これは良識欠けてる僕に与えていいスキルじゃない!   作:peko34

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33 初めての知識チート

 

「肉! おーにーくーが食べたいーーー!」

 

 夜の森。

 野営の準備が整いシノさんが辺りを照らす中、ヘビーローテーションの一角「ポム」を持って一人暇を持て余しているユズハが騒ぐ。

 

「シノもせっかく料理できるのにこんなんばっかじゃ腕が落ちるでしょ!?」

「……ユズハって今までそんなに贅沢な旅できてたの?」

 

 落ちていた魔物の死骸からアイテムの調合中の僕は気になっていた事を聞く。

 スライムの死骸なんかはレア度が低いからか結構きれいなまま放置されていて、女神像持ちの僕にはありがたい。

 

「はー? あのムシ共が料理なんかできると思う? 最っっ低な旅だったに決まってんじゃん」

「……なるほど」

 

 なら僕たちが、喉が渇いた、お腹減った、ボクの服にもポッケ付けてだのなんだの、色々叶えてるうちに、こんなモンスターを育ててしまったのか……

 

『─♪』

 

 ちーちゃんは素材本のために木の枝持って、地面で絵の勉強中。もう慣れたのか集中も乱していない。

 アレンさん合流前にあのお宝は発表出来ないのに、出来る事を頑張ってて偉い!

 

「シノさんは今明かりを照らしてくれて、僕らの服を作ってる最中なんだけど、まだ仕事を増やす気なの……」

 

 今日も光が目立たないように、道から外れて近くの森に入ったここで夜を明かす予定だ。

 

「いやユウも増やしてんじゃん! ボクのなんて可愛いもんじゃん!」

 

 僕は僕の世界で流行ってる服のイメージを聞かれたから……

 最近はもうシノさんからは未来人として扱われて、遠慮なく色々聞かれている。

 

「あーーーーもう無理! こんな服が存在してたって嘘でしょ!? どうやって作るのか想像もつかないんだけど!!」

 

 シノさんに渡したのはちーちゃんのスクショにフリルのついた、パステルカラーのワンピースの絵を描いたもの。当然作り方なんて僕は分からない。ミシンでも必要なのかな?

 

「それと糸と生地が全然足んない!」

「いやそれは……」

 

 消費ペースが早過ぎるんじゃ……

 僕のインベントリにはすでに、シノさんの作った服や下着がそれぞれ3日分は入っている。

 

 まあ……上達の為にはまだまだ素材は必要か。調合は馬鹿みたいに素材を使うから。

 

「ねえ、やっぱり町に着く前に魔物を狩ってもいいんじゃない? 素材は売れるし、調合にも使えるし。あくまで安全にさ」

「だよねー! 殺すまでならボクがやったげるからさー!」

「ユズハもこの辺歩くの初めてでしょ? どんな魔物がいるか分からないとなると、うーん」

 

 いったん女神像の範囲内に入ってしまった魔物には、魔を払う効力が出ないんだ。

 正直お肉は僕だって食べたいけど、命のリスクと比べると……

 

「あ、ユズハ物投げるの凄かったよね。それで、女神像の範囲外にいる魔物を仕留めるのはどう?」

「……は? ダルいから知能低い事言わないでくれる?」

「? ああいや、物を遠くまで投げるって、実は凄い技術がいるんだって」

 

 アレンさんを見て確信したけどこの時代、絶対力の流れとか深く考えてないから。

 お互いにとっていい提案だと思ったけど、ユズハは不満げに舌打ちなんかしている。

 

「ボクはさぁ、子供のころから神童と言われてきたんだけど。それを分かって講釈垂れてんの?」

「あは。あはははっ! 急に身の程知らずでどうしたの? 身体を動かすことで僕に勝てる訳ないじゃん!」

 

 料理も裁縫の知識もなく、これまで未来人であることのメリットを何一つ生かす事が出来なかったけど、これだけは話が別だ。

 

 まさかアレンさんとの戦いを見てたのに、僕に噛みつけるとは思わなかったよ。

 特技に加えてうちの高校、体内の力の流れをリアルタイム可視化する設備まで導入されてるんだよ?

