これは良識欠けてる僕に与えていいスキルじゃない!   作:peko34

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三章
32 国力/警戒度


 

「国力が上がってる……なんで?」

 

 予想もしていなかった展開に思わず呟いてしまう。

 

 この世界では、魔族の支配下にある人間が一定以上の国力をつけると『調整』という名の虐殺が始まってしまう。

 物資の提供を拒んだ時も同じ。理性の足りない担当魔人なら、ちょっかいを掛けるだけでも攻めてくる。

 

 ルミナス王国の担当は『魔人リザ』

 あんな化け物相手に、この国は手も足も出ないはずだ。

 

 魔人に抵抗するための神装はこの国に二つ、一つは国の物じゃないし、もう一つは僕の手元にあるんだから。

 焼かれて終わり。勝てるビジョンなんてまるで見当たらない。

 そんな事は考えるまでもない。この疲弊した国ならなおさらだ。

 

 だというのに──

 メニュー画面に搭載されている『国力/警戒度』

 

『ルミナス王国:国力 1430/ランク1──2500 』

 

 アレンさん達を倒して神装を頂いて、間違いなく1200台まで下がったはずなのに!

 

「ユー―――!! まーたそんなのいじってんの? きったねえ体してんだからユウも入りなよ!」

「ちょ、ユズハ! 何言ってんの!?」

『――♪』

 

 こんな大事な事を考えているのに、後ろで水浴びをしている3人がうるさくて集中できない。

 

 やることリストに書いた通り、次の目標は──

『成功したらインベントリで持ち運べる拠点の作成依頼』 

 ちーちゃんの教えてくれたドワーフの里に向かおうと思ってた。

 

 ただ、今はユズハもいるし……とりあえず準備をかねて通り道にある街を目指している。

 その途中小さな泉を見つけたので休憩中だ。

 

 シノさんとちーちゃんは別に目的の場所なんてないと、僕に合わせてくれるみたい。

 

 ユズハの件は「みんな少しずつ迂闊だったね」ってお互い謝っておしまい。すごくありがたかった。

 

「ん~~、いいね! むこうじゃさ! 蝿どもがいて入れないしさ! 魔物もうざくて、外でこんなにゆっくり入れるなんて思ってなかったなー!」

「覗かれんのが嫌だったならユウを誘っちゃダメでしょ……」

「男はこいつだけなんだし、先に躾けときたいじゃん!」

 

 はいはい罠だったのね。これ全年齢ゲームだから。裸なんてどうせ完全黒塗りだろうから。

 

「そんでユウは何見てんの?」

「…………この国の、情勢かな」

「は? なにそれ、意識高い系村民なの?」

「……まあ、意識高い事は悪い事じゃないから」

 

 なんて嫌な言い方するんだ……近いうちに絶対殺してやる……!

 

「なんかあったの? あ、こっち向かないでね」

 

 泉から上がった音がして、シノさんから声を掛けられる。初日に国力の仕組みについては軽く触れていたから、心配なんだろう。

 

 そうだな、団長戦で結構なガバをかまして少し冷静になれた。

 せっかく頭いい2人とは正式に仲間になれたんだし、遠慮なく頼らせてもらおう。

 

 ユズハの前でしていい話か分からない。

 でも国力が数日で爆発的に上がった以上、僕が手話を覚えて内緒話が出来るまで──なんてのんびりとはしていられない。ユズハの目的を推測する手掛かりにもなるしね。

 

「国力2500を超えたら魔族に調整されるって話はしたよね? まだまだ余裕はあるんだけど、上昇ペースがとんでもなくてさ」

「…………ふーん」

「なるほどね。原因は分かんないんだよね? ならこの国を出るのも選択肢だと思うけど」

『!? ――!』

 

 外国!? 行ってみたい! と裸ではしゃぐちーちゃん。服を着なさい。

 

「ガキはほんと慎みってもんがさ~」

「不穏な感じ出してるユズハはどう思ってるの?」

「……ユウがなんでそんなの見れるか知らんけど、多分この国からは出られないよ」

「どういうこと?」

「他国との境界だよ? 守ってるのは数だけは抜けてる『第一軍』で、もしかしたらボク並みの"気配察知"持ちだっているかもねー」

 

 そうなんだ。ユズハはやっぱり気配察知持ち、と。

 少なくとも気配察知と、恐らく『投擲』スキルのようなもの。くっそ、コイツ強過ぎないか……?

