錬鉄と鍛造の贋作者 作:英雄に憧れた一般魔導師
「この落ちこぼれは私と特訓する!」
「ええっ!?ユリウスどういうこと!?」
借り詰所にてラグナの目の前で起こっている光景がこれである。ダンジョンに誘われそうになったウィルをユリウスが間に入って特訓宣言をしたのである。
「今のお前に必要なのは仲良しごっこじゃない!」
机を強く叩きユリウスは言う。
「『魔剣』とかいう力を制御することだ!それを私が手伝ってやる!」
ラグナは珍しいものを見る目を向けながら二人を見ていた。ウィルも突然の事であり戸惑いながら
「それは助かるけど……どうして……そんな事を?」
「……今まで色々あったが……私もイグノール達のように……お前のことを『仲間』だと思っているんだ」
氷の花を作り、表情を作り、声色も友好的な声色でウィルに言う。言われたウィルも目を輝かせて
「な、『仲間』!!ありがとうユリウス!!お願いするよ!」
そしてそのまま2人が走っていく様を見て残ったラグナとキキは互いに顔を合わせる。
「ウィルってあそこまでチョロかったのか?」
「ナー」
若干呆れた様子で二人の背を歩いて追いかける。
そして合流しユリウスの特訓内容を聞く。
ユリウス曰く、自力で『魔剣』を発動できるようになるようにする。そしてこの一週間で行うのは魔力の『定着』。目標は打倒ウーズ。どんなに弱い魔力でも砕け散るため、制御が可能となれば遅るるに足らずということである。そのためにユリウスが出す守護者を壊さずに立ち回りを行うというものだ。
「なるほどな、それじゃあオレは書庫でも行って『魔剣』の情報を探す」
「ああ、そうしていろ。そっちの方がせいせいする」
ユリウスと言葉をかわし、ラグナは書庫に行く。そしてクレイルウィに頭を下げて本を読み漁る。が
「無い……それらしい記述が何も無い……」
机に突っ伏しながら溜息を吐く。書庫に潜り3時間。それらしい書物を読んでは戻しを繰り返しをぶっ通しで3時間続けた。
(オレの解釈では魔力を纏うのでは無くて、魔法そのものを利用して『魔剣』としている。杖と剣……その2つが無いと成立しない特異な魔法。だとしても常時二人組で動くのは状況にもよるけど不可能と考えたら、自身で装填する方法があるはずだ。もしも、杖と剣の性質を併せ持つ人物がウィル以外にも居たら、そいつも使えると言うことになる。魔女王の500年の間に何かしらある筈だ……。もしかしたら……魔法と『剣製』で似たようなことができる可能性があるのかも)
それからも探すが時間はあっという間に過ぎるが体力もあっという間に消費される。遂にはラグナは本に顔を埋めていた。
「『魔剣』の事もそうだけど境界祭の時の君の『剣』もそれらしい情報が無いけどね〜。ウィル・セルフォルトの『魔剣』もそうだけど、君の『剣』も十分異常だとは思うけどねぇ。特に最後に出した剣、とんでもない魔力を感じたし」
クレイルウィが言うがラグナは苦笑いを浮かべるしかない。
「ま、まぁ。それに関しても手がかりは無かったですね。……クレイルウィさん、資料を探していただきありがとうございます」
「いいってことよ!後輩が助けを求めているのに助けない訳には行かないでしょ!それに境界祭では借りもあるしね」
境界祭での一件はまだ記憶に新しい出来事である。ウィルの覚醒と活躍でほとんど埋もれているが、ラグナも多くモンスターを倒した。なんなら、襲撃の際に立て直す時間と猶予を生み出したのはラグナなのである。色々と活躍自体はしたのだが、弓矢で攻撃をしたり、仕留めたら次に移動するというのを繰り返していたため、ほとんどの人がラグナを捕捉する事なく称えられることも無かったのである。そう、戦場を全体で見ている人物達を除き。
「境界祭の時にクレイルウィさんを直接助けた記憶は無いんですけど……」
「細かいことは気にしない!ほら、もう少し頑張って調べてみなよ!」
さらに一時間が経過し、何の情報も得られなかった。クレイルウィにも礼を言い一旦合流すべく歩いていた。
「本当にここは広いな……。慣れていないから普通に迷子になりそう……」
そう呟き歩いていると後ろから殺気を感じ取り、咄嗟に前方に大きく飛ぶ。すると先程までいた地点に魔法が飛んできたのだ。
「アンタらは……上院の魔導士か」
三人の上院の魔導士が杖を向けラグナと対峙する。
「上からのお達しだ……我々の庭で好き放題振る舞う不届き者どもを懲らしめておけと。目障りな鍛錬、情報収集ができぬように……!」
その言葉を聞いたラグナは切り替えて目を細めながら小さく息を吐き
「開祭を突破出来ないように……か、それで持っていた筈の魔導士としての尊敬できるであろう大層な誇りまで犬に食わせてしまっている……。それなら世話なんていらないな」
心底呆れたように言う。それはどんな苦難にも諦めず戦い抜いた男を知っているからこそ、目の前の人物達が自分達の足を引っ張ろうとしていることが許せなかったのだ。それを聞いた魔導士達は目の色を変えて
「貴様に何が分かる!!」
「塔に上がって色を与えられない者達の苦しみがぁ!!」
次々と放たれる魔法。その属性に対応するようにラグナも同じ属性の魔法を放ち相殺する。
「分からない……。そんな泣き言……アイツは言わなかった……!」
