【悲報】自己犠牲で死んだはずの悪徳領主、何とか生還したものの偽物扱いされてしまう   作:性癖は脳焼き曇らせ

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第23話 聖女ユーフィリアの再会

 

 

 

 『強欲の魔女』ドローレス。

 ウェーブのかかった美しい黒髪に褐色の肌を持つ肉欲的な美女で、《増殖(プロフェリア)》という固有スキルにより無数の使い魔を生み出す災厄の魔女だ。

 

 しかし彼女の生物学的性別は女性だったはず。

 先程知り合ったドレイクさんは確かに男性で、咽仏もあり女性には見えなかった………と思う。

 

(ドローレスって名前自体は女性によくある名前だし、もしかしてドレイクさんの渾名か何かなのかな)

 

 そう不思議に思いながらも、俺はアレン君達のもとへ踵を返した。

 

 

 

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 エスカリ諸島の中央に浮かぶ島には、白亜の神殿が聳え建っている。

 神殿の壁や柱には磨き上げられた白大理石が使われており、正面へ続く石段は幅広く、その先には何本もの円柱が並ぶ大広間があった。

 屋根の上には高い尖塔がそびえ、先端には神紋を象った銀色の飾りが取り付けられている。

 

 また神殿の周囲には決して見えないものの、魔物を通さない結界が張られているらしく、神殿の敷地に入るとうにょんと少しだけ耳鳴りがした。

 

 そして現在、俺の目の前には聖女ユーフィリアさんがにこやかな表情で立っている。

 

「───ようこそ神殿へおいでくださいました。本日はどういったご用件で?」

「久しぶりだな、ユーフィリア。神殿での鑑定を依頼しに来た」

「ああ、そうですか。鑑定結果を出すには丸一日かかりますので部屋を用意させましょう。…………こちらは?」

「シグとマリアベルだ」

 

 アレン君があっけらかんと言い放つが(主に俺に対しての)ユーフィリアさんの視線がどことなく冷たい。

 

 ア、アレン君?

 君、もしかして忘れていないかい?

 俺がリュシールの街で君らと再会した時にシグレット・ワイヤー(俺)を散々こき下ろしてしまったがために勇者一行を怒らせたことを。

 

 アレン君にのみきちんと謝罪できたため彼の中では終わったことになっているかもしれない。

 しかし俺はまだ他の三名には何の謝罪もしていないのだ。

 

 そんな奴が素知らぬ顔でいけしゃあしゃあと現れれば、流石のユーフィリアさんも「説明しろよ」となるであろう。

 

「初めまして、マリアベルといいます。よろしくお願いします」

「ふふ、こちらこそよろしくお願いしますね。…………それで、こちらは………」

 

 丁寧に挨拶するマリアベルと笑みを交わした後、すんと表情で俺を一瞥する。

 

「シ、シグと申します。先日はユーフィリアさん………じゃなくてユーフィリア様に対してひどく無礼な態度を取ってしまい、申し訳ありませんでした」

「あら、私に謝罪することなんて何もありませんよ。ねえ、アレン?」

 

 一見優し気に見えるものの「お前からの謝罪なんて絶対に受け取らねえよ」という強い意志を感じる。

 

 それをアレン君も感じ取ったのか、ごほんと咳ばらいをした。

 

「ユーフィリア、確かにコイツのしたことは到底許せないと思うが悪い奴じゃないんだ」

 

 どこか困ったように話すアレン君に何だか申し訳なさを感じる。

 同時にユーフィリアさんも傷付いたような顔をしているのに気付き、俺はたまらなくなって口を開いた。

 

「あ、あの、ユーフィリア様。俺は決して許してほしいわけではありません。ですが悪いことをした手前、謝罪しないのも筋が通らないので謝らせていただきました」

「……………何度も言いますが、貴方からの謝罪は必要ないのですよ」

 

 どうあっても謝罪を受け取ろうとしないユーフィリアさんについ口を閉じてしまう。

 そして何か言おうとするアレン君に対し、慌てて首を横に振った。

 

 もう、仕方がないのだ。

 許すか許さないかはユーフィリアさんが決めることだし、彼女の気持ちを追い立てるような真似は絶対にしてはいけない。

 

 そしてしばらく息を整え、俺は改めてユーフィリアさんに告げた。

 

「ユーフィリア様、先日の非礼、誠に申し訳ありませんでした。今回はアレンさんとマリアベルと共に神殿での鑑定を受けさせて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」

「……………ええ、もちろん。神殿の門戸は誰にでも開かれておりますから」

 

 貼り付けたような笑みを浮かべてそう言ってくれるユーフィリアさんに「ありがとうございます」と頭を下げる。

 

 そして「それではこちらへ」と神殿の中を案内しようとする彼女を背に、俺はこっそりとマリアベルに声をかけた。

 

「ごめんね。変な空気にして」

「別に良いけど………あの人、何なの?」

 

 眉を潜めて怪訝そうにするマリアベルに苦笑する。

 

「この間ユーフィリア様に俺がすごく最低なことをしたんだ。だから彼女は何も悪くないし、また落ち着いたらマリアベルに事情を話すね」

 

 すぐに説明しても良いのだが、神殿の鑑定結果によって俺がシグレット・ワイヤーであることは露呈されるのだ。

 そのことを思うとマリアベルに今「ユーフィリア様にシグレット・ワイヤーだと名乗っちゃって怒らせたんだ」と言っても話がややかしくなるだけだろう。

 

 そう返せば、彼女は不思議そうに首を傾げた。

 

(………………それにしても、ユーフィリアさんが元気そうで良かった)

 

 ココル村の村長が神殿で何かトラブルが起きているかもしれないと言っていたのだ。

 神殿の様子を見るに10年前と変わりなく信徒達が礼拝に訪れ、聖職者達が穏やかな表情で出歩いている。

 殺伐とした様子もなく、何かトラブルに見舞われているわけでもなさそうだ。

 

 けれど………

 

(どうしてこんなにも穏やかなんだろう)

 

 王都でのレッドドラゴン襲撃、そして村で疫病が発生したにも関わらず、その変わりなさ過ぎる光景に違和感を抱いた。

 

 

 

 

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