転生したらTSして悪魔になったので、ロールプレイします 作:メスシリンダーガキ
冒険者なんて、言ってしまえば傭兵と大して違いはない。
けどまぁ、傭兵よりも冒険者の方が世間には認められてるから、冒険者の道を選んだ。
本当は自身の才能を活かして、魔導の道を行こうかと思ってたが——給料も良いし——堅苦しすぎて息が詰まりそうだったから止めといた。
それとどうせなら、多少のスリルも欲しかった。
だから、適当に冒険者をやって、良さそうな男がいたら結婚して引退かな。
そんな考えで自分は冒険者を始めた。
冒険者なら、職業柄様々な場所に行き、多種多様な男に会える。
きっと自分が好きになれる男がすぐに現れるはず——だった。
「——気が付けば今年で20歳……いや、まだ慌てなくてもいいかもだけど……」
人生そう上手くはいかないものだ。
何人かと付き合ったりした時期もあるが、結婚まではいかなかった。
今いるパーティの男も、良い奴で悪くはないのだが……
少し暑苦しい性格なのが苦手だ。
「——喜べセレナ! 新しいパーティメンバーが見つかったぞ!」
噂をすればなんとやら。
ユーキという男が叫びながら自分が座ってる席に近付いてきた。
「やっと? 新しいメンバー見つけるのにもう2週間経ってるじゃない。」
「それは本当にすまん。不甲斐ないリーダーで……だが今から不甲斐なくなくなるぞ!」
ユーキが背後に控えさせていた人影を自分の目の前に。
「——初めまして、俺はアークという。
茶髪の好青年という第一印象だった。
顔も良いし、声も耳にして心地良い。
……ぶっちゃけ好みの男だ。
「……セレナ、魔法使いよ——
しかし、好みだからといっていきなり食い付くのは自分の理に反する。
そもそも外面だけ良くても、中身が最悪だったら意味がない。
「安心してくれ。こう見えて俺は結構強くてね——前衛のユーキは別にいいとして、後衛の君は何がなんでも守ってみせるさ」
「——ふ、ふーん。まぁその……期待してるわ」
「…………ん? 今オレは別にいいって言われなかったか?」
そうして、この3人で仕事をすることになった。
「よし、いい連携だったな」
「怪我は? ——それなら良かった」
「大丈夫か? 少し調子が悪そうだぞセレナ。おーい、ユーキ。少し休もうぜ」
「今日誕生日なんだって? ほら、安物で悪いが新しいポーチだ。今使ってるやつ、少し傷んでいるようにみえたからな」
時の流れは早いもので、アークがパーティーに入ってから数ヶ月。
うん、まぁ、むしろ怖いくらい性格も良くて気配りもできる男だった。
ユーキとも相性が良いのか、前までパーティーにいた斥候の男よりも仲が良さそうにみえた。
…………だから、惚れるなっていう方が無理じゃない?
「ねぇ、アーク——」
「あぁ、すまないセレナ——俺よりユーキの奴を誘ったらどうだ?」
それからというもの、何度かアークを食事とか遊びに誘ってみた。
しかし、そういったことに関しては付き合いの悪いアーク。
仕事が終わると、用事があるとかですぐに帰ってしまう。
もしかして、既に付き合っている相手がいるのだろか?
