転生したらTSして悪魔になったので、ロールプレイします   作:メスシリンダーガキ

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二十七話

 

 

 

 

「——お前、指名手配中の女じゃないか?」

 

「ほぇ?」

 

 なんか街の門を通ろうとしたら、門番にそんな言い掛かりをつけられた。

 

「詰所まで来てもらおうか」

 

「いやいやぁ、人違いですよぉ。よく見てよ門番さん。私のこのつぶらな瞳を。嘘をついてる奴の目に見えますかぁ?」

 

「…………言われてみれば、瞳の色が違うか……? いやしかし——念のためだ、やはり詰所に来てもらおう」

 

「えぇ……」

 

 まぁゴネても時間の無駄だろう。

 ここは大人しく指示に従って、誤解を解いておいた方が楽だろう。

 何せしばらくこの街に滞在する予定だからね!

 

「——この街に来た目的は?」

 

「仕事兼、遊びに来ましたぁ。もうすぐで公演があるでしょ? 早めに現地入りしときたくてぇ」

 

 そんなこんなで、詰所で取り調べが始まった。

 いくつかの質問に対して、適当に当たり障りのない答えを出す。

 まぁ嘘ついてるわけじゃないからね。

 

「うーむ……嘘をついてるようには見えんが——しかしなぁ」

 

「ねぇ門番さん。その指名手配の女? そんなに私に似てるのぉ? 人相描きとかあるなら見せてくれなぁい?」

 

 こんなにも疑われると、何だか本当に自分が何かしたのではないかと錯覚してくる。

 だから、私もその指名手配犯が気になってきた。

 

「これだ」

 

「どれどれ……」

 

 門番さんが持ってきた指名手配書的なのを見せてもらう。

 

「女、長身、ピンクの長い髪、青色の瞳、頭に異形の角——うーん、確かに似てるなぁ。けど身長とか瞳の色違くなぁい?」

 

「まぁ、そうだな……疑ってしまい申し訳ない」

 

 君の姿は僕に似ている的な。

 だが、所々私とは違う特徴もある。

 うん、やっぱり他人の空似ってやつだね!

 とんだ迷惑だね!

 ところで読者さんの中で、冒頭のやりとり読んで「またこいつなんかやったよ」とか疑った人はいるかなぁ?

 いたら今日は土下座しながら1日生活してねぇ。

 土下座歩き、土下座喰い、土下座寝だよぉ!

 

「いいよぉ、門番さんは自分の仕事に勤勉に励んでるだけだからねぇ。えらいねぇ、飴ちゃんあげるよぉ」

 

「……あの、疑って悪かったからおじさんの頭を撫でて飴を握らせないでくれ。娘と同じくらいの年頃の女にそれやられるのはだいぶきつい」

 

 恥ずかしがり屋さんだねぇ。

 

「というかその女の人なにして指名手配されてるのぉ?」

 

「殺人未遂——ということになってる。宿屋でとある男が昏睡状態で見つかって、まだ目覚めてない。証言を集めると、男と最後に一緒にいたその女の特徴が上がってきた——見立てでは、魔法の一種を使ったのではないかということで、人外か魔女の類ではないかと噂されてる」

 

「ふーん……」

 

 昏睡状態が続いている……

 魂が抜かれたわけではないのか。

 なら考えられるのは……

 

「——ねぇ、門番さん。その指名手配の女の人、捕まえるの手伝ってあげようかぁ?」

 

「は……何を考えている?」

 

「いやさ、普通に考えてその指名手配の女の人捕まえないと、似てるって理由でずっとこの先疑われるじゃん? そんな状態で公演を迎えたくないし、ならもう私も犯人逮捕に協力するのが一番じゃん?」

 

「だ、だが危ないぞ——」

 

「危ないよと、はぶあないすは似てるね。そうどちらも紙一重なのさ! といわけでごーごーれっつごー!」

 

 退屈脱ぎ捨てて、心に従え!

 要約すると、公演が始まるまで(メインクエスト)暇だからサブクエストでも進めておくかぁってことさ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、こういう時は情報集めと痕跡集めが肝心だね。

 どこぞのカード遊び大好きウ⚪︎ッ⚪︎ャーさんも基本にしてるくらいだからね。

 ところで、グウェ⚪︎トをやらないか?

 

「ねぇ、この指名手配の女の人のこと何か知ってる?」

 

「あぁ、今俺の目の前にいるな」

 

「ふんっ!」

 

「あべしっ!?」

 

 宿屋の裏でたむろしているガラの悪い男たちに訊ねてみた。

 そして舐められた態度だったので、愛のビンタをくれてやった。

 相手は正直者になる。

 え、これは暴力じゃないよ?

