錬鉄と鍛造の贋作者 作:英雄に憧れた一般魔導師
早朝、 体の感覚を確かめながら制服に着替えて歩くラグナ。昨日の夜中にフィンに渡された双季の宝玉を手に鍛冶場に向かう。卒業式がある為、事前に準備をし、卒業式後に作業に取り掛かる為である。
(病み上がりもいい所だけど、鍛冶師の端くれとしてあんな風に言われたら……滾ってこない何て嘘になるだろ……。しかもその剣はウィルが使うもの。いつも以上に気合いを入れないとな)
道具の諸々の準備とドナンが回収していたであろうモリアの銀剣を作業台に置き、双季の宝玉もその傍らに置く。
(一から鍛えるよりも、元の剣を使って再度作り直す方が早そうだ。それでも、しっかりと鍛えあげればあいつが持つに相応しい剣になる。やるぞ、オレには二つの鍛造の技法があるそれを一つにして最高傑作を作るんだ……!)
準備を続けるが痛みで想像以上に時間がかかり、全部は終わっていないが、そろそろ学院に向かわないと行けない時間になってしまう。ラグナは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながら学院に向かって歩き出す。
「朝っぱらから誰かと思えば、体はもういいのか?」
戻る前に声を掛けられる。ラグナは足を止め振り返るとドナンが立っていた。ラグナは頷き
「もう大丈夫、この通り」
腕を動かし大丈夫とアピールをする。魔法による妖精族からの治療のおかげもありほとんどは治っている。ただ、多少の痛みがあるが、それに関しては我慢で誤魔化すことができる。が、
「痩せ我慢も程々にしておけよラグナ。何年お前の親代わりしてると思ってんだ?」
「うっ……気づいていたか」
「たりめぇだ。何時もより準備がちょいと遅かったからな」
「見ていたのか」
「最初からな」
ドナンは笑いながらに言う。ラグナはバツが悪そうに顔を背ける。
「ウィルに剣を造るんだろ?」
「ああ、ウィルからじゃないが、ウィルに作ってくれって素材も渡された」
「双季の宝玉か……。大層な素材を渡されたみてぇだな。今のお前なら、アイツに見合う剣を鍛え上げる事ができるだろうな。そういえば、今日は卒業式何だろ?」
ドナンは思い出したようにラグナに言う。ラグナは頷き
「ああ、だから卒業式が終わったら直ぐに来て、ウィルの剣を鍛えるつもりだ。それの前準備をしていたんだ」
「なるほどな、他の準備は任せておけ。全部は出来ていないんだろ?」
そう言われたラグナは頷く。
「ごめん、準備頼む」
「それくらい気にするな。子どもの卒業式を見に行けねぇ代わりだ。帰ってきたら卒業証書見せてくれよ」
そう笑いながらに言うドナンに笑顔で頷き学院に向かう。
そして
『魔導の教理・第一項【偉大なる魔女王は告げた 笑うがいい、祝うがいい、開こうとも 開かずとも 蕾仰いだ時 天に花は宿るだろう――――】』
その言葉と共に壇上にコルドロン校長が立ち話し始める。
「境界祭の惨劇では多くの命が失われました。我が学院の教師、そして少なくない生徒達……『塔』の上級魔導士も含め民を護るため、身を挺した者達へ哀悼の意 並びに敬意を表します。それと同時にうつむく時間を終わらせなくてはなりません!『塔』が脅かされた以上、あの惨劇は終わりではなく始まりを告げる厄災の呼び鈴かもしれない!」
校長の話しは続く。それと同時に境界祭でのことが思い出される。ラグナが今まで隠してきた力を躊躇無く使った日でもある。ラグナが最も力を使い、最も思考を巡らせ、最も全力で戦った日である。
「我々は育んだ希望を未来へと送り出す責務がある。これより、リガーデン魔法学院卒業式を開会します」
校長の宣言で卒業式が厳かに始まる。
「第401期生 起立。壇上前に整列。名を呼ばれた『卒業生』は証書を受け取るように」
エドワルド先生がそう言い、証書が魔法により配られる。ラグナもウィルも卒業証書を受け取る。
「以上250名リガーデン魔法学院の全ての履修過程を終え、卒業した事を認める」
エドワルドがそう締めくくると拍手が行われる。そして校長と替わり
「それでは最後に『塔』の進学者を発表します。名を呼ばれた者は壇上へ。『
そして校長は名前を呼ぶ。
リアーナ・オーウェンザウス。首席。総獲得単位数12000。
イグノール・リンドール。次席。総獲得単位数11989。
ユリウス・レインバーグ。総獲得単位数11802。
シオン・アルスター。総獲得単位数11801。
エマ・クレバー。総獲得単位数10000。
ルナイス・アレート。総獲得単位数9655。
