錬鉄と鍛造の贋作者   作:英雄に憧れた一般魔導師

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見たら書きたくなってしまいました!

お付き合いいただければ幸いです!


プロローグ

少年は夢を見ていた。無限に剣が突き刺さる荒野、空に歯車があり、その荒野にて立ち尽くす赤い外套の正義の味方の夢。少年は夢を見ていた。鉄を打ち、ただ一振の刃を求めて鍛え上げていた鍛冶師の夢。

 

 

 

 

 

鉄を鍛える槌の音で少年の意識は覚醒する。少年は鉄を打っていた。学園の休みとドワーフの工房を利用して、ただ黙々と打っていた。意識が途切れても打ち続けていた。もしくは夢で見た通りに動かされるように鍛えていたのかもしれない。なんにせよ

 

小槌で鉄を打ち、世界に似つかわしくない剣……刀を打つ。その技術、技巧にドワーフは言葉が出ない。そして出来上がった一品を見て少年は呟く。

 

「ダメだ……失敗作だ」

 

そう良い地面に刺す。刀身は上身まであっさりと突き刺さる。少年の周りには今まで作った刀身がかなりの数刺さっていた。築かれた刀塚は数えるのが億劫になるほどである。

 

「相変わらず細く綺麗な剣を創ってるな、ラグナ」

 

「ドナン……。いや、これじゃダメなんだ。ダンジョンのモンスター程度なら十分かもしれないが……オレが求めているものには程遠いんだ……」

 

ラグナと呼ばれた少年はは目を細めながら突き刺さっている刀身を引き抜き見る。ドナンと呼ばれたドワーフは刀を見ながら何が失敗作なのか理解出来ないでいた。それ程までに綺麗に仕上がっていたのだから。

 

「はぁ」

 

ラグナは再びため息を着き刀身を床に刺して机の上にある布に包まれた物をドナンに見せる。

 

「そういえば、前に頼まれた包丁三本、期限内に打ち終わった。この通り机の上に置いてあるから、持って行ってくれ」

 

「おっ!流石だなラグナ!ほーう!また、随分良い出来じゃねぇか」

 

包丁を見たドナンがまじまじと包丁を見て感嘆の声をもらす。それほどに完成度の高い包丁が出来上がっていたのだ。ラグナは道具の片付けを行い、上着を手に持ち帰り支度を整える。

 

「また、報酬受け取ったら1/4を引き抜いておいてくれ」

 

「おう、分かった!そう言えばこの後どうするんだ?」

 

ドナンがラグナに声をかける。ラグナは振り返りながらに言う。

 

「流石にずっと起きて作業してたから、汗を流したあとは寮で寝るよ。明日から授業もあるし」

 

「おう!そうか、まぁ、無理はするなよラグナ」

 

ドナンはラグナを見送り、ラグナも嬉しそうな笑みを浮かべて工房を後にする。

 

その後ドナンは突き刺さっている刀身を再度見ながら呟く。

 

「オレたちが教えた技術と違う技術だな……全く違うという程じゃ無いが……ただ、剣を造る。それだけじゃない執念がアイツにはあって、一本一本が存在感を放っている……。鍛造に関しては俺達が教えた筈だが……他に何処で学んできたんだ?アイツが求めている物は一体どんな剣なんだ?」

 

突き刺さっている刀身を見ながら何を求めているのか、どこに行き着くのか楽しみの反面戦々恐々としていた。

 

「寮に2日帰ってないな。まぁ、ルームメイトが居る訳じゃないし、どうでもいい。それにしても、久々に親父さんの工房で作業出来て楽しかったなぁ……」

 

ラグナ・グレイスには親が居ない。いわゆる孤児であるが、赤ん坊の時にドナンに拾われて、ドワーフ達に育てられたリンザスの少年である。リガーデン魔法学院にも在籍しており、学費はドナン達ドワーフの鍛造の仕事依頼の一部を受け取り、それを学費に当てている。幼少期からドワーフ達と過ごしてきたこともあり、鍛造技術を叩き込まれており、その腕はドワーフ達からも絶賛されるものである。

 

しかし、それだけでは無い。ラグナには秘密がある。ラグナは転生者である。しかし、転生の際に生前の記憶はほとんど焼き落ち、まっさら同然でこの地に産まれた。例外を除いて。

 

ある二人の記憶だけが焼き付いており、その力と技術を得て産まれていたのだ。

 

一人は信じた理想に殉じた英雄、もう一人は業を絶つ剣を目指した鍛冶師。その能力と使い方、技術を願った故の代償なのか、流れた故に耐えきれずに燃え尽きたのかは分からないが前世はその繋がりしかない。

 

 

寮に着いたあとは荷物を下ろし、勉強机に座る。そして、右腕に巻いてある赤い布を解き、杖を使わずに準備運動を行う。

 

