これは良識欠けてる僕に与えていいスキルじゃない!   作:peko34

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29 新たな仲間

 

「色々世話になった。改めて礼を言わせてくれ」

 

 騎士団が持っていた、当面の食料と水。そしてコンパスといった荷物を渡して、アレンさんの帰りを見届ける。

 元々彼らの物だったから当たり前ではあるんだけどね。

 

「ねえ、ほんとに一人で帰らせて大丈夫なの?」

「心配してくれるのか。意外だな、てっきり嫌われてるのかと──」

「ユウやっぱダメだって!! 全然分かってないもん」

「……大丈夫だと思うけど」

 

 あれだけ目がキマってるなら間違えないと思う。

 

「な、何のことだ?」

「アレンさん、帰る途中に村が襲われています。あなたはどうします?」

「そういうことか。大丈夫、君たちの情報も抱えてるんだ。ちゃんと先を急ぐさ」

「ほらかっこいい。憧れちゃうよね」

「……目の前に、妹さんに呪いをかけた張本人が現れたら?」

 

 そんなシノさんの嫌らしい質問にアレンさんは一瞬、ギリ、と奥歯を噛みしめるような顔をして──それでも、前を向いた。

 

「…………先を急ぐ。これから俺は優先順位を間違えるつもりはない。王都に俺や妹に悪意のある存在が確認できた以上、一刻の猶予もないんだ」

 

 そして「俺にはよく分からないが、禁止されてる行為もあるしな」と続ける。

 うん素敵だ。そしてそんなアレンさんについていく体力は僕らにはない。魔法はもう当分使えないんだから。

 

「……分かった、疑ってごめん」

「ふっ、自業自得さ。こっちこそ不安にさせてすまない」

『――! ――……!!』

「……なんだって?」

「北にまっすぐ行けば水場があるから、そこからこのくらい針をずらして──そう、真っすぐいけば知ってる町に着くだろうってさ」

「そんなルートもあるのか、助かる」

「休憩中とか寝てる時なんかは聖剣出しておくから、しっかり辿ってきてね」

 

 神装の適合者であるアレンさんには、何処にいても聖剣の在処が分かる。でもインベントリに入れてると分からなくなるのは予想外だったな……

 

「分かっているさ。もし妹が元気になってくれたなら……俺はお前らに一生を捧げるつもりだ」

 

 ……重い。そこまではいらないけど、この真っすぐな思いをシノさんのように嫌な顔で返すなんてできない。

 

「うん、ありがと。またね」

「……気を付けて」

『――!!』 

「ああ! また会おう!」

 

 最後にはしっかり爽やかさを取り戻して、アレンさんは去っていく。

 

 やっと終わった……やっっっと終わったああああ!!

 全然思うようにいかなかった! だけど結果は想定以上、僕のレベルはとんでもなく上がってる!

 

 メニューの国力を見てみると、もうガッツリ下がってて! もうこれだけで魔族から懲罰なんて受けないんじゃないの!?

 

 なんでここまで上手くいったかというと、やっぱりこの二人がいてくれたからで――

 

「……つ、疲れた……よく考えたら私昨日も一昨日も寝てないんだよ……」

『お疲れ様!!』

 

 膝をついたシノさんを撫でているちーちゃんの表情からして、こんな感じの事を言ってるのだろう。

 そして一昨日も眠れてなかったんかい、大分気を張ってたもんねぇ。

 

「もうそのまま寝ちゃっていいよ。あとは明日色々決めようよ」

「悪いけどそうさせてもらう。……なんか、本当にありがとうね。ユウがいてくれたおかげで…………」

「どしたの?」

「はぁ……ほんと無理。私もう無理なんだってぇぇ……」

 

 ん、なんだろ? あの強気なシノさんが直球で弱音吐いて、何が──っ!