考えてみれば、こんな優良物件の男がフリーの筈がない。
指輪とかはしてないから、結婚はしてなくとも、そういった相手がいてもおかしくはないだろう。
だが、諦めきれない。
少なくとも同じパーティーにいる間はチャンスだ。
とりあえず先ずは、さりげなーく付き合っている相手が本当にいるのか探ってみよう。
「悪魔……?」
何の進展もないまま、さらに数ヶ月。
とある立ち寄った村で、ユーキたちが冒険者だと知った村長が、とある相談を持ちかけてきた。
それは、数ヶ月前から近くの洞窟に悪魔を名乗る存在が棲みつき、そこそこの頻度で村に悪さをするらしい。
「具体的な被害は?」
「それが——」
『ヒャッハー! 食い物とお酒を寄越しなぁ! あ、代金ここに置いとくね』
『そんなボロボロの農具で大丈夫か? 一番良い品質の置いとくね。あ、代価は村長さんの家にあるお酒もらうね』
『野盗対策に村の囲いを強化しといたよ!(無断)代価はブドウ酒がいいなぁ。そこのかわいい村娘ちゃんの御御足で踏んで作ってね。もし違う人間がやったら——鐘が鳴るたびに村人1人ずつ豚にするね』
「——とまぁ、やりたい放題でして」
「……なんかあれだな!」
「……うん、なんかあれね」
やりたい放題なのは伝わったが、妙に村に対して変な善行をしようとしているのが判断を困らせる。
というかどうりで僻地のわりに、村の設備やらが立派なわけだ。
「一昨日なんて、村で飼育していた大事な牛が一頭……」
「…………連れ去られたのね」
そんな、自給自足が必要な僻地の村で、貴重な家畜を攫っていくなんて——
「いえ、何かミノタウロスにされてしまいました」
「ア、ソンチョウ。ニモツハコンデオイタ。アト、オデ、チチイツデモダセル」
「おぉそうか、助かったよ。それと教えてくれてありがとう。あとで妻にお願いしておくよ」
…………なんか、巨体の牛の化物が通過してきて、普通に村長と会話して去っていった気がする。
「——とまぁ、そういうわけですので……」
「ごめん、そういうわけってどういうわけ? 結局その悪魔を退治すれば良いってこと?」
「…………なんかこう、良い感じに対処してくだされば」
「曖昧!」
自分は関わるべきではないに1票。
ユーキはとりあえず行ってみように1票。
そしてさっきから何故かダンマリを決め込んでいたアークだが……
「なんて恐ろしい悪魔なんだ……2人とも、放置したら何かこうヤバいことになるかもしれない。今夜にでも洞窟に乗り込もう!」
まさかの誰よりも好戦的な1票だった。
それにしても、彼らしくもない反応だ。
もしかして過去に悪魔に何かされたりしたのだろうか?
まぁ何はともあれ、自分たちは洞窟に赴くことになった。
「ククク……待っていたぞ冒険者たちよ。お前たちが村に来た時からずっと観察していたぞ」
そして普通にいた。
人型で、全身にローブを纏っている。
顔もフードでよく見えないが、チラリとピンク色の髪が見えた。
声は少女のようなものだった。
「……まさか、天秤の悪魔か?」
「知っているのかユーキ!?」
「あぁ、何年か前に会った凄腕の冒険者に聞いた。何か飯を奢ってコイントスしたら撃退できたとか何とか……」
「何で肝心なところが曖昧なのよ!」
「すまん! 酒の席だったから、ぶっちゃけ記憶が曖昧だ!」
「ククク、懐かしいな。アレは読者さん達からすれば2ヶ月くらい前。実際には数年前の出来事だ」
何か訳の分からない言葉を吐く悪魔。
とにかく、悪魔は本当にいたようだ。
天秤だがなんだが知らないが、何かされる前にこちらから速攻を——
「先行はもらった! 俺のターンドロー! くらえ滅びの☆バース⚪︎ストリーム!」
「「何か出た!?」」
悪魔が手をこちらに向けたかと思えば、そこから光線のようなものが。
まさかあれも魔法? 自分でも知らない魔法を悪魔が——
そんな、考える暇もなく光線が自分とユーキに直撃しようとして——
「——アーク!?」
盾を持ったアークが、自分たちの前に立ち、盾で光線を防いだ。
「む、無茶だ! 盾がもたないぞ!」
アークの盾には、自分の補助魔法はまだかけてなかった。
つまり単なる木の盾。
魔法の力を防げる強度ではない。
現に、嫌な音を立ててアークの盾には亀裂が走っていた。
「……言ったろ?」
アークが顔だけこちらに向けて言った。
「何がなんでも守るって——」
光線が盾を粉砕し、アークの身体を貫いた——
「——あとはたのんだ」
そしてアークは地面に倒れた。
「っ…………セレナ!」
「えぇ、えぇ!」
悲しむ暇は、今は無い。
今は、今だけは、目の前の悪魔を倒すのみ。
アークが繋いでくれたチャンス、ここで逃すわけにはいかない……!
