錬鉄と鍛造の贋作者 作:英雄に憧れた一般魔導師
色々とやりたいことをやってます!ご了承ください!
ウィルはフィンの導きの下、自身の魔法『勇気』と『
(本当に凄いよラグナは……。初めて会った時から、六属性に適正があることも、鍛治で僕に剣を作ってくれたことも、大公を倒した後のセンチネルを一掃した時の剣技の事も……。僕は君のことを羨ましく思っていた)
ウィルに持ちえない物を持ちながら、ウィルが持っている特異な剣もラグナは当然のように扱う。戦士としても魔導士としてもウィルにとってラグナは憧れ、尊敬するものだった。才があれど驕らず、才無きウィルにも手を差し伸べ、それどころか一緒に歩んできた。ウィルは何度も助けられた。何度も共に戦ってきた。その背を追いかけて来た。
だが、今はそのラグナや皆を守るためにウィルはディヴェンデと対峙する。
(今度は僕が君を助ける!今まで助けてくれたように!今からは――――一振の魔剣(つるぎ)のように!!!)
そのままディヴェンデを弾き飛ばし、さらに一撃を与え、大きく吹き飛ばす。建物を何棟も吹き飛ばしながら中央庭園まで吹っ飛ばす。
「ウィ……ル……!」
「白い髪……ウィルなの?」
「……落ちこぼれ……お前……」
ウィルはそのままディヴェンデを追いかけていく。ラグナはその場に居る皆に言う。
「お……オレに構わずウィルに応援を……!今のアイツならそれが力になる……!オレは少し休めば追いつける……!」
「しかし、ラグナ……お前の傷、その状態は……!」
「リアーナの言う通りよ!今にも……!」
ラグナの状態は非常に悪い。擬似的に魔力路にしていた所は致命的と言うほどでは無いが無理に行使したため動くだけでも激痛を伴い、呼吸するだけでも痛む。それより出血等の目に見えるダメージもその消耗を物語るには十分だ。魔力より先に肉体が根を上げたと言うのが現状である。だが、立ち上がる。
「大丈夫……!ピンピンしてるとは言わないが、手間を取らせる程じゃない……。それにこのままだと格好つかない」
少し笑いながらに言う。イグノールは少し笑いながら。
「それじゃあ僕達は先に行くよ。彼が戦っている以上それを応援して、見届けないとね」
そういうとイグノールは走り出す。それに続くようにシオンも走り出す。
「……分かった。追いついてこいラグナ。先で待ってる」
リアーナも迷った表情を浮かべていたがラグナの目を見て走り出す。コレットはラグナの手を握り
「その言葉信じるからね!」
コレットも走り始める。そしてユリウスもそれを追いかけるように走って行った。独りになったラグナは少しよろけたが足を叩き気合いを入れる。
(ダメージを受けていなかったら……なんて言い訳はダメだ……何より、未熟はもとより、限界を無意識に定めてしまった……!)
建物に体を預けながら、建物に拳を振るう。建物に亀裂が走る。それほどの自身の不甲斐なさに怒りを覚えた。情けなさに怒りを覚えた。
(こんなんでいい訳ないだろ!オレは与えられた……託された…のだから……!オレが、やらなくちゃ、止まるな!誰も死なないように!一人でも……!)
ラグナの拳に更に力が入る。無力さ不甲斐なさがとめどなく溢れる。悔しい、力の無さを恨めしく思った。
体は痛む、息も苦しい、何が正しいか分からず、寒気すら感じ、頭も痛い。ここで止まりたいかも分からない。どうしたら良いのか分からない、痛い。その葛藤がその感覚がラグナはどこか懐かしいと感じた。
その次の瞬間幻視する。
赤い外套の英雄が遠くから狙撃する姿と大きな斧剣を振るう大男と甲冑姿の華奢な剣士の戦い。華奢でありながら大男と対等に渡り合っている姿を。
(どうして……あの体格差で打ち合える……何が……)
ラグナはその戦いを見るそして、その秘密に辿り着く。単純でありながらも考えたこともなかった事だった。
(そうか……そういう方法があったのか……!)
そして脳に言葉が浮かぶ。
(……幾度の戦場を越えて……不敗。ただ一度の敗走も無く……!)
