【悲報】自己犠牲で死んだはずの悪徳領主、何とか生還したものの偽物扱いされてしまう   作:性癖は脳焼き曇らせ

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第6話 シリーズ第二作目の悪役登場

 

 

 

 唐突で申し訳ないが、この世界には魔法が存在する。

 

 そのためこの世界の人達には大なり小なり魔力というものを持っており、それをスキルや魔法として発現させるのだ。

 しかしそれは大層難しく、ごく限られた一部の者しか使用することができない。

 

 そして俺はというと、領主時代に神殿で鑑定してもらった結果《聖属性》の魔力を持っていることが分かった。

 また《切り札(ラストコード)》という自滅スキルを使えたのだ。

 

 それを鑑みるに───もしかしたら俺も、努力すれば魔法が使えるかもしれないという結論に達した。

 

 

 

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「───《治癒(ヒール)》!」

 

 そう唱えながら指先にある1㎝程の切り傷に魔力を流す。

 すると切り傷はゆっくりと癒着し、時間が巻き戻っていくかのように消え去った。

 

(で、できてしまった…………!)

 

 王都に来てから毎日コツコツと練習していたのだ。

 

 元々この世界は『魔冠のレガリア』というゲームの中で、プレイヤー達はゲームをクリアすべく勇者一行を強くしていかなければならない。

 そのためスキルや必殺技、魔法を覚えていくにはレベルを上げる必要があり、そのレベルを上げるためには経験値というものを稼がなければならないのだ。

 

 経験値というものは、本来魔物を倒すともらえるもので「経験値って言わば努力の積み重ねみたいなものだよな? 頑張って魔法をかけるイメージを繰り返していけば、いつか魔法も使えたりするのでは?」と単純なことを思ったわけだ。

 

 もちろん領主時代いつか格好よく《切り札(ラストコード)》を披露するイメトレをし続け、最後の最後で無事発現させられたという実績から考え抜いたものでもある。

 

 そういったことから《聖属性》の魔力持ちができる一番簡単な回復魔法の練習をしつこいくらい続けていたら───できた。

 

(ギルドの空き時間にヒールヒール小声で言ってモニカさんから何だコイツみたいな目で見られたり、回復魔法の練習で自分で付けた傷に包帯撒いて厨二病みたいに思われたりした甲斐があった…………!!!)

 

 人として大切なものをたくさん失ったが、魔法が使えるようになったのだ。

 

 いや、だって魔法だよ!?

 本当に異世界なんだ!

 いや異世界だけども!!

 

 何だか脳内が騒がしくなってしまうが、つい年甲斐もなく浮かれてしまう。

 しかしそこでふと思う。

 

(でも、あれ? 《治癒(ヒール)》ってこんな感じだったっけ?)

 

 領主時代、聖女ユーフィリアさんがやっていた《治癒(ヒール)》はもう少し違っていたような気がする。

 

 切り傷が癒着し、かさぶたとなって、治療経過を早送りしたようにどんどん治っていくのだ。

 

 けれど自分が今しがた行った《治癒(ヒール)》は違う。

 切り傷が時間を撒き戻すかのように消えていったのだ。

 

(人によって違うのかな? …………ま、いいか! できたものはできたんだから!)

 

 ちょうどシフトにより今日は休みだ。

 しかも今日は王都でお祭り(確か夏至祭?)が開かれていて、屋台や露店なんかも並んでいる。

 

 自分へのご褒美に美味しいものでも食べに行こうと、俺は根城にしている安宿を後にした。

 

 

 

────────────

 

 

【ステータス】

 

■ 名称 :シグレット・ワイヤー

■ 種族 :ヒューマン

■ 等級 :Lv.1

■ HP :10

■ MP :8

 

■ 魔力属性:聖

■ 習得技能(スキル):なし

■ 隠匿技能(スキル):《邪なる者よ、聖域に近づくなかれ(ディヴァイン・リジェクション)

 

【瞑想により経験値+10アップ】

 

【レベル1→2アップ】

 

【魔力属性変質:聖→?】

 

【シグレット・ワイヤーは《逆再生(リバース)》を覚えた!】

 

 

────────────

 

 

 

 夏至祭で賑わう王都の通りは華やかに彩られていた。

 至る所にオーナメントや花が飾られ、大通りでは所狭しと屋台や露店が並んでいる。

 

 《治癒(ヒール)》を覚えた自分へのご褒美に何か美味しいものを買おうかと思ったが………段々人混みに酔ってきてしまい、現在俺は人通りの少ない裏通りへ避難していた。

 

 そしてそこで、俺はある少女と出会う。

 

「………………じろじろ見て何の用よ」

「す、すみません。何でも………」

 

 人気のない閑静な裏通りにて。

 前方からちょうど歩いてきた同い年くらいの少女を前に、思わず立ち止まってしまったのだ。

 

 梳かされていない無造作な白髪に、爬虫類のように縦線の入った金の瞳。

 俺を睨みつけながら怪訝そうに眉を寄せる───どこか見覚えのあるその少女に俺ははっきりと思い出した。

 

(『魔冠のレガリア』第二作目に出てくる悪役、マリアベルだ…………!)

 

 この世界の元となるRPG『魔冠のレガリア』───その第二作目。

 

 主人公はアレン君からカインという少年に変わり、新たな勇者カイン率いる一行は邪神が消えた後の世界で再び強大な敵に立ち向かっていくシナリオだ。

 

 そしてその強大な敵というのは、邪神復活を目論む『大罪の魔女』達。

 

 強欲の魔女

 傲慢の魔女

 嫉妬の魔女

 暴食の魔女

 色欲の魔女

 怠惰の魔女

 

 そして憤怒の魔女───マリアベル。

 

 そんな憤怒の魔女マリアベルの、まだ悪役になっていない幼少期の姿に目を丸くする。

 

(そっか。確かマリアベルって王都のスラムに住む孤児っていうバックボーンがあったような………)

 

 ゲーム第二作目のストーリーが始まるのは、第一作目から約15年後。

 つまり今の時間軸から5年後ということになる。

 

 まさか第一作目と第二作目の間の時系列でまだ魔女化していない、ただの少女であった頃のマリアベルに会えるなんてと内心驚く。

 

 そしてそれと同時にふとあることを思い出した。

 

 ───王都のスラムに暮らす竜人族(ドラコニア)の孤児は、いかにして『憤怒の魔女』になったか?

 

 第二作目開始よりおよそ5年前。

 王都で開かれる夏至祭にて、突如レッドドラゴンが王都を襲撃したのだ。

 貴族達はドラゴンの襲撃から身を守るため、貴族街の門を封鎖。

 おまけに国の騎士や宮廷魔術師達は城の警備を行うよう命じられ、城下はドラコンの息吹(ブレス)によって無残に焼きつくされる。

 そんな中、ちょうど王都にいた勇者アレンが討伐に繰り出すのだが………。

 

 レッドドラゴンを倒せたものの、多くの犠牲者を出したこと。また普段人里に現れないドラゴンが突如として出現したことから、何者かが手引きしているのではと噂され───ドラゴンを信仰する宗教を持つ、王都でたった一人の竜人族(ドラコニア)の娘、マリアベルが迫害されたのだ。

 

 それがきっかけでマリアベルは人類を憎み、世界を仇なす敵として『憤怒の魔女』となる。

 

(第二作目開始時期より5年前、王都の夏至祭…………)

 

 ───今日だ。

 

 そして次の瞬間、表通りから引き裂くような悲鳴と轟音が響き渡った。

 

 

 

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