【悲報】自己犠牲で死んだはずの悪徳領主、何とか生還したものの偽物扱いされてしまう   作:ふくふくまる

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第2章
第20話 ココル村の治療


 

 

 

 エルドロス王国エスカリ諸島の聖教会本部───通称『神殿』へ行くには、王都から北西に向けて真っ直ぐ進まなければならない。

 

 そのためには広大なヴェラス領の港町まで行き、そこから船でエスカリ諸島へ向かうのだ。

 しかし1日2日そこらで辿り着くはずもなく、王都を出た俺達はヴェラス領の村々を経由していかなければならない。

 

 リュシールの街から王都まで向かったことはあるが、それ以上の長距離となる旅は初めてで。

 

 その道中、俺は『冒険』というものがどれほど過酷で───自分のお荷物っぷりを痛感するのだった。

 

 

 

 

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 今更ではあるが、この世界には『魔物』が存在する。

 

 妖精や精霊といった魔法生物が汚染された魔素に侵され狂暴化し、長い年月をかけて交配を繰り返していった末の生物を『魔物』と呼ぶのだ。

 

 攻撃的で理性の無い魔物達からの被害は深刻で、倒したとしても死骸から湧き出る瘴気によって土地は汚れ、疫病が発生する。

 

 そうして滅んでいく村や町を、領主時代に俺はいくつも見てきた。

 

「───《治癒(ヒール)》」

 

 エルドロス王国ヴェラス領。

 ココル村という小さな農村にて。

 

 その村の簡素な掘っ立て小屋では、身体の至る所に墨をこぼしたかのような黒い痣のある病人達が、布を敷いただけの地面に何人も倒れ伏していた。

 

 その中で最も黒い痣に覆われた男性に、俺はメイスをかざして《治癒(ヒール)》を唱える。

 すると彼の肌は見る見る内に白くなり、やがてそっと瞼を開けた。

 

「あ、あれ、俺は………」

「『瘴気汚染』に掛かっていたんですよ。《治癒(ヒール)》によって治せたと思いますが、どこか気になるところはありませんか?」

「い、いえ、特には………」

「良かった。でも長いこと瘴気汚染に掛かっていたみたいなので安静にしていてくださいね。一次治療を終えましたので、今後は役場の広間にて経過観察しましょう」

 

 呆然とする男性にそう説明した後、俺は「よいしょ」と立ち上がって掘っ立て小屋の扉を開ける。

 

 すると外には若い女性が待っていて、彼女は声をはり上げた。

 

「お、お父さん………! 目を覚ましたのね……!」

「アンナ! これは一体………」

 

 治癒した直後で大変申し訳ないが、この掘っ立て小屋には魔物の死骸によって発生した疫病───『瘴気汚染』に掛かった患者がまだいるのだ。

 

 《治癒(ヒール)》で治療した男性をいつまでも同じ空間にいさせるわけにはいかず、俺は彼の身体を支え、そのまま娘さんのもとへ連れて行ってやった。

 

 

 ───現在、エスカリ諸島に向かうべく、アレン君とマリアベル、そして俺は村々を転々としながら移動していた。

 その最中に立ち寄ったココル村では魔物の死骸から起こる疫病が発生しており、村に立ち寄る代わりに病人の治療と森で大量発生している魔物の討伐を請け負っているわけだ。

 

 アレン君とマリアベルはココル村の裏森で魔物退治に、そして戦闘能力の無い俺はせっせと病人を治療しているのである。

 

「白魔術師様、本当にありがとうございます………! 治療する手立てもなく、小屋で死を待つしかなかった父のことを治してくださり、何とお礼をすれば………!」

「いえ、本当にお気になさらないでください。俺はともかく裏の森で魔物退治しているアレンさんやマリアベルの方が大変でしょうし、何泊か泊めていただけるだけでもこちらとしては大変有難いので………」

 

 感極まった様子でお礼を言ってくれる娘さんに俺は慌てて首を振る。

 

 正直言って、屋根のある場所で寝泊まりし、水や食料を分け与えてもらうことの方が俺としては有難かったりするのだ。

 

 どこからともなく現れては襲い掛かってくる魔物。

 

 慣れない長旅の疲労に、野宿の際の固い地面。

 

