【悲報】自己犠牲で死んだはずの悪徳領主、何とか生還したものの偽物扱いされてしまう 作:ふくふくまる
ユーフィリアさんにぎゅっと抱きしめられている。
しかし中身はおじさんであるため何だか罪悪感が湧き出てしまい、俺はそろそろとユーフィリアさんの腕を剥がした。
さりげなく一定の距離を保ち、不自然に思われないようメイスを抱える。
そして気を取り直し、ユーフィリアさんに向かって口を開いた。
「
早いところ結界を再生して、ちゃっちゃとここから出よう。ゲームでは5年かかったと言っていたから、二人で頑張れば3年くらいに短縮できるんじゃないだろうか。
しかしそれよりも前に、ユーフィリアさんには聞かなければならないことがある。
「それでですね………具体的にはどうやるんでしょうか? というかそもそもこの空間って何年もいても大丈夫なように設計されていますか? 空気とか、食料とか………」
そんな今更過ぎることを聞いてみる。
もし食料とか一名分の貯蔵しかしていなかったら本当に申し訳なさすぎる。流石に食べないという選択はできないものの、ちょっとくらいは分けてほしい。
するとユーフィリアさんはくすくすと笑って答えてくれた。
「この結界の間にいる間は人間の生理的欲求や生命活動の一切を必要としないんですよ」
「どういうことですか?」
「こちらに魔石があるでしょう? この魔石の結晶から微量に放たれる魔素の影響で身体が作り変えられるんです。もちろんここから出たら、その魔素の影響や徐々になくなり元の身体に戻りますが………」
結界の間の中央に置かれる巨大な魔石。
白濁色に濁っていて、灯りのない結界の間でぼんやりと光っている。
人間の生理的欲求や生命維持活動すら必要としなくなる空間なんて………そんなところでずっと一人でいるのは、きっとすごく孤独だろう。
(ユーフィリアさんを一人にしなくて良かった。煩いかもしれないけど、話し相手くらいにはなれるだろうから)
いくらでも
「それから結界の再生方法ですが………この魔石には特殊な力があって、行使した魔法を広範囲へ拡散させる力があるんです」
「つまり………この魔石に《
「ええ、少し難しいと思いますが《
なるほど。理解はできたが、実際にやってみないと分からないやつだ。
するとユーフィリアさんがメイスを抱え直して、魔石の結晶に近寄る。
そしてユーフィリアさんはメイスをかざした。
「それでは早速やってみましょうか。───《
彼女が魔法を行使すると、白濁色に濁った魔石の結晶が内側からチカチカと虹色に瞬きだす。
(きれい)
「…………この魔石、白く濁っているでしょう? 神殿の結界が完成すると、無色透明になるそうです」
そんなユーフィリアさんの言葉に頷き、俺も彼女に倣ってメイスをかざす。
そして、唱える。
「───《
結界を張るイメージで、魔石に魔力を流し込む。
しかしいつまで経っても反応せず、ユーフィリアさんがやった時のように魔石から虹色の光が発光することはなかった。
・
・
・
しばらくして、俺はユーフィリアさんに土下座していた。
「本当に申し訳ありません。まさかここまで俺に魔法のセンスが無いとは思わなくて………二人で魔力を流せば早く終わるねって言っておきながら、魔石に魔力を流すことができず誠に申し訳ありません」
「ちょ、ちょっとシグ! 顔を上げてください! そんなに気に病まなくても大丈夫ですから!」
何回やってもユーフィリアさんみたいにうまく魔力を流し込むことができなかった。
きちんと《
しかしユーフィリアさんがやればチカチカ虹色に光るものだから、俺の魔法のセンスが無いことがここに来て明らかになってしまった。
「何ででしょうね………? もしかしてシグが《
「《
じゃあ何でだろう?と二人で首を傾げる。
やばい。このままでは俺のお荷物っぷりが留まるところを知らないだろう。
これで本当に何もできなければ、ユーフィリアさんには呆れられてしまうし、アレン君やマリアベルにも顔向けできない。「お前何しに行ったんだよ」という幻聴さえ聞こえてきそうだった。
(ええ………? 何で出来ないんだろう? 俺ってやっぱり魔法の才能ないのかな?)
しかし流石にこのままでは情けなさ過ぎる。
ドローレスの使い魔を切断した《
するとその時、ふと閃いた。
「あ!」
「どうしました?」
「あの、俺、ここに来るまで結構たくさんの魔法を使って来たんです! それこそ《
あまりピンときていなさそうなユーフィリアさんに俺は続ける。
「もしレベルが8くらいになっていたら、きっと俺は《
そんなざっくりとした説明にユーフィリアさんが「確かに」と頷いてくれる。
「それは………良い考えですね。《
「はい!」
とはいえレベルが上がって《
しかし、出来るか出来ないかはさておきやってみようと俺はユーフィリアさんにメイスをかざした。
そしてそのまま、魔法を唱える。
「《
次の瞬間、ユーフィリアさんの全身が七色の光に包まれた。
赤から橙へ、黄から緑へ、青、藍、紫へと、オーロラのように絶え間なく色を変え、風もないのにユーフィリアさんの長い髪が激しく靡く。
(わあ、すごい。ゲームだと分からなかったけど、《
レベルが上がって《
けれどユーフィリアさんがぎょっとした様子で叫んだ。
「な、何ですかこれ!?」
「へ?」
「《
「ええ!?」
ユーフィリアさんの絶叫に俺も思わず声を上げる。
え、これって《
「え、《
「あ、いえ、もしかしたら個人差があるのかも………」
それじゃあやっぱり《
さっきから俺の魔法のセンスの無さに、ユーフィリアさんを戸惑わせてしまっている気がする。
そしてユーフィリアさんは意を決した様子でメイスをかざし直した。
「ですが、力が湧き出てくるのも事実…………この状態でやってみます!」
「は、はい!」
「───《
その刹那、ユーフィリアさんが握るメイスの先端に嵌め込まれた魔水晶が、直視できないほどの眩い輝きを放った。
それに呼応するように、結界の間に据えられた魔石の結晶が、足元から天井へと駆け上がるように何度も虹色の光を脈打たせる。
幾重にも重なる七色の輝きは瞬く間に広がり、辺り一帯を神々しい光で埋め尽くした。
(眩しい………!)
目が開かない程の輝きに思わず目を閉じる。
瞼の裏からでも分かる強い光に、俺は咄嗟に身を屈めた。
そして気が付けば、とうに光は収まったのか。
俺はおそるおそる目を開く。
何も言わないユーフィリアさんに不思議に思いながらも、声をかけた。
「ユーフィリアさん、大丈夫ですか? あんなに光るなんて───」
しかしそこで言葉が詰まる。
呆然と立ち尽くすユーフィリアさんの視線の先を見た時、俺も思わず言葉を失ってしまった。
「魔石の結晶が…………」
白濁色に濁っていた魔石が───澄んだ小川のように、一切の曇りもなく透明に光り輝いていたのだから。
────────────
【ステータス】
■ 名称 :シグレット・ワイヤー
■ 種族 :ヒューマン
■ 等級 :Lv.8
■ HP :30
■ MP :21
【経験値+10アップ】
【レベル7→8アップ】
【シグレット・ワイヤーは《