錬鉄と鍛造の贋作者   作:英雄に憧れた一般魔導師

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舞台に上がらなかった者

魔導大祭当日、ラグナは観客席に座り、観戦していた。奪冠(クラウン・アタック)に単位不足で出場できなかった以上、観戦して過ごすしかないのだ。

 

「『塔』のスカウトだけじゃなく、他所の魔導機関からも来ているみたいだな。今のオレは観客だから関係ないけど」

 

ラグナは競技を観戦しながら、同学年の生徒達の様子を眺めていた。

 

(見ているだけなら、鍛造しに行きたいな……。けど、ウィルはドナン、ドワーフの為に出たくなかった魔導大祭に奪冠に出るんだ……。友人として、見届けないといけないよな)

 

ラグナは深呼吸をして魔導大祭を観戦する。天競(スカイ・レース)はリアーナの優勝で幕を閉じ、彼女は二連覇という偉業を成し遂げていた。ラグナは競技で魔導士を見ながら、自分も出れば良かったかと少し首を傾げて思考するが、奪冠に出場できず、力になれない以上、今は成り行きを見守るしかない。

 

(そうだ、奪冠(クラウン・アタック)前にウィル達に会っておこう。緊張はしていないとは思うけど、友人なら声をかけるべきだよな)

 

ラグナはそう思い、観客席から立ち上がり、奪冠の控え室に足を運ぶ。控え室ではウィルが念入りに準備をしそれをコレットが眺めていた。

 

「気合いは十分といった表情みたいだなウィル」

 

「「ラグナ!?」」

 

突然の訪問に驚いた様子で声をあげる二人。軽く手を振り答えるラグナ。

 

「すまない、オレの単位数が少ないばかりに組めなくて」

 

「いやいや!ラグナが悪いわけじゃないよ!それを言うなら僕の単位数が少ないからなんだし」

 

「ウィルも頑張ってるわよ。ただ、参加条件が三人での単位数が21000以上必要だったから仕方ないわよ。こればっかりは……」

 

コレットも苦笑いを浮かべながらに言う。ラグナは気になった様子で

 

「そう言えば、三人目は誰を誘ったんだ?」

 

「少し嫌だけど来ると思うわ」

 

ラグナが首を傾げた直後、扉が勢い良く開き、シオンが入ってきた。

 

「―――ってなんで落ちこぼれがいるんだぁぁぁぁ!!!」

 

「ああ、シオンか。単位数的に納得出来る」

 

「でしょ?シオン。私達のチームってちゃんと伝えたじゃない」

 

コレットの指摘に黙り込むシオン。

 

「『奪冠(クラウン・アタック)』の出場条件は1チームの総単位数が21000以上。ウィルが出る為には貴方を誘うしかなくて……」

 

先にラグナが出れば良いだろと言う反論が出る前に誘った理由を話すコレット。コレット的には条件さえ満たせていたらラグナを誘っていたのは言うまでもない。

 

「ごめん、シオン。巻き込んで」

 

ウィルはシオンを見ながら真剣な表情で言う、シオンは爆発したように

 

「冗談じゃない!どうして無能者なんかと一緒に!そもそも何で高等競技に出ようとしているんだ!おい落ちこぼれ何とか言えっ……」

 

ウィルの視線の先はユリウスに向かっていた。ウィルとユリウスはドワーフの酒場にて一悶着あり、今回の奪冠の参加に踏み切る要因となったのだ。シオンが拳を強く握りしめて怒りを抑え込んでいるように見えてラグナは

 

(こっちでも一悶着ありそうだな……)

 

と察する。そしてウィルとコレットに

 

「今回は一緒には参加出来ないけど観客席からは応援しているから。頑張れ」

 

「うん、ありがとうラグナ!」

 

「うん!頑張って来るね!」

 

三人はハイタッチを交わし、ラグナはその場から去り、観客席に戻る。実況では奪冠の説明と実況では言ってはいけないだろう裏賭博の話まで上がりラグナはそんなものもあるのかと感心したように頷いていた。

 

「けど、人気票で勝負が決まる訳じゃない。ウィル……コレット……見せてやれ。二人の魔走勝負」

 

