転生したらTSして悪魔になったので、ロールプレイします   作:メスシリンダーガキ

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ソロモンよ!私は帰ってきた!
お休みありがとうございました!


二十五話

 

 

 

 

 年に一度——たまに二度——少しまとまったお休みを取る。

 夏休みや冬休みてきな?

 悪魔営業も何もかもお休みして、ひたすらにダラけ好きなことをするのだ。

 え? いつも好き放題してるだろって?

 やだなぁ、仕事中と休日でする好きなことは同じではないよぉ。

 

「おはよぉ」

 

「もう夕方だよお姉さん」

 

 惰眠を貪っていたら、気が付けば地表では夕刻の時間。

 お腹が空いたので酒場に飯をたかりに来たよぉ。

 

「あ、また髪の毛ボサボサで……もぉー、お休みなのは分かるけど身嗜みくらい自分でやってよ」

 

「えー、どうせ整えてきてもレイラちゃんが勝手にアレンジするじゃーん」

 

「……まぁそうだけど」

 

 こうして席に座っていれば、ご飯も出してくれるし髪のセットもやってくれる。

 何という贅沢なのだろうか。

 みんなも自分で酒場作って、頭の無い(物理的に)マスターと可愛い従業員を雇うのオススメだよぉ。

 

「——はい、できたよ」

 

「わぁありがと……これルーズサイドテールでは?」

 

「? 名前はわからないけど似合いそうだったから——いやだった?」

 

「ん、んーん。嫌じゃないよぉ……うん。ありがとぉ」

 

 みんなに分かりやすく伝えるなら、何かフラグが立っていそうな母親キャラが何故かよくしている髪型だよ。

 まぁフラグなんて自力で折れるし問題なし!

 

「それより今日のご飯なにぃ?」

 

「パスタだよ」

 

「やったぁ」

 

 パスタおいちい! パスタおいちい!

 

「チーズいっぱいかけてぇ」

 

「いっぱいはダメだよ」

 

 そうして、出来上がったパスタ。

 それとサラダとスープ。

 チーズは……少なめか(´・ω・`)

 

「『いただきまーす』」

 

「……お姉さんがよく食べる前にそれ言ってるけど、何の言葉なの?」

 

「んー? あぁ、習慣というか名残というか——食前の祈りの言葉だよぉ」

 

 悪魔なのに祈るのかだって?

 ばっきゃろう、いただきますは食材の全てに感謝を捧げる言葉だぞ。

 何処ぞの美食家も必ず言うでしょ?

 みんなも強要はしないけど、可能なら心の中でもいいから言うんだぞっ!

 悪魔のお姉さんとの約束だよ!

 

「うまうま……」

 

 レイラちゃんの料理の腕もメキメキも上がり、もう私のフルコースが全部彼女の料理で埋まっちゃうねこれは。

 お前は? 読者さん達(ト⚪︎コ)

 

「——————」

 

「どうかした? お姉さん」

 

「ん、ごめん大した事じゃないよぉ。ただパスタとか食べてると、たまーにね……ちょっと恋しくなっちゃうんだよぉ——()()()()がね」

 

 ほぼ錆びて風化して色褪せた記憶のカケラ。

 仕事終わりに食べに行くのが好きだった——気がする。

 

「らぁめん? 料理の名前?」

 

「そぉ、遠い昔によく食べてたんだけど——今は作れる人が居ないからねぇ。自分で再現しようとした時期もあったけど、何回やってもこれじゃないなぁってなって諦めちゃった」

 

 細かい作り方も知らない——まぁ忘れてしまったのかもしれないが、それすらも既に自分では分からない。

 とにかく見様見真似で頑張ったのだが——

 まぁ素人では、もどきまでしか作れなかった。

 

「——ごちそうさまぁ。じゃあ帰るねぇ」

 

「え、今日も食べただけで帰るの!? お酒は!?」

 

「休肝日も必要だからねぇ。この後は家でゴロゴロしながら寝落ちするまで本でも読んでるよぉ」

 

