錬鉄と鍛造の贋作者 作:英雄に憧れた一般魔導師
「私に悪意があれば貴方達はとっくにこわ〜い魔女に食べられてるって」
笑みを浮かべてケリュドウェンはそう言い、魔法矢群を消す。ユリウスは冷や汗を流しながらも引き下がらず
「まず、腹の内を明かせ。一体、何を企んでいるのか。じゃないとこの馬鹿の教師など、私が認めない」
「ユリウス……」
ウィルが嬉しそうに目を輝かせ、ユリウスの方を見る。ユリウスはそんな視線を感じ取り
「勘違いするなよ!!お前を利用するのはこの私だ!横から奪われるのが我慢ならないから抗議しているまでだ!私は決して!!決して優しくなんかないんだからな!!!」
ウィルはそのユリウスの剣幕に耳を押さえながら受け止めていた。ラグナも思わずを塞ぎ、苦笑いを浮かべながら内心
(何だか見ないうちに仲良くなったな二人とも)
と思っていた。そんな微笑ましいと言う視線を感じたのか
「そんな目で私を見るな!!」
矛先がラグナに向く。そんな光景を微笑ましそうに見ながらケリュドウェンは話し始める。
「まず、私は『
その言葉に全員の視線がケリュドウェンに向く。
「力になってあげられるかもしれない……!そう思って現れたのが一つ目の理由。そして、二つ目。『上院』の動向。少々宜しくない方法でウィルとラグナ……貴方達を囲おうとする勢力が存在する」
思い当たるのは上院の首長をしているクロイツの顔が全員浮かんだ。
「本当はね?貴方達自身の力で新たな景色に辿り着くのを見守っていたかったんだけど……そうも言ってられなくなった。貴方達二人になって欲しいのは実験動物なんかじゃない。だから、この時機で力を貸そうと、そう思ったのよ」
そう話すケリュドウェン。ラグナは考える。
(『剣製』を調べたがっているということか『上院』が。残念だけど、調べても成果なんて得られないのが分かりきっている。オレ自身も、説明には困る力だ。それこそ、校長やフィン……
難解と言うのも多少あるが、それ以上に理解出来ない力であり"この世界"では異質であり、異なる系統であるのは明白である。誰も詳しく言及せず、そういう魔法があると言う認識故、大きな騒ぎにはなっていないのである。異質さで言えばラグナの方がイレギュラーである。ただ、彼は通常の魔法も扱えるため、目立つことは無かった。
「ユリウス、ラグナ、僕はこの人を信じたい」
思考していたラグナは顔を上げて、ユリウスとウィルの方を見る。ユリウスは頬杖をついた状態で
「勝手にしろっ。さっさと利用価値ある方に乗り換えてしまえ!私だってもとからそのつもりで手を貸してやっただけだからな!」
そっぽを向きながらに言う。ウィルは慌てて
「ええっ!?いやっ、別にそういう訳じゃあ!?」
微笑ましくやり取りを行う光景を見ながらラグナは
(とりあえず、色々考えるのはウィルの件が終わってからだな)
そんな様子を見ていたケリュドウェンは三人を抱き寄せて言う。
「話もまとまったし、貴方達のパワーアップ訓練!ケリュドウェン先生がつけてあげる!」
「はっ、はい!」
「それじゃあ早速だけど、ウィル。脱ぎなさい」
「………はい?」
そして服を脱がされたウィルとそれを見るウィル以外の人物が三名。恥ずかしがっているウィル。疑うユリウス。成り行きを眺めるラグナ。ラグナは巻き込まれなかった事だけ幸いだと思ってみていた。
そこから話が進む。ウィルの身体中の傷でも一際目を引く背中の傷。そして、その背中の傷が次の扉を開く『鍵』になると。ユリウスとの特訓の方向性は正しかった。『定着』させた魔力を制御すれば『魔剣』に至る発想は正しかったのだ。事実、ウィルの『定着』そのもの、魔力を溜め込む自体は達成はしていた。ウィルの体質、外に放出することが出来ない代わりに溜め込む性質がある。外部の魔力に依存するが、今まで『装塡』した魔法以外も使ったのだから。
