」
「ちょっと、自分で叫んどいてアレだけどその場のノリだから! 真面目に受け取るなこのクソ真面目妖精」
彼女のその態度にやや違和感を感じて、手で顎をさする。
「——君は何故そんなにも苛ついているのかな? 何か失礼なことをしてしまったのかな?」
「……自覚がないとはいい度胸だな。ならば教えてやろう!」
彼女が何やら珍妙なポーズを取り始める。
「——あなたを著作権侵害又はプライバシーやら名誉権やらの侵害で訴えます。理由は勿論お分かりですね?」
「? すまないが分からない。良ければ教えて欲しい」
そう言うと、彼女は一冊の本を取り出した。
それは、昔自分がとある本を要約した内容を記載した本だった。
タイトルは『天秤の悪魔は実在する』だ。
「あなたがこんな本を執筆し、地上にばら撒き、あまつさえ私の書いた方を淘汰させたからです! 覚悟の準備をしておいて下さい! 近いうちに訴えます。裁判も起こします。裁判所にも問答無用できてもらいます。慰謝料の準備もしておいて下さい! 貴方は犯罪者です! 刑務所にぶち込まれる楽しみにしておいて下さい! いいですね!」
そして早口かつ丁寧に、彼女はまるで用意された台本のような言葉を放った。
なるほど、彼女の言いたいことは理解できた。
しかし納得はあまり出来なかった。
「ふむ、確かにその本を執筆して地上に何冊か流したのは僕だ。しかし僕は君の執筆した本を人間の代わりに
「それがダメなんだってぇ! 何でそんなことするのぉ! あれは私の宣伝というか、取扱説明書みたいなのであって、お前の書いたアレはもう攻略本だよ! 知名度は上がったけど、あの内容じゃあ人間達にあまり怖がってもらえないじゃん! というか解読ってなに!? 別に暗号とかしくんでないよ!?」
人間のように感情で捲し立てる彼女。
どうやら互いに行き違いがあると判断して、上階の本棚からとある本を手元に呼び寄せた。
そしてページを捲り、文字を情報として頭に読み込んでいく。
この本は、彼女が執筆した物だった。
タイトルは『天秤の悪魔は実在する』だ。
貴重な資料かつ原本として手元に残してある。
「…………どうみても支離滅裂、文章もめちゃくちゃだ。だから暗号の類かと思って、私なりに内容を理解して解釈、分かりやすくしたつもりなのだけど——違ったのかい?」
「普通に書いただけだよぉ! というか和訳翻訳やらするならタイトル少し変えるか、私の本の方をちゃんと引用にのせろー!」
……この内容を普通に書いただけ?
それは本当に心の底から言っているのだろうか?
「……君、もしかして文才が壊滅的に無いのかな?」
「ぐふっ……」
図星を突かれたように、彼女が勢いよく感情の波を下げた。
「なるほど……君の活躍を耳にするたび、契約を何故スクロールなどにしないのか疑問に思っていたのだが——そうか、君にも苦手なことがあったのか」
「うるせぇ、頑張って書いたんだい……なのにお前の書いた方が普及するから——」
人間のように拗ねる彼女。
「そうか、それはすまなかったね。だが私の書いた方が広く普及したということは、それが結果だよ。いやはや、このような形で君に勝利できるとは。長生きしてみるものだね」
「はぁ? 別に勝負とかしてませんしー、これで勝ったと思うなよって感じだしー。いいもん、私の書いた本は読者さん達にプレゼント(着払い)するから」
ぷんすこ、と意味のわからない言葉を口にしながら頬を膨らませる彼女。
「——というかぁ、呼ばれたから来てやったのに茶の一つも出せないのぉ? レビュー1.5で口コミ書いちゃおうかなぁ」
「おっと、確かにその通りだ。是非とも上へ、とっておきの茶葉を使おう」
「それでぇ、何か用?」
「? 手紙に要件は書いた筈なのだが?」
「少し読んで燃やしちゃった♡てへっ」
あ、この紅茶美味いな。
やはり茶葉が違うだけで味もこんなにも変わるものなのか。
今度レイラちゃんに同じ物買ってきてもらおー。
「やれやれ……では簡潔に伝えようか——あの『裂け目』を閉じてほしい」
…………裂け目?
「あの裂け目って?」
「とぼけないでほしいな。真面目な話なのだから」
「いや……本当に何の話?」
紅茶の風味を味わいながらそう返すと、目の前の妖精が変な顔をした。
「……君の仕業ではないのかな?」
「たぶん濡れ衣」
「本当に?」
「しつこいよぉ。でももしかしたら知らない所でやらかした可能性もあるから詳しく教えて♡」
そう言うと、妖精は語り出した。
この星の表層と中層の間に、少し前に次元の裂け目ができたらしい。
それ自体は稀に起こる現象なのだが、妙なのはいつまで経っても自然に塞がらないこと。
裂け目の中に興味本位で入ってしまった他の妖精が何匹か戻ってこないこと。
しかし帰ってきた妖精も何匹かいて、話を聞くと裂け目の中には奇妙な街のようなものがあったと証言。
——要するに、今までにない明らかな異常事態だということだ。
「——うん、全く心当たりなーい。なんだろうねぇそれ。というか何で私を疑うのさぁ?」
「君しかできないだろう、ああいったことは」
「ひどぉい」
とんだ濡れ衣だぜ。
「私だって別に全知全能ってわけじゃないんだよぉ?」
「そうなのかい? 僕からすれば君は些か奇妙な存在だ。悪魔といえど、君のその力は常軌を逸脱している」
「えー、悪魔に常軌を逸脱してるとか単なる褒め言葉だよぉ」
おや、紅茶が空になってしまった。
新しく注ぐために、ティーポットに手を伸ばした。
「——君は
「…………そぉだよぉ」
ティーポットから紅茶をティーカップに注いだ。
「かわいいかわいい悪魔だよぉ——君がそうじゃないというのなら、私はだーれだ? 言ってみなよ、
今度は妖精がその手を止めた。
「——知っていたのかい?」
「知ってたも何も、妖精にしては明らかに感性が人間寄りじゃーん。まぁでも君が妖精達の統率役になってから色々と助かってるよぉ」
砂糖を1つ、2つと入れる。
「それでぇ?
「…………君は」
妖精が手にしていたカップを一度置いた。
そして
「君は…………めが——」
「たいへんたいへーん! 何か裂け目が大きくなってるー! たすけてー!」
手のひらサイズの妖精が勢いよく外から、窓を通して室内に入ってきた。
入ってきたというより、突入してきたという感じだが。
「…………私もついて行こうかぁ?」
「…………そうだな、頼もうか」
「——ここはいったい……」
「何かヤバそう?」
「あの、何で我もここに?」
「アレなに? 百鬼夜行?」
「——ダメだ! アルベール!!」
「……お待ちしておりました」
「どうか、どうかお願いします——————を解放してください」
というわけで、短編小説の癖に長編を少し書いてみたくなったので予告編でした。
いつものような短編と並行して執筆して、完成したら公開予定でございます
言うなれば劇場版ってやつだね!