【悲報】自己犠牲で死んだはずの悪徳領主、何とか生還したものの偽物扱いされてしまう   作:ふくふくまる

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【注意】
終盤で、建物が爆発し崩落していく描写がございます。
先の震災によりもし読むのが難しいと感じられる方がいらっしゃいましたら、メールか感想欄にご連絡いただければ、第26話の簡単なあらすじを活動報告かどこかで記載いたします。遠慮なく仰っていただければ幸いです。


第26話 崩落する神殿

 

 

 

 強欲の魔女ドローレスの使い魔達が神殿を蹂躙する。

 聖職者や信徒は逃げ惑い、悲鳴を上げ───使い魔達の鎌のような両腕で切り刻まれ、死に絶える。

 

 無数の使い魔が人間達に群がり、駆逐していく。

 

 その光景に俺はふと定期船で出会ったドレイクという男を思い出す。

 連れの子供から『ドローレス』と呼ばれたあの男が、目の前で行われる惨劇と無関係なはずがない。

 

 そして、そんな中で俺とマリアベルは《結界(シールド)》と《火弾(ファイアバレット)》を繰り出しながら逃げ遅れた人達を連れて、港へ走っていた。

 

 

 

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 強欲の魔女ドローレスの使い魔は泥で作られた泥人形(ゴーレム)だ。

 泥人形に簡単な指示が組み込まれた魔法陣を描き、術者の命令通りに動き出す。

 

 これだけならまだしも、ドローレスは自身の固有スキル《増殖(プロフェリア)》によって無数に増やしていくのだ。

 数え切らない程増殖された「人間を殺す」とプログラムされた使い魔達は軍勢となって襲い掛かる。

 

 しかしゲームと同じく、一体一体弱いのも事実であった。

 

「───《火弾(ファイアバレット)》!!」

 

 マリアベルによって放たれた無数の火の弾丸が使い魔達を燃え尽くしていく。

 

 マリアベルの後ろには、神殿内で逃げ遅れた老齢のシスターと幼い見習いシスター達が続いていた。

 俺はその更に後方から、彼女らの両側へ《結界(シールド)》を展開しつつ全員を護るように走る。

 

(《結界(シールド)》って追尾機能があるんだ………)

 

 そんなことを考えながらひび割れている《結界(シールド)》に再び《結界(シールド)》を重ね掛けする。

 

 するとマリアベルと俺の間にいる老齢のシスターが口を開いた。

 

「魔術師様方、本当に感謝いたします………! ですが私めは老いている故足も満足に動きません。私を置いて、この子達だけでも………!」

「大丈夫ですよ。絶対に置いてはいきませんから」

 

 マリアベルと俺が使い魔達と交戦するものの、キリがないと判断して逃げていた最中、彼女らを見つけたのだ。

 

 神殿の一室で老齢のシスターが6人の小さな見習いシスター達を守るように抱えて震えているのを発見し、今の陣形となって逃げいるわけである。

 

(本当は《切り札(ラストコード)》が使えたら良かったんだけど………)

 

 試しに使ってみたものの、まだレベルやら何やら足りないようで、それはまたしても不発に終わってしまった。

 

 すると戦闘を走るマリアベルが俺に向かって声を上げる。

 

「シグ! 港へ向かっているけど大丈夫なの!?」

「神殿の港には避難用の船が何隻か備え付けられてる! 多分皆港へ逃げていると思うし、神殿にいる冒険者や魔法の使える聖職者の人達はそこを防波堤として守っているんじゃないかな!」

 

 神殿が何らかの攻撃を受けた際の避難手順として定められているのが、この方法だった。

 

 10年前の視察の際に聞いた話であるため、違った手順に更新されているかもしれないが、今も変わらないのであれば皆港に集まっているだろう。

 

 するとその時、右側面に張っていた結界が突如現れた使い魔の鎌によって粉々に破壊された。

 

 見習いシスター達の悲鳴が上がり、使い魔が鋭い鎌でできた両腕を振り下ろそうとする。

 それに俺は慌てて《結界(シールド)》を唱えた。

 

(間に合え………!)

 

「《結界(シールド)》!」

 

 しかし咄嗟のことでうまく座標が定まらず、使い魔の上に結界を展開してしまう。

 

 通常《結界(シールド)》は防御魔法であるため生物の動線上に展開することができない。

 

 けれど次の瞬間、展開された結界はそのまま使い魔の身体を貫通し───切断してしまった。

 

(え?)

 

「あれ、何で………」

 

 切断された使い魔は泥に戻って形を崩す。

 まるでギロチンのように振り下ろされた結界に、思わず足を止めてしまった。

 

 ゲームの時は《結界(シールド)》の座標を生物の上に設定するとエラーが出てくるのだ。

 なのにそのまま展開され、尚且つ鋭い刃のように使い魔を切断させてしまったことに戸惑う。

 

「シグ! 早く行くわよ!」

「あ、うん………」

 

 マリアベルの言葉にハッと我に返り、駆け出す。

 

 一体、どういうことなんだろう。

 

 俺が知らなかっただけで《結界(シールド)》という魔法にはこういった力もあるのだろうか。

 そんなことを考えながら俺達は港へ向かって走って行った。

 

 

 

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 港へ辿り着くと、大勢の避難者で溢れかえっていた。

 何隻かの船に人々が詰めかけており、怒号や悲鳴が至る所で上がっている。

 

 しかしそんな彼らを守るように魔法の使える聖職者やたまたま神殿に来ていた冒険者が使い魔達を倒していた。

 

 そしてその中には、アレン君もいた。

 アレン君が一閃すると複数の使い魔がまとめて斬り伏せられ、泥へと戻る。

 

「アレンさん!」

「! 良かった。無事だったんだな………!」

 

 アレン君のもとへ駆け寄れば、彼はほっと安堵したように表情を緩めた。

 

「アレンさん、今状況はどうなっているんですか?」

「見た通りここを拠点として、神殿の者達を逃がしている。もうすでに港から出た船もあるな」

「怪我をした人は………」

「幸い聖職者の中には白魔法の使える奴もいて、そいつらが対応してくれている」

 

 その言葉に胸を撫で下ろす。

 

 そして逃げ遅れていた老齢のシスターと見習いシスターを船へ誘導しようとしたその瞬間、神殿の一部が凄まじい音を立てて爆発した。

 

「ッ!」

 

 おそらくどこかで蝋燭の火が引火したのだろう。

 神殿の上層から轟々と炎が噴き上がり、黒煙が空へ立ち昇る。

 その火勢を起点に柱や外壁は次々と崩れ始めた。

 神殿が、崩壊していく。

 

 そこで俺はあることを思い出した。

 

「アレンさん、ユーフィリアさんは………?」

 

 その言葉にアレン君は首を横に振る。

 まだ、神殿の中にいるのだ。

 

 そしてその時、ふと俺はデジャヴを感じた。

 聖女ユーフィリアはいかにして『傲慢の魔女』となるか。

 

 隣国から襲い掛かる異教徒の軍勢。

 

 無残に殺される聖職者。

 

 崩壊していく神殿。

 

 破られた結界。

 

 今、この状況と全く同じなんじゃないだろうか。

 

「……………シグ?」

 

 耳鳴りがする。

 

 アレン君の声が、やけに遠くから聞こえるようだった。

 

 

 

 

 

 

 

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