「今からする事はあれの応用。血と記憶に紐づいた『魔法』の物語を想い起こすで貴方は新しい『装塡』ができるようになる。他者の魔法に依存しない『想塡』が」
ケリュドウェンは魔法を使う。魔法陣の中心に立つウィル。それを見守るウィル
「誓約をここに、剣の忌み名を伏せ、御血筋を辿る。鍵穴をここに、魔女の御名を借り、今 物語を開く。いってらっしゃいウィル」
ケリュドウェンはそう言い魔法の名を告げる。
「解錠―――
魔法陣が光り輝き、ウィルはその場に倒れる。
「大丈夫なんだろうな」
「大丈夫よ。今は魔法で記憶を巡って『原点』を見に行っているから。そうね、ベッドに寝かして起きましょう」
ケリュドウェンが杖でウィルを浮かして運ぶ。ベッドに寝かしたあと、ラグナの方を見る。
「それじゃあ次は貴方ね。貴方の力……『剣製』は貴方自身は十全に使えているのかしら?私は『魔剣』についてはほんのちょっぴり知っているけど、貴方の『剣製』に関してはまるで情報はないわ」
ケリュドウェンが困ったように話す。ラグナは首を横に振る。
「大丈夫です。この力については誰よりも知っている」
それを聞いたケリュドウェンは少し安心したように頷く。
「それじゃあ同じ複数属性者としての特訓が良いかもしれないわね。貴方の魔力量と出力を見た感じ、全然上を目指せる筈よ!この一週間で鍛え上げてあげるわ!」
「え?あっ、はい」
引きずられる形で運ばれるラグナ。それを見ながら、ユリウスは椅子に座り料理を食べながら
「とりあえず、私は疲れた。少し休む」
現実逃避に近い形で料理を食べることにした。
「なるほどね、この6年間『剣製』をメインで鍛え上げて来たのね。それだけじゃない。生まれてたからドワーフと過ごす過程で鍛造も鍛え上げていたから、才能はあるけどもあのメンバーの中では魔力量と魔力出力の割に目立たない訳ね。しかも、4〜5年は魔力を制限して魔法を使っていたと来てようやく最近中級魔法までなら無詠唱で唱えることができるようになったと」
ラグナは深呼吸しながらケリュドウェンの話を聞く。特訓の過程で魔法でできることを知りたいと手合わせを行っていたのだ。驚かせることは出来たが、錬度、経験が桁違いであり、魔法戦ではほぼ勝ち目がない状況で叩きのめされた。しかして、ラグナも消耗自体は大きくは無い。
「ま、まぁ、その通り……です」
「なるほどね。魔力操作自体は、今年の塔の進学者の中でも随一と言ってもいいわ。けど、『剣製』を除く魔法以外での魔力操作に関してはだけど」
ケリュドウェンは目を細めながらに言う。そして推察する。
「貴方は魔法を使う時は必ず使うことが出来ると確信しているものしか使わない。1年、2年の時に暴発させた事が根にあるみたいね」
ラグナは押し黙る。ラグナは『剣製』『鍛造』の技量を己のものとすべくこの六年間を費やしてきた。その為、よどみなく使うことができる。魔法も現在は中級魔法を無詠唱で使えるが、自信がないのである。2、3年の時に膨大な魔力量で暴発させて怪我人を出したことがあり、それ以来卒業するまで自らに制限をかけた程である。簡単に言えばようやっと自らの本来の魔力で魔法と向き合うことができるようになったのである。
「勿体ないわね、魔力量や魔力出力で言えば、
ケリュドウェンは魔法矢群を展開しながらにラグナに向けて言う。ラグナはゆっくりと立ち上がり、再び特訓を開始する。何度も叩きのめされ、講義も叩き込まれ、鉄を、剣を鍛えるようにラグナは鍛え上げられた。