 

 だけどユズハさん。

 これまで色々ずっとごまかしてきたのに、急にポンポン情報くれるね。

 

「……でも魔族と戦うよりはよっぽどマシだしなぁ。目指してみるのもいいかもね」

「賛成。ちーちゃん隣国へ抜ける最も安全な道を──」

 

 シノさんも同じ考えなのかすぐに乗ってくれる。

 

「~~っ、だから無理だって。うちの団長が散々試したあとなんだからさあ!」

「……アレンさん、じゃないよね?」

「…………ゴリラの方だよ。なんか国から出ようとすると頭に『それは禁止だ』とか声が響くんだって。レアスキル持ちもそうらしいし、絶対ユウたちも無理だよ」

「……へー、それっていつの事?」

「数カ月前」

 

 …………未来技術。

 少し絞れてきたな。多分、NPCがストーリーを破綻させる行動が禁止されてるんだ。

 アレンさんは、大貴族の息子であるというグロスキーを処すること。

 絶大な権力を持ちながらあの性格だ、イベント持ちじゃないと不自然なくらいだから。

 

「それでも数人無理やり他国にぶん投げたら発狂して、廃人みたいになったって」

「……なにその意味分からない話」

「知らない聞いた話だし」

 

 シノさんが分からないのは当然だけど、話の内容は合ってると思う。

 この時代の人間が、とっさの作り話に未来技術を組み込めたなら天才過ぎるから。

 

 僕だってこんな情報だけで推理は出来そうもない。国力についてはまだ余裕があるし、様子見するしかないか……

 

 それより今はユズハのこの、突然の口の軽さだ。

 

 情報を流してでも僕たちを国外に出す気のないこの様子──付いてきた理由は素直に《インベントリ持ちである僕と精霊術師のシノさんという爆弾を連れて帰る事》か?

 

 ……監視、いや、僕らの自殺宣言まで聞いて警戒中とか──

 

「てかさ、ボク、アレンに生活地盤を整えるのが目的って聞いたからついてきたんだけど。今は新鮮さがあるからいいけどさー、歩いてばっかじゃん!」

 

 ……この性格なら「大手柄は確定したことだし、当分サボって楽しんでても許されそう」で、休日を満喫中なんてことも……厄介な性格過ぎる!

 

「何もしてないのに文句ばっか言って。無理についてこなくてもいいんだけど」

「こ、こいつが! 女神像出しっぱで歩くキチガイだからでしょうが!」

 

 旅に必須の気配察知スキルと武力も超一流。

 こんな自分が役に立てないはずがない! とユズハがわめいている足元。

 

『――! ~~♪』

 

 ちーちゃんが、くいくいと僕の服の裾を引っ張っていた。

 

「あれ、どうしたの?」

 

 ついていくと、そこにはギザギザの葉、少し刺激臭のする赤い草がある。

 

『!』

「ええー、こんな見た目で食べられるのー……?」

 

 そんな疑問にピースで返すちーちゃん。

 僕はその禍々しい草をスクリーンショットで撮って、ちーちゃんを抱っこする。そして落書き機能を渡すと夢中で食用を示す「にっこりマーク」を付け足した。

 

 最近ちーちゃんが作っている、『知識の精霊による素材ガイド』だ。

 シノさんが僕たちのお世話で忙しく、僕も調合で試したい事だらけ。……ユズハは時折り姿を消して。

 手持ち無沙汰になったちーちゃんが、自分にも何か出来ることはないかと聞いてきたので提案してみた。

 

 食事のレパートリーでも増えればと軽い思い付きだったけど、これがちーちゃんにぶっ刺さったらしい。休憩時間になると僕を大喜びで連れ回すようになった。

 

 ちーちゃんの知識量を舐めてた訳じゃないけど、数日でとんでもないお宝と化している……

 

「はー、こんなの食べられるんだ。でも調味料が少ない今、野草の類はねー……」

『~〜〜』

 

 横からシノさんがのぞき込んで二人で残念がっている。

 物資不足は確かに深刻だけど、今は見下していた精霊の活躍に歯軋りしている人がいるのが問題で。

 

「ユウは女神像しまっていいから! 狩りするよ狩り!」

「……ダメダメダメ。僕のステータス見たんでしょ? 魔物の不意打ち一発でやられちゃう耐久なんだって」

「私も」

『――!』

 

 僕らが死んだら死ぬほど面倒くさいよー? なんせ食べ物飲み物は全部インベントリの中、家事全般はほぼ2人頼り。

「……ぐ、ぐぅ」

 

 それは分かっているのかユズハは言葉を失っている。

 

「なーんでボクはこんなやつらに役立たず扱いされなきゃいけないんだよおお!」

 

 顔を赤くして、地団駄を踏むふざけた態度。

 

「まあまあ。ユズハがいてくれるおかげで、私らぐっすり眠れるんだよ?」

「──ぐっすり眠れてないじゃん! ユウ寝言めっちゃうるさいじゃん!」

「……いつもごめんなさい」

 

 それはまた別の話なんだよ。

 

 でもそう。こんな態度のクセに隙は一切見当たらないんだ。女神像の対象外『悪人』を恐れなくて済むのは本当にありがたい。

 それはどうにかユズハを闇討ちできないかと探っていた僕が一番よく知っている。

 

 だけどさー……今まで情報も滅多に落とさなかったし、国民全員に関係するはずの国力のこともどこか他人事。

 こんなに怪しい同行者、存在していいの?

 

 4人での旅は、思った以上に僕のストレスを溜めるものとなっていた。

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