 ちなみに昨日と同じ行動だぜ。

 買い物とかは最終日くらいに行くとして、残りはほぼダラダラするのだ。

 それじゃあ、しーゆーあげいーん。

 ん? 今回の話はこれでおしまいだよぉ。

 休日だからね。私のダラダラしてるシーンなんて見ても面白くもないし、プライベートさんだからね。

 是非も無いね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「——らぁめん」

 

 それは、天秤の悪魔の何気ない一言。

 それを、レイラが何気なく拾いあげた。

 

「らぁめんっていう料理作れたら、お姉さん喜ぶかな」

 

 そして、何気なくそう思った。

 気紛れの考えで、単純に己の料理の技量を確かめる、もしくは上げるための手段になるかなと。

 

「マスターさんは知ってる? らぁめん」

 

 とっても長生きしているお姉さんが遥か昔と言っていた。

 ならば失われた文明や技術のように、そのらぁめんという料理もそうなのだろう。

 何百年もお姉さんと居るという酒場のマスターなら、その情報を何か知っているかなと思い、レイラはそう訊ねた。

 ——しかし、マスターは否定するジェスチャーをする。

 

「そっか……何かお姉さんに根掘り葉掘り聞くのもなんか違うしな——」

 

 別にサプライズのつもりはないが、何となくビックリさせてあげたい。

 だから、お姉さんにらぁめんについて訊ねると、きっと勘付かれる。

 しかし現状レイラが知っている情報は、おそらくパスタのような麺料理ということ。

 今は誰も作り方を知らない。

 この二つだけ。

 あまりにも少なく、取っ掛かりすらも掴めない。

 昔の料理というのなら、古文書などに記載があったりしないだろうか?

 そんな事を考えていると、レイラの肩を軽く叩くマスターの手。

 その反対の手には、何処からか引っ張り出してきたのか、羊皮紙の束が。

 

「え? これ羊皮紙の束? ……お姉さんが? 昔よく……メモしてた?」

 

 互いにそれなりの付き合いなので、マスターの手話の内容がそこそこ分かるようになったレイラ。

 

「…………あ! あったかも!」

 

 しばらく羊皮紙の束と睨めっこをしていたレイラ。

 そしてそれを見つけた。

 らーめんという文字が書かれたそれを。

 

「んー……レシピというより箇条書きのメモだなぁ」

 

 本人も試行錯誤してたというし、レシピとして書くまでには至らなかったのだろう。

 

「何だろうこれ——お皿? 大きくて深いお皿に……スープ? スープの中に麺を入れるの……かな?」

 

 お姉さんの上手いも下手とも言えない手描きの絵を何とか読み解こうとする。

 

「あと変な形のスプーンと……この2本の線というか棒は何だろ——これで食べるってことかな?」

 

 マスターも釣られて羊皮紙に顔を——無いが——覗かせる。

 

「え、この2本の棒ならある? ……あ、それか! たまにお姉さんがそれ使ってる変な棒!」

 

 マスターの手には木材を加工して作られた細く長い棒が2本。

 それをお姉さんは器用に指で操り、食べ物を挟んで口に運ぶ、いわば食べ難いフォーク。

 ちなみにレイラも挑戦したことがあるが、指が攣りそうになったので断念した。

 というかなぜ挟むのか、普通に刺せば良くない?

 

「まぁ食器とかは今はいいや——材料とか工程とかが……うぅ、お姉さんって字は綺麗なのに、何か読み難いんだよね文章になると」

 

 それでも何とか読み解こうと目を細めて睨めっこする。

 そして気が付けば1時間。

 とりあえず今ある食材で、出来る範囲でやってみることにしたレイラ。

 しかし——

 

「……うーん、美味しくないや!」

 

 コンソメスープにパスタ麺を浸してみたのだが、まぁこれがまた食べれなくないが味は微妙だった。

 そもそもパスタの麺はソースと絡めるもの。

 スープに浸したところでその味は染み込まない。

 

「……あ、だから麺を作ろうとしてたのかな」

 