そして六日経過する。ラグナとユリウスはウィルが起きたか確認するためにウィルが眠る部屋に行く。覗き込んだ瞬間ウィルが目覚める。
「おい!目を覚ましたのか!?」
「起きたなら準備急ぐぞ!もう第二開祭が始まる!」
しかし、ウィルは何かを実感するように拳を見ていた。
「『定着』している魔力……貴方が宿す源は掴めた?」
「掴めました」
「貴方が歩んだ物語は『想起』できそう?」
「いつだって!」
ウィルのその答えを聞き、ケリュドウェンは満足そうに言う。
「じゃあ行きなさい!新たな魔剣譚を記しに!」
「はい!!」
ウィルとユリウス、ラグナが走り出す。そして終了ギリギリに滑り込むように
「「「遅刻してすいませんでしたぁぁぁぁ!!!!」」」
「ユリウス・レインバーグ!」
「ウィル・セルフォルト!」
「ラグナ・グレイス!」
「「「ここにいます!!!」」」
三人仲良く現れたのだ。
「ラグナ!ウィル!」
「ユリウスも!」
上院のクロイツは忌々しげに三人を見ながらに
「
クロイツが問う。
「構わないよ」
「……はい!」
キャリオットとウィルが返事をし第二回の開祭が幕を開ける。ユリウスは始まる直前に氷の派閥、エルファリアから祝福を授けられて一足先に氷の派閥入りを果たす。ラグナはその後ろでウィルに言う。
「行け、ウィル。お前の新しい力とその剣の真価を示せ!!」
ウィルは構える。イメージするには一冊の本。ページをめくり、栞を挟み、読み上げる。今までの道を『想起』させる。
「想塡完了―――
剣身が開きその間から氷属性の光の刃が展開される。
一振でウーズを切り伏せる。
「強い……!!」
「威力そのものは外部の『装塡』より劣るようだが……」
「それでもなお、中位魔法以上の破壊力……これは驚いた」
見ている皆は驚きの声をあげる。そんな中ケリュドウェンとフィンもその光景を見ていた。
「『塔』を上らせた君の意思を尊重し傍観していたが上手くやったじゃないかケリュドウェン。いや、
「……この姿の時はケリュドウェンと呼んでくれる?老化魔法を自分にかけるのはしんどいのよ?」
他愛のない話をしながら
「大体、貴方もこっそり裏から手を回してるじゃない。完治していない状態のラグナに希少な『双季の宝玉』を与えてあの剣を作らせたの貴方でしょ?本来、強度とギミックは相反するものよ……あの子、よく鍛え上げられたわ」
「新たな第五元素の使い手だ。あれくらい目を瞑ってくれてもいいだろう?それに見込んだ鍛冶師は本当にいい腕前だ」
フィンは未だ無色のラグナを見ながらに言う。その間もウィルは戦い続け、あっという間にウーズを全て倒してみせる。十分に提示された条件を満たしたと言えるものだがクロイツは引き下がらず。さらに慎重にならないと行けないと他の派閥も言い出す始末である。そんな中、雷の派閥頭領、ゼオが動き出す。
「はッ!話になりゃしねぇ」
手すりに飛び乗り言う。
「こいつを見極める方法なんざもっと単純でいいだろうが」
「ゼオ?」
エルファリアがゼオの方を見る。そして、ゼオは構える。
「おい、クソガキ『一撃』だ。『一撃』凌いで見せろ。これを超えたならてめぇに『証』をくれてやる。後ろのガキは何もすんじゃねぇぞ。テメェは後だ」
ラグナは動くなと釘を刺される。
「轟け 雷哮」
短文の詠唱。しかして放つ人物は至高の五杖の一人である。
「逃げてぇ!!ウィル!!!」
エルファリアの声も届くことなく放たれる。
「
轟音が響き渡る。煙が舞い上がり、何も見えない。だが、
「ぎ……ガハッ……装塡……完了ッ!
ウィルは装塡をすることで威力を抑えたのだ。防御も回避もできない必殺を凌いで見せたのだ。
「くっ……ハハハハハハハハッッ!!!凌ぎやがったなクソガキ!!