コレット・ロワール。総獲得単位数9024。
ロゼ・プレナイト。総獲得単位数9021。
ジョルア・モーレン。総獲得単位数8702。
「ラグナ・グレイス」
ラグナも名前を呼ばれた壇上に上がる。そして魔女王の帽子を被せられ同じように並ぶ。
「必要単位を修得したこの49名の『塔』進学を認めます」
ラグナは未だに机の上の帽子が余っているのに気づく。もしかしてと言う気持ちがある。
「ですが、最後にもう一人だけギリギリのところで合格過程を満たした者がいます。『塔』の進学条件は二つ。一つは7200の単位修得。そしてもう一つは新たな『魔法の創出』その魔法は、多くの者の絶望を洗い、数え切れない命を守り都を救った。輝かしき『成果』称えられるべき『偉業』。その『魔法』の名は『勇気』」
その言葉にウィルと共に戦った面々は嬉しそうに顔を見合せる
「ウィル・セルフォルト前へ!」
「校長!!」
エドワルドが異議を唱えるが校長は片手で制止させる。
「異議がある者はいるでしょう!!それでも、彼の『勇気』を『魔法』と認める者は盛大な拍手を!」
会場全体がざわめく。異例の魔法、異例の事態。困惑が会場を支配するが
壇上から二つの拍手が響く。ラグナとシオンだった。その二人に遅れまいとコレット、リアーナ、イグノール、そしてユリウスも拍手をし、拍手は次の拍手を呼び会場全体から盛大な拍手へと繋がる。
「では、以上50名!この会場にいる者の総意とし、彼等の『塔』進学を認めます!貴方達は『過酷の世代』!この先には波乱が待ち受け、度重なる試練が訪れるでしょう!それでもどうか!天へと至り、邪を退けんことを!!」
校長がそういうのと同時に鐘の音が響いて新たな門出に祝福を与える様だった。
「おめでとうウィル!」
「うん!ありがとうラグナ!」
二人はハイタッチを交わす。そして、卒業式後はラグナは工房に向かう。準備は既にドナンが済ませ、取り組めるようになっていた。ラグナは深呼吸をして作業に取り掛かる。
記憶から今まで使ってきた鍛造とドワーフの鍛造の全てを集約し、ウィルの剣を鍛え上げる。
受け継いだ力と積み上げた力を以て、並んで戦った友の為に、今造れる最高の一振の為に全霊で行う。
其処に至るは数多の研鑽、此処に辿るはあらゆる収斂。鍛冶師として一つの極地に立つ魔導士は鍛え上げる。
「収斂と研鑽に終わりは無く……」
寝る間も食事すら忘れて、執念の如き集中力でただひたすらに鍛え上げる。ここまでの積み重ねの集大成、道半ばであろうとも現状出来うる最高の一振が鍛え終える。
「……できた」
ラグナはその出来に頷きながら、大の字になる。極度の疲労と脱水、消耗により気絶するように眠るがその表情は満足げだった。
そして
「ウィル、来たか。出来ているぞお前の新しい剣」
互いに『
「紫色の剣身……」
「モリアの銀剣に双季の宝玉を加えて作り直した。魔法は以前と同様に斬れるし、中央の宝玉で魔力も増幅できる。『魔剣』も以前以上に使えるだろうな。剣に名前をつけるなら【ウィストの双銀】だ」
ラグナがそういうとウィルは嬉しそうに言う。
「ウィストの双銀……!」
そこにドナンがやってくる。
「前の剣も自信作だったんだぞ?それを折っちまいやがって……ドワーフ顔負けの馬鹿力め。けど、今回はラグナが作り直した。その剣はラグナが今まで作ってきた中で最高の一振だ。思いっきり使ってやれ!」
ウィルの背を叩きながらに言う。
「ありがとうラグナ!お代どうしたらいい?」
「なくていい。ドワーフの皆やオレも助けられた。その礼と塔に登った祝いとしてくれ」
そう言われたウィルは頷きながら
「ありがとう、ラグナ」
「ああ、でもここからだぞ」
「うん!」
ドナンは腕を組み二人に言う
「頑張れよ『剣の魔法使い』!『塔』でも暴れて来い!」
そう送り出される。そして
「ウィル!ラグナ!準備は終わったー?」
「うん!お待たせ!それじゃあ、行こうか塔へ!!」
1000超えたので何かしたいのですが思いつかないです……。とりあえず、境界祭でラグナがいて変わったことは
被害者数が原作より激減してます。しかし、注目されていないのは弓矢で狙撃したり、瞬時に仕留めて直ぐに移動してたためです。あとはウィルの白銀解放の方が目立ってました。
あとラグナは『剣製』と言う魔法を名付けられましたが、既に塔の進学が決まっていたため、大々的に知られる事無く終わりました。
他に質問がある方は出来る限り答えるようにします!
皆さん本当にありがとうございます!!
次回から塔編です
派閥どないしよ