 

「こんばんは!」

「…………こんばんは」

 

 そこにいたのは──今、この場所には全く似合わない、中学生くらいの女の子。

 

 薄暗い中でも目立つ金色の髪。光の精霊たちが照らす中、その影だけが妙に濃く、地面に長く伸びている。

 透き通るようなきれいな声で汚く偉そうな事しか口にしなかった──『ユズハ』と呼ばれた女の子が立っていた。

 

「まさかあの話の流れで別々に行動するとは思ってなくてさ。戸惑ってるうちに置いてかれちゃったよ」

「……大丈夫だよ、今ならまだ追いつけるって。食料が足りないならほら、僕があげるから」

 

 何が起きてるか全く分からない、ここはユズハと会った場所から相当離れたはずで、痕跡だって気を付けていたのに。

 いやビビってる場合じゃない、とにかくメニュー画面を開いて──

 

「……ねー、その青くて四角いやつさ。下からひじ出てるよ?」

「これ不思議でしょ? ここに食べ物入って──」

「その位置にひじがあるって、なんか別のとこいじってない?」

 

 ──指が止まる。

 

「何のこと?」

 

 あの虐殺の証人になりえる人物だ。

 見逃す訳にはいかない、とにかく対処しようとステータス画面を開こうとしていた指が。

 

「こっちから文字は見えないけどさ、そこステータスだよね、また振り分けようとしてる?」

「いやいや。食べ物沢山あってさ、選んでたんだ」

 

 大袈裟にスワイプした振りで、ステータス画面をさりげなく閉じる。

 は、なんだよこいつ、僕と同じプレイヤー……? 

 全く頭が働かない、今はとにかく様子を見るしかない……!

 

「ほらこれ、ポムっていうんだって。おいしいよ?」

「……折角警戒させてあげたのに、そんなあからさまに毒って果物渡してこないでよ……」

 

 いやこれ確かに見た目グロいから僕も驚いたけど……

 

「なんで警戒させてくれたの?」

 

 聞きながら僕はポムをそのまま齧る。

 皮を剥かないと渋さがひどいけど、そんな様子は少しも見せない。

 

「そりゃアホな真似しないようにだけど──それおいしいの?」

「勿論」

 

 僕はもう一つポムとナイフを出して皮を剥き、一口分切り分けたのを齧りながらユズハに投げて渡す。

 

「ふーん、匂いは普通……だけど色が紫ってさ~、まあいいか」

 

 そう言って恐る恐るその果物を齧って──

 

「……まあまあ美味い」

 

 生意気な感想を漏らす。なんとか、ごまかせたかな。

 

「マジか……ここに来るまでこれ何度も見たのにスルーしてたよ」

「まあまあ、まだ沢山あるから持っていきなよ。それでさ、アホな真似ってどういう意味?」

「名前ユウだっけ? ユウのステータスじゃボクに勝てる訳ないからさ〜」

「……戦うつもりなんて無いよ?」

 

 僕が勝てないって、あの虐殺は見てなかったって事か? 今僕のレベルは『31』。アレンさんの後ろにいた団員程度僕なら軽く捻れるレベルだ。

 なのにここまで油断してくれるなら──

 

「ならいいけどさ。ボク、アレンなんかよりずっと強いから」

「……っ」

 

 そう言って食べ終わったポムの芯を、信じられない速度で僕の足元に投げ込んでくる。

 そこまで固くはない芯が、地面に埋まるほどの威力と出鱈目さ。

 

 あれ、これ本当に勝てないかも……

 

「ていうかユウ……後ろで見てたけどさ……アハっ、あのステータス何!? アハハハ! 『力』だけぶっ飛んでて、戦ってる最中もそれしか上げないし、それで騎士団に立ち向かうとか狂人過ぎるってぇー!!」

 

 アハハハハと、まだ笑っているユズハに鳥肌が止まらない。僕が最後にステータスを振り分けたのは騎士団戦の序盤で……

 

「スキルもその青いので取ってたし、なんなの? どんなユニークスキル!?」

 

 今日中に……村まで行くのはサボるだろうとは思っていたんだ。

 だけど、アレンさんに貸しを作った挙句、二日分の食料を巻き上げた挙句……! 

 あの戦いを見学出来るほど近くでサボる性格の悪さ、想定できる訳ない!

 

「……なーんだよその顔は」

 

 そのうえでこの悪びれない態度……ダメだ、僕は魔法が使えないし、シノさんも今は気力で立ってるだけなんだ。

 

「まあそういうのは後でさ、今は追いかけたら? さっきの足の速さなら全然追いつけるよ」

 

 アレンさん、ごめんなさいこの子引き取って!

