転生したらTSして悪魔になったので、ロールプレイします   作:メスシリンダーガキ

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九話

 

 

 

 

 大陸最大の港街、オーロラ。

 大陸の中心かつ、海に面しているその立地から、様々な国や街から来た船や馬車が中継地点として、そして補給の為に立ち寄る。

 当然人の流れがあれば、商業も活気が出る。

 ここぞというばかりに商人たちもこの港町にやって来ては、商売をするのだ。

 さらにさらに、商売をする者、利用する者、買い手と売り手。

 多くの人々が来るということは、必然的に泊まれる場所(宿屋)の需要は高まる。

 だからオーロラの中にはもちろん、近郊にも宿場町がある。

 そんな宿場町にある、とある酒場。

 16歳の少女レイラはそこで働いていた。

 

「レイラちゃーん! 注文取りに行ってくれる?」

 

「あ、はーい! すぐ行きます!」

 

 酒場は早朝から夜中まで開店している。

 朝から夕方までは食事処、夜は本来の酒場の姿に戻るといった感じで。

 オーロラの近くの宿場町というだけあって、朝から結構混む。

 しっかりと朝食を摂って、気合を入れて商売に向かう商人、今日こそは掘り出し物を手に入れると意気込む買い手などなど。

 とにかく朝から大忙しなのだ。

 

「ザッポさん、それ私が運んでおきます!」

 

「ごめんありがとう!」

 

 そんな酒場で、レイラは主戦力かつ看板娘のような立ち位置だった。

 長い金糸のような髪に、透き通ったような碧眼。

 容姿も器量も良い、所作もどこか上品さが感じられ、性格も明るく元気。

 当然、男性陣からはとても人気があった。

 しかし彼女を酒の肴にしようと、下心を持って夜の酒場に行ってもそれは徒労に終わる。

 何故なら彼女は基本的に、早朝からお昼までしか酒場に居ないから。

 噂では午後は別の仕事をしているらしいが、その仕事の内容や場所は誰も知らないのだ。

 

 

 

「ふぅ……お疲れ様でした」

 

 時刻は昼過ぎ、少し定時の時間を過ぎてしまっているが、いつものことだった。

 レイラは借りてたエプロンを酒場の経営者で雇い主の主人に手渡した。

 

「おう、お疲れさん。いつも助かるよ。ただ、どうせなら夕方までウチで――」

 

「あははー、本命の仕事があるから無理ですよ」

 

「だよなぁ、うーん。実に惜しい」

 

 そんないつものやり取りをして、レイラは酒場を出た。

 宿場町から港街のオーロラまで、早歩きで向かう。

 近いとはいえ歩けばそこそこの距離があるため、宿場町とオーロラを行き来する荷馬車もあるのだが、レイラは有り余るその体力を惜しみ無く発揮していた。

 

 ――やがてオーロラに辿り着く。

 そして出迎えたのは、潮風の匂い。

 その独特な匂いがレイラの鼻腔をくすぐる。

 故郷は丘と森ばかりだったので、初めてこの匂いを嗅いだ時は少し驚いたものだ。

 

 レイラがこの街に来た理由は明確だ。

 それは食料品や雑貨などの買い出し。

 そして研究だ。

 様々な国の特産品が集まるこの港街の大市場は、まさに宝の山。

 異国の料理、食品、技術、レシピ。

 どれもレイラの本命の仕事――そしてレイラの()()()が求めている物だ。

 だからめぼしい物を見定め、買い集めるのがレイラの役割でもあった。

 

「あ、すみません。これって何ですか?」

 

「それはエルフが好んで使う薬草の一種でね。主に薬に使われるけど、料理の調味料としても使えるらしい」

 

 レイラが見慣れない干された薬草について売り手らしき商人に訊ねると、詳しく教えてくれた。

 

「じゃあある分だけください!」

 

「まいど!」

 

 そんな調子で気になった物を買い漁るレイラ。

 そろそろ荷物がいっぱいになり、引き上げようと思ったその時、目を惹かれるものが視界に入って思わず足を止める。

 それは、銀細工の工芸品を扱う出店だった。

 どこの国、技術なのかはレイラには分からなかったが、とても精巧に出来ているのはすぐに理解できた。

 でなければ足を止めたりしなかっただろう。

 

「おや、興味があるのかなお嬢さん」

 

 出店の店主がレイラの視線に気が付いて話しかけてくる。

 ――この銀細工はレイラの買い出しには関係のないものだ。

 だから買う必要はない、ないのだが――

 

「あの――」

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございます」

 

 両手にいっぱいの荷物を持って、レイラは午後の本命の仕事場にやって来た。

 既にカウンターに立ち、グラスを磨いて細かいチェックを始めているマスターに挨拶をする。

 マスターは首から上がないため、当然話せない。

 だから代わりに手を挙げて挨拶を返してくれた。

 