そして奪冠が幕を開ける。コレットの魔法で武装したウィルがゴーレムをなぎ払い、罠を突破していく。ただの身体能力で突破している訳ではなく、ウィルが今まで培って来た知識と経験。無駄を排し反射の域で突破を実行する。

 

間違いなく、ウィルの強みが最大限に発揮されていると言える。

 

「流石だな、ウィル。そしてそれに対応しているコレットも……。もう少し単位取っておけば一緒に出れたのにな」

 

少し寂しく思いながら奪冠でのウィル達を見守る。樹海エリアに到達した時、先行していたのに関わらず、ユリウスからの奇襲を受ける。ユリウスの奇襲だけでは無く、シオンが背後から上級魔法をウィル諸共ユリウスを焼き払おうとし、ウィルとシオンの一騎打ちという名の仲間割れが始まる。シオンの表情からラグナは察して頷く。

 

「何か秘めていると思っていたけど、なるほど。それほどの激情があったんだ。ウィルには悪いけど、ここは一回ぶつかっておかないと禍根が残ると思うな」

 

ウィルとシオンの戦いも気にはなるが、各エリアで現れたユリウスにも目を向ける。氷の魔法で分身となれば自ずと答えが見えてくる。

 

「ユリウス……凄いな。そんな隠し球を持っていたなんて。流石学年トップ3だな」

 

それと同時にラグナは自分だったらどう攻略するかを考える。ラグナの強みは複数属性者。対応力ならば学年でも非常に高い方である。全ての分身を消し、本体を叩くのが理想だが、本人同様に攻撃してくるのであれば対処は難しいと。それほどにユリウスが使用している魔法は攻略も使用する難易度も高いということである。

 

ただ、手段を同じ魔法に限定した場合の話と言うのもある。

 

(鑑賞用水晶越しじゃ、確証は無いけど、何人かのユリウス足元凍っている気がする。それが見分ける方法か?)

 

そんな考察をしながら楽しげに奪冠を見ていると

 

「出場しなかったのか、奪冠(クラウン・アタック)に」

 

後ろから声をかけられる。ラグナが振り返るとそこにはミス・パーフェクトと呼ばれている学年トップのリアーナ・オーウェンザウスが立っていた。

 

「学年トップのリアーナが凡人と呼ばれているオレに何の用だ?」

 

リアーナは表情を変える事無く隣に立ち

 

「光属性以外の魔法を十分に扱える貴方を私は凡人とは思わない。貴方がどれだけ鍛錬しているかは知っているから」

 

リアーナは恥ずかしげもなくそう言い切った。

 

「複数属性を扱う以上、高度な魔力制御も必要になる。属性ごとの使い分けも、膨大な魔法知識も必要となる」

 

「でも、オレの単位数は7090だ。残念ながら『上院』入りは届いていないぞ」

 

二人がそんな話をしていると中央の舞台でユリウスとウィルがぶつかり合う。ウィルが氷の分身、『白の芸術』を攻略し氷の至高の杖との幼い日々の話を終え、決着をつけようとしていた。

 

「彼は……ウィル・セルフォルトは私達には無いものを持っている」

 

ウィルを見定めるリアーナをラグナは何も言わずに、戦っているウィルを見る。

 

「ウィルは本気で目指している。過酷でも無理難題と言われようとも『塔』を……約束の為。持っていないものがあるかもしれない、それでもそれを諦める理由にはせずに走り続けてきたからな」

 

そういうラグナは嬉しそうな表情を浮かべていた。その表情は誇らしげに語っていた。

 

「君が言うほどなのだな」

 

リアーナもウィルの戦いぶりを改めて見てラグナに言う。

 

「ラグナ、後期の『総合実習』が始まる。私は君とパーティーを組みたい。考えておいてくれ」

 

そう言い、奪冠の最後、ユリウスとウィルの勝負はウィルが勝ったが、奪冠の試合はイグノールのチームが優勝を勝ち取った。その光景を見届けてリアーナは静かに立ち去った。ラグナは自身の杖と右腕の布を握りながら

 

「うん、考えておく」

 

そう呟いてリアーナの背を見送った。そして再度ウィル達に視線を向けて

 

「勝ったなウィル、コレット。お疲れ様」

 

歓声に掻き消されながらも労いの言葉を送ったのであった。




総合実習いよいよですね!いよいよラグナも戦えそうですね!
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