【悲報】自己犠牲で死んだはずの悪徳領主、何とか生還したものの偽物扱いされてしまう 作:性癖は脳焼き曇らせ
真っ黒な海をぼんやりと漂っている。
そんな意識の中で、自分が少しずつ覚醒していくのが分かった。
やがて瞼の裏に白い光が透けて見え、水面から顔を出すように意識がぐんと浮上する。
そして俺は、ようやく目を覚ました。
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目を覚ますと、そこは冒険者ギルドと連携している病院の個室だった。
ちょうどナースの人が点滴を付け替えてくれている最中で、意識が戻った俺に驚きながらも「先生を呼んでくる」と飛び出して行ってしまう。
(生きてる………?)
絶対に死んだと思ったのに、まさか生還するなんて。
自分の身体がどうなっているのか気になり、ゆっくりと上体を起こしてみる。
どうやら意識がない間にポーションを使われていたらしく、両腕はきちんと治癒されていた。
しかし怪我をしてポーションを摂取するまで、おそらく時間が空いたのだろう。指先から肘にかけて火傷跡(?)のようなものがあり、黒く染まっていた。
(壊死している感じはないから大丈夫と思うけど………あれかな? 魔力を含む
手を開いたり握ったりしてみるが、引き攣る感覚もなく動かせる。
跡は残ってしまったけれど、まあ良しとしよう。
(というか何で個室なんだろう? 個室って高いよね? 大部屋って空いてなかったのかな?)
そんな取り留めのないことを考えると、次から次へと疑問が湧いてきた。
あれからどのくらいの月日が経ったのか。
王都の現状はどうなっているのか。
どのくらいの死傷者が出てしまったのか。
マリアベルは迫害されていないか。
そして、アレン君は生きているのか。
(何が何でもアレン君を生かさないとって《
(なーにが「アレン君、ごめんなさい」だよ! でも流石にあそこまでのことを言ったら、アレン君も俺がシグレット・ワイヤーだって気付くよね? 気付くよな………?)
正直それはとても喜ばしいし、俺からしたらようやく自分の正体を分かってもらえて嬉しいのだが………。
今更俺がシグレット・ワイヤーだと分かったとして、アレン君はどう思うだろうか。
期待半分、もし「あ、生きてたんすね」って興味なさげに言われてしまったら泣いてしまうかもしれない。
(でもリュシールの街で再会した時、領主時代の俺のことを結構良い感じに思ってくれていたみたいだし………! いや、そんなことより今はアレン君の安否の方が大事か)
するとその時、部屋の扉がバンッと勢いよく開かれた。
現れたのはレッドドラゴンの王都襲撃で一緒になったドクターで、目を覚ました俺にわずかに笑みを浮かべる。
「ようやく目を覚ましたか。積もる話もあるが、まずは
そして筋骨隆々のドクターは炭化したかのように真っ黒に染まる俺の両腕を一瞥した。
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検査の結果、指先から黒く変色している現象は魔法の使い過ぎによる『魔力
「……………魔力傷痕?」
「ああ、魔法の行使を直接手から行うことによって、こういった跡ができるんだ。これが悪化すると手が動かなくなるから、今後は杖やメイスを通して魔法を使いなさい」
どうやら杖を使わない原初の魔術師達がよく患っていたものらしい。「だから今の魔術師って杖を使っているんだ」と俺は一つ賢くなった。
そしてドクターの話によると、あの後アレン君は無事レッドドラゴンを討伐してくれたとのこと。
あれから半月は経っているみたいで、レッドドラゴンの被害に比較的逢っていない王都北部を拠点にしながら復興に勤しんでいるらしい。
アレン君が生き残ってくれたことに俺は胸を撫で下ろした。
「あの、それからマリアベルは………」
「マリアベル? ああ、あの
「冒険者?」
「何でも復興支援で瓦礫の撤去や何かを手伝っているみたいで、王都の奴らからは随分と受け入れられているな」
それを聞いてほっと安堵する。
(……………というか、冒険者ギルドの
しかもマリアベルはレッドドラゴン襲撃の際に、人一人の命を救ったのだ。
そういった倫理観も評価され、ギルドの冒険者として勧誘されたのかもしれない。
(お、俺も一応ギルドの冒険者だしね! うん!)
華々しい冒険者デビューを飾るマリアベルと比べ、冒険者ではなく現状職員(バイト)として働いている我が身を思うと切なくなる。
そしてそこで、俺はドクターに気になっていることを尋ねた。
「ドクター、レッドドラゴンの被害は………亡くなった方は…………」
「少なくはない。二週間後追悼式は行われる。といってもまだ復興途中だから大したものではないがな。お前も参加するか?」
「はい」
領主だった頃、魔物被害の復興は正直言って辛いことの方が多かった。
亡くなった者。
生死不明のまま行方が分からなくなった者。
身寄りのない子供や高齢者が増えて、犯罪に巻き込まれて無惨に死んでいく者もいた。
(何か、俺にもできることはないだろうか)
「ドクター、検査の結果俺の身体は何の問題もないことが分かったでしょう。安静して一日休むとして、明日から退院しても問題ないと…………」
「駄目だ駄目だ! ポーションで回復しているとはいえ、ずっと気を失っていたんだぞ。最低でも一週間はここで安静にしろ!」
「は、はい………」
ドクターに叱られ、大人しく頷く。
しかし彼は俺を見つめながら「だが、その様子なら面会は許可できるな」と満足そうに頷いた。
そしてしばらくして、ドクターが病室を出ていった直後、入れ替わるようにして扉が開かれる。
ナースの人だろうかと思ったが、違う。
そこにいたのは軽装姿のアレン君で、そんな彼の来訪に俺は思わず目を見開く。
「アレン君…………」
しかし次の瞬間、彼の言い放った一言に頭から冷水をかけられてしまったような心地となった。
「───