 ここは深域という場所にある酒場だ。

 深域というのはよく分からないが、()()()()曰く、『地獄てきな場所だよぉ』と言っていた。

 とにかく私のような普通の人間が、本来であれば気軽に来れるような場所ではないということだ。

 そして私はこの酒場で働いている。

 さらにやる事はほぼ午前中にいた酒場と変わらない。

 何ならこっちの方がお客さんが少なく、暇なくらいだ。

 なので必須の仕事が終わって、お客さんが居なければ本を読んだり、新しいつまみや料理の挑戦をしたりと、のんびりと過ごしている。

 マスターとお喋りするのは不可能なので、どうしてもお喋りしたい時は私が独り言のように話したりもする。

 ――そんなふうに過ごしていると、大体最後になってお姉さんは来てくれる。

 

「いぇーい、最近もうチョロい一般通過善人悪魔としか認識してもらえなくなった可哀想な私だよぉ。どうしてこうなった、当初ではちょいムカつくヘイト集める系主人公にするつもりが、書いてるやつの想像力の乏しさのせいで中途半端に善行ムーブさせられてるからだよ。文章力と語学力磨いて出直してこい♡脳みそスカスカ♡」

 

 と、よく分からない事を口走りながらお姉さんが酒場の扉を開けて入ってきた。

 

「お姉さん、いらっしゃいませ!」

 

「あ、アンケートでマスターを上回ったつよつよ元幼女のレイラちゃんだぁ。おめでとぉ、そしてマスターは涙拭けよ。なぁに、一応マスターの分も用意してあるらしいから、いつか気紛れでポロッと投稿してくれるかもよぉ? 知らんけど」

 

 お姉さんはそう言いながら、いつものカウンター席に座ります。

 そしていつものように飲み始めます。

 

「それでねぇ、私は言ってやったのよぉ。『昔はお前みたいな冒険者だった……膝に矢を受けてしまってな』って。はっはぁ、傑作でしょ? あ、それとチーズ。チーズ! チーズの為なら死んでもいいって!」

 

 お姉さんは酔いが回るとよくマスターにダル絡みというやつをします。

 支離滅裂な内容で、マスターもよく反応に困ってます。

 そしてそんな中、暇を持て余した私はお姉さんのピンクの髪を勝手にブラッシングしたり、編み込んだり結んだりしてます。

 この前は三つ編みにしてあげたら、手鏡で確認したあとハッとした表情をして席を立ち、その場で金と銀の天秤を手にしました。

 

『勇者はもういないじゃない』、『私は千年以上生きた大悪魔だ』。

 とかやっぱりよく意味の分からない言葉をドヤ顔で言ってました。

 

「――そうだ、お姉さん」

 

「ん、どしたのぉ? 角にリボンいっぱい付けるのはやめてねぇ、威厳がなくなっちゃうからぁ」

 

「あれはもう10歳の時の話でしょう――そうじゃなくて、これ」

 

 タイミングを見計らって、ずっとポケットに入れてた小さな箱をお姉さんに渡した。

 お姉さんは首を傾げながら箱を開ける。

 

「これはぁ?」

 

「その……市場で見かけて、お姉さんに似合うかなって。あ、自分のお金で買ったやつだからね」

 

 それは銀細工のイヤリング。

 小さな球体を、小さな2つの輪っかが囲んでいる、自分にはどんな風に作ったのか想像すらできない逸品。

 それをお姉さんに贈った。

 

「えー、くれるのぉ。ありがとー、じゃあお返し(代価)あげないとだねぇ」

 

 お姉さんが何もない空中に手を伸ばそうとします。

 多分いつもの魔法(手品)みたいに何かを出そうとしてる。

 

「待って、それは……日頃のお礼というか、私からの贈り物(代価)だから、お返しはいらないよ」

 

 だから止めた。

 この贈り物はそうじゃないと、ハッキリと伝えた。

 するとお姉さんは腑に落ちないような表情をした。

 

「……おもしろーい、私が家族から君を連れ去ったって忘れちゃったのぉ?」

 

 それは事実だ。

 思い返せば、両親も兄も自分に良くしてくれてたし、多分愛されてたのだろう。

 自分も家族との過ごした時間は好きだった。

 だから、何も感じないと言えば嘘になる。

 けどこうして私は生きて、充実した日々を送れている。

 それに、二度と会えない離別をしたわけではない。

 こうして生きて、もし両親も兄も生きているのなら、また会える日は来る。

 何となくそんな予感がしていた。

 だからお姉さんを恨んだりした事は一度もないのだ。

 

「そうだとしてもだよ、お姉さん」

 