胸の中で紡ぐ言霊はラグナを進ませた。痛みなど止まる理由にならない。まだ、止まる訳にはいかないと足を進ませる。何より
「止まれない……止まる訳には行かない……」
自分自身に負ける事などあってはならない。なら、歩み進むしかない。限界を超えて友として自身も剣だと謳うのであれば……並び立つしかないのだから。
「回路解明、魔力路、全神経接続……魔力循環…!強化、開始!」
今ある魔力路に魔力を全開で流す。先程の無茶で悲鳴をあげている死に近い状態であるがお構いなく魔力を全力で回し、強化を開始する。
「っ……!ぐっ……ああ……ぐぅっ!!」
絶叫しそうになる痛みを無理やり押さえ込み、ラグナは再び弓矢を投影する。そして、一気に最前線にに走り出す。そして広場で戦うウィルとディヴェンデを補足し、ウィルとディヴェンデが離れた瞬間を逃さず、ディヴェンデに矢の掃射を行う。
今宵何度も見る赤光の雨はディヴェンデのみに降り注ぐ。翼や剣である程度は防いだが、いくらかの矢は肉体に突き刺さる。そんな矢の掃射ができる人物は一人しかいない。
『ラグナ!』
広場の上に立っているラグナ。ラグナは弓矢を消し、干将・莫耶を手に握り降り立つ。
「ラグナ!そんな体で戦うなんて無茶だよ!」
「コレットの言う通りだ戻るんだラグナ!戻って……!」
コレット、リアーナがそう言うがラグナは止まらない。そしてウィルと並ぶ。目元の血、鼻血も拭い剣を握る手に力を入れる。それと同時に魔力が立ち上る。ラグナの魔力は未だ尽きる事無く、迸っていた。しかし先程の状態程の上昇幅は無い。
「ラグナ……大丈夫なの?」
重症でもなお戦う事を止めないラグナを見てウィルは尋ねる。ウィルは分かっている。ラグナはこういう時は梃子でも主張を曲げない事を。だから、止められない。
「大丈夫……負けていたのは自分にだ。やるぞ、ウィル。そっちに合わせる。姿が変わっていることには今は聞かない……」
ラグナはディヴェンデから目を逸らさずに言う。
「合わせるとは言ったが、生半可な動きなら置いていく」
ウィルは一瞬鳩が豆鉄砲を食らった様な表情を浮かべるがすぐにディヴェンデを見据えて言う。
「ラグナの方こそ!付いてきてよ!」
それと同時に白い閃光が走り出す。それに続くように赤い光が追従してディヴェンデと戦う。片方を相手にすれば片方が削る。ディヴェンデの一撃は空を切っても柱を破壊するほどの威力を誇っている。それと正面切ってやり合えているウィル。そんな一撃を確実に回避しカウンターをしているラグナ。
そんな中、成績トップを走り続けたリアーナと教師のエドワルドが気づく。ラグナの魔力運用に。
「魔力を垂れ流している?」
「ただ……垂れ流している……という訳じゃない『
徐々に、ラグナが正面からディヴェンデに打ち負けないようになってくる。衝撃の瞬間に魔力を瞬間的に放出する。それにより威力は絶大に向上しディヴェンデの体勢を崩す事になる。
「ああああああああああッ!!!!」
そしてその隙を逃すまいとウィルが上から剣を振り下ろすが、ディヴェンデが間一髪受け止める。そしてウィルの力とディヴェンデの力に耐えきれず、ウィルのモリアの銀剣が折れる
「ウィルの剣が!」
「まずい!」
「武器を失えば均衡が――――」
「投影、開始!ウィル!」
ウィルが下がると同時にラグナが瞬時に投影したモリアの銀剣をウィルの眼前に放ち突き刺さる。
ウィルはその銀剣を手に取り再び戦線に戻る。
「そうか!ラグナの『投影』!」
「武器が壊れても……瞬時にラグナが出す……!」
幾度砕かれようとも、幾度折られようとも。ラグナが瞬時に出す。しかし、ディヴェンデを仕留めきれない。その時ラグナは何かを感じ取る。ウィルも同様に
「ラグナ!」
「行け!ウィル!最も信頼する人の力を受け取ってこい!」
たったそれだけのやり取りでウィルは壁際に行き構える。ラグナはその間ディヴェンデとタイマンで戦う。一撃を避けては叩きつける。そうしている間にウィルは剣を天高く掲げる。それと同時に氷の魔力の塊がウィルに落ちる。凄まじい冷気と衝撃が場を支配し
「装塡完了……『
「あれは……大公の時の……!」
「おいっ、相手には魔法は効かないんだぞ!?いくらその力が強力でも!」
ウィルは
(わかる……この『魔剣』は決して止められなんかしない!)
