錬鉄と鍛造の贋作者   作:英雄に憧れた一般魔導師

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こんなにもお気に入り、感想をいただけるとは思っても見ませんでした!ありがとうございます!

前話少し変更しましたご了承ください!


大祭前夜

ゴーレムを破壊する実技が行われている時のことである。シオン、コレットは難なくゴーレムを破壊し突破する。

 

「シオン・アルスター、コレット・ロワール共に合格!!」

 

シオンの単位数は9889であり、コレットの単位数は7340である。この時点で上院入りは確定しているのだ。もちろんこの実技にはウィルも参加しているが魔法を扱うことが出来ないウィルは為す術なくゴーレムから一撃を貰っていた。

 

「魔法も使えず『ゴーレム』に傷一つもつけられないとは!」

 

「流石、『筆記のみの優等生(ラーナー)』!『実技』の万年落第生!」

 

ウィルを嘲笑する者達の笑い声がラグナの耳に入る。現状のウィルの単位数は5405であり、卒業に必要な6000までもう少しかかるといった状況だが、目標は塔に行くこと。それ故にまだまだ単位を取らなければ行けないのだ。ラグナは嘲笑している人物達へ一瞥を向けるが直ぐに興味を無くしゴーレムと対峙する。ゴーレムの振り上げた腕をすり抜けるように前進しながら回避し、杖を向け、至近距離から放った魔法でゴーレムを破壊する。

 

「ラグナ合格!リアーナ合格!!イグノール合格!!」

 

リアーナ・オーウェンザウス単位数10100、イグノール・リンドール単位数10075。そして、ラグナ・グレイスの単位数は7090である。上院進学条件の7200にはあと少し届かないが、十分に射程圏内と言える単位数である。

 

「ユリウス合格!!」

 

ユリウス・レインバーグ。単位数10048。リアーナ、イグノールと並び1万オーバーの一人である。実質的にこの三人が学院の3トップである。そのすぐ後ろをシオンが走っているという状況である。

 

(皆、特化している分、魔法の威力、精度は凄いな。オレもうかうかはしてられない。けど……どうしても、赤い布を外しての運用となると精度がままならないし、他に鍛え上げたい物が多くある。どうしてもそっちを優先してしまう)

 

右腕に手を添えながらラグナは今回の授業をこなしていた。その日の昼食。

 

「ウィルも『魔導大祭』でスカウトされるしかない!」

 

「ええぇ……」

 

「……」

 

コレットの発言に戸惑うウィルと食事をしながら話を聞くラグナ。

 

「だってやっぱり『筆記』と『実習』だけで『上院』へ進学なんて現実的じゃないもん!単位が7200未満でもその場でスカウトされて『塔』に上った生徒の実例はあるし」

 

「まぁ、確かに……」

 

この時期になるとそれぞれが『一発逆転』を狙って殺気立つ。『魔導大祭』とは二年に一度開催されるリーデン魔法学院の祭典であり、様々な競技があり『塔』からはスカウト目的で上級魔導士達が見に来るのだ。

 

「いい?ウィル、ラグナもだけど。魔導大祭は事実上『塔』の各派閥の『生徒争奪戦』……『上院』の進路はほぼここで決まると言ってもいい。中でも『雷公の杖(トルゼウス・ファッジ)』『炎帝の杖(インスティア・バルハム)』『妖聖の杖(エルリーフ・カナン)』『氷姫の杖(アルヴィス・ヴィーナ)』。『光皇の杖(マステリアス・ノア)』を除いた現至高の五杖が率いる四大派閥!このどこかに指名されれば『塔』の一員は確実……!」

 

コレットの言うことはその通りだが問題もある。

 

「学院の卒業課程を無視して引き抜かれるなんて早々ないよ」

 

「それこそ、上級魔導士顔負けの魔法を披露するとかしないと難しいだろうな」

 

ラグナが腕を組みながら言うとコレットは

 

「ラグナは珍しい複数属性者(ムルトス)じゃない!」

 

「そうだよ!光以外の魔法に適性があるのは凄い才能なんだよ!」

 

コレットとウィルはラグナに言うがラグナは

 

「けどな、使える魔法が初級から中級で出力も安定しないし、上級魔導士顔負けの腕前ならそれは満たせないだろ?」

 

そう言うと二人は黙り込む。しかし思いついたように

 

「でもでも!それだけじゃなくて!魔導大祭では『発掘機関(ウォッチャー)』が現れて優秀な人材を『塔』に攫っていっちゃう噂も!」

 

「『発掘機関(ウォッチャー)』って……それ学院の七不思議でしょ?」

 

ウィルがそう言い、過去に魔導大祭出ての悪目立ちのトラウマについて話して断固として出ないと話していた。そしてそういった直後ウィルは思い出したように

 