 だからもう一度、言葉でハッキリと意志を伝えた。

 

「…………そっかぁ、じゃあもらってあげるよぉ」

 

 お姉さんは諦めたように言って、そのまま箱の蓋を閉めようとした。

 すると、マスターの手が伸びてきてそれを阻止した。

 

「え、どしたの……ん、はい――あー……まぁそうだよねぇ」

 

 お姉さんはマスターと何故か意思疎通ができるみたいで、私を置いて2人で何か会話をしている。

 

「――はい、これで満足ぅ?」

 

 会話が終わったら、お姉さんは箱からイヤリングを出して両耳に付けてくれました。

 

「――うん、最高に似合ってるよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうも天秤の悪魔ちゃんです。

 何かレイラちゃんからプレゼントを貰ったらと思ったら、あの後『そういえば、もし予定とかなければ、明日のお昼くらいに私の家に来てくれない?』と誘われて、こうしてレイラちゃんの家の前までノコノコやってきたよ。

 ふ、待てみなまで言うな読者さんたち。

 これはもう間違いなくアレだろう。

 プレゼント渡した後に家に来てだなんて、99%アレだ。

 そう、それは告白イベントだ。

 多分この後わざわざR18の方を作って投稿しなければならないイベントが起きるだろう。

 いやぁごめんね、レイラちゃんのお話に投票してくれたのに、わざわざ女悪魔✖️元貴族の女の子のラブラブストーリーを見せつけることになっちゃって。

 ねぇ今どんな気持ち? 脳みそまだ壊れないでねぇ。

 指を咥えて歯軋りしながら見てるといいよぉ。

 あ、あとタグに追加しとかないとだね!

 百合の花を!

 

「こんにちはぁ、開けてねデトロイド市警だよぉ」

 

 一応ノックをしてから、遠慮なしに扉を開けた。

 

「あ、お姉さん! 良かった、来てくれたんだね」

 

 ちょうど紅茶を用意しているレイラちゃんが居た。

 ()()()()()()()()()

 

「……ん?」

 

 茶髪の青年がこちらを視認するなり、勢いよく椅子から立ち上がり、何やら洗練された敬礼をした。

 そして――

 

 

 

 「初めまして、お義母様!」

 

 

 

 

 「お義母様!?」

 

 

 

 思わず大きな声に対して大きな声で返してしまった。

 

「は、ハンスさん……母じゃなくてお姉さんってさっき説明しましたよ」

 

「む、失礼したレイラ殿! では――」

 

 ハンスと呼ばれた青年が息を吸い込んだ。

 

 

 

 

 「初めまして、お義姉さん!」

 

 

 

 「お義姉さん!?」

 

 

 

 また同じ事を繰り返してしまう。

 なんだ、一体何が起こっている!?

 

「だ、誰!? 誰なの!? 怖いよぉ!」

 

「あ、お姉さんごめんね、今説明してあげるから――」

 

 

 

「大変失礼致しました! 自分はノーバル王国の王国騎士団所属、ハンス・ドルダックと申します!」

 

「…………あ、はい。えー……とりあえず天秤の悪魔って呼ばれてます」

 

 とりあえず落ち着いたら、自己紹介が何故か始まった。

 

 

 

 「では天さんとお呼びしても!?」

 

 

 

 「天さん!?」

 

 

 

 その略称は初めてされたぞ。

 仲間に餃子なんて居ないし、自爆もしてない。

 

「そ、それはやめて。せめて天秤まで言って――」

 

「はい! 天秤さん!」

 

 何だこの熱血系の青年は。

 誰だお前は、レイラちゃんとどういう関係だ貴様!

 

「じ、実はね……」

 

 そうしてレイラちゃんが事の経緯を教えてくれる。

 1週間ほど前、騎士団の任務でオーバルに来ていたハンス。

 そこで見かけたレイラに一目惚れ、交際をその場で申し込んだらしい。

 当然困惑するレイラ、しかし異性からの告白なんて初めてで、どうするか悩んだ挙句返事を保留。

 後日()()()を呼んで確認してみるから、同席してくれとその場はそれで別れたらしい……

 

「いや保護者って……そうなのかもだけど」

 

「ご、ごめんねお姉さん。私も動揺してて……でも私ってお姉さんの所有物だから、交際とか勝手な事したらダメかなって」

 

「うん、誤解を招く言い方ありがとう。そしてその言い方させたの私だけど」

 

 うん、それで私はこの場で何をどうすれば良いのだ?

 

「天秤さん! レイラ殿は必ず幸せにしてみます!」

 

「あーうん、ちょっと黙っててね……」

 

 頭を捻る、回す、傾げる。

 そして出した結論を口にした。

 

「…………とりあえず、文通から始めたら?」

 

 

 

 

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