【悲報】自己犠牲で死んだはずの悪徳領主、何とか生還したものの偽物扱いされてしまう   作:性癖は脳焼き曇らせ

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第9話 レッドドラゴン襲撃

 

 

 

 《治癒(ヒール)》によって回復した女の子の母親はそのまま眠ってしまった。

 ドクターによれば精神的な疲労によるものだと教えられ、ショックで気を失ったわけではないことにほっと安堵する。

 今は軽症者と同じテントの下に横たわっており、ナースによって毛布をかけられていた。

 

 そして女の子の母親を助けた功労者であるマリアベルは、少し離れた場所でたくさんの人に囲まれていた。

 

「お嬢ちゃん、さっきのすげえな! 光の粒がブワーッて吸収されていったぞ!」

「すごいわねえ、本当に! よく頑張ってくれたわ!」

 

 そう言われてわしゃわしゃと長い白髪を撫でられ、目を白黒させている。

 俺もそんなマリアベルのもとへ向かった。

 

「さっきはありがとう。君のおかげで治療ができたよ」

「…………別に。それに貴方には助けられたから、そのお礼もしたくて」

 

 ぶっきらぼうであるものの、きちんと返事をしてくれるマリアベルに微笑ましくなる。

 すると彼女は続けて言った。

 

「私はマリアベル。貴方は?」

「俺はシグ。よろしくね、マリアベルさん」

「マリアベルでいいわ」

 

 ほんのわずかに笑みを見せるマリアベルに、何だか奇妙な気持ちになる。

 『魔冠のレガリア』第二作目ではあんなに恐れられていた七大罪の魔女が、こんな風に味方をしてくれるなんて。

 

(…………でも、このレッドドラゴンの王都襲撃後、マリアベルは竜人族(ドラコニア)ということで迫害される。それが魔女化の原因とも言われているんだけど………)

 

 王都襲撃後、マリアベルをこの王都から違う土地へ逃せば魔女化は免れるのではと思案する。

 けれど同時に周囲の人々に囲まれて称賛される彼女の姿を見て、そういった未来は来ないかもしれないと予感した。

 

 その時、俺の服の袖がくいっと引っ張られる。

 そこには小さな女の子がいた。

 先程助けた母親のお子さんで、彼女はまじまじと俺を見上げている。

 

 背丈の低い女の子の視線に合わせようとしゃがんでみせれば、その子ははにかみながら口を開いた。

 

「おにいちゃん、助けてくれてありがとう」

「ううん、どういたしまして」

 

 そして女の子はマリアベルに向かって言う。

 

「おねえちゃんも。私のお母さんを助けてくれて、ありがとう」

 

 その言葉にマリアベルの動きが一瞬止まった。

 どうしたんだろうと不思議に思っていれば、彼女は何故か驚いた顔をしていて───僅かに瞳を潤ませる。

 

 そしてマリアベルはしばらく黙り込み、どこか晴れ晴れとした様子で女の子に尋ねた。

 

「お母さん、好き?」

「? うん! だいすきだよ!」

「…………そっか。そうだよね。私も、貴女のお母さんを助けられて良かった」

 

 彼女の中でどういった心境の変化があったのか分からない。

 けれどそれが悪いものだとは決して思えなかった。

 

 するとその時、そんな俺達のもとにやってくる大人達がいた。

 

「お前ら~~~~! よく頑張ったな!」

「シグ! 貴方《治癒(ヒール)》が使えたの!? 誰かが白魔術を使ってくれていると聞いていたけど、まさかシグだったなんて………!」

 

 一緒に瓦礫からマリアベルを救助したおじさん───もとい、俺が領主をやっていた頃、リュシール領に仕えてくれていた兵士オスカー・フェルド君だ。

 そしてその横にはギルドの先輩職員モニカさんもいて、慌てた様子で駆け寄ってくる。

 

(オスカー君ってばすっかりおじさんになっちゃって………!)

