これは良識欠けてる僕に与えていいスキルじゃない!   作:peko34

18 / 18
18 野営の一幕

 

 騎士を迎え討つ場所を決め、僕たちは就寝の準備に取り掛かる。地面に布を敷いただけの、簡素な寝床だ。

 

 ここは少し村が近いって心配はあるけれど、目の前の道は少し広がっていて見通しが良く、逆に後ろには小高い岩場があって背後を守るには都合がいい。

 なにより少し離れた場所には黒々とした森が広がっていて、万が一の時にはそっちへ逃げ込めそうなのがいい。

 

 日はすっかり落ちて、満天の星空の下──メニュー画面の頼りない光があたりを照らしている。

 シノさんは火をつけようかと言ってくれたけど、煙は立てたくなかったから明かりはこれだけだ。

 この世界はそこまで真っ暗にならないからこれで十分。

 

 二人に僕の色々を話した時点でもう、メニュー画面の事は一切隠してない。

 なんならさっきまでちーちゃんと一緒に大量のスキル一覧をみて、ひとしきり盛り上がったところだ。

 

 今は1日の終わりの区切りとして掲示板を何気なく覗いているんだけど……そこには新しくスレッドが立っていて。

 

 『ユートピア/utopia 攻略スレpart1(213)』

 『ユウの真似してる奴らキモ過ぎるから辞めろ(1)』

 

 …………嘘でしょ、泣きそうかも。ユウはあだ名だから別にいいけど、こんなのプライバシーが無さすぎる……!

 は、配信画面はっ──

 

『現在配信中:視聴者数 121』

 

 ……キモいッ!! ちょっと本当に訳わかんない、もう寝るだけだぞ僕は! 何を見ているんだよこいつらは!

 

 いくら何でも異常だ……原因は、もしかしてこれか……? 配信画面の端に映る――『rank:1/8409』の文字。

 

 いくら未来技術が破格とはいえ、この狂ったゲームにこの人数がいるわけないとスルーしてたけど、これはランキング1位って意味なんじゃ……

 

 ──やめやめ!  今は考えても仕方ない。気分悪いし、明日の戦いに集中しよう。

 配信のことはまた後で考えればいい。

 

 そう思考を切り替えて、僕がメニュー画面を叩くようにいじっていると──

 

「そう言えばユウ──って、あんたなんて顔してんのよ……」

「はは……いやちょっと気持ち悪いもの見ちゃってさ」

「ふーん? まあいいけど。あの騎士の服、縫ってあげるから私の荷物と一緒に出してよ」

 

 シノさんがインベントリにいれておいた椅子に腰掛けながら、そんな提案をしてくれる。

 

「……えーと、もう真っ暗だよ?」

「全然大丈夫。家事は得意だって言ったでしょ? そのメニュー? だけは出しっぱなしにしていてほしいけど」

「それは問題ないけど……急にどうしたの?」

「せっかく回収したのに、あのままじゃ着られないじゃん」

 

 お、おぉ。よく気が回るなあ。確かに騎士の服なんて着てたら目立ちすぎるから、どうしようかとは思っていたんだ。

 

「ありがとう、でも今は大丈夫。ちょっと使い道を思い付いてね」

「? そうなんだ。じゃあ──どうしようかな。見張りの間何かして欲しい事ある?」

「……シノさん。いくらなんでも働きすぎだよ。今日は色々あったんだから休んでよ」

 

 旅に出る前言っていた通り、今日のご飯はシノさん達が用意してくれた物だ。

 僕にとっては空腹ゲージを満たすだけで済むとは遠回しに言ったんだ。なのにわざわざ近くの森に入って、ちーちゃんの知識で食べられる美味しい果物を短時間で取ってきてくれた。

 

 それだけじゃない、道中拾えた物だけじゃ足りなかった調合に使う素材もしっかり集めてきてくれた。

 僕には明日の為に休むようにと言い残して。正直言って、節々痛めてる僕は申し訳なくなるほど助かっている。

 

「だからさぁ。ユウに夜の番なんかさせて、明日に支障が出たらこっちが困るんだっつの」

 

 夜の番──そっか、シノさんは見てなかったのか。道中も、一部はずっと出していたんだけど。

 よし、ここはしっかり褒めてもらって、沈んだ気持ちは切り替えさせてもらうか。

 

「ふっふっふ、ここまでの道中で、魔物1匹にすら出会わなかったの不思議に思わなかった?」

「……何、なんか理由あったの? 精霊王様が近くにいてくれたからじゃないの?」

「やれやれやれやれ……頭はいいのに、観察力は低めかな?」

「殺すぞ」

「まあまあ、見てよ。これさえあれば──僕たちに見張りなんて必要ないんだ!」

 

 そう言って僕は、いちいち勿体ぶりながらインベントリから女神像を取り出し横に置く。

 

「──え?」

 

 ズシン、と地面が揺れるほどの重い音。

 メニューと星の光に照らされて、苔むした、だけど幻想的で神々しい姿が現れて――

 

「っ!? は……はあああっ!?」

 

 いつも冷静だったシノさんが今日1番の声を上げて叫ぶ。うんうん、いい反応だ。……いい反応過ぎない?