 羊皮紙には、麺を自作しようとした痕跡のメモも残されていた。

 そのらぁめんに最適な全く別物の麺を。

 

「……麺ってそもそもどうやって作るのかな?」

 

 よくよく考えてみれば、小麦粉を使うというくらいしか知らない気がする。

 ……宿場町の宿屋の人なら知っているだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして、レイラのらぁめん作りが幕を開けた。

 朝から昼まで働かせてもらっている職場の人、そして行商に訪れた人々や常連客。

 さらにはオーロラにまで足を運び、とにかく情報収集。

 そして実践、そして失敗、また実践失敗——

 そも、仮に上手にできたとしても、それがお姉さんのいうらぁめんなのか、判別ができない。

 上手くいったと思っても、それは全く別の料理なのではないか?

 そんな不安もある中、レイラは無我夢中で試行錯誤を繰り返す。

 何日も、何ヶ月も——

 

 

 

「——失礼、ここが『らぁめん』という失われた料理を再現しようとする女性がいる酒場かな?」

 

 やがて、その努力により契機が自らやってきた。

 レイラがらぁめんについて、様々な人々に訊ねたことにより、それは人々という風によって、大陸中に噂として広まっていった。

 そして何の因果か、その噂はとある男の耳にまで届いた——

 

「——おい、あの人ってまさか……」

 

「あぁ、見たことあるぜ。公国の皇帝お抱えの料理人——マシウス・カーライトだ……」

 

 酒場の常連たちが騒がしくなる。

 

「あ、あばばばば! お、おやっさーん! レイラちゃーん! なんかヤバい人来たよー!」

 

 ザッポという従業員の青年が慌てて厨房の方へ駆け込んだ。

 

「——マジもんじゃねぇか」

 

「何か有名な人なんですか?」

 

 そして呼ばれて厨房から出てきた、酒場の主人とレイラ。

 酒場の主人はその人物を見て驚愕し、レイラは頭に疑問を浮かべていた。

 

「有名も何も、公国の皇帝様が自ら指名したヤベェ料理人様だよ……」

 

「ほぇー……」

 

 酒場の主人がレイラに小声で教える。

 

「初めまして、マシウス・カーライト。単なる料理人です。あなたがレイラ嬢ですかな?」

 

「は、はい。あの、私に何か……?」

 

「なに、君が古の失われた料理なるものを再現しようとしている……なんて噂が耳に入ってしまって——そんなの、料理人として唆らないわけない。そんなわけで、私も是非とも参加したいと思い馳せ参じたのだが……どうかな?」

 

 何だが大事になってしまった。

 しかしそれは、行き詰まり掛けていたレイラにとっては救いの一手でもあった。

 

「あ、では……ご迷惑でなければお願いします!」

 

 そうしてレイラは、頼りになる助っ人を仲間にしたのだった。

 

 

 

「——ふむ。なるほど……」

 

 そうしてレイラはマシウスに情報を共有。

 元となったお姉さんのメモと、これまでの自分の成果の全てをマシウスに見せて話した。

 

「質問がいくつかあるのだが、いいかね?」

 

「は、はい! どうぞ!」

 

 小さな酒場の厨房に、美人の看板娘と美男の皇帝お抱えの料理人がいる不思議な光景だった。

 

「スープについては特に情報はなかったのかな?」

 

「そうですね……なのでとりあえず麺から始めようかなと」

 

「それは実に素晴らしい。見た限り、このらぁめんという料理——スープは()()なのではないかな?」

 

「それはどういう……?」

 

「パスタと同じさ。味付けの基本となるソースを変えることで、様々な味のパスタを作り出せる。つまり、このらぁめんも、スープを——例えば魚介を、例えば動物の肉を、出汁自体を変えることで様々な味のらぁめんに出来るのでは?」

 

「な、なるほど……」

 

 ……その視点はレイラには無かったものだった。

 というよりパスタとは別物という先入観で、発想に至らなかった。

 