 愛です、愛ですよナ⚪︎チ。

 

「さ、サムぅぅぅ!? 大丈夫か!? とてもビンタの力とは思えないほど、きりもみ回転しながら吹っ飛んだぞお前!」

 

「お、俺がくたばったら、家で帰りを待つハニーに伝えてくれ……お前の金でギャンブルして負けちまったってな——がくっ」

 

「サムぅぅぅ! お前最低だな!」

 

 

 

「部屋に何か残ってなかったかだって? あぁ、女物の下着と服があったよ……なに? それを何故証拠品として出さなかっただって? 聞かれなかったからな。というかお前例の女に似てるな。どうだ? お前の下着を高値で買ってやろうか? なんつってな、胸はいいが顔と身長がちんちくりんだなガハハハ——あばばばば!?」

 

 変態さんな宿屋の主人に電気マッサージをプレゼントしたり。

 

 

 

「止まれ! お前指名手配中の——なに? 人違い? それより家の窓を閉め忘れてないかだって? …………言われてみればしてなかった気が——まずい! またあのバカ猫が脱走しちまう!」

 

 街中の衛兵さんに優しく教えてあげたり。

 ——あ、今猫が脱走しちゃった(千里眼)。

 

 

 

「だ、ダメですよ! 関係者でもないのに患者さんとの面会だなんて——え? 新人の看護師? 交代の時間? それより診療所の外に今わたし好みのイケメンが!? ち、ちょっと外出します!」

 

 何か婚活中の看護師さんに休憩を与え、その間に昏睡しているという被害者の男を調べたり。

 ちなみに、あと1週間もすれば自然に目覚める感じだった。

 この分ならほっといても大丈夫だろう。

 

 

 

 

「ふ、この謎はすでに私の舌の上——」

 

 というわけで、数日かけて犯人の居場所や正体が何となくわかったよ。

 公演までに片をつけておきたいから、今から突撃するぜ。

 え? 令状てきなのは?

 ねぇよそんなもん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 まさかあそこまで大事になってるとは思わなかった。

 街のとある倉庫の屋根裏で、ほとぼりが冷めるまでと潜んでいたのだが——

 どうやら指名手配されているようだった。

 おかげさまで出ようにも出られない。

 

「どうしようかしら……魔法が効きすぎた? うぅ、これなら変に隠れたりしないで——」

 

「はぁい、調子良い?」

 

 突然肩を叩かれて、声を掛けられた。

 

「ぴゃ——っ!?」

 

 驚いて声が出そうになるのを、自身の両手で口を咄嗟に塞いで抑えた。

 

「な、な、なん——」

 

「わぁ、やっぱりサキュバスのお姉さんだぁ。長身スレンダーだなんて、えっちだね。うちの読者さんたちに群がられる前に逃げた方がいいかもねぇ」

 

 肩を叩いたのは、自分と少し似ている存在。

 ピンクの髪に、異形の角。

 しかし身長や瞳の色は違う。

 そして自分のような尻尾はないようだ。

 つまり、容姿は似ているが同族ではない。

 そもそも魂の輪郭が違うし——

 

「——あなた、なに? 女……いや男? ん、んー? 何その変な輪郭……?」

 

 溶けたような……いや、混じってる?

 でも昔見かけたキメラの魂とも違う。

 綺麗に整ってるけど、中身が乱雑というか……でも嫌な感じはしない。

 

「あれぇ、そんな大事なところ見ちゃ恥ずかしいなぁ。それより言葉で自己紹介しようよぉ。私は可愛い悪魔ちゃんだよぉ」

 

「悪魔……? わたしの知ってる奴とはだいぶ違うけど……」

 

「へぇ、ちなみにどんな奴?」

 

「蛇の頭した奴」

 

「あー、あの子ねぇ。臆病だったでしょ」

 

「臆病だったわね」

 

 ……いや、こんな会話をしている場合ではない。

 

「——もしかして、わたしを捕まえにきた悪魔?」

 

「いえーす。まぁ極めて個人的な事情でだけど」

 

 駆け出した。

 念のために用意していた梯子を使って、屋根裏部屋の窓から外へと——

 

「——あれ、なんか動けない……!」

 

 石像のように身体が全く動かなくなってしまった。

 

「へーい、逃げないでよぉ。もっとお話しようよぉ」

 

「くっ……! 魔法も使えない!?」

 

 これは非常にまずい。

 この女だか男だかよく分からない悪魔。

 たぶん相当な実力者だ。

 でなきゃ自分がこんなあっさりと無力化される筈が……

 