 

「そっ! そ、そそそそそ──」

 

 ふふ、そう──道中情けない姿を晒した僕だけど、実はこうやって陰ながらサポートを──

 

「そ、それはっ!! それはダメだろうがあっ!! というかそれ村にあったヤツ!」

「…………え?」

 

 シノさんの突然の剣幕に驚いて思わずちーちゃんの方に目を向けると──すっかりおねむ!

 

 『スピー、スピー』と、小さな寝息を立てながら、渡しておいたマントを掛けて大の字で寝ている。お休みなさい! じゃなくて、そんなに駄目だった……?

 

「だってこんなに汚れちゃって、誰も使ってる様子もないし……可哀想じゃない? だから僕は──」

「あ、あんたが近くに住んでるから! 村の誰も近寄れなかったんでしょうがっ!!」

 

 ……僕の綺麗事混じりの悪あがきも、以前の僕のせいで綺麗に論破される。この展開何度目だ?

 

「……はぁぁ、最悪だぁ……ほんと怖いよこの人、ルール無用過ぎるもん……」

「し、シノさんって意外と信心深かったんですね」

「そりゃ、今までずっと村を魔物から守ってくれたんだし……まあ……あんたんとこにあったやつだけはなんなの? とは思っていたけど」

「そうそう。これそういう悪人なんかまで守っちゃう代物なんだから、ギミックとして扱うくらいが丁度いいんだって」

 

 それにこの女神、この時代に眼鏡なんか掛けて、エレに少し似てるって、絶対ゲームの開発者、『九條星羅』じゃん。

 この世界をハードモードにした張本人を信じるのはさぁ……

 

「いやそんな割り切れないけど……はぁ……いや、なんにせよごめん、予想外過ぎて。恩恵は受けてんのに文句だけはつけちゃって……」

「え? いやいややめてよ。そういう反応でここでの常識知れるんだから!」

「でも人は近寄れるんだから、周りに罠でも仕掛けてこようか?」

「……仕掛けられるの?」

「そりゃ村では狩りでもしないと生き残れないから。私の荷物出してもらっていい?」

「はー、いやありがとうね。ただ今回は大丈夫」

 

 さっき一応土魔法で最低限の対策はしておいたから。

 『土魔法入門』──習得できる人数が∞だったから、配信で有用性を見せたくなかったし凄く助かる。

 

 「次の機会には是非お願いします」と伝えると何故かシノさんは固まっている。

 

「…………一大決心して付いてきて、私がやった事は果物と素材取ってきただけか……ふ、笑える」

「……え? なにどうしたの!?」

 

 いやいやいや、食べ物用意してくれる人が信用出来るって、こんな世界じゃそれだけでありがたいのに!

 今回はたまたまする事が少なかっただけ──って説明するけど彼女には全然響かない。

 

「……よく分からないけど、考えが甘かった僕が明日騎士団に挑めるのって2人のお陰だからね?」

 

 そもそも今日の僕がやった事って、インベントリとか2周目知識とかの外付け技能のお陰だから、上に見られると恥ずかしいんだけど。

 

「~~っはいもうこの話は終わり! 変なこと言ってごめんなさい! 私はもう少し考えたいから、ユウは先にお休み!」

「えー……シノさんも休んでよ?」

「私は明日帰るだけなんだし問題ないから!」

 

 大丈夫かな……なんだろ、ちーちゃんと同じような悩みでも抱えてんのかな。

 

 僕の世界じゃ戦うのが上手いってだけの僕より、その頭の良さと多才さはずっと需要あるのに。急激な価値観の変化についていくのは大変だ。

 

 んー、考えていても仕方ないし寝ようか。

 でもなんか、明日は大変な一日になるってのに気が紛れてる。旅なんて苦痛なだけのはずなのに、いろいろあって楽しかったもんな。

 お金が貯まったら、真っ先に二人とも雇ってやる! 

 

 …………いや寝具が先かも。地面が固くて痛いょ…… 〜〜っお休みなさい!

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。