「ククク……見事だ。まさかここまでとは——」
そう言い残して、悪魔は霧のように消えた。
「……やった、の?」
「ゴーストみたいな手応えだったが——たぶん」
時間にすれば十分ほど。
しかし激戦でもあった。
詠唱で痛めた喉をさすりながら、呼吸を整えて——
「ぁ……そうだアーク! 無事なの!?」
次の優先事項を脳が自動的に読み込んだ。
背後を振り返って、地面に倒れたアークの安否を確認しようと駆け寄ろうとした。
だが、アークはいつの間にか立ち上がっていて、自分たちを優しく微笑みながら、見つめていた。
……良かった、生きてた。
「おぉ、アーク! 生きていたのかぁ!」
ユーキが嬉しそうに、アークに向かって駆け寄った。
「——くくっ、いっひひひひひ……!」
「っ……? アーク……?」
しかし、アースの様子が変だった。
いつものような優しそうな笑いではなく、心底他人を嘲笑するようなものだった。
その異変を察知したのか、ユーキは駆け寄ろうと動かしていた脚を止めてしまった。
そして——
「なーんちゃって!」
邪悪に満ちたような表情で、そう叫んだのだった。
「アーク……?」
声に不安が乗ってしまう。
「お菓子食って——じゃなくて、可笑しくって腹痛いわ〜。君たちってば、本当に俺のことを……」
アークが笑いを堪えようとする。
しかしそれも我慢ができなかったのか——
「なら見せてやろうか!? もっと面白いモノをよぉ!」
アークの周りを、光が包む。
そして彼の身体は文字通り変貌していった。
そう、山羊の角を生やした、ピンク髪の少女の姿へと——
「——ジャンジャジャーン! 今明かされる衝撃の真実ぅ。というわけで可愛い天秤ちゃんだよ!」
え、本物のアークは何処にやったって?
鈍いなぁ私がアークだよ!
さっきまで2人と戦ってたのは、私が生み出した分☆身だよぉ!
本物の私は、冒険者アークとして過ごしたり、いつも通り何処かで可愛い悪魔ちゃん営業してたり、村の発展(勝手に)勤しんでたってわけさ。
いやぁ、本当に苦労したぜ。
流石に忙しかったですねこの数ヶ月は。
そして流石に変身がキツくなってきた。
幻術も交えて誤魔化してたけど、流石に筋肉痛的な痛みが強くなってきた。
というわけでそろそろネタばらしをして、冒険者アークを引退するつもりで、今回この村の近くに2人を誘ったよ。
「そんな……アーク。君が悪魔だったなんて——」
「…………」
おっほ、ユーキくんは良い反応だねぇ。
これだよこれぇ。
セレナちゃんの方はダンマリだけど、ちょっとショック与えすぎちゃったかな?
「っ……!」
セレナちゃんが突然立ち上がって、こちらに向かって走ってきた。
そのまま怒りのタックルでもしてくるかと思いきや、私の隣を通り過ぎてそのまま洞窟から出ていってしまった。
……おろ?
このまま第二形態の私と激しいバトルの予定だったのだが——
というか、気のせいでなければ何か泣いてたような……
「アーク!」
「あ、はい」
ユーキくんが叫んだ。
洞窟内で反響して、何度もその名が耳に入ってきた。
「君の目的が何かは知らないが……今すぐセレナを追いかけろ」
「え、でもこれから私たち限界バトル叩きつけて——」
「いいから! はやく!」
「あ、はい! すぐ行きまーす!」
あまりの迫力に思わず回れ右して、セレナちゃんを追いかけた。
え? 天秤ちゃんのファンやめます?
最低最悪? 鈍感系主人公だったなんて?
ソレイジョウイウナー、ニャメロー。
なんか知らないけど私が悪かったから、お気に入り解除しないでぇ!
——洞窟のすぐ近くの、河岸にセレナちゃんはいた。
おや、私がプレゼントしたポーチを川に投げようとして……あ、止めちゃった。
代わりに近くの石を手当たり次第に川に投げ入れ始めた。
えぇ、なんかこれ話しかけるの無理じゃない?