ゼオは高笑をしながらウィルを認める。それに異を唱えるように
「お、お待ちください!ゼオ様!派閥入りを定める厳粛な開祭をこのような方法で進行するなど……」
「なら、俺の一撃を凌げるな?」
示す価値。ウィルにできて上院首長であるクロイツに出来ない道理はないとゼオが手を向ける。クロイツは怯えた様子でウィルの資格を認めた。それと同時にクレイルウィが派閥入り決定の宣言をする。その後はエルファリアとウィルの感動的な話や光景があった。そしてウィルが派閥を選ぼうとした瞬間。試した人物のゼオが
「コイツは俺がもらう」
エルファリアから強奪しながらに宣言をする。感動的な話で終わりそうだったが、簡単に話は終わらない。怒りに震えながらエルファリアは
「なに言っているんですか??空気読めないんですか?愚かなんですか?愚劣なんですか、泥棒なんですか、間男なんですか、邪教なんですか、罪人なんですか、凍りついて滅ぼされたいんですか???」
「エルフィ落ち着いてぇ!?」
そんな状況だが、ラグナは遠い目をしながら
(また、忘れられるのか……)
やり取りを見ていた。そんな中
「ウィルは絶対譲りません!そしてウィルの相棒、友達としてラグナも譲りません!!」
「悪ぃが俺もその二人は欲しいだ。『欲に鎖は繋げねえ』俺の掟だ。宝も酒も女も野郎だろうと欲しけりゃ奪う!奪わなけりゃそれは俺じゃねぇ!」
ゼオの持論にエルファリアも一部同意する。
「奇遇ですね……私もウィルだけは譲るつもりはありません。そしてウィルを譲れない以上……ラグナも譲る気は無い!邪魔な存在はブチのめします!」
「ハッ!いいぜ
「上等です!」
至高の五杖同士の決闘が起こりそうになっている中、ラグナはいよいよわけが分からないと言った表情になる。クレイルウィが他の二人に止めるように言うが
「無駄だと言いきろう。私達では介入したところで先延ばしになるだけだ」
「あの怠惰女と蛮族が勝手に殺し合えば私の溜飲も下がる」
止める気が全く無かった。しかしキャリオットが言う。
「ラグナ・グレイス。私も一つ君に資格の提示としてやって欲しいことがある」
立ち上がり、ラグナを見下ろしながらに言う。ラグナは身構える。キャリオットはとてつもない難題を言う。
「これから決闘するであろう二人と混ざって君の本来の力を見せて欲しい」
「は?」
「何を言って……!」
ラグナとエルファリアはキャリオットの言葉を疑う。いや、その場に居る大半が耳を疑った。だが
「いいじゃねぇか!!俺もお前の『剣』を見たかった!!いい機会じゃねぇか!!お前の資格は確実に証明される!誰も文句なんて言わねぇ!!」
「もしも、二人に勝つようなことがあれば好きな派閥に入って構わない」
キャリオットが言う。流石に止めようとするクレイルウィだがキャリオットは首を横に振る。
「今のままじゃ、彼を推し量れない。なら、全力を出さざるを得ない試練があった方がいいと考えた。私にしてはかなり大胆な案だとは思うけどね」
「私が興味あるのはあの『剣』だけだ」
大胆所か、死ねと宣言しているものだと大半の人間は思った。エルノールもラグナの『剣製』には注目していた。エルファリアは心配、止める側の人間であった。
「待ってください!ラグナを巻き込んだら……!」
「ゴタゴタ言うんじゃねぇよ暴君。そのガキが入ったくらいで気にして負けるほどの欲なのか?大したことねぇな!」
ゼオのその言葉を聞き、エルファリアはラグナに向かって言う。
「せめて、死なないように一撃で仕留めるから……!」
凍てつく冷気を放ちながらラグナに言う。一瞬で切り替えて敵対する。
「二人をぶちのめして、ウィルとラグナを氷の派閥に!」
「てめえ等を叩き潰して俺がもらう!!」
二人からボコられる宣言をされるラグナ。逃げ場なんて無い。しかし、頭にあるのはウィルが乗り越えたこと、そして記憶にある二人。頭には言葉が浮かんだ。
(何を託された?何を鍛え上げた?証明しろ……オレは……魔導士であり、錬鉄と鍛造の贋作者だ)
ラグナの覚悟が決まる。両手に白と黒の剣を投影する。
「参戦と言うことで良いんだね?」
キャリオットの最後の確認に頷くラグナ。コレット、リアーナ、他の面々からの止める声が耳に入るが届かない。気にする余裕すらない。
頂点に座する杖達の宴にもう一振の『剣』が参戦する。文字通り、その身をかけて証明するために。
最高難度の証明が今始まる。
エルファリアは、一年時からウィルと一番仲良くしてくれたラグナを同じ派閥に入れたい。氷魔法も使えるから、色々教えたいし感謝している。ウィルの剣を鍛え上げた親友だし、だから譲りたくはない。
ゼオは境界祭の時や第一開祭のときから目をつけている。さらに剣の有能性を見い出してほしい。あと魔力放出での高速戦闘は通じるものがあって面白れぇとなっている。
キャリオットは当初はここまで難易度の高いことはしようとは考えてなかった。時間も限られているし、実力があるのは境界祭で知っているから、まぁ大丈夫かなと言う感じ。本当に危なかったらこそっと回収して派閥入りさせようかなとか考えている。
エルノール、見ても全く理解できない魔法を使うということで興味があるが表向きは『剣』に興味があるとしている。
感想、お気に入りよろしくお願いします。次回は宝具は色々、オリジナル技も出す予定です。
ラグナは生き残れるのか次回もよろしくお願いします!