「そう言えばラグナ、この間のエドワルド先生との補習の時の剣ってどうやって準備したの?」

 

「あっ!それ私も気になる!魔法で作ったの?」

 

ラグナはその話を振られ内心

 

(覚えていたのか……バレるのは覚悟してたけど……直接は見せてないから何とかなると思ってた)

 

自分の見立ての甘さに頭を抱えそうになるが何とか誤魔化そうと

 

「土魔法と鍛冶と魔導具作りの応用で作ったんだ。即席だったから長持ちはしなかったと思うんだけどどうだった?」

 

勿論嘘である。ラグナ本人が消そうという意思を持つか、決定的な破損がない限りは残り続けるが正しい。ラグナの中にはウィルの剣の情報がしっかりと残っているためそれを形作ったのみである。しかし、この世界でそれを理解できる魔導士が一体何人居るのか不明である。

 

「コレットが剣を持ってきてくれた時に塵になって消えたよ。最初は焦ったよ」

 

「本当よ!ウィルの剣が二本あって、私が持ってきたの偽物なのか焦ったもん!」

 

二人の言葉に苦笑いを浮かべるしかないラグナは

 

「まぁまぁ、それで何とかなったならいいんじゃないのか?」

 

軽い調子で言い席を立つ。

 

「そろそろ授業時間だな。オレはダンジョンに行くけど二人は授業だろ?ウィル、コレット」

 

「あのっ!ラグナ、ウィル!放課後はどうするの?実習付き合おうか?」

 

コレットが二人に声をかけるが

 

「ごめん、コレット今夜はジーナさんの店でバイト!」

 

「オレはこの後行くし放課後は秘密の鍛錬があるから。あっ、ジーナに今日は来れないって言っといてくれウィル」

 

「分かった。伝えとくけど、皆寂しがるんじゃない?」

 

「次の休みに工房に顔を出しに行くから大丈夫。それにこの間も行ったから」

 

そう言うとウィルは先に授業に向かいラグナはダンジョンに向かう。コレットは机に突っ伏して頬を膨らませていた。その後ラグナは自室に入りいつも通りの鍛錬を行い、それに追加でランニングと筋トレを行う。魔導士らしからぬ鍛錬だが、ラグナにとって大切な事である。そして、教師からダンジョンに入る許可だけを貰い、7層に向かい、布を外し、弓と矢を投影し、モンスター相手に弓矢で戦う。

 

(あの赤い英雄はもっと速かった筈……よく見て動きながら!)

 

高速で動きながら正確に射抜いていく。ダンジョンで誰も来ないであろう階層にて無断で鍛錬を行っていた。数時間、同じ訓練を集中を切らすことなく続けた。その一射一射に乱れなく、相手の動きを的確に見定め射抜く姿は狩人のそれと言っても差し支え無い。

 

ある程度モンスターを仕留めたあと振り返る。

 

(あの人ならもっと無駄なく行けたのだろうか。それよりも今は魔法をもっと磨くべきかもしれない。この力に頼りっきりじゃ……)

 

ラグナは強く拳を握りしめる。赤い布を巻き直し時間を確認する。まだ店が開いている時間だったため、顔を出すことにした。そして、怒っているウィルとざわつく店の様子に首を傾げることになるラグナ。近くにいたウィルの同室のロスティに尋ねる。

 

「何があったんだロスティ」

 

「やあ、ラグナ。まぁ、簡単に言うとユリウス達が来てドワーフの皆を侮辱してウィルが怒って魔導大祭に出ることになったんだ。奪冠で戦うことになって」

 

「……なるほど」

 

ラグナは事情を理解した。その後ウィルがラグナに気づいて

 

「ラグナ、コレットと僕と三人で奪冠に出てくれない?」

 

そう言ってきた。それを聞いたドワーフの皆も盛り上がったのだがラグナは残念そうに言う。

 

「ウィル、オレの単位数7090だけど大丈夫か?」

 

「え……確か奪冠の参加条件総単位数が21000以上で僕が5405、コレットが7340だって言ってたから……」

 

ラグナは遠い目をして言う。

 

「19835だな……。1165足りない」

 

「あっ……」

 

ウィルは固まり、ラグナも大きく溜息を着く。

 

「悪いけど……別の人を誘った方がいいと思う」

 

何とも言えない空気が店を支配したのは言うまでもない。

 




ラグナの複数属性者について

ラグナの複数属性者はラグナ本来の才能だが、錬鉄の英雄、鍛冶師の記憶、技量、能力を得た関係でそっち方面にスキルツリーや鍛錬を費やしているため、宝の持ち腐れ状態になっている。6年も経てばそんなもんと見られている。教師陣からももったいないと言われている。
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