「回路解明、神経接続……魔力循環開始」

 

深呼吸を行い、目を瞑り体が魔力を巡る回路を鮮明にし神経を魔力を通る路として魔力を通す。

 

痛みが伴う準備運動。雑念はこの工程を一からにする。自身を作り替える工程、鍛冶師から理想を求めた錬鉄へと。額に流れる汗を感じながら

 

彼だけに許された魔法を唱える。

 

「投影、開始」

 

その一節でラグナの手のひらには青白い魔力の粒子が現れ、ゆらゆらと動く。

 

「創造理念…鑑定、基本骨子…想定、構成材質…複製、製作技術…模倣、憑依経験…共感、蓄積年月…再現」

 

魔力の粒子はやがって一振の白い剣になる。ラグナはその剣を持ち軽く振るう。自由自在と言っても過言では無い程に扱って見せたが

 

「研鑽が必要なのはどっちも一緒か……。イメージとズレがある。もう少しスムーズに行かないと申し訳立たないな」

 

当然だと言わんばかりに大きな溜息をつく。それと同時に剣を消すと言う意思持ち、剣は青白い粒子へと崩れ、霧散する。そして再び、何本か創り出し、並べ始める。一本一本丁寧に作り出す。

 

「こんな所か……。鍛冶をした後の徹夜明けでこれくらい出来たら良いほうか。……いや、このままじゃダメだ。この力があっても分かっていても誤れば意味が無い。そういう人たちの力と言うのは……嫌でも分かってる。産まれてから今に至るまで、出来ることは限られているんだ」

 

作り出した剣を消し、明日の学園の準備を行い、赤い布を腕に巻き気持ちを切替える。ここからは学院に通う魔道士のラグナ・グレイスである。

 

学園では基本的には授業を受けて、筆記、実技、実習にて単位を取る。現在の学年は6年生であり、単位もそれ相応に取っている。ラグナは授業自体は真面目に受けており、目立った行動は一切取ってない。人付き合いも特定の人物以外はほとんど無いみたいな感じだが

 

授業は聞きながらも、半分は自身の魔法……記憶では魔術と言われたものの事を考えている。気づけば授業が終わり皆は教室から出ていた。

 

「……いや、疎かにしすぎている気がする」

 

苦笑しながら教室を出ると。

 

「今日も無様を晒したな落ちこぼれ」

 

「シオン……」

 

シオンがウィルに絡んでいた。

 

「また、ダンジョンに行ったそうだな。雑魚の魔物で単位稼ぎで恥ずかしくないのか?」

 

「それの何処が恥ずかしいんだ?あらゆる手段を使って目標の為に単位をとる。ウィルが出来ること、やれる事を諦めずにしていることじゃないのか?」

 

シオンの肩を掴みながらにラグナはシオンに言う。

 

「傷の舐め合いか?凡人。俺より劣るお前が意見をするんじゃ……!」

 

腕を振り払い何かを言おうとした時

 

「止めなさい貴方達!」

 

廊下を足早に来たオレンジ髪の少女の声が廊下を駆け抜ける。その姿を見たシオンはラグナの腕を振り払い少女の方に一歩出る。

 

「やあ、コレット!本物の優等生の君が落第生と凡人を庇うなんてとても理解……」

 

「ウィルもラグナも貴方より優しくて、努力家だわ!私の友人達を侮辱しないで!!」

 

コレットははっきりとシオンに言う。ウィルはそんなコレットを見ており、ラグナも少し驚きながら見ていた。コレットの表情は真剣に心の底からの本心で言っていた。

 

「フッ、ハハハッ。優しさや努力だけじゃ偉大な魔導士にはなれないさ……ましてや『至高の五杖』なんて夢のまた夢だ」

 

シオンはそう言い残し、取り巻きを連れてその場から歩いて離れた。そんな背をコレットはべーっと舌を出して嫌悪感を出していた。ラグナは小さく溜息を着き

 

「ああ言うのは気にしない方がいい」

 

「ラグナの言う通りよ!エドワルド先生も生徒を笑いものにするなんて!」

 

「いいんだよ、二人とも。僕は魔法を使えないのは事実何だから。でも、僕は友人に恵まれてると思うよ」

 

ウィルは笑顔で言う。その笑顔でつられて二人も笑う。

 

「私も二人が友達で楽しいわよ!ラグナは?」

 

「オレも楽しいよ」

 

三人が笑いながら校内を歩く。そんな時ウィルが歩みを止める。ウィルの視線の先は塔があった。

 

「今日も『深窓の氷姫』は私達を見ているのかなぁ」

 

「見てるよ」

 

ウィルはそう言い塔に手を伸ばす。

 

「それじゃあ、進まないと。そうだろ?ウィル」

 

ラグナの言葉にウィルは頷く。そんな二人を見るコレット。三人の間に風が吹き抜けた。

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