「手分けしよう。レイラ嬢は麺の方を引き続き、私はスープについて研究を始めよう。そして麺だが——君の見立て通り、パスタの麺ではおそらくダメだ。もっとスープを吸い取り、味が絡むような麺に——そうだな、塩水などを使ってみるといいかもしれない。塩湖などの水を使ってね」

 

「な、なるほど……?」

 

 レイラにはその理由はわからなかったが、なんか凄い料理人が言うのなら試してみる価値はあるだろう。

 

「それと……食器などの方は進んでいるのかな?」

 

「食器ですか? えっと、特に何も——」

 

「おぉ、それはいけないレイラ嬢。料理というのは食材だけで成り立つものではない。使う食器、状況、シチュエーション——どれも欠かしてはならない。そしてこの羊皮紙の実にエレガントな絵……深く大きい皿はおそらく麺を入れた事でスープが溢れないようにするもの。スプーンのこの形も、スープを少しでも多く掬えるようになっているのでは? この二本の棒は——これで麺を掴む? ならば麺の弾力はもっちりとした食感なのかもしれない。何故ならフォークを使わないのならそれは——」

 

「お、おぉ……?」

 

 あまりにも多くの情報に頭が混乱する。

 これがプロの料理人。

 しかしレイラも負けてはいられない。

 

「お、お客さんの中に陶器や食器について扱っている職人さんとツテがないか聞いてきます!」

 

「——そして麺だけではない。これは……肉を乗せたりするのか? ということはスープに合う具材も選定する必要が——」

 

 自分の世界に入ってしまったマシウスを厨房に一旦置き去りにして、レイラは酒場の方へ。

 こうして、らぁめん作りは佳境へと入った——

 

 

 

 

 

 

 

 

「——なぁ聞いたか? オーロラの近くの宿場町の酒場、例の()()()()が食えるらしいぜ」

 

「え、あの皇帝も気に入って高級料理の仲間になった古の料理が!?」

 

「…………はい?」

 

 何か公国辺りを歩いてたら、有り得ない単語が聞こえてきた気がする。

 ラーメン? いや、聞き間違いだろう。

 でも新しい高級料理というのは気になる。

 オーロラ近くの宿場町の酒場なら、レイラちゃん辺りが知ってるだろう。

 というかレイラちゃんが働いてる酒場だったりして。

 

「明日辺り行ってみるかぁ——んー、今日はもう上がるかぁ」

 

 今日は2回も取引したし、引き上げどきだ。

 適当に人目のない路地裏に入ってから、深域の酒場へと移動する——

 

 

 

「…………うぇ?」

 

 そしていつものカウンター席に座ったら、酒ではなくラーメンが出てきた。

 器も、レンゲも、匂いも、麺もスープも具材も、記憶に残っていたものとほぼ似ていた。

 どういう事だ……?

 

「お姉さん……ついに完成したかもだよ! これが——私のらぁめん!」

 

 そしてドヤ顔のレイラちゃん。

 何か最近疲れ気味で心配していだのだが、まさか——

 

「——ずっとこれ作ってたの? 何気なく言っただけなのに?」

 

「うん!」

 

「殆ど手掛かりもないのに?」

 

「うん! まぁ1人じゃなくて沢山の人の手を借りたけど——」

 

 ……あぁ、私の昔のメモでもマスターが見せたのか。

 しかしあんなのレシピとはいえない、落書きのようなものだ。

 

「…………すごいよなぁ。人間ってやっぱり」

 

 殆どゼロから。

 それでも諦めずに少しずつ。

 やっぱり何処の世界でも、場所でも、人間は変わらない。

 その前向きな姿勢も、後ろ向きな姿勢も全部——

 

「『いただきます』」

 

 レンゲでスープを掬い飲む。

 箸で麺を掴んで啜る。

 

「ど、どうかな……?」

 

 レイラが少し不安そうに聞いてくる。

 ……うん、正直自分の覚えているラーメンとは少し食感も味も違う。

 だが、これはラーメンだ。

 間違いなく。

 だって、こんなにも()()()()()()()になれるのだから。

 

「——美味しいよ。とってもね」

 

 

 

 




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