そう感じていた。ラグナはそれと同時に下がり自身も決着をつけるための武器を投影する。かの騎士の王と呼ばれし者が手にした聖剣。聖剣のカテゴリーの中で頂点に立つ最強の剣。
「投影、開始」
創造の理念を鑑定し、基本となる骨子を想定し
構成された材質を複製し、製作に及ぶ技術を模倣し
成長に至る経験に共感し、蓄積された年月を再現する
投影、六拍。
本来であるならば投影は不可能であり、真に迫った代物が創れたとしても自滅を前提にしなければならない。だが、千子村正の鍛造技法と記憶と経験、さらにドワーフで鍛え上げたこの世界の鍛造。そして……この世界の魔法の詠唱を加える事で極限まで真に迫った剣がその手に
「束ねるは星の息吹 輝ける命の奔流。輝ける彼の剣こそは!」
荒れ狂う嵐のごとき魔力がラグナの手に集まり出す。
「過去・現在・未来を通じ戦場に散ってゆく全ての者達が今際の際に懐く、哀しくも尊き夢の結晶!」
徐々に魔力が剣の姿を象る。
「その意志を誇りと掲げ、その信義を貫けと糾し、今、遥か彼方の王の剣を以て奇跡の姿をここに顕現する!!!」
ラグナの手に握られるのは一振の黄金に輝く剣。その名は
「『
これまでの剣はと異なる雰囲気と魔力を放ちながらその剣が顕現する。
「なんだ……あの剣」
シオンの言葉に誰も続くこと無くその剣を見る。ウィルもラグナを一瞥する。そして、互いに声をかける事無く同時にディヴェンデに攻撃を仕掛ける。ウィルがディヴェンデの魔導士殺しの剣ごと右腕を凍らせ、その上からラグナが斬り砕く。
「なんだありゃあッ!!どうなってんだアレはァ!!どういう理屈だ!?なぜ『魔狩』が貫かれやがる!?」
『……マジ?』
マルゼが叫び、首無しが困惑する。それ程に理解ができない現象が起こっているのだから。ディヴェンデがウィルに向かって光線を口から放つ。その瞬間、左腕がラグナに切り落とされる。自身の周囲から光線を出せば、ウィルが『魔剣』を振るい凍らせる。
「ウィルの方は氷姫の杖のあの子が一緒に戦っているみたい……!」
「ラグナの方は……」
リアーナは幻視する。オーウェンザウス家は騎士の家系。ラグナの持つ剣、その戦い方が知るはずのない騎士を、騎士の王を連想させた。
「首無しィ!!!」
マルゼが叫ぶと同時に無数の『門』が展開される。そこから深層のモンスターが次々と現れる。
「『門』!?」
「まだ出てくるのか!?」
しかし、ラグナもウィルも微動だにしない。
「半分は片付ける。もう半分は」
「任せて」
ウィルは『魔剣』を地面に刺し、ラグナは魔力を放出させ剣に纏わせる。その剣の魔力はラグナの属性ではない光を帯びていた。
「
「はあああ!!!」
ウィルは氷姫の杖の十二の氷秘法 七の法 万氷千蒼の凍神殿を放ち、ラグナは帯びた光の斬撃で『門』より現れたモンスターを一掃する。
「終わらせよう」
ウィルは低く構え氷姫の魔剣の刀身を長くする。ラグナは上段に構える。
ラグナの周りに光の魔力が漂い刀身に集約される。ウィルがディヴェンデを斬り凍らせ、そこに光を纏った斬撃でディヴェンデを完全に消滅させる。氷と光の衝撃が駆け抜ける。
「ウィル、ラグナぁ!!」
皆が中央に集まる。そんな中、フィンが高笑いをして心底嬉しそうにその光景を見ていた。
「素晴らしい!!想像以上だ!!最後に残されていた僕達の『希望』は!!それだけじゃない!!新たな『希望』もある!!最高の予想外だ!!またせたな魔女王!契約が履行される時だ!!」
フィンが塔に向かって言う。
「なぁにたった五百年だ!ほんの僅かな誤差だろう!長いプロローグは終わり、待っていろ偽りの空!!幕が上がるぞ!さぁ、始めよう!!杖と剣が交わる君たちの魔剣譚を!!!」
永遠に遥か輝く勝利の剣について
作中でも語った通り、色々な要因があり投影が可能となっている。それでも約束された勝利の剣じゃないのは、記憶の人物に引っ張られている可能性が高い。
一部の神造兵装は詠唱を唱えることで投影が可能となっている。
ある条件下では無詠唱での投影も可能。
因みにこの後ラグナがぶっ倒れてます