【悲報】自己犠牲で死んだはずの悪徳領主、何とか生還したものの偽物扱いされてしまう   作:ふくふくまる

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第三者視点が入ります。


第21話 気分はピクニック

 

 

 

 シグがココル村で治療をしている最中、アレンとマリアベルは裏森に棲み付いた魔猪(ブラッドボア)の討伐に繰り出していた。

 

 元々森に棲んでいた角兎(ホーンラビット)がこの外来種に大量虐殺され、その死骸から出た瘴気によって疫病が発生されたからである。

 

「───《火弾(ファイアバレット)》!」

 

 マリアベルの放った火の砲弾がブラッドボアに直撃する。

 そしてブラッドボアがよろめいた隙に、アレンは剣山のような毛で覆われた魔猪の身体を一閃した。

 

 

 

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 アレンにとって今回の旅は───ピクニックのようなものであった。

 

 冒険者の旅とは、過酷なものである。

 

 魔物を対峙するだけでなく、道中負傷した時のための大量のポーションの運搬は勿論のこと。

 水や食料が尽きればその都度近くの村で補給しなければならないし、余所者に警戒する閉鎖的な村人達への交渉と対応も行わなければならない。

 

 アレンが勇者一行として旅に出ていた頃は、邪神討伐という使命もあって比較的丁重にもてなされた。

 何より聖女ユーフィリアがいたため、村に病人や怪我人がいる際には非常に歓迎されたものである。

 

 しかし邪神を討伐後、アレンは冒険者としてギルドのクエストを受けることになり、その際の───回復役も魔術師もいない旅がどれほど過酷なものか、身をもって知ったのだ。

 

「アレンさん、どうしたの?」

 

 するとその時、隣に佇むマリアベルが不思議そうに尋ねてくる。

 

 現在、討伐したブラッドボアを川辺の木に真っ直ぐと吊るし、解体及び素材の採取をしているところであった。

 

 魔物の肉は食べれないものの、毛皮や牙は高く売れる。

 そして素材の採取が終わったら粉末状にした魔石と石灰を混ぜた粉を撒き埋めればければならない。

 

 シグがこの場にいれば最近彼の覚えた《浄化(クリア)》によって事足りるのだが、今ここにいないためアレン達は慣れた様子で粉を撒く。

 そうすることによって土壌を汚染することなく土に還るわけだ。

 

「いや、何でもない。それよりも魔力は切れそうになっていないか? 戦闘続きだっただろう」

「ううん、平気! このブラッドボアからたくさん魔力を吸い取ったし、むしろ満タンなくらいだよ」

 

 そんなマリアベルの言葉にアレンはうすく微笑む。

 最初の頃とは違い、マリアベルもアレンに警戒しなくなっていた。

 シグの後ろでどこか様子を伺ってた彼女も、今ではアレンに対して砕けた口調で笑いかけてくれる。

 

 固有スキル《エナジードレイン》《エナジーチャージ》を持つ竜人族の娘、マリアベル。

 そして今は不在の───ココル村で病人の治療に勤しんでいるだろう白魔術師シグ。

 

 この二人がパーティーにいるだけで、今回の旅は随分と楽なものになっていた。

 

 まず回復役の白魔術師シグがいるのが良い。

 冒険者達を悩ませてきた大量のポーションの運搬に頭を悩ます必要がなくなったからだ。

 その上マリアベルの《エナジードレイン》《エナジーチャージ》によって魔術師達は魔力切れを起こす心配も無い。

 

 しかもシグの《浄化(クリア)》によって魔物の死体処理は簡略化されたし、アレン達自身も常に身綺麗な状態を保つことができる。

 

(何だか余生みたいだな…………)

 

 邪神を討伐し、いざ自分の将来を考えた時にアレンはいずれ若い冒険者をサポートする役職に就ければ良いなと考えていた。

 

 または故郷の村でのんびり暮らしながらも、たまに魔物討伐したりなんかして感謝されつつ、村の若者を気まぐれに鍛えるのも面白いだろうなあと。

 

 そしてアレンはふと今回の旅を思い返した。

 

 ポーション不足にも困らない。

 

 魔術師への魔力切れを心配しなくても良い。

 

 食料や水の補給をするために立ち寄る村での交渉も、人当たりの良い白魔術師がいるだけでスムーズに行われる。

 

 そして大体の魔物を前にアレンが遅れを取るわけなく───本来あるべき過酷な冒険者の旅から、美味しいところだけを摘まんで取ったピクニック(・・・・・)のようなものであった。

 

(ちょっと楽しくなってきたな)

 

 というよりも、楽しかった。

 

 シグやマリアベルは素直で物分かりが良く、若竹のようにめきめきと成長していくのだ。

 若者達の成長もアレンの楽しみの一つになっていた。

 

(このくらいの旅だったら、シグレットさんも着いてこれただろうな………)

 

「…………よし。マリアベル、素材の採取も終わったことだしココル村に帰るぞ」

「ええ、シグもきっと私達のことを心配しているわ」

 

 そうしてアレンとマリアベルのコンビはいそいそとココル村へ戻って行った。

 

 

 

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 アレン君とマリアベルがココル村に帰還する頃には、すでに瘴気汚染患者の治療は終わっていた。

 

 掘っ立て小屋に《浄化(クリア)》をかけ、村の役場(簡易病棟)にいる患者達の様子を診に行けば、苦しみ呻くことなく健やかに寝息を立てておりほっと安堵する。

 

 そして俺達はささやかな礼ということで、ココル村の村長の家で歓待のもてなしを受けていた。

 

 ココル村の一部の土壌や川までは瘴気汚染されていなかったらしく、そこで獲れたという山菜や川魚を有難く頂く。

 もしかして貴重な食料を分け与えてくれているのかなと心配になったが、役場を簡易病棟にしたり、患者の治療で駆け回っていた時に見た村人達の様子から食糧不足には喘いでいないことは確認済みだ。

 

 そんな最中、真っ白な髭を蓄えたココル村の村長が俺達の今後の旅路について口を出す。

 

「───エスカリ諸島の神殿へ向かうのですか?」

「? ああ」

 

 それにアレン君が首を傾げると、村長は何か思うところがあるのかわずかに言い淀む。

 そしてしばらくして、静かに語り出した。

 

「…………今回の瘴気汚染で神殿に白魔術師の派遣を嘆願しましたが………いつもならすぐに来てくれるというのに、一向に助けなぞ来なかったのです」

「神殿で何かあったのか?」

「それは分かねます。ただ、もしかすると神殿で何かトラブルが起こっているかもしれません」

 

 隣にいるマリアベルが不思議そうに首を傾げる。

 厳しい表情で語る村長に、ユーフィリアさんの顔が脳裏を過る。

 

「それから最近『巡礼団』という賊も出てきておるそうです」

「巡礼団?」

 

 アレン君がそう聞き返すと、村長は続けた。 

 

「ええ。詳しくは知りませんが、『巡礼団』と名乗る賊が高い信奉者を集め、お貴族様のお屋敷を襲っていると聞きました。何でもその賊長は高い魔力を持った魔術師だとか。どうか巡礼団と名乗る者にはお気を付けください」

 

(まだゲーム二作目が始まる前なのに治安が悪すぎるな………)

 

 そんなことをぼんやりと思いながら、俺はこれから向かう神殿への道が平穏なものであることを願った。

 

 

 

 

 

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