 

 時の流れは早いなあと思いつつ、何だか感慨深い気持ちになってしまう。

 そんなオスカー君の横でモニカさんが俺の肩を掴み上げた。

 

「シグ! 貴方いつから《治癒(ヒール)》を使えるようになったの!?」

「実は密かに特訓していて…………今日のお昼くらいにできるようになりました」

「今日? …………今日!?」

 

 目を丸くして驚くモニカさんに居心地が悪くなる。

 

 今日やっと《治癒(ヒール)》を覚えられたのだ。

 まだたった一つしか覚えていないけれど、今回のレッドドラゴンの襲撃で使えるようになって良かったと思う。

 

(助けられなかった人もいるから、素直に喜べないけど…………)

 

 しかしその時「あれ?」と思った。

 自分の身体の中にある違和感に首を傾げる。

 

(なんか………《治癒(ヒール)》以外も使えるような気が………?)

 

 ゲーム画面みたいに自分のステータスは見えない上に、鑑定スキル持ちは神殿にしかいないため、自分が今どんな状況か分からない。

 

 しかし今日俺は何百回も《治癒(ヒール)》を使い続けたのだ。

 魔物の討伐回数や魔法の発動回数によってレベルが上がる『魔冠のレガリア』というゲームの世界において、もしかしたら俺のレベルも上がり、新しい魔法習得しているかもしれない。

 

 今の段階で俺は、一体何ができるだろう。

 

(白魔術師は確か《治癒(ヒール)》の次に《結界(シールド)》を覚えるんだよな………)

 

 それを思い出し、ふと目の前の空間に手をかざしてみる。

 

「《結界(シールド)》」

 

 すると次の瞬間、ウィンと音を立てて半透明の壁が現れた。 

 いきなり出現した魔法の壁にモニカさん達がぎょっと驚く。

 そしてもちろん俺も目を丸くした。

 

「で、できた! モニカさん何かできました!」

「できたって、貴方これ《結界(シールド )》じゃない!…………いや、魔術師は魔法の鍛錬によって使える技を増やすと聞くわ。今日《治癒(ヒール)》たくさん使ったということは、それが原因で習得したとか………?」

 

 「いやでも………」と困惑しながら話すモニカさんに俺も内心戸惑う。

 何というか色々と手探りすぎて、こっちも分からないことだらけなのだ。

 

 とりあえずレッドドラゴンから無事に生き残れたら、冒険者ギルドから魔術師を紹介していただきたい。

 

 そして、そんなことを思っていた最中のことだった。

 次の瞬間、雷が落ちたかのような轟音が辺り一面に響き渡る。

 

 ォォォォオオオオオオオオオッ!!

 

 ハッと顔を上げれば、火の海の向こうからレッドドラゴンが現れたのが見えた。

 

 燃え盛る炎を割って、こっちに向かってやって来る。

 

 それに気付いた周囲の人々は一気にしてパニックになり、我先にへと逃げようとする───が。

 一体この火の海の中でどこへ逃げようというのか。

 貴族街へ続くはずの門に人が殺到する。

 

「開けろッ! 開けてくれッ!!」

「ドラゴンが来ているの!! お願い助けて!!」

 

 レッドドラゴンが大きな翼を広げ、飛来してくる。

 そして奴はその巨体に見合わない速度で、貴族街を囲う外壁に衝突した。

 

 ドラゴンがぶつかった衝撃により外壁の煉瓦は崩れ落ち、瓦礫となって雨のように降り注ぐ。

 

 怒号と悲鳴。

 ドラゴンは外壁に這うようにして掴まり、咆哮する。

 再び現れた地獄に辺りは騒然とする。

 

 しかしその瞬間、火の海から銀に瞬く一閃が現れた。

 その剣はレッドドラゴンの片翼を薙ぎ払う。

 

「───アレン君!!」

 

 勇者アレンが現れた。

 

 けれどそれを素直に喜ぶことはできない。

 

 何故ならアレン君は、レッドドラゴンとの交戦により相討ち。

 

 死んでしまう(・・・・・・)からだ。

 

 

 

 

 

 ────────────

 

 

【ステータス】

 

■ 名称 :シグレット・ワイヤー

■ 種族 :ヒューマン

■ 等級 :Lv.2

■ HP :12

■ MP :10

 

■ 魔力属性:?

■ 習得技能(スキル):なし

■ 隠匿技能(スキル):《邪なる者よ、聖域に近づくなかれ(ディヴァイン・リジェクション)

 

【経験値+24アップ】

 

【レベル2→3アップ】

 

【シグレット・ワイヤーは《遮断(ベイル )》を覚えた!】

 

 

────────────

 

 

 

 

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