「ち、ちょっと、ちょっと待って! 話す、話すから——そうだ取引! 取引しましょう! あなた悪魔なんでしょ!?」

 

 こうなってしまったからには、なりふり構っていられない。

 このまま捕まるくらいなら、この悪魔と取引でも何でもするしかないと。

 

「取引? いいよぉ!」

 

「……わたしが言うのも何だけど、即決すぎない?」

 

「まぁそういう性格なもので。あとこれ短編だから、出来るだけコンパクトにお話をまとめないとだからね」

 

 悪魔がわざわざ動けない自分の顔の方まで移動してから、見えるように床に金と銀の天秤を置いた。

 

「というかぁ、サキュバスのお姉さんそもそもどういう事情なのぉ? ある程度の仮説はあるけど、この際教えてほしいなぁ」

 

「…………被害者の男との関係を話せってこと? 単なる客よ。わたしは夢魔の血を引いたサキュバスだから、客の男にお金もらって、代わりに良い夢を見せてあげて、ついでに生気を少しもらって生計を立ててるのよ」

 

「ふーん……なるほど夢魔系統だったか——それで昏睡させるほどつい眠らせちゃったと?」

 

 悪魔が暇つぶしなのか、指先で天秤をいじる。

 

「——勢い余って魔法かけたのは事実よ。でも、あの男……現実で性的なサービスはしてないって何度も注意したのに、ベタベタ触ってくるわ終いには服を破こうとするわ……! 頭にきちゃって、魔法かけたあとすぐに宿屋を出たわ」

 

 しかし、昏睡が続くほど強めにかけてしまったのは誤算だった。

 そのせいで気が付けば指名手配されていたというわけだ。

 

「ふーむ……まぁ辻褄は合うかぁ——じゃあこの街から出ようとせずに、こんな場所に何日も隠れてたのは?」

 

「…………公演があるから」

 

「へ?」

 

「だから、歌姫リリスの公演があるから、それを観るまではこの街にいなきゃだから——何よ、サキュバス(非人間)が人間の歌に惚れちゃ変だって言うの?」

 

 酔狂だと同族に言われたこともある。

 だが、彼女の歌は自分の魂にまで響くのだ。

 好きなものを好きでいて何が悪いというのか。

 

「…………そうだねぇ、変かもねぇ」

 

「…………?」

 

 動かない頭、固定された視線の先。

 天秤の横に、スッと小さく加工された羊皮紙が一枚出された。

 

「ぁ……公演のチケット——」

 

 自分が持っているのと同じチケットだった。

 しかしすみに書かれた番号が自分のとは違う。

 つまりこのチケットは、自分のポケットに入ってる別物のチケット。

 それを、この悪魔が持っていた。

 

「——そう、そして私も変なのさ!」

 

 それはつまり……

 

「……一昨年の公演の曲名は?」

 

「恋と螺旋の鼓動」

 

「去年は?」

 

「奇跡の旋律。リリスちゃんっぽくない曲調だったけどそれもまた良いよね」

 

 ……何だ、ただの同志か。

 

「ふ、どうやら私たちはブラザー……シスター? のようだな……じゃあ特別価格だね! 見逃してあげるどころか、公演が終わるまでサキュバスのお姉さんに認識阻害掛けてあげるよぉ。あと指名手配の件もなんとかしてあげるぅ」

 

「そ、それは有難いけど——どうやって?」

 

「ははは、というわけで、めいくゆあちょいす! 代価は……角と尻尾どっちにする?」

 

 …………角と、尻尾?

 

「だから、その角へし折るか、尻尾千切るか。討伐したよって偽の報告するにも証拠品がいるからさぁ。それにしばらくしたらまた生えるでしょ?」

 

「そう、だけど……もっとこう、服とか装飾品とかで——」

 

「大丈夫だってぇ、痛くしないからさぁ。それより早く終わらせて、2人で公演まで準備とか、色々と談義したいなぁ。したいなぁ」

 

「っ…………!」

 

 それはそうだ。

 だが、だが……!

 

「…………尻尾の方で、お願いします」

 

「はーい♡ ちょっとくすぐったいかもよぉ」

 

 金と銀の天秤が勝手に動く様子を見ながら、下半身の衣服と下着がズラされる感触を耐える。

 そして尻尾の神経が、何かに掴まれたのを感じて——

 

 

 

「あ、この先はみんな見ちゃダメだよぉ。天秤ちゃんばーりあ!」

 

 

 

 

 

 

「お姉さん手紙書いてるの? 誰に?」

 

「んー? 新しい推し友」

 

 

 

 

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