ラグナは自身の魔力で身体強化を行い、魔法を回避し、肉薄する。一人の魔導士を腹部を殴りつけ失神させ、一人を雷の檻にて拘束、電撃により無力化し、もう一人を建物から氷壁を出現させて後頭部を強打させて意識を刈り取る。
一瞬で片付けて言う。
「杖の墓場……確かに、墓場に相応しいな。今のアンタらを見ると……」
ラグナは他の二人も襲撃を受けているのでは無いかと考えて走り出す。すると戦闘音のような衝撃と魔力を感じ取ることが出来る。ラグナは急いでいくと丁度よくウィルがユリウスを守っている所であった。
「そうだよ、僕は優しくされたらころっと好きになっちゃう馬鹿なやつなんだ」
そんな言葉を言われたユリウスがウィルを殴りつけてまるでコントのような事をしていた。ラグナは苦笑いを浮かべながらも、上院の魔導士とウィル達の間に剣を投影し地面に刺し上から降りてくる。
「悪い、オレも遅れた」
「ラグナ!無事だったんだ!」
「モンスターに比べたら大したことない。それに、こっちはほとんど魔力を使ってない」
地面に刺した剣で牽制したので杖を構える。剣は勿論消す。ただの土魔法と言う認識に留めさせる為に。
「なんだコイツら」
「関係ない!今すぐ潰せ!」
「来るぞウィル、遠慮なく気絶させるぞ」
「うん!ユリウスは下がってて!」
「私に指図するなぁ!」
その直後、上院の魔導士を炎が囲み込む。さらに上から
「魔法をそんな風に使ってはダメ。学院で教わらなかった?」
その声を聞いた三人が上を見ると赤と青の髪色の女性の魔導士が箒に乗り見下ろしていた。
「あ、あなたは?」
ウィルが尋ねると、その女性は答える。
「私はケリドウェン。素敵な青春を見せてくれた代わりに貴方達の臨時教師をさせてくれない?」
「ケリドウェン?」
ウィルとラグナはピンと来なかったがユリウスは知っている様子で話し始める!
「その名前は『発掘機関』と並ぶ魔法学院の七不思議の一つ夜な夜な生徒を攫って実験台にするという『鉄槌の魔女』!」
「話だけ聞くとろくでもない奴だな」
ラグナはユリウスの話を聞き警戒するがケリドウェンは首を横に振り
「そんな怖〜いことしてないわ。面白そうな生徒を見つけて鍛えたり、導いたりしているだけよ?今、目の前にいる貴方達みたいにね」
「鍛える……導く?」
「オレ達を?」
ウィルとラグナが聞き返すと
「そ♪知らないと思うけど、私はず〜っと貴方達の事を見ていたのよ」
ユリウスが思考を巡らせるが、それよりもケリドウェンが水の魔法で三人を絡め取る。
「「「うわああ!?」」」
「詳しい話は後で、先に移動しましょう。ここにいると『上院』の追っ手が来てしまうから。今は騙されたと思って騙されてちょうだい♪」
「それって結局騙してるってえええええ」
三人はケリドウェンに誘拐される形で窮地を脱する。
箒で床を鳴らしそれを合図として、壁のレンガが剥がれていき、扉が現れる。
「はい、到着〜!」
独身魔女の秘密基地。扉を潜ると豪勢な部屋にたどり着き、ケリドウェンが杖を振るうと料理と飲み物が用意される。
「さぁ、遅いけど夕飯にしましょう!私のお手製よ!」
豪勢な料理の前にウィルは目を輝かせてヨダレを垂らし、ラグナは料理の見た目に感心していた。
(これほどの料理を準備して、助けてくれたのか……。すごいな)
「怪しい魔女の料理なんて食べるわけ――――」
ユリウスが警戒心を出しながらに食べないと言おうとした瞬間
「いただきます!!」
ウィルは食べ始めていた。ユリウスは
「食うなっ!!」
「キキが平気って言ってるから大丈夫」
キキも皿の料理を食べて美味しそうに笑みを浮かべていた。ラグナもその様子を見て食事に手をつける。
「それにしてもここは?」
ユリウスは辺りを見渡しながらにケリドウェンにきく。
「クレイルウィが第一階節にこっそり作っておいた隠れ家よ。頼んで使わせてもらってるの。あの娘は私の弟子だからね♪」
そう言われて驚くウィル、納得するラグナとユリウス。ウィルは話を聞きながらも美味しそうに夕飯を食べる。ユリウスも卓につき
「それで?この間抜けを利用して一体何を企んでいる?」
警戒しながら尋ねる。その様子に見かねたウィルは
「ユリウス?この人は僕達を助けてくれたし、クレイルウィさんのお師匠だって……」
「お前は少し人を疑う事を覚えろ!」
そこからユリウスはウィルに可能性の話をする。その間ラグナは食事を食べながらこの人なら『魔剣』の何かを知っているのでは無いかと考える。
「用心深いのは優秀な魔導士の証ではあるけれど……それじゃあ」
ケリドウェンがそういうのと同時に周囲に無数の魔法矢群が展開される。しかも光を除く全属性である。つまり、ラグナと同様の複数属性者である。
「私がその気になれば、今の貴方達なら2秒で制圧できる。……銀髪の子は2秒で制圧は到底難しいでしょうけどね。これで、証明にはならないけど納得はしてもらえないかしら?」
ケリドウェンは三人を見据えながら静かにそういうのであった。
密かに『魔剣』を再現出来ないかと思考するラグナ。
次回特訓回
同じ複数属性者のケリドウェンから何を学ぶ?
次回もよろしくお願いします!
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