「……何か用?」
「いやぁ……その、大丈夫かなぁって」
「何で悪魔のアンタが私の心配するのよ」
「まぁそれはそうなんだけどぉ……よくも騙してくれたなー、からの熱いバトル展開のノリを予定してたから、そんなに傷付けるつもりとかではなかったというかぁ——」
これはヤバいぜ読者さん達。
このままじゃあ読者さん達が八つ裂きにされてしまう(身代わり)
急募、傷付いた女の子の心のケア方法。
「……そもそも何で、あんなに回りくどくて時間掛けて私たちに近付いてきたのよ。悪魔って暇なの?」
「あー……きっかけは君たちのパーティーメンバー募集の張り紙を見た時かなぁ。それで何となく観察してたんだけど——全然新しいメンバー来る気配なかったから、じゃあ私が行ってあげよって」
「そんな理由で?」
「うん」
「男の姿だったのは?」
「君たちの意識をちょーっと拝見して、それを元に好印象を与える姿にしたらあの姿になったよぉ」
「——そう、どうりで」
セレナちゃんが石を投げるのをやめて、その場に座り込む。
「はぁ……よりにもよって悪魔——しかも女に惚れてたなんてね」
…………ん?
りありー?
つまりあれか? セレナちゃんは
「あー……そう、かぁ」
となると、私は女心を弄んだクズ悪魔ちゃんってわけか。
なるほど、どうりでさっきから読者さん達からの視線が痛いわけだ。
「えー……私的にはセレナちゃんはユーキくんとお似合いかなって思って、色々と気遣いしてたつもりだったんだけどなぁ」
「ユーキは仕事仲間としては最高ね。けど恋愛対象としてはちょっと違うのよね」
そういうものなのか……
「そのぉ、代価とかくれるなら、あの姿でしばらくお付き合いプランとかできるけど——」
「それで私が喜ぶと思ったわけ?」
「……ごめんちゃい」
ひーん、この空気何とかしてよぉ読者さん達。
こうなったら、誰かランダムでここに読者さんを召喚して——ん? 待てよ……
「——あ、じゃあさじゃあさ。お詫びに知人の男の人紹介してあげるよぉ!」
こういう時はこの手に限る!
「…………それ、実は人外の男でしたーってやつ?」
「違う違う、ガチでちゃんとした人間の男」
「……………………じゃあ紹介して。良い男だったらアンタのこと許してあげる」
「まぁというわけで、レイラちゃんのお兄ちゃん紹介していい?」
「…………」
「あれぇ、レイラちゃんの視線が冷たいわ。へいマスター、暖房強くしといて」
こんなに冷たいレイラちゃんは、三日三晩飲み歩いたあとに帰ってきた時以来だわ。
「お姉さん。仕事なのは分かるけど、あまり人に迷惑かけちゃダメだよ?」
「え、いま悪魔の私を全否定された……?」
迷惑かけてなんぼの仕事なのですよ?
迷惑かけなかったら、もうそれ本当に一般通過善良天使とか一生言われるよ私?
「——というか何で私のお兄ちゃん?」
「いや、好みとか色々詳しく聞いたら一致したから」
「ふーん……私は別に良いというか、お兄ちゃん本人に聞きなよ」
「はーい。ちなみにレイラちゃんは最近どうなのどうなの?」
あの熱血騎士くんとは上手くいっているのかな?
まぁ上手くいってないなら、熱血騎士くんの頭が永遠にその身体とオサラバするけどねぇ。
やったねマスター、仲間が増えるよ!
「え……うん、まぁ——」
おやぁ、何か満更でもない反応だぞぉ?
どうするみんな? やっぱり今のうちにヤっとく?
…………お、レイラちゃんと付き合うのは俺だ派閥と、レイラちゃんと熱血騎士くんのカップリング派閥が天下分け目の大合戦を始めた。
いいぞーやれー。
「——と、というか、そういうお姉さんこそ何か話ないの!?」
「え?」
「こ、恋の話とか……お姉さん自身のというか——」
…………つまり、私に恋バナをしろと?
うーん——
「むり」
「何でよ。私にそういう話させたいなら、お姉さんからしてよ」
む、この私に代価を要求か。
ふ、成長したなレイラちゃん……
「でもなぁ……殆ど覚えてないのよねぇ」
——◼︎当に◼︎◼︎◼︎な◼︎の?
「……じゃあ、質問に対して、一回だけ——はい、いいえで答えてあげるよぉ」
「い、一回だけかぁ……」
うんうんと頭を捻るレイラちゃん。
かわいいですね。
「じゃあ……その——誰かを本気で好きになったことある——とか?」
「—— 。」
「ちなみにあの村どうするの?」
「え、適当に開拓して飽きたらちゃんと解放するよぉ」