 いくら今の姿が若いからといって、できれば魔物がいきなり襲ってこない外よりも村の建物にいさせてもらえる方がはるかに助かる。

 

(おまけに今回の旅での俺のお荷物具合が、留まるところを知らないんだよな………)

 

 勇者アレン君は勿論のこと。竜人族の血が流れているマリアベルの身体能力の高さと体力お化けっぷりから、二人はさくさく進んでいく。

 

 しかしそんな彼らのペースに身体を鍛えたこともない俺がついていけるはずもなく、ひいひい喘ぎながら後を追っていた。

 

 ───シグ、お前の体力を気にせず進んでいって悪かった。急ぎの旅でもないから小まめに休憩しながら進もう。

 

 ───大丈夫よ。シグにはシグのペースがあるんだから。

 

 なんて優しいんだろう。

 アレン君とマリアベルの優しさに申し訳なさが募る。

 

 そして「冒険とやらがこんなにも大変なものだったなんて、俺って本当に舐めていたよね」と反省した。

 領主時代このあるごとにアレン君に「俺もいつか冒険したいなあ」と呑気に言っていたが、きっと内心「このド素人が………」と思っていたに違いない。

 

(こんな大変な冒険で、アレン君は率先して魔物を対峙してくれる。マリアベルは《エナジードレイン》で魔物から魔力を吸って弱体化し、《エナジーチャージ》で回復役の俺に魔力を補充させてくれる)

 

 しかもマリアベルは冒険者ギルドの魔術師に初級の火魔法《火球(ファイアボール)》を教わったらしく、戦闘時にはアレン君のサポートをしていた。

 

 魔力切れの心配も無いし、怪我をしたとしても人間ポーションである俺がいるため問題ない。

 そういったこともあり、マリアベルはめきめきと力を付け(ステータスが見えないため分からないが)きっとレベルもガンガン上がっていることだろう。

 

(しかもこの間なんて「できる気がする」とか言って火属性の魔術師がレベル15で覚える《火弾(ファイアバレット)》も出来てたしなあ………)

 

 順調にレベル上げをしていくマリアベルの一方で、俺のレベリングの亀のような遅さに不安になる。

 

(王都で患者の治療をしていた時にレベルが上がったみたいで《浄化(クリア)》は使えるようになったんだよね。

 《浄化(クリア)》の習得レベルは5で、その次に覚えるのが《身体強化(ブースト)》なんだよな。《身体強化(ブースト)》は確かレベル8で覚えるから、俺のレベルはまだ5~7をうろうろしているのか)

 

 基本的に序盤はレベルが上がりやすいはずなのだ。

 俺が『魔冠のレガリア』のゲームをやっていた時は、さくさくレベリングができて、レベル20くらいまではあっという間だったと思う。

 

 しかし中々レベルが上がらない現状に「俺ってやっぱり筋が悪いのかな」と落ち込んでしまった。

 

(ぶっちゃけ《治癒(ヒール)》なんてポーションを持っていれば事足りるし、《結界(シールド)》に至っては防御壁としては何故か脆くて、戦闘中の役に立てるとは思えないんだよなあ)

 

 まあ、《浄化(クリア)》は色々使い勝手が良くて重宝されていると思うけど………。

 レベル8で覚える《身体強化(ブースト)》ができるようになるまで、戦闘でのサポートは期待できないだろう。

 

(そのためにも頑張ってレベリングしないとな)

 

 彼らの旅に直接的に貢献することはできないかもしれないけれど、結局は今の俺にできることをやるしかない。

 

 そして俺は村の役場へ去っていく男性とその娘さんを見送った後、掘っ立て小屋の伏す瘴気汚染患者に再度向き合った。

 

 

 

――――

 

 

【ステータス】

 

 

■ 名称 :シグレット・ワイヤー

■ 種族 :ヒューマン

■ 等級 :Lv.7

■ HP  :24

■ MP  :15

 

■ 魔力属性 :聖

■ 習得技能(スキル) :《逆再生(リバース)》(《治癒(ヒール)》)

       《遮断(ベイル)》(《結界(シールド)》)

       《除去(リムーブ)》(《浄化(クリア)》)

■ 隠匿技能(スキル):邪なる者よ、聖域に近付くことなかれ

 

 

 

 

 

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