 

「それ! 急に分かれるから悩んで悩んで──もう追っかけるのダルいしこっちについてく事にしたから」

「………………ケッコウデス」

「なんか姿消したとんでもない奴らもいたしさ、折角ならあの茶番を見てから寝ようと思ったわけ。

 そしたらさ~、ブフッ! フフフッ! なに勝ってんの!? ありえないでしょ!」

 

 キャハハハハと笑うユズハに僕の必死の声は届かない。

 それに──シノさん達にも、気付いていた……?

 

「ねーねー! あの動き何!? なんで女神像なんて持ってんの!? 他にも――」

「アレンさんの脇腹の傷……やっぱユズハも絡んでる?」

「……ん~?」

「グロスキー君が持ってきた薬を塗ってたみたいなんだけどさ。そんなに鋭いなら気付くだろうなって」

「……はいはいそんなボクが治療を長引かせんのを見逃す筈ないって? 別に隠してないし、カマ掛けとかキモいから」

 

 そのうえ、会話の主導権を握られるのが我慢ならないタイプ……絶対一緒に過ごしたくない!

 

「妹さんへの呪いも?」

「そっちはうちの軍の仕業みたいだけど、顔も名前も知らなーい」

「……っ」

 

 シノさんの息をのむ音が聞こえる。

 アレンさんのあの怒りも見ている筈なのにこの態度……彼より強いっていうのも、まるきり嘘ではないかもしれない。

 

「僕達ね、お金も持ってないし何のお構いも出来なくて――」

「大分弱らせて、さあ帰ろうって時に馬鹿が村なんて見つけてさ! アレンの怪我も治されちゃうし、このまま帰れないから仕方ないよね!」

「…………ちなみにうちの軍っていうのは? 多分、さっきの三軍の事じゃないよね?」

「あ、第四騎士団だよ。クソ外道のゴリラ女が隊長で有名なんだけど、知らない?」

 

 成程。もちろん知らないわけがない。

 ……そっか、四軍なら納得だ。

 一周目、僕の所属する三軍を目の敵にして、延々と嫌がらせを繰り返してきたゲロブスの軍なら。

 

 ……最悪だ……なんで!? どうしてよりによって!? AIが進化してる今、あの外道がどこまで道を外れてるかなんて想像もできない!

 

「初めて聞いたよ。でもそうだな、ついてくるなら改めて自己紹介するよ。僕はユウ、バレてるみたいだけど実は弱くてさ、ユズハが一緒なら心強いよ」

「……私はシノ。家事担当だから、なにか不便なことあったら言ってね」

「へぇ。家事担当とか、いいね! きったない男共と過ごしてきたから嬉しいかも! ユズハって呼んでね!」

 

 僕の様子にシノさんが合わせてくれて助かる。

 

『――♪』

「──あ? なに、握手? 正直ガキはあんま好きじゃないんだけどな~」

『……!? ――!』

 

 まさにそのクソガキといったユズハに頬をプクッと膨らませ、強引に手を取って握手をかますちーちゃん。

 いいぞ、調子狂ってるぞ。そのまま崩していけ!

 

 なんかまた、勝手に決める事になってごめん。

 でも……僕たちの情報を握ってるこの女が四軍なら、話が別なんだ。帰すリスクの方が、ずっと高いんだ……

 

「なんだか僕たちも賑やかになってきたね。ユズハ、これからよろしくね!」

 

 なんとしても! 殺すか篭絡するか、殺すか埋めるかなんとかして──人知れず処分してやる……!!

 

 

名前:ユウ

種族:人間 Lv31

クラス:プレイヤー

HP:119 MP:-2602/120

力:89 防御:3

魔防:2 SP: 12

 

振り分けポイント: 75

スキル:土魔法入門 オートリカバリー(弱) 魔法陣 調合

 

名前:シノ

種族:人間 Lv13

クラス:精霊術師

HP:32 MP:21/89

力:9  防御:16

魔防:38

スキル:契約破棄 ライト(スキル化) 光学迷彩・弱(スキル化)




二章完結です!
ここまで読んで頂き本当にありがとうございました!
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