 

「………………ふー、思わず殺しちゃうところだったよ。

 いいよ、まずその凄い技術ってやつ見せてみ? その上でボクが猿にもわかるようアドバイスしてあげるからさ」

 

 またまた殺せないくせに。

 アレンさんは健在で、潜入先の騎士団は一部壊滅。僕たちというお土産がなかったら、そっちも無事で済むわけないんだから。

 

 シノさんはこんな僕たちを見て、ため息をつきながら光を強めてくれる。また働かせちゃってごめんね。

 一つお礼を言って手ごろな石を拾う。

 

「肩があったまってないから今回はまあ、軽めにね」

 

 夜の森は風がなく、ほとんど音のない世界。

 

 僕は足を大きく広げ、標的にした十メートル先にある太い木の幹を見つめる。

 

「うわ、そんなダサい言い訳よく思い付くね!」

 

 この世界に来てから、みんなが気にするのはスキルやステータスばかり。便利だから仕方ないんだけどね。

 

 石の重心を探り、指のかかりが良いポイントを見つける。縫い目はないけどグリップは悪くない。

 

「──プ。なにその構え。キモキモキモだよ?」

 

 僕がとったのは両手と左足を高く上げる独特のフォーム、今はあまり見る事の少なくなってきた、『ワインドアップ』。

 意識するのはエネルギーの伝達効率。

 

 右足に溜めたパワーを、そのまま横移動のエネルギーに変えて──

 上げた左足で地面を強く踏みこむ。そこから伝わる強い反動を、全て腰の回転へ繋げる。

 下半身は先に走らせて、上半身はまだ我慢。

 

 背骨、肩、肘。究極まで引っ張った筋肉を、バチンと収縮させる。最後に飛び出すのは脱力させた右腕だ。

 イメージするのはしなりを持った鞭。

 

「――ッ!!」

 

 手が離れる瞬間、全てのエネルギーを指先の二点に集約する。叩きつけるように投げつける。

 

『パンッ!!』

 

 石が空気を切り裂く破裂音。

 重力を無視したレーザービーム。

 ズドン!!  という乾いた音と共に、狙った大木の幹を粉砕してめり込んだ。

 

「…………」

「…………」

 

 お、おお……ステータスってこっわ。自分で自分の威力に驚いた。

 

『――!?』

 

 おっと、まあまあちーちゃん落ち着いて! こんなのこの時代の人からしたらズルなんだから。

 

「………………っ」

 

 ふふふふふ。あ、ダメ。ユズハの悔しそうに唇を噛んでる姿と、ちーちゃんの褒め上手さに、ズルなのに気持ちよくなっちゃう。

 

「……ぐ……ぐぐぅ……」

「ね? こうやって全身の筋肉の連動を意識すると──」

「ま、まあ!? 確かに凄い音はしたけどさ、眠くってよく見えなかったから……ボクはもう寝るよ!!」

 

 一方的に言って、僕の用意したベッドのような寝床をひったくるように奪って──

 

「ユウは寝言うるさいからこっち来ないでね!!」

 

 ビシと指差してくる。

 

「あー……それは本当にごめん。明かりは大丈夫ー?」

「~~~っ! 寝るっつってるでしょ! バカなの!?」

 

 吐き捨ててユズハの姿が見えなくなる。

 ……あれ。あの様子なら、今回は結構離れてくれたんじゃないか?

 

「いや……いいの? あの子を強くするような事教えちゃって」

「あのプライドの高さなら、僕らに使ってくることはないんじゃない。素材不足の方も深刻だし」

「まあ……そうかもね」

 

 作るのに失敗したフリルを丁寧にバラして再利用を試みているシノさんは納得すると、ちーちゃんを見る。

 

『――!』

 

 その目線にちーちゃんも応えて手を動かして。

 

「どうしたの?」

「ユズハ、ちゃんと離れてくれたって」

「………ええー」

 

 なに……どういう原理?

 

「ちーちゃんが光の精霊に聞いてくれたの。モールス信号だっけ? 意思を伝えるのが楽しいみたいで、すっごい色々教えてくれるんだって」

「………………そう。あ、ありがとね!」

『――/// ――――!』

「私は覚えられる気しないけど。あー、あと不審な行動もなしだって」

「…………」

 

 ユズハを上から見てる場合じゃなかった。

 光の精霊にお礼のMPを渡している二人を見て少し焦る。

 

 そうだよ。あの戦いでレベルアップしたのが僕だけなわけない。

 とにかく、今はこういうことも含めてさ。

 

「ようやくちゃんと話せそうだね。ここで色々共有しておこうか」

 

 ユズハがついてきてもう何日目か、僕たちはようやくまともな情報